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静岡県知事選から見る次期衆議院選挙の課題

まぁ…予想通り、現職の川勝知事が安定して勝ちましたねぇ…
●静岡県知事選の結果
●静岡県知事選 投票率は52・93%
投票率は久々の自民党正式候補ということもあって、
前回よりも多少上がるかなという予想はしてましたが、
結果的に言えば、自民・公明の組織票は固められていなかったので、
むしろ、コロナ禍で個人の政治的関心は上がっていたと見るべきでしょう。

はっきり言って、対立候補の岩井氏が弱過ぎました。
岩井氏自身が悪いのではなく、明らかに選挙戦略ミス。
どこの馬鹿が考えたのか知りませんが、100回やっても100回負ける選挙。
野党がよく陥りそうなミスもあったので、今回は詳しく解説していきます。


【岩井氏の敗因】
岩井氏の敗因は主に3つあります。
①批判が過去の批判だけではなく、現状の批判になってるか否か ⇒コロナ問題
②問題の解決法を提示できてるか否か ⇒リニア問題
③中央政府とのパイプが吉と出るか凶と出るか ⇒コロナ経済対策

まず、①「批判が過去の批判だけではなく、現状の批判になってるか否か」です。
特にコロナ対策批判で見られましたが、
県内のワクチン接種が進んでいないことを自民党候補は批判していましたが、
ワクチン接種が遅れた主な原因は政府≒自民党政権にあるわけで、
おもいっきり批判がブーメランになっちゃっていました。
また、静岡県内のコロナ状況がそれほど悪くなく、
コロナワクチンを早急に必要としていない状況もあります。
昨年末の第3波こそ、緊急事態宣言の一歩手前まで追い込まれかけましたが、
昨年冬の第1波、昨年夏の第2波、今年3月からの第4波に関しては、
周辺都道府県と比べても、感染が非常に抑え込まれています。
つまり、コロナワクチンを早急には必要としていないわけです。
そこにワクチン批判をした所で、「悪いのは政府だよね?」で終わっちゃうわけです。

野党のコロナ対策批判、例えば今年3月の緊急事態宣言解除批判で言えば、
現時点で同じような状況にありますが、
もし、仮に、万が一のことですが、今後コロナが収束に向かうのであれば、
あくまで過去の批判で終わってしまい、今後には繋がらなくなってしまうので、
あまり重要ではない批判ということになってしまいます。
大事なのは過去の批判が今後に生きるか否か、です。
さらに言えば、仮に政府のコロナ対策批判としては失敗になる状況だとしても、
地方行政と国政との情報伝達・行政の意思決定プロセスの問題としてならば、
仮に、万が一、コロナが収束したとしても、現在未来に繋がる批判になるでしょう。
『意味のない批判』はしないこと、そういうことです。

次に、②「問題の解決法を提示できてるか否か」です。
今回の選挙で注目されることになったのが『リニア問題』です。
自民党候補の岩井氏は県知事選に出るまでは「国土交通副大臣」という役職でした。
自公政権以降は公明党が国土交通大臣を務めているので、
実質、自民党の国土交通省のトップです(以前も傲慢な発言した副大臣いましたね)。
言わば、JRを含めた当事者の一人、裁判官的な位置にいた人物が
(どちらが原告で被告なのかは分かりませんが、仮に静岡県を被告とすれば)、
被告の立場に成り代わるわけですから、当然どういう態度を示すのか注目されます。
しかし、『リニア問題』に関しては積極的に触れようとはしませんでした。
大井川水系は守るという言葉はあったものの、
協調路線でどう解決に導くかの問題解決策を提示できなかったために、
自民党がリニア推進ということもあり、JRに屈すると判断されてしまいました。
結局、注目された問題で、見識も当然ある立場であったのに、
何も解決方法を提示できなかったことが、問題へのやる気の無さを印象付けた結果です。
今の政府与党がワクチン接種以外に術を持たない辺りも、同じ批判を浴びる理由でしょう。

最後に、③「中央政府とのパイプが吉と出るか凶と出るか」です。
中央政府の力が強ければ、公共事業を始め多くの政策で便宜が期待できます。
今まで中央省庁の天下り官僚や国会議員が知事に転身した理由がこれです。
これだけで選挙を有利に戦えていたからです。
例えば、1970年代に圧倒的に選挙が強かった田中角栄総理。
総理とのパイプを武器にして公共事業の誘致で戦った議員が多かったと予想できます。
中央政府が強い力を持ち、その実行力も兼ね備えていれば、
本人の実力がどうあれ、それだけで選挙が勝ち抜けたわけです。
逆に、今のように中央政府への信頼が失墜しているとそうはいきません。
コロナ禍で露わになったのが中央政府の無策ぶりでした。
実際に中央政府を忖度していた神奈川県知事は小池都知事批判で逆バッシングを浴び、
菅総理の訪米を忖度した大阪府知事は深刻な第4波を招く結果となってしまい、
東京五輪のプレマラソン大会を忖度した北海道知事も第4波の拡大を招きました。
要は忖度系知事は、政府を忖度するために判断が遅れ、自己決定が遅くなるわけです。
逆に川勝知事で言えば、第4波の原因となったイギリス型変異株をいち早く情報公開し、
インド型変異株に関しても隠さずに早めに公開したことで、
県民の自粛意識が高まったことで、深刻な被害をもたらさなかったと言えます。

それと、地味に陰を落としているのが「森友・加計・桜の会問題」です。
中央とのパイプを武器に企業誘致をしますと喧伝したところで、
「どうせコネで勝ち取った上級国民の企業なんでしょ?」という信頼感の無さがあります。
それなら県内企業をもっと支援しろよと思うのも無理ないことでしょう。
これはわりと深刻なことで、自民党≒上級国民≒コネと簡単に繋がり、
不公平の象徴ともいえるマイナスイメージの連鎖ができてしまったことは、
自民党にとっては思った以上のマイナス要素だと思います。
…まぁ、疑惑を払しょくできなかった故の自業自得なんですけどね…


【川勝氏の勝因】
逆に現職の川勝知事の勝因も3つあります。
①分かりやすい対立構図を作り、主張が伝わりやすかったこと ⇒リニア問題
②足で稼ぐ選挙戦を繰り広げ、多選・年齢の不安を払拭したこと
③党派色を弱めたこと

主な勝因は、やはり①『リニア問題』なのは間違いありません。
JRとの対立構図を拡大解釈させ、「自然環境を守る知事」としてアピールし、
県中部の大井川水系だけでなく、メガソーラーの土地開発問題で悩む伊豆地域など、
幅広く支持を集めることに成功しました。
まぁ、それまで特に環境問題に煩いというわけでもなかったんですけど…
自然環境を無視してリニア推進にまい進するJRと国に対抗できるのは、
川勝氏しかいないという空気を醸造できたことは、大きかったと思います。
ここら辺は小池都知事のような劇場型選挙の戦略が見事にハマった形です。

次に大きかったのは②選挙活動です。
川勝氏は次が4期目、年齢も72歳ということなので、
多選や年齢面に対する批判は当然あっただろうと思われます。
実際に自分も4年前には川勝氏がもう1期やるとは思っていませんでした。
それが選挙カーで各地を回るのではなく、
電車や自転車で移動しながら地道に足で稼ぐ選挙活動を行い、
ある意味では53歳の岩井氏よりも精力的に動き、
年齢面の不安を完全に払しょくしました。
ここら辺はバイデン大統領のように選挙活動がアピールできた形です。

最後に挙げられるのは、③党派色が弱かったことです。
川勝氏は民主党政権時代に誕生した知事で、
今に至るまで民主党系が支持を続け、今回は共産党も推薦するなど、
水面下では連合・共産党の組織力を動員しながらも、
国会議員等の応援は一切なく、中央政府とのパイプを敢えて切っていました。
そうやって党派色を徹底的に弱めたことにより、
自民党支持層でも4割以上の支持を取り付け、
公明党支持層の数字は出ていませんが、おそらく半分以上の支持はあったと思われ、
本来は自民党候補の岩井氏に行くはずの票をかなりの数、獲得できたのは間違いありません。
仮に自民・公明党が一体感を持って動いていれば、五分五分の選挙戦だったでしょう。


【選挙結果から見えてくること】
そういう意味で、今回明確になったのは、「自民党単独での選挙の弱さ」です。
選挙戦略も選挙活動も裏目に出る惨状…酷いものです。
実際に岩井氏が所属する竹下派内では立候補に難色を示していたらしく、
厳しい選挙になることは事前に予想できていたのだと思います。
そこが党の公認を得られなかった要因のように思われます。
また、同時に票田として押さえておくべき公明党の推薦が得られなかったことも響きました。
創価学会の支援がなく、勝ち馬に乗れる雰囲気ではなかったことで、
経済人を中心とする自民党支持層にアピールできなかったのでしょう。
国会の中では公明党の存在感は与党とは思えないほどに小さなものですが、
選挙に関して言えば、創価学会の支援があるからこそ選挙で勝ててるわけで、
自民党はもう創価学会の支援なしに戦えない程に弱くなっていると言えそうです。

与党候補にとっては川勝氏の選挙戦略は参考にする所が大きく、
中央政府に頼らず、自らの足で稼ぐ地道な選挙活動こそが必要な局面と言えそうです。
菅政権と自民党に対する逆風があるだけに、個人の魅力をアピールすることが必要でしょう。
あとは有権者にアピールできる政策を持てるかどうか。
コロナ禍で政治の影響力の大きさを人々が再認識し、
芸能人を含めて政治に積極的に発言するように変わってきましたから、
国民の選挙への関心は上がっていると言えそうです。
そういった有権者に対して分かりやすい政策をアピールできるかどうかが鍵ですね。

逆に野党候補にとっては岩井氏の失敗を糧とする必要があります。
与党批判も結構ですが、それが的確な批判である必要があり、
そこから何が導き出せるかまでしっかりと考えて批判しなければ意味がありません。
また、対案もしっかりと用意し、国民の期待に応える準備も必要でしょう。
今の野党勢力は、連合と共産党という長年「あいつとは違う」という対立関係にあった、
2つの野党勢力が選挙協力をしているという状況ですから、
逆に両者の対立を深めないように、
支援勢力が目立たないような選挙戦をする必要があるでしょう。
連合の人気取りや共産党の人気取りに走ってしまえば、逆に有権者は冷めてしまいますからね。

最後に『リニア問題』に関して言えば、国も何ら解決策を持っていないことが明らかになりました。
有効な打開策があれば、元国土交通副大臣の岩井氏が掲げていたことでしょう。
有権者に期待されながらもリニア問題の解決策を打てなかったことは、
静岡県とJRの調停が期待薄なことが分かります。
本音では早く静岡県が泣き寝入りしないかなと思っているのでしょう。無策も甚だしい。
このまま調停は上手くいかず、静岡県とJRの全面対立に発展しそうな感じですねぇ…

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