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前橋育英が初出場初優勝

夏の全国高校野球甲子園大会は、決勝戦が行われ、
群馬代表の前橋育英が4-3で宮崎代表の延岡学園を下し、
初出場初優勝を果たしました。
2年生エースの高橋投手を中心に、守り勝つ野球で勝ち進み、
決勝戦はさすがに疲れを見せ、調子は悪かったものの、気力で投げ抜いての勝利、
この暑い中、1人でマウンドを守ったことは立派です。

一方、東北勢の悲願は今回も敵わず、準決勝で日大山形・花巻東が敗退、
決勝戦でも九州で唯一優勝がなかった宮崎県は今回も及ばず、
県勢初優勝を果たすことはできませんでした。

決勝戦で難しいと感じたのは、9回のノーアウト1・2塁の場面です。
1点ビハインドですから、当然、送りバントを考えるところですが、
延岡学園は代打の選手を用意していたこともあって、打たせて凡退、
結果としてランナーを進められず、無得点に終わってしまいました。
毎日試合があるプロ野球ならば、選手の自主性を殺してでも送りますが、
明日のない高校野球、しかもレギュラーでない選手となれば、
自ずと勝負に徹することができず、温情が出てきてしまうものです。
そんな高校野球ならではの難しさを感じる場面でしたね。


●今大会のポイント 「暑さ」
今大会で気になった点は幾つかありますが、1つは大会運営上の問題ですね。
今大会では連投を避けるため、準決勝前に休養日が設けられた代わりに、
分割されていた準々決勝が再び1試合にまとめられました。
これを選手の体調管理を考慮してのことと考えるのは…どうなのかなと。
休養日も土日に絶対にかからないように設置されていましたし、
選手の体調考慮というよりも営業面の問題が大きかった気がします。
結果的に、選手の負担はあまり変わっていないのではないでしょうか。

大会全般を通して、記録的な猛暑がもたらした影響は大きかったと思います。
特に大会前半は暑かっただけに、投手のスタミナを容赦なく奪い、
一時は記録的なペースでホームランが飛び出すなど、派手な試合が続きました。
途中までは接戦も、一度点数が入るとビッグイニングになる、
そういう試合が多かったですね。
その後、暑さが一段落するにつれて、投手戦が増えていったのも、
単なる偶然だと片付けるには無理があります。

また、炎天下の試合で脱水症状を起こす選手が例年よりも多く、
特に浦和学院の小島投手、常総学院の飯田投手は、足が攣ってしまい、
降板後にチームが同点・逆転されて負けてしまう憂き目に遭っています。
野手にも故障者が出ましたし、暑さの影響は非常に大きかったと思います。
根性で体温が上がり下がりするわけでもなく、当然、我慢にも限界があります。
昔の暑さとは違うわけですから、炎天下の試合を避ける工夫も必要です。
さすがに涼しいドーム球場で開催しろとは言わないものの、
3試合日を含めて朝8時開始で統一し、12~2時にインターバルを設ける、
そういった工夫も今後は必要になってくるのではないでしょうか?
近年の甲子園大会は商業主義に走ってる傾向が強いだけに、
選手の体調を考慮した運営をしてもらいたいです。
このままでは下手すると死者が出かねません。出てからじゃ遅いんですよ?


●今大会のポイント 「投手の連投禁止と手抜き」●
これだけ暑いと仕方ない面もあるのですが、県大会では桐光・松井投手が、
本大会では浦和学院・小島投手が、済美・安楽投手が、
それぞれ力を発揮できないままに姿を消すこととなってしまいました。
彼らに共通しているのは「手抜き」、
打たせて捕る投球を意識して、制球重視で投げているためか、
体重が前に乗り切らず、所謂「ボールを置きにいっている状態」で、
本来のストレートの力強さが感じられませんでした。

これは広島の今村投手(清峰高)と西武の菊池雄星投手(花巻東)の頃からで、
ペース配分(力配分)と手抜きを勘違いしている風潮が強いです。
「手抜き」というのは、明らかに投球フォームが違ってしまうことです。
足を上げる高さやリリースポイント、腕の振り、
それらが違えば、ボールは本来のものとは全く異なってしまいます。
逆に、ペース配分ができるというのは、同じ投球フォームでいながらも、
リリース時の力の入れ具合のみ調整できることで、
普段は余計な力を入れずに流れるフォームで伸びのある球を投げ、
ここ一番でアクセルを踏んで球威で押せる、それが投手の理想像です。

同じフォーム、いわば理想の形で投げられれば、
3連投4連投したところで故障しません。
その選手自身に合ったフォームだから、負担が少ないわけで、
逆に余計な力を取ることができ、理想のフォームが固まりやすくなります。
逆にフォームを崩した状態で投げ続けてしまえば、肩の負担が大きくなり、
また、前述のような「手抜き」であれば、アクセルを踏んだ瞬間に、
オーバーヒートを起こしかねず、こちらも故障しかねない事態です。

横浜高校と前橋育英戦で、横浜の渡辺監督が心がけていることに、
投手の体重移動に重点を置いているとのことです。
まさにその通りで、一時甲子園で活躍したとしても、
それを継続できないのは、そこが簡単に失われてしまうからです。
なかなか理想のフォームを固めることは難しくはありますが、
まずはキャッチボールの延長戦上でフォームを模索し、
投げ込みを行うことで素地を固め、理に適ったフォームを見つけて欲しいです。

連投を規制する以前に、根本的な投げ込み不足が懸念される状況で、
このままプロ野球に入ったところで、練習についていけずに故障するのがオチ、
少し過保護になっている印象も受けなくもありません。
一方で春の時点で安楽投手に投げすぎの状態になることもあり、
やや歪な感じもしてしまいます。
個々の選手によって連投の可否も違ってきますし、
一概に規制することはできないと思いますね。

まずは、先を見ずに、一戦必勝、その打者を抑えることに集中して欲しいです。
高校生でペース配分とか考える時期じゃない。
ランナーズハイにも達していないチンタラ走りで結果が残るわけがなく、
まずは一度スパートをかけた先に、投手としての次のステップがあるわけです。
そういう意味では、前橋育英・高橋投手は上手くステップ踏めましたね。


●今大会の話題 花巻東の2番打者・千葉選手に関して●
良くも悪くも波紋を呼んだのが、花巻東の小兵の2番打者・千葉選手でしたね。
済美戦では、済美側が外野手を1人減らし、内野手5人シフトで勝負し、
それを嘲笑うかのようなライトオーバー3ベースヒットを放ち、
その後も「カット打法」という粘り強い打撃で繋ぎの2番として機能するも、
詳細は不明も大会本部から注意され、バントとみなすと言われて波紋を呼び、
さらには、2塁走者で訝しげな動作がサイン伝達ではないかと疑われたり、
話題の中心にはいつも花巻東の千葉選手がいました(^^;

「カット打法」に関して言えば、明らかにシロだと思います。
セーフティバントをしに行っての見せ掛けスイングなら分かりますが、
完全にバスターで戻していますから、何ら問題ありません。
あれがダメならバスターエンドランという作戦は使えないことになります。
そもそも、何が問題で禁止されているのか。姑息だからか、遅延行為だからか。
姑息だと言うなら、送りバントやスクイズも正々堂々じゃないと言えますし、
遅延行為だというなら、ピッチャーは四球で歩かせれば済むこと、
禁止された理由がいまひとつ判然としません。
スリーバント失敗との境界線なら分かるものの、
ファールを打つことがダメだというのは、やはり変でしょう。

サイン伝達に関して言えば、日本で禁止された理由を知ってるのでしょうか?
妬みですよ。1990年前後の西武ライオンズが強すぎたから規制したの。
当時の3塁コーチの伊原コーチを軸に、サイン盗みや情報戦を徹底したため、
それを規制しようというリーグ内の動きに繋がったわけです。
でも、過去には三原監督や黄金時代の巨人など、どこもやっていた野球で、
批判される謂れはありませんでしたが、「妬み」でそうなっちゃったわけです。
セリーグでは2塁走者の伝達は明確に禁止されていないようですが、
パリーグでは未だに規制されており、対西武包囲網の名残を感じます。
公に問題とされたのは90年代後半の福岡ドームでの電光掲示板を用いた
サイン伝達疑惑でしたが、機械がするのと人間がするのとではやはり違います。
そんな姑息な手段で用いられたガラパゴスルールを適用してどうすんの?
国際試合では平然と他は行っているのに、正々堂々とか言うの?
ベンチ以外の人間や機械が行えばアウトですが、
グラウンドにいる選手が行う分には、本来、何も問題ないでしょう。
それを問題にしたのは単なる「妬み」だったんです。
そんなくだらないルールが未だに残っていることが恥ですよ。

そんなわけで、全くもって言いがかりを付けられてしまった、
花巻東の千葉選手は気の毒です。
負けた試合ではそれまでの粘り強い打撃が嘘のように淡白になりましたし、
影響は少なからずあったと言わざるを得ません。
延岡学園と富山商の試合でも微妙なタイム問題もありましたし、
周囲のミスが選手の負担になるようなことはやめてもらいたいですね。


●注目の選手の動向は?●
今大会はドラフト候補という点では目立ちませんでしたね…
昨年活躍した桐光学園・松井投手と、大阪桐蔭の森捕手の1位は固いでしょうが、
それ以外となると将来性を評価しての3位以下での指名が主かなと。
目玉になりそうな候補はいませんでしたね。

それでも大会を通じて評価を上げたのが、常総学院・内田選手で、
強肩強打の捕手としてドラフト3位前後の評価は得られたと思います。
センバツに比べても凄く打撃が良くなりました。
逆に、仙台育英の上林選手は評価を落とした感があり、
現時点では打撃がネックになりかねず、2~3位評価に落ちたでしょう。
他には富山第一の宮本投手が素材として評価されるでしょうし、
花巻東の岸里選手は野手で評価されると思われます。

それ以外では1・2年生の活躍が目立った試合でした。
優勝した前橋育英の高橋投手を始め、済美の安楽投手、浦和学院の小島投手、
明徳義塾の岸投手ら、楽しみな選手が多いです。
野手でも横浜高校はレギュラー8人が2年生で、
特に4番高浜選手は右のスラッガーとして注目を集めそうです。


◆ニュースネタ 戦争の悲惨さから戦争の礼賛へ?
湊さんの日記でも書かれているように、『はだしのゲン』の締め出しがニュースとなり、
集団的自衛権の行使の拡大解釈を司法がNOと言えば、行政が「遺憾だ」と言い、
広島・長崎・終戦記念日が来ても、あまり戦争が語られなくなってきた昨今、
非常に危うさを感じております。

いつしか、戦争の悲惨さから人々は顔を背けるようになり、
その表層だけを持て囃し、戦争の礼賛とも取れるような発言・方向性は危ういです。
それを象徴するのが今回のニュースだったわけで…
いかに表層しか見ていないかを痛感する出来事ですよね。

勿論、それは我々にも責任があるわけで、まだ子どもで終戦の意味も分からなかった頃、
戦争を体験した祖父母を始め、周囲の大人が終戦のサイレンとともに黙祷する、
厳かな様は子どもながらに、過去に大変なことがあったのだと思わされました。
それが世代に引き継がれるという意味で、私達が黙祷をしている姿が、
その下の世代、子ども達が戦争を語り継ぐことに寄与するように思えます。

小さなことですが、一人一人の戦争に対する態度が、
私達より下の世代の戦争に対する態度を決めるのではないかと。
そういう気持ちで、この8月の日を常に感じていられるようにしたいものです。

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