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デジタルとアナログ

wikipediaで調べても、しっくりいく説明がないので恐縮ですが、
自分が昔見た説明では『連続性』と『非連続性』というものがありました。
時計を思い浮かべれば分かりやすいと思うのですが、
アナログ時計は針が途切れることなく回転し続ける『連続性』の世界であり、
デジタル時計は数字が飛び飛びで表示される『非連続性』の世界である、と。

しかし、当然ながら、デジタルの『非連続性』で現実の『連続性』は表現できないので、
デジタルでは『非連続性』を繋げることによって『連続性』を再現する必要があります。
つまり、デジタルにおいて最も大切なことは「何の『非連続性』を使うか」です。
時計であれば、何月・何日・何時・何分・何秒を繋げることで時計として機能し、
データであれば、何月・何日・支払い場所・代金・支払者名義等の『項目』によって、
初めて『非連続性』で『連続性』を再現することができるわけです。
大切なのは、何を用いて再現するかであり、それこそが評価の基準になるわけです。

考えてみると、『音楽』や『法律』は実にデジタルです。
『音楽』はドレミファソラシドという非連続的な音階を用いて、
滑らかな連続性を持った曲を作りだします。
ド・レ・ミのいずれもそれ自体が意味を持っているわけではないのに、
それを組み合わせることで、曲という意味が持つのは実にデジタルです。
『法律』も判例法主義(英米等)の国は例外的だとしても、
成典法主義の国では条文に用いられている法律用語を解釈して意味を見出します。
『または~』『もしくは~』『~に基づいて』は、
それ自体で法律的意味を持ちませんが、
条文においては、先後関係や優先関係を示す解釈の手がかりとなります。
法律家は条文を用いて、現実の問題を再現して法判断をしているわけです。

よく『アナログ人間』という言い方をされますが、
一般的にはコンピュータ等のデジタル機器を使えない人を指しますが、
上記のアナログの定義を用いれば、
『連続性』を重視する人間ということになるでしょう。
つまり、個人的な付き合いの長さで物事を考える人が『アナログ人間』です。
会社において、取引先を決める時に、相手の担当者との個人的付き合いで決めがち、
「あの担当者とは気心が知れているので~」「毎年お歳暮を貰ってるので~」等々。
取引先の会社の実績ではなく、付き合いという『連続性』で考えがちな人です。
逆に、『デジタル』的に考えれば、そういう付き合いの長さよりも、
項目で下された客観的評価で決することになります。


昨今の菅総理の改革表明や日本学術会議の議論を見ていると、
実に、この『アナログ』と『デジタル』の差を感じます。
改革自体は『デジタル』だと思います。連続性を改めるわけですから。
そうなると、大事なのは『項目』であり、何を用いて何をするのかです。
携帯電話料金の値下げにしても、脱ハンコにしても、
地方銀行再編や中小企業改革にしても、そこが見えてきません。
何の項目を重視して、何をなそうとするのか。
そこが分からないから中身がスカスカなんです。

菅政権で起こった日本学術会議の6人の任命拒否や、
安倍政権時の新型コロナ時の休校指示・緊急事態宣言の発令と解除、
それらが『デジタル』な判断であれば、そう評価するための『項目』があったはず、
その『項目』を明らかにするだけで、国民に対しての説明になるはずです。
『総合的に』と聞くと、色々と判断したんだなと思いがちですが、
問題なのはその『色々』の中身であり、それを明らかにすることが説明です。
コロナ関連の判断材料でも日本では必ず『総合的に』と言う言葉が出てきます。
それはデータに忠実に判断するのではなく、
都合の良いデータのみを採用し、評価者の価値判断=アナログを挟み込むのです。
我々が欲しているのは、デジタルなデータによる評価なのに、
わざとそこにアナログな政治判断を挟み込もうとする。
つまりは、日本の政治においては『デジタル』なデータを重視せず、
『アナログ』な政治家の判断に重きを置いているのです。
それは、つまり、『恣意的な判断』ということです。

菅政権は『デジタル』庁の設置を表明していますが、
むしろ、一番アナログなのは政治家の頭の中身でしょう。
縁故や好き嫌い、気分といった曖昧な判断ではなく、
データによって示された評価で判断することが重要だと示したのが、
今回の新型コロナ対策の課題だったわけです。
逆に言えば、データで政治判断ができるのであれば、
政治家はそれほど必要なくなるわけですから、
日本の政治機構が真に『デジタル』化できるのならば、
今の国会議員は半分以下、1/3以下で十分でありましょう。
衆議院は100人程度で良いですし、参議院は地方自治体の首長が兼ねれば十分です。

勿論、『デジタル』にも欠点があります。
『項目』が人間の感情等の現実を評価しきれていなければ、
それはデータとして意味がなくなってしまいます。
そこが評価者=政治家のセンスになってくる時代が来ることでしょう。
そうなると、もはや政治家が世襲する意味自体がないわけで、
必要な能力はむしろ今の官僚がしている事務と評価能力の方です。
そういう意味では、今の政治家のやっていることは実に『アナログ』です。
もっとも『デジタル』化するべきなのは、政治家の頭の中なんです。


◆ニュースネタ 臨時国会が開かれるも…日本学術会議問題関連
●枝野氏「支離滅裂の答弁。辞職もん」首相を痛烈批判
所信表明演説は、小学生のようなやることだけを列挙した作文程度の内容で、
唯一踏み込んだのが2050年までの二酸化炭素排出実質ゼロでしたが、
具体的な解決策は何も示されず、原発頼みの状況を明らかにしただけ…
注目された日本学術会議関連の質問に対しても… はぁ…
内閣法制局はちゃんと説明してるの? 忖度し過ぎて説明まで省きすぎじゃね?
今後、最高裁判事の信任投票では内閣法制局出身者は全員×にしますね。
これじゃ法律知らなすぎってことになっちゃいますよ…仕事しろ。

日本学術会議法違反を問われてるのに、憲法15条で法律違反でないと言うのは、
安保法案を守らなくても、憲法9条に違反しているから守らなくて良い、
特定秘密保護法を守らなくても、憲法21条で通信の秘密が保護されているから無問題、
共謀罪を始めとする犯罪も、憲法18条の奴隷的拘束からの自由に反するので
法律を守らなくても良い、と言っているのと同じことです。
一応、憲法違反の疑いがあっても、法律として機能してるんだから、
それを守らなければいけないのは当たり前のことでしょう?
憲法に反するから法律を守らないなんて通りません。
(まぁ、日本の裁判所の違憲立法審査権は事実上ないようなものですが…)

どうしても説明に窮して、憲法を使わなければならないのならば、
「憲法15条の精神に基づいて解釈すると」といったように、
憲法を直接引用するのではなく、解釈としての引用に使うべきです
(とはいえ、国会で形式的任命と断言してるので、解釈も糞もありませんが)。
そういう説明になっていないのは、どこかで説明を省いて聞いているとしか思えません。
ぶっちゃけ、政府全体が馬鹿丸出しです。

憲法違反の問題にするなら、憲法23条の学問の自由に反することになりますし、
全くもって説明になっていません。
憲法で競合する権利の優先関係を示すために『法律』があるのに、
その『法律』を無視してたら意味ないじゃないですか…
法律を恣意的に解釈するどころか、法律を守らなくていいと首相は言っているのだから、
そりゃ無茶苦茶と言うしかありません。

百歩譲って、日本学術会議の選定方針に問題があるとしても、
それは6人だけを排除する理由になっていません。
方針に問題があるのならば、全員拒否すべきでしょうに。
その6人が年齢・性別・所属大学等の何のバランスを乱しているんですか?
バランスというのは全体を見ないと分からないのに、
特定の6人を排除しただけで、簡単に取れるバランスなのでしょうか?
アホなの?

任命拒否をしている今の違法状態の責任は誰にあるのか?
日本学術会議なのか、総理大臣なのか。
特定の6人が何のバランスを乱しているのかも分からないのに、
他の後任を考えることなんてできるわけがありません。
そりゃどっちが悪いのかと考えれば、総理大臣の方でしょ。
みんなそう思ってるから、政府を擁護している人でも説明が必要と言ってるんじゃないの?

そういう法律なんて無視という姿勢が、中国やロシア、戦前の日本を彷彿とさせるんですよ。
自分の理想がないだけに欲望に歯止めがない。
そういうタイプは逆らう者を皆殺しにするまで気が済まなくなるんですよ…


●仏メディアも「なぜもっと抗議しないの?」学術会議問題、菅首相が“逃げ切れる”理由
憲法学者は憲法を知っているが故に、その限界も知っているということでしょう…
日本の裁判所に違憲立法審査権は、事実上、存在していないようなものです。
あっても行使できないんですよ…
なにせ、具体的事件がないと法判断できないわけですから。
アメリカのように直接的に州法が違反しているかどうかを議論できるわけではありません。
誰かが具体的被害を受けてからでなければ、法律が憲法に合致してるかどうかを問えず、
しかも、それを行えるのが最高裁だけなので、そこまで法廷闘争をやらなくてはなりません。

尊属殺人事件等、余程の事件でなければそこまで戦うことはできず、
今回の日本学術会議の事件で具体的被害が出てくるとしても数年後の話、
そこで裁判を行うというのは非現実的な話でしょう。
そこが日本の違憲立法審査権の重要な問題です。
どちらかといえば、行政不服審査法の範疇なのでしょうが、
それを判断するのも政府機関ですから、無駄なことなのは明らか。
結局、日本では憲法違反や法律違反を問うても、戦える状況にないのが実態です。
それ故に、世論が支えなければならない、ということを覚えておいて欲しいです。


●任命拒否で支持率急落、菅首相は「実務型」に徹せよ
日本学術会議を政治的にどう位置付けるかは、全く別の問題なので、
その点に関しては評価しません。
そういう意見も当然あるだろうと思います。

話を戻しまして、菅総理は「実務型」の皮を被った「イデオロギー型」と見てます。
ぶっちゃけ、菅総理は左翼思想家ですよ。
常に「改革しないといけない」という強迫観念から始まっています。
それは裏を返せば現状の否定、保守とは対極に位置するわけで、
そういう意味では、菅総理は左翼思想家に見えます。
「実務型」と思われる改革内容も中身はスカスカで見えてこない。
やろうとすることが大雑把で乱暴。
過激な改革を望む左翼思想家が大好きな要素じゃないですか。
むしろ、菅総理こそ、ザ・左翼です。

改革することは悪い事ではありませんが、問題はその中身です。
現状分析として何が問題になっているのかを正確に捉え、
その解決法を考えなければ改革ではありません。
その現状分析ができていないから、改革も変な方向を向いてしまい、
特定の人間を利するだけの結果になってしまうのです。


●橋下氏「サンモニだったら真逆」軍事科学研究賛成88%に感謝
冒頭しか見てませんでしたが、
明らかに軍事研究を奨励するような番組の流れだったような…
でもドローンの飛行とか制限したのは政府だし、
単純に研究を独占したいだけじゃねぇのかな?
●「死んでも4時間後に生き返る」自衛隊が現実離れした訓練を続ける根本原因
日本の軍事研究の立ち遅れを心配するより、
自分達の頭の時代遅れを心配した方が良いのでは?
戦前の特攻思想のまま作戦を立てても意味ないでしょ…


◆ニュースネタ 携帯電話料金の値下げ?…ではありません
●KDDIとソフトバンク 携帯電話の新料金プランを発表
マスコミはマジでゴミ… わざと勘違いするように報道しやがった…
ウチの両親も完全に勘違いしてましたな…

第一報のような『KDDIとソフトバンクが携帯電話料金を値下げ』したわけではなく、
両者のサブブランドであるUQモバイルとYモバイルにおいて、
大容量20G向けのプランが4000円前後で提供される予定、という話です。
そもそも、KDDIとソフトバンクの携帯電話を使っている人は、
サブブランドへの変更手続きをしなければなりませんし、
ドコモはサブブランドは持ってないので一切関係なく、
しかも、毎月20G使う人って、外で映画やゲームをダウンロードしまくりな人ですから、
家庭にWifiある人でそんなに使う人はまずいませんので、
多くの人々にとって無関係な話なわけです。

では、なぜ20Gの新プランを発表したかと言えば、
菅総理の携帯電話料金の値下げの要請に応えたフリでしょうね。
2Gや3Gの容量の少ないプランは2019年に値下げが進んでおり、
今回は20Gとの国際比較で高過ぎると批判されたので、そこを下げたのでしょう。
まぁ、でも現実的に20Gも使う人は全てのインターネットをスマホでやっている人で、
家庭のパソコンでWifi使ってる人が使い切る容量でもないので、
経営的にはそれほど痛手にならないのでしょう。
むしろ、それだけ使う人は通信の安定性を重視するでしょうから、
わざわざプランを変えることもしないんじゃないですかね…知らんけど。
結局、政府の批判が的外れだから、多くの国民にとって無意味なものになるんです。

とはいえ、NTTがドコモを年内にも完全子会社化すれば、
状況が大きく変わる可能性はあります。
長引くデフレで分かり切ったことですが、値下げ競争の勝者は体力のある企業です。
つまり、値下げ合戦は大企業ほど勝ちやすいんですよ。
そりゃNTTが本気で値下げ合戦をしてきたら、他は太刀打ちできないでしょう。
そういう可能性はあるだけに、値下げが一定程度進む可能性はありますが、
それが終わったらサービスごてごてにして事実上の値上げになるだけなので、
全く恩恵がなくなるとは思いますけどね。
実際、2019年の値下げも、スマホ本体の価格上昇と割引率低下によって、
相殺されるどころか、消費者の負担は大きくなってるぐらいでしょうに…

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