暗雲が漂う野党再編
当初は「希望の党」の登場で一気に野党再編が進むかと思われましたが…
民進党の事実上の解党宣言をピークに、暗雲が漂い始めています。
気になるのは、未だに希望の党が政権の枠組みを提示していないことでしょう。
小池東京都知事が「政権選択選挙になる」とは発言していますが、
だからといって「安倍政権・自民党政治を終わらさせる」とも言っておらず、
民進党・前原代表のような二大政党制を目指すという強い意志は伝わってきていません。
中には日本のこころ出身の中山成彬氏が「安倍首相の交代は許されない」と発言したり、
民進党リベラル派の選別によって民進党の事実上の分裂が決定的になったり、
IR推進法や特定秘密保護法で自民党と連携をしてきた維新の会とは不可侵協定に止まる等、
「希望の党」の立ち位置が果たしてどうなるのかが見えなくなってきました。
国民やマスコミ、民進党・前原代表らが期待していたような「安倍政権への対抗勢力」なのか、
維新の会のように、与党と連携しながら政策の実現を行う「閣外協力隊」なのか、
現時点ではどちらの顔も持っており、何とも言えない不思議な雰囲気になってきました…
野党としての一致した目標は、「自公政権の過半数割れ」なのは間違いなく、
仮にその目標が達成できたとして、共産以外の野党連立で政権を取りに行くのか、
それとも自民党と連携して、自公・維新の会・希望の党で連立を組みに行くのか、
そのビジョンが全くもって見えなくなってきています。
私自身も当初は期待を込めて前者の流れなのかなと思っていましたが、
維新の会との連携話が思ったほど進展しなかったことで、後者の流れにも思えてきます
(単に表明していないだけで密約がある可能性は否定できませんが…)。
それはもはや、野党としての立ち位置が定まっていると言えるのかどうか
(それは維新の会にも全く同じことが言えるわけですが)。
共産党の指摘する「自民党の補完勢力」に終わるのではないかという危惧が強まっています。
そもそも、小池東京都知事の当初の狙いはどこにあったのか。
自身は都政に集中すると言っていることからも、今回は国政への足掛かり程度の感覚でしかなく、
東京オリンピックを成功させるなど、都知事の任期4年を終えた上で、
自身も国政へ進出して総理の座を狙う、といった予定だったのかもしれません。
それが臨時国会冒頭解散を含めた安倍政権の政治対応に対する不満の爆発から、
国民やマスコミが小池都知事に過剰な期待を掛けた上に、
民進党も二大政党制を大義にその流れを決定的なものにしようとしたことで、
小池都知事自身に変な色気が出始たのか、国政復帰を匂わすトーンも一時はあったものの、
今はそこから少しトーンダウンして、当初の目標に戻りつつあるようにも見えます。
華々しく掲げた「原発ゼロ」の掛け声も、今になっては完全にトーンダウン…
結局、「希望の党」は今後どういう立ち位置で政治を行っていくつもりなのか、
それが見えなくなっているだけに、改めてそれを国民に説明して欲しいです。
もし、小池都知事に二大政党制を目指す気などサラサラ無いということになれば、
民進党・前原代表は大きく早合点してしまったということになってしまいます。
前原氏の頭の良さは認めるところなんですが…それ故に、早合点して失敗した過去が幾つも…
支持母体の連合も「一杯喰わされた」的な感じに変わりつつありますし、
連合が希望の党への支援を止め、民進党リベラル派ら残る民進党勢力の支援に戻る可能性もあります。
そうなれば、希望の党へ公認を求めている中道議員が「話が違う」として、
希望の党の公認を撤回するかもしれません。
その結果として、前回の民進党代表選で危惧されたような、
枝野氏が代表になり、前原氏ら保守系議員が一斉離党して分裂するという状況に近くなるのでは…
今更、引くに引けない前原代表、時計の針を戻したい民進党リベラル派、
もはや民進党の分裂は決定的で、それ自体は国民にとっても構わないと思うのですが、
このままでは遺恨を残しそうで、ソフトランディングからハードランディングでの不時着の結果、
大義とした二大政党制には程遠い結果に終わってしまうかもしれません…
◆ニュースネタ 政治における「主義・主張」は一般人における「哲学・宗教」のようなものだ
一般人の中でも、特定の宗教を妄信する人もいますが…まぁ、政党でもそういう所ありますし(苦笑)
何が言いたいかと言えば、政治家といえども、「主義・主張」に縛られる必要はないということです
(勿論、考え方が変わった経緯を説明する必要はありますが)。
私達はそれを本能的に分かっているはずなんです。
昔ならいざ知らず、現在において共産党に投票する人が、本気で政権を取れるとは思っていません。
共産党の野党能力、批判・追及能力に期待してや、社会政策の提言を期待して投票している人が大半です。
ですから、すぐに「資本主義と共産主義」「右派と左派」「保守とリベラル」と言いがちですが、
その区別が重要なのではなく、具体的政策にどうアプローチするかが重要なんです。
共産党に関して言えば、「絶対的野党」だから。具体的政策を批判する立場を期待して投票します。
自民党に関して言えば、「政権与党」だから、ということが大きな要素になるでしょう。
実際の判断において、「主義・主張」、さらに言えば「政策」でさえも大きな判断材料にはなりません。
それは後付けの理由に過ぎず、実際に国民が判断するのは、「立場」です。政党の立ち位置です。
そういう意味では、前原代表の「二大政党制を目指す」という「立場」は極めて正しかったのです。
一方の小池都知事側の「政策で同意できるか。リベラル派排除」というのは、
主義・主張に囚われているだけで、正しくありません。
もっとも、それが単なる方便に過ぎず、「二大政党制を失敗した民主党の禊を行う」のであれば、
「二大政党制を目指す政党」として必要な行動だと理解できますが、
現時点で希望の党はそういった立ち位置を明確に示していません。
それでも「主義・主張は大事」だと主張する人もいるでしょう。
考え方の基軸として「主義・主張」は指針を示してくれますが、答えを教えてくれるわけではありません。
「政策」は政党にとって大切なものだ、と言う人もいるでしょう。
しかし、「政策」なんてものは、社会・世界の状況で変わりますし、
入ってくる情報量の違いによっても、政策判断は180度違ってきます。
今、沖縄で座り込みしている元総理がそうでしょう?
辺野古移設を打ち出しながら、最後は「抑止力」を理由に認める…情報量で政策は180度変わります。
重病人に劇薬を与えてしまえば死ぬのみで、
逆に軽い病人に痛みを和らげる程度の薬を与えたところで自然回復に期待するに止まります。
大事なのは対症療法であって、「政策」なんてものは時によって変化して当たり前です。
それが一番分かっているのは、一度政権を取ったことにある民進党自身であり、
政権与党にいた小池都知事なわけなんですが…
今の「希望の党」に必要なのは、フランス・マクロン大統領選のようなアプローチで、
主義主張よりも、政権交代を行うという意志だと思うわけです。
大事なのは「自民党に代わる政権与党になれるかどうか」であり、
共産党が批判するような「自民党の補完勢力」になってはいけないはずです。
一番大事なのはそこで、政党の立場を明確に打ち出せないようでは、
国民には何をやりたいのか全く見えて来ず、指示も広がらないように思えます。
マクロン的手法で言えば、現在にフランスにおいてマクロン大統領の支持率が急落している背景に、
マクロン大統領自身のイメージ戦略が下手で、印象を悪くしている点、
大勝したはずの議会が素人だと批判を浴びている点があります。
その点に関しては比較的問題クリアしやすい状況にあると思うので、
政党の立ち位置を明確にすることが、何よりも必要だと考えられます。
◆政治ネタ 民進党の着地点はどこになるのか?
希望の党の一次公認者が50人程だという情報もあって、
当初10人程度と見られていた公認拒否が30人以上に膨らむことが濃厚になりました。
その後で新人や元職と一緒に追加公認されるケースもあるでしょうが、
現状では半数近くが「お断り」される可能性が高く、
さすがにこれでは前原代表を含めて「話が違う」となっても仕方ない事態です。
私も民進党は消滅前にソフトランディングしたと思ったのですが、
今のままでは禍根を残すことは間違いありません。
希望の党の候補者も過半数どころか、100人程度で終わる可能性が出てくれば、
民進党・前原代表が掲げた「二大政党制の実現」「名よりも実を取る」が脆くも崩れ去ります。
「名も捨てて、実も取れない」何のための解党だったのか分からなくなります。
本来、希望の党が二大政党制を望んで勝負をかけるのならば、
希望の党を民進党議員の完全な受け皿にすることはできなくとも、
民進党リベラル派とも選挙協力や連立を視野に入れた対応が必要になるはずです。
仮に、選挙後に公明党を味方に引き入れて、維新の会とも連携できたとしても、
参議院における希望の党自身の勢力は一桁台ですから、究極のねじれ状態になってしまいます。
そういうことを考えれば、参議院の民進党議席は必要不可欠で、
リベラル派を受け入れることはできずとも、協力関係を損なうわけにはいかないはず…
なのですが…今の状況からすると、そこまで考えていないのか、必要だと思っていないのか、
そもそも政権を取るつもりがないのか…
前原代表も早合点を後悔し始めているのではないでしょうか。
とはいえ、今更「なかった」ことにできるわけもなく、
「騙された」と感じたリベラル系議員や参議院議員を中心に、
民進党の復活を考えるのは当然の流れだと思われます。
そして、その数も10人やそこらで済まない、衆議院議員で30人近くに及ぶわけですから、
連合や各民主党県連がどちらを応援するのか迷うことは確実で、
最終的には連合が希望の党の支援を打ち切る可能性も出てくると思います。
そうなれば、希望の党に公認申請をした中道議員がどう動くのか、
そのまま希望の党に骨を埋めようとするのか、
選挙は二大政党制の大義で戦った上で、当選後に話が違うとして新民主党に戻るのか、
選挙前に公認を取り消して無所属で連合・新民主党の支援を受けるのか、
今度は前原代表ではなく、彼ら自身が選択を迫られると思います。
それを乗り越えられるかどうか、各議員の力量が試されます。
その結果として、力ある新リベラル民主党ができるなら、その方が良いのではないでしょうか。
逆に早合点した前原代表ら保守系議員は行き場を失う可能性が高く、
保守系としてはリベラルを追い出したつもりが、追い出された結果になるかもしれません…
最終的には支持母体の連合次第でしょうねぇ…