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選抜甲子園は浦和学院が初優勝

第85回選抜高校野球の決勝戦が行われ、
春夏合わせて20回の出場を誇り、秋の関東大会3連覇を果たした強豪ながらも、
今大会まで決勝進出がなかった埼玉の浦和学院が、悲願の初優勝を遂げました。
浦和学院の皆様、優勝おめでとうございます。
投打で圧巻の力を見せた素晴らしい優勝でしたね。

準決勝と決勝戦の試合考察は後述するとして、ここでは大会全体を振り返ることにします。
今大会は例年に比べて「大会期間中の怪我人が多かった」印象があります。
代表的なところでは大阪桐蔭のキャッチャー森選手ですが、
他にも県岐阜商の藤田投手も前の試合の死球の影響で降板を余儀なくされたりと、
大なり小なり、勝ち上がったチームは怪我人に悩まされていました。
その中で力を発揮したのが2年生の選手で、
浦和学院・小島投手と済美・安楽投手、聖光学院・石井投手らは2年生エースでしたが、
他にもベスト4入りした高知高校の10番・酒井投手と常葉菊川の10番・渡辺投手は
当初の位置づけこそ控え投手でしたが、結果を残して先発を勝ち取るなど、
大会の中で2年生投手が成長し、チームの躍進に貢献していたのが印象的でした。
浦和学院が優勝できたのは小島投手のフォームが安定して制球力が抜群になったためで、
済美がここまで勝ち残ったのは安楽投手がただの豪腕投手ではなく、
疲れがあってもフォームを崩さず、試合を組み立てられる制球力があったからです。
試合の中で成長した2年生投手の活躍が光る大会でしたね。

また、今大会は「捕手」に好素材が多かったです。
大阪桐蔭の森捕手、花咲徳栄の若月捕手、2年生の春江工・栗原捕手が注目されていましたが、
他にも敦賀気比の喜多捕手、北照の小畑捕手など、中軸を打つ強肩捕手が多くいました。
5~6年前までは高校生の捕手というと、言葉は悪いですが「敬遠気味なポジション」で、
良い捕手がいないために、別のポジションからのコンバートで間に合わせるケースや、
捕手専門で下位打線に置いて打力にはあまり期待しないというケースが多くありました。
それが2年前ぐらいから、主軸を打つような強肩強打の捕手が珍しくなくなってきました
理由は色々とあると思いますが、第一に城島・阿部選手といった強肩強打の捕手が現れ、
今までのどこか暗いイメージの捕手とは違う明るい捕手が出てきたことで、
捕手に対するイメージが良くなったことが挙げられるでしょう。
加えて、プロアマの雪解けによって、講習会等で直接プロの指導が受けられるようになり、
投手のフォームの合理化が進んで制球力が上がり、
変化球も縦のカーブが見直され、チェンジアップを投げる投手も珍しくなくなったことで、
リードの重要性、キャッチング技術の必要性が上がったのだと思われます。
そういった状況から、捕手の重要性が増し、選手のレベルも上がったのだと予想されます。

あと、一時は絶滅危惧種となっていた「ドカベン体型」の選手を結構見かけました。
最近はスリムな選手ばかりだったんですが、今大会は小太りな選手も珍しくなかったです。
西武の中村剛也選手の活躍によってパワーが再評価されていることや、
アマチュア球界でも食の再評価が進んでいることの反映かもしれません。
食べなければ筋力も付かないので、そういう選手が再び増えたことは悪い傾向ではないと思います。

逆に課題として挙げられるのは、「送りバント技術の低下」ですね。
今大会はあまりバントをしないチームもあり、送りバントの作戦そのものが減少傾向にあり、
かつては高校野球の代名詞でもあったスクイズも数えるほどしか見かけませんでした。
それ自体はチームの方針や作戦の問題ですので、バントしないのも自由だと思いますが、
いざ送りバントに行った時の成功率が下がっていることも確かです。
バントの基本ができていないものから、基本姿勢にこだわりすぎて失敗しているものまで様々、
いずれもバント企図率の低下が原因なだけに、その点は問題意識を強く持つ必要があります。
バントの基本に関してはWBCの反省で述べた通りなので、ここでは省略するとして、
あまりにもバントの基本姿勢を早く構えすぎて、体がガチガチに固くなって失敗するケースもあります。
送りバントで大事なのは膝を使って基本姿勢を上下に動かすことにあり、
体が固く動けないような体勢になってしまうと、小手先でバントをしてしまって失敗となります。
バントの基本姿勢は大事ですが、その体勢に固まらないように、ゆとりを持つことが大事です。
肩を揺すってリラックスを心がけたり、バスターの構えも交えたりして、体を動かすことが必要です。

厳重注意にも発展した守備妨害に関しては賛否両論があることでしょう。
大阪桐蔭のホームタックルで守備妨害を取られるのは仕方ありませんが、
敦賀気比の併殺阻止の2塁スライディングを守備妨害を取るのは行き過ぎたと見ています。
詳しくは後述してますので、そちらをご覧いただくとして、
結果はともかくとして、大阪桐蔭のタックルが厳重注意と批判対象にされてしまうのは違うと思います。
あの場面でホームに突っ込まない人間は野球なんてやっていませんよ。
リードしているチームがイケイケでタックルをやったら問題だと思いますが、
負けているチームが9回2アウトで同点という場面では気持ちが先に行くのは無理もないです。
野球をやっている人間全てが「気持ちは分かる」プレーだったわけで、
それを守備妨害を取ってアウトとするのはルールなので分からなくもないのですが、
それが批判対象のプレーとなってしまうのには納得がいきません。
講評でも要らぬことを言っちゃうし、
相変わらず「高野連は野球のことなんか忘れちゃった老人の塊なんだね」と再認識した次第です。
フェアプレーが大好きだって言うなら、あんたらが大好きだったスクイズはセコくないの?
フェアプレーが大好きだって言うなら、敬遠なんてなくせ。敬遠防止に四球もなくせよ。
でも、それじゃ野球じゃないですよね? 野球って何ですか?
何で「盗塁」なんですか? 何でアウトのことを「死」って言うんですか?
綺麗ごともいい加減にしやがれ。そんなもん野球じゃねーんだよ。
接触プレーがないサッカーがサッカーなのか? 野球でクロスプレーがあるのは当たり前のことです。
そんなバカな批判するよりも、
球数制限を設けたり、1塁へのヘッドスライディングを禁止する方が先じゃねーの?

それと、21世紀枠は限界を迎えているように思います。
東北絆枠の山形中央を除けば、勝ったのは21世紀枠対決に勝利した遠軽のみ。
設立当初は宜野座や鵡川高校のように自力で甲子園に戻ってきた学校もあり、
利府のようにベスト4まで勝ち抜いた学校もありましたが、
2010年以降は初戦敗退がほとんどで、好成績を挙げる学校はなくなってしまいました。
正直、レベル的にも一段劣ることは間違いなく、「記念出場」みたいな雰囲気になりつつあります。
確かに伝統校や文部両道で頑張っている学校を応援したくなる気持ちは分かりますが、
だからといって、それが直接、現在の選手の実力だけで決まっているかと言えば違うわけです。
何で伝統だとか校風だとか、今の生徒以外の者で出場枠が決まってしまうのか?
おかしいでしょ、それって? 今の生徒ではなく、学校の歴史で決まっちゃうんですよ?
それこそ老人達の自己満足でしかなくなってきているわけです。
これ以上、実力差が広がってしまえば、21世紀枠は不平等感を際立たせてしまうだけで、
伝統校を保護しすぎる「逆差別」とも取られかねませんから、
そろそろ廃止を含めて検討する時期に来ているように思います。
それを相変わらずわけの分からん美談で隠しやがって。いい加減に目を覚ませよ。


◆高校野球 準決勝・決勝戦の試合考察
【準決勝 第一試合 浦和学院 5-1 敦賀気比】
第1試合は初回に敦賀気比が先制点を挙げ、波に乗るかと思われましたが、
すぐさま浦和学院の4番高田選手の3試合連続となる2ランホームランで逆転し、
その後は2年生エースの小島投手のクロスファイヤーの内角攻めが功を奏し、
5回にも3点を追加した浦和学院が5-1で勝利しました。
敦賀気比もキャッチャーの喜多選手の好送球アウトや、
セカンドの山根選手のダイビングキャッチなどもあって、見所の多い試合でした。

初の決勝進出を決めた浦和学院は2年生エース左腕の小島投手の成長が大きいですね。
初戦を見た時は正直ここまで好投するとは思っていなかったのですが、
試合で投げるごとにフォームバランスが良くなり、コントロールが安定しました。
クロスファイヤーの130キロ後半のストレートは角度があり、
スライダーを軸にカーブ・チェンジアップも持っており、引き出しが多いです。
まだ失投から長打を食らうこともあるものの、勝負所で内角を突ける勇気は見事ですね。
打線も4番の高田選手が3試合連続ホームランとは凄いです。
正直、それほど打つ選手には見えないものの、
チーム全体としてスイングが速く、切れ目のない打線が個々の能力を開花させています。
甲子園常連校ながらも、まだ優勝には届いていないだけに、悲願の初優勝まであと一歩ですね。

負けた敦賀気比は開幕戦から素晴らしい戦いが続きました。
バッテリーを軸に守りがしっかりしており、打線も好調で繋がりがよく、
今大会を最も盛り上げた学校だったといっても過言ではありません。
エースの岸本投手は右スリークォーターから鋭いスライダーを投げ、
内角のストレートの制球がさらに上がれば、夏も期待できるでしょうし、
4番キャッチャーの喜多選手は強肩と好リードが光り、
3番ファーストの山田選手は長打力、2番米満選手は大会前半に大活躍を見せるなど、
軸となる選手が揃っています。
福井には同じくセンバツに出場した春江工もいますが、
今大会の経験を糧として、夏に戻ってこれるように頑張って欲しいですね。

それにしても最終回の守備妨害併殺は水を差しましたね。
あんな過保護だから日本人内野手はメジャーで通用しないとか言われるんですよ。
スパイクの刃が上を向いて明らかに危険な場合ならまだしも、
ベース近くでスライディングしての併殺阻止ぐらいは普通にあるプレーです。
キャッチャーのタックルとはわけが違い、スライディングは常に起こり得るプレーです。
それをいちいち全部、守備妨害を取ってたらどうすんのって感じです。
あれは審判のミスジャッジでしょう。


【準決勝 第二試合 済美 3-2 高知】
予想外のホームラン合戦になった試合は、高知の継投失敗が響き、
最後を踏ん張った済美の安楽投手の粘り勝ちで、済美の勝利となりました。

これまでほぼ完璧に決まっていた高知の継投策ですが、この試合は裏目に出てしまいました。
4回に先発の酒井投手が3四球を与えたことから同点に追いつかれたとはいえ、
その後のピンチでは素晴らしいストレートが行くなど、済美打線に押し勝っていただけに、
スライダーが浮いていたとはいえ、ストレートで十分立て直せるように見えました。
しかし、早めの継投策に出て、2番手の坂本投手が登板直後に、
外角低め一杯のスライダーを主審の立ち位置が悪くてボール判定されてリズムが狂い、
ヒットを繋がれて1点を失ってしまい、
その後もなんとか粘り強く投げていったものの、本来のコントロールには程遠く、
8回にカーブが高めに抜けてしまって勝ち越しホームランを許すなど、苦しい投球でした。
野球にたらればはつきものですが、キャッチャーのミットが全く動かない最高の球が、
ボールではなくストライクで見逃し三振になっていたら、展開は違っていたかもしれません。
ぶっちゃけ、最近の甲子園は以前よりもミスジャッジが多いです。
確か、甲子園大会の主審は大学野球の審判だと記憶しているのですが… うーん…

勝った済美は最終回のノーアウト3塁の大ピンチを安楽投手がよく凌ぎました。
正直言って、今日の安楽投手はこれまであまり見られなかったシュート回転の球が多く、
内容的にもあまり良くなかったのですが、カーブでカウントを稼げたことで、
なんとか完投することができた印象です。
まぁ、ただ、個人的には何度も言っているように、これ以上投げるのは危ないかと…
まだ肘の高さが下がっていないのが幸いですが、
それが下がってくると肘や肩を痛める危険性が高く、大器が潰れかねません。
シュート回転が増えだしたのはその兆候でもあるので、限界かなと見ています。

負けた高知は結果的に継投失敗となってしまったのが誤算でした。
ただ、同時に今日は打線の繋がりもいまひとつで、フライアウトが多く、
もう少しライナー性の打球を心がけて欲しかったです。
済美は鉄壁の守備というほどでもなく、今日はグラウンド状態もよくなかっただけに、
強い打球を転がせばヒットになる可能性は高かったと思います。
得点がホームランによる2点のみだったというのが、敗因だったかもしれません。
それでも攻守にレベルの高さを見せてくれただけに、
成長を見せた酒井投手とエースの坂本投手を軸に、もう一度チームを鍛え直し、
夏の大会でも活躍を見せてくれることを期待したいです。


【決勝戦 浦和学院 17-1 済美】
春夏合わせて20回の出場を誇り、秋の関東大会3連覇を果たす強豪ながらも、
これまで決勝進出がなかった浦和学院が、悲願の初優勝を遂げました。

試合序盤は浦和学院の小島投手の立ち上がりが悪く、
緊張からか疲れからか、フォームの上下バランスが悪く、
全体的にボールが高く、そこが先制点を許す理由となりましたが、
イニングが進むにつれてフォームバランスも良くなり、安定した投球を見せるようになりました。
一方の3連投となった済美・安楽投手ですが、
変に力まず投げたことで、スピードこそいまひとつだったものの、
シュート回転せずに良い回転のストレートをコースに投げることができ、
上手く浦和学院打線の懐を攻めて抑えていたと思います。

ただ、組み立てが単調すぎたというか、右打者には内角ストレート、
左打者には外角ストレートと変化球が主体となっていたため、
5回はリードを読まれて打ち込まれる結果となってしまいました。
一番ショックが大きかったのは4番高田選手のタイムリー2ベースでしょう。
ホームランにこそならなかったものの、完璧にストレートを捉えられたことで心が折れました。
以降は打たれた球を避ける形の弱気な組み立てとなり、
ストレートと変化球を交互に打ち込まれる形となってしまいました。
ここまでよく投げただけに、安楽投手を責めることはできません。
疲れが出てしまったということでしょう。
6回はストレートも垂れてましたし、既に限界を迎えていましたね…

優勝した浦和学院は投打がガッチリ噛み合っての勝利でした。
特に大きかったのは2年生左腕の小島投手の成長で、
当初は先輩の須永投手似の高校生レベルの好投手左腕という評価でしたが、
試合が進むにつれてフォームバランスも良くなっていき、
ゆったりしたフォームからリリースだけ力を入れる杉内投手のようなイメージに変わりました。
今大会は2年生の投手が試合の中で成長することが多かったのですが、
最も成長したのが浦和学院の小島投手だったと思います。
打線も4番高田選手が大会記録の3試合連続ホームランを放つなど、長打力が高く、
上位から下位まで切れ目のない打線に堅い守備は見事でした。
浦和学院は実力があれど勝負弱いイメージが強かったのですが、
今大会は非常に勝負強く、ベンチ入り選手だけでなく、応援の選手のデータ分析力も高く、
部員全員で勝利したという感じがします。
夏に向けてまだまだ成長できると思いますし、同じ埼玉には花咲徳栄もいますから、
春の優勝で満足することなく練習に励み、再び夏に甲子園へ帰ってきて欲しいですね。

一方の負けた済美は2年生エースの安楽投手が頑張りましたが、さすがに体力の限界でした。
それでも想像以上に持った方で、最後まで下半身が乱れず、
投球フォームを崩さなかったことは大きく評価できます。
これまではスピードへのこだわりが強かったと思いますが、
甲子園で制球力の大切さ、ボールのキレの重要性を理解したと思いますし、
今後は甲子園で勝ち抜くためのピッチングを極めて行って欲しいです。
確かに2年生で最速152キロのスピードは大きな魅力なのですが、
今のフォームでさらにスピードを上げていくのは少々難しいように思えるので、
それよりはボールの質・制球力を上げていった方が将来的にも伸びると思われます。
あとは失礼ながら、安楽投手のワンマンチームという評価が抜けきらないだけに、
他の選手が夏に向けてどれだけ成長するかでしょうね。
アクシデントからスタメン出場を勝ち取り、結果を残すことでレギュラーに定着した盛田選手や、
今日の試合で1イニングながらも投げっぷりの良いピッチングで好投した山口投手など、
2年生に伸びそうな選手が多いだけに、彼らが成長してくれば夏は勿論、
来年の春夏と3期連続の優勝を狙えるだけの戦力ができてくると思います。
先を見据えた育成で強いチームを作っていって欲しいですね。


◆高校野球 選抜甲子園ベストナイン
個人的な独断と偏見で選んでみました。

【右投手】安楽智大(済美)
【左投手】小島和哉(浦和学院)
【捕手】 森友哉(大阪桐蔭)
【一塁手】山田誠也(敦賀気比)
【二塁手】贄隼人(浦和学院)
【三塁手】高田涼太(浦和学院)
【遊撃手】遠藤康平(常葉菊川)
【外野手】上林誠知(仙台育英)
     長谷川寛(仙台育英)
     山根佑太(浦和学院)

セカンドのみ決め手に欠いたので、好手で沸かせた贄選手を選びました。
他には捕手と三塁手にタレントが多く、捕手では敦賀気比の喜多選手らがいますし、
三塁手には高知の和田恋選手や大阪桐蔭の笠松選手、敦賀気比の米満選手など、
打撃面で結果を残す選手が数多くいた印象です。

投手では前述の通り、2年生の好投手が多かった印象で、
3年生では済々黌の大竹投手、県岐阜商の藤田投手、北照の大串投手など、
センバツらしく左腕の好投手が多かったです。

プロ野球のドラフトの観点から言えば、大阪桐蔭の森捕手が注目を集めていますが、
この世代は捕手に好素材が多いこともって、相対的に価値は下がるかもしれません。
この世代に昨夏に大活躍したは桐光学園の松井投手もいますし、
新2年生を含めてレベルの高い選手が揃う可能性がありますね。

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