ロシアのウクライナ侵攻~戦後世界秩序の崩壊~
ロシアはギリギリ脅しに留めると思ってましたが…これはもう暴発ですね…
『内政不干渉』という第二次世界大戦後の平和秩序が崩れた瞬間です。
ロシアのやり方が国際的に通用してしまえば、もはや国家は存在しないも同然です。
●親ロ派2地域と貿易制限 対ロシア制裁、国債取引停止 G7と協調、効果は限定的か・政府
ロシアの行動は「結果にコミットしてるけど、プロセスが無茶苦茶」です。
帳尻合わせで外形だけを整えています。故に、NATOの対応を難しくしています。
表面的に見れば、ウクライナからの独立を目指すドネツクとルガンスクを支援するため、
ウクライナ国内の同胞のロシア人を守るために平和維持軍を派遣した、という名目です。
1995年頃に旧ユーゴスラヴィアのコソボで独立運動が活発になり、
それを弾圧していたミロシェビッチ政権を抑えるために、
1999年にNATOが軍事介入をしてユーゴスラヴィアを空爆した事実がありますが、
ロシアは完全にそのシナリオに乗っかった形でしょうね。
当時のロシアはミロシェビッチ政権を支持していたので「苦湯を飲まされた」形でしたが、
今回はコソボの例があるだけにNATO側が強気に出れないという背景もあります。
先に挙げた1999年のNATO軍のユーゴスラヴィア空爆と比較すれば、
国連安全保障理事会の議決を待たずして攻撃しているのは共通していますが、
前者はミロシェビッチ政権による民族浄化の悲惨な映像が国際的に拡散しており、
1992年のクロアチア独立紛争時の国連の苦い失敗もあったことから、
国際世論が軍事介入をするように煽り立てていましたが、
今回の場合はロシア以外にウクライナ軍の横暴を主張する報道はなく、
軍事介入の大義名分が十分には整っていません。
もっとも、個人的見解を述べれば、当時のコソボ独立のための空爆も、
明らかにプロセスを無視した過剰干渉であったとは思いますが、
同じユーゴスラビア連邦においてクロアチアでの苦い経験を考えれば、
当時のNATOが積極的に介入した心情も分からなくもありません。
ただ、このような形でロシアに真似られてしまうと不適切だったと評価する他にありません。
今回の大きな問題はドネツクとルガンスクの独立運動が2014年のクリミア併合に起因し、
ロシアが主導して行っているということです。
独立を目指す両地域がロシアを後ろ盾にしているのは間違いなく、
ロシアの支援なしでは経済も政治も立ちゆかないでしょう。
仮に両国が独立できたとしても、どういう立場になるかは分かりませんが、
ウクライナに戻れない以上、ロシアに従属せざるを得ないでしょう。
結果的には他国の独立運動を支援している形を取っていますが、
プロセス的には他国で扇動活動を行い、従属的な第三国を作り出そうとしています。
こうなってくると、世界の秩序が崩壊しかねません。
日本はまだ他人事に思っており、実際にその必要性さえもないでしょうが、
仮にロシアが北方領土を日本の領土だと認めたとしても、
そこにロシアの住民が実際に住んでいる以上、
彼らロシア住民に自主独立させるように促せば、
ウクライナと同じように軍を派遣して守ることができ、
ウクライナと同じように北海道や東京を空爆できることになってしまいます。
傍観している中国にも同じことが言えるわけです。
台湾が自主独立を宣言して欧米がそれを支持すれば、
中国は当然黙っているわけにはいかず、派兵の意思を見せるでしょうが、
そのことが米軍の台湾上陸を許してしまい、
中国本土を空爆することに繋がってしまいます。
他の多民族国家も同様です。
ロシア寄りのトルコさえも批判しているのは、国内のクルド人独立運動があるためで、
仮にどこかの国がクルド人保護の大義名分で国家承認しようものなら、
同じように攻撃されるリスクを背負ってしまうからです。
要は、大国が他国の独立運動を扇動・支援することで、
攻撃さえもできてしまうことになり、もはや国家の秩序は崩壊します。
民族単位ならまだしも、外国人街や個人単位まで迫害と独立を言い出したら、
もはや世界のどこにでも軍を派遣できるとなってしまいます。
仮にアイヌや沖縄、中華街が日本から独立すると言い出したら、どうなりますか?
他国がそれを承認して軍を派遣するとなったら、秩序も糞もありません。
独立を煽った対国家攻撃によって、内政不干渉の原則が完全に崩れてしまうわけです。
こうなると、互いに独立を煽って攻撃し合うことになり、
戦争への道が加速度的に進んでしまうことでしょう。
もう第二次世界大戦後の内政不干渉という国家モラルは完全に消え去りました。
●【速報】総理 ロシアへの追加制裁発表 金融機関の資産凍結、半導体の輸出規制など
まぁ、当然の対応ですかね…
前回のクリミア併合時のような弱腰姿勢では済まされません。
今後の展開次第では欧米諸国がロシアと断交する『新冷戦』になりかねず、
その時に日本はどういう対応に出るか考える必要があります。
少なくとも、北方領土問題があるからロシアに配慮する形はもう取れませんね。
クリミア併合以上の経済制裁を迫られるのは不可避でしょう。
●ロシア軍、チェルノブイリ原発を占拠 ウクライナ発表
これはもうウクライナの首都キエフ占領を視野に入れてるということでしょう…
ウクライナ東部での戦線だけなら正面衝突は避けられたでしょうが、
ここまで来るとNATOの存在意義にかかってくるのは間違いなく、
決断を迫られている段階に入ったと思います。
最後に最も懸念されるのはウクライナ住民の今後です。
この戦線がどこまで拡大するかは分からず、戦後体制も全く予想できませんが、
仮にロシアが理性的に撤退したとしても、東部ロシア系住民の裏切りは明らかで、
仮にウクライナが陥落して統一親露政権が誕生したとしても、
少数のロシア系住民による専制支配構造という歪な形になってしまい、
ロシア系住民とそれ以外の民族的対立が埋まることはありません。
要するに、ロシアはそこまで考えていない、
ウクライナ住民のことなど、どうでもいいということです。
これだけ対立を煽ってしまった以上、両者の対立は平和裏に終わっても解消はせずに、
後の対立を生むだけの要因になりかねません。
そう考えると、癪ではありますが、ロシアの独立承認要求を呑むしかありません。
時間を稼いでウクライナがNATOに加盟する他にもう選択肢はないでしょう。
まぁ、それをロシアが許すとは思えないので、やっぱり戦争になるんですかね…