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プロ野球ドラフト会議

プロ野球の新人選手選択会議(ドラフト会議)が行われ、
注目の大阪桐蔭・藤浪投手は5球団競合の末に、阪神が交渉権を獲得し、
亜細亜大・東浜投手は3球団競合の末に、福岡ソフトバンクが交渉権を獲得、
昨年の日ハムの1位指名を拒否して浪人した東海大・菅野投手は、待望の巨人が単独指名、
その日ハムはメジャー挑戦を表明した花巻東・大谷投手を強行指名しました。

藤浪・東浜・菅野投手にとっては、良い結果になったように思います。
地元の大阪で春夏連覇を果たした藤浪投手は甲子園が合うでしょうし、
沖縄出身の東浜投手は沖縄に最も近い九州ですから、良い結果になったと思います。
菅野投手に関しては言うまでもなく、肉親の情の厚さが勝りましたね。
問題は日ハムの強行指名。昨日も書きましたが、最低最悪の愚行です。
命がけっていうなら、死ねよ、ボケナス。これに関しては後述という形で。

各球団のドラフトを見ると、即戦力投手中心の補強が目立った形です。
巨人は菅野投手を軸に、バランスよく指名。
日ハムは上位が素材型で、下位で社会人の即戦力を取っただけに、これが当たるかどうか。
中日とヤクルト、ソフトバンク、楽天は投手を中心に補強を進め、
阪神とロッテ、オリックスも投手を軸としながら、バッテリーを補強。
横浜は高校生のみだった昨年とは正反対に即戦力を中心にバランスよく指名。
広島はくじを外した影響かなのか野手中心の指名に変わってしまいました。
現時点で高い評価が出来そうなのは、
巨人、中日、ソフトバンク、楽天、阪神、横浜、オリックス。
まぁ、でも、こればかりは蓋を開けてみないと何とも言えませんので、分かりませんね。

意外だったのは東海大・伏見捕手が3位最後のオリックスに指名されたことですね。
巨人が菅野投手と一緒にバッテリーを組ませても面白かったですし、
逆に阪神が指名して藤浪投手とのバッテリーで巨人と戦うのも面白そうでした。
そういう意味では、少し残念な結果になった感じがします。
両チームともに捕手が補強ポイントだったのに、あまり評価高くなかったのでしょうか?
それと伊東新監督を迎えたロッテも伏見捕手をスルーして、光星学院・田村選手を指名。
ここまで残っていたことが不思議でしたが、キャッチャーとしての評価は…
捕手獲得を望んでいた伊東新監督は可哀想ですね。事実上の手土産なし。
進まないコーチ人事にしても然り、ロッテ球団のやる気のなさが浮き彫りになりました。
即戦力左腕2枚の補強は悪くはないんですが…


さて、日ハムの大谷投手の強行指名に関しては、長々とした理論武装を追記に書きましたので、
何が問題なのかを詳しく知りたい人はそちらをご覧ください。
ここでは簡潔に答えだけを書きますと、
「プロ志望届け」は願書ではなく、あくまで希望を記しただけの進路調査票の類だということです。
つまり、日本プロ野球に進むつもりがなく、メジャーリーグで野球をするつもりであっても、
プロ志望届けは提出しなければいけません。
プロ志望届けは、過去の強行指名で大学・社会人と軋轢を起こしたため、
進学や社会人野球を望む選手は指名しないための制度で、
主眼にあるのは「プロ志望届けを出していない選手」で、彼らを守るための制度です。
ですから、プロ志望届けを出しているなら、ドラフト指名しても良いわけではなく、
2つはノットイコールで、プロ志望届け提出者の中にドラフト指名許可選手が含まれる構図です。
今回の大谷投手のように日本プロ野球ではなくメジャーリーグを望む選手を想定しておらず、
大きな制度的欠陥を抱えている制度なのです。

一般的な例で具体例を挙げますと、
パソコン業界に就職したい青年が、できれば外国のパソコン企業に就職したいと思い、
就職希望で進路調査票(プロ志望届け)を出したら、
それを見た知らない国内企業から突然内定通知が届いてしまい(ドラフト指名)、
これを最終的に拒否することはできるものの、
来年3月31日までの5ヶ月以上も、その知らない国内企業としか面談を許されず、
さらに外国企業に就職したら国内企業へ転職する際に3年間失業を強いられる、そんな事態です。

もう、どんだけストーカーな企業だよ(苦笑)
一般社会でこんなことが起こったら、常識外れのとんでもない事態で、嫌がらせとしか思えません。

詳しい理論武装は追記に回しますが、仮に大谷投手の側に損害が生じてしまった場合、
ドラフト制度は職業選択の自由に違反し、廃止か是正を求められる可能性があります。
解決方法の一つとしましては、大谷投手に損害を生じさせなければいいわけで、
来年3月31日までの独占交渉期間が長すぎることが問題ですから、
日ハム側が11月30日を交渉期限として、それまでに拒否されたらMLBとの交渉を認めることです。
認めずにズルズルと3月31日まで交渉させないということになれば、ドラフト制度は崩壊します。

根本的なドラフト制度改革としては、プロ志望届けをNPB向け・MLB向けに分けること、
独占交渉期間を翌年3月31日から年内の12月31日と改め、
特段の事情がある場合(12月に国際大会があり、それに参加して契約が遅れた場合等)にのみ、
交渉期間を延長し、翌年3月31日までとすることです。
そうすれば、仮に拒否したとしても、メジャーリーグのキャンプに間に合うように契約ができます。

加えて、解釈の違いがある指名凍結期間にしても、MLBとの契約後3年間に改めるべきです。
問題があるのは「特定球団以外ならメジャー」という場合だけですので、そこは柔軟に解すべきです。
MLBへの人材流出は他に問題点があると言うしかないです。
頭ごなしに無理やりに拘束したって良いことないでしょうに。


◆プロ野球ネタ 埼玉西武ライオンズのドラフト
第一の感想としては、「何なんだ、このドラフトは…」、という感じです。
結果的に投手中心の補強となり、私の補強ポイントと球団の補強ポイントが全く違いましたね。
特に大きな補強ポイントはなかっただけに、自由度が高いというのはあったのですが…
ドラフト最中の文化放送でのレポートでもバランスよく指名と言っていただけに、
投手偏重のドラフトに終わったのは正直誤算ではないでしょうか。
育成枠で内野手を1人追加指名しましたが、これも俊足巧打の選手、
縁起でもありませんが、万が一にも、中村剛也選手がいなくなったら、どうするんでしょうか?
せめて、ドラフト3位でロッテに指名された光星学院・田村選手を指名できていれば…

まぁ、終わったことは仕方ないとして、指名した各選手に話を戻しましょう。
指名した選手はほぼ全て素材型の選手だと思います。
大卒社会人の1位・増田投手、4位・高橋投手も遅咲きで、大学・社会人で花開いただけに、
入団後の伸び白に期待できますが、逆を言えば大舞台での経験が少なく、
即戦力としては不安な面も残ります。
左右のリリーフ候補を補強できたことは評価できますが、
結果はシーズンが始まってみないと分からないですね。
今年の十亀投手と小石投手ぐらいにやれれば合格点出せますが、どうなるでしょうか。
左右の高校生投手も同じですし、金子選手と水口選手も同様、
下手すると、来年は誰も1軍にいない可能性がありますが、
数年後を見れば大化けしている可能性もある、そんな博打当たり的なドラフト指名です。


【ドラフト1位】 増田達至 NTT西日本 右投手
最速152キロ右腕で、社会人時代は抑えとして活躍しましたが、
ドラフトサイトのレビュー等を見ても、評価がバラバラで実態が掴めません。
ストレートは140キロ中盤で、NTT西日本の監督で西武でも活躍した佐々木誠氏によれば、
「ベース付近で伸びるプロらしい球を投げる」との評価ですが、
一方でツーシーム等でボールを動かすタイプとの評価もあり。
変化球もカーブが良いというスカウト評から、スライダーがいいという評価や、
西武のスカウト評価ではカットボールがいいと、こちらもバラバラ。
映像を見ると、オーソドックスな右腕という感じで、ボールに力はありそうですが、
実際にどういうピッチングを見せるのかは入団後の楽しみとしておきたいです。
最初は長田投手に近いのかと思いましたが、
岸投手に近い感じもあり、馬力型だと小野寺投手か、まだ分かりません。

外れ1位とはいえ、単独指名だったら少し不安も感じましたが、
投手指名の上手い広島も外れ1位指名したというのは若干不安が和らぎます(苦笑)
しかし、3年連続で大卒社会人投手を上位指名ですか。完全に味を占めてますね(^^;


【ドラフト2位】 相内誠 千葉国際高校 右投手
関東No1右腕の評価もあった「房総のダルビッシュ」。
182センチ75キロの細身の体格で、最速143キロで多彩な変化球を持つ投手ですが、
体がまだできていないとのことで、素材型のピッチャーという感じです。
高校時代の岸投手に近い感じでしょうか。昔なら大学進学で様子を見たと思うのですが…

多くのサイトでスタミナ不足を指摘されているようなので、
相内投手にとっては新人合同自主トレとキャンプが一つの山でしょうね。
ライオンズは陸上部と揶揄されるぐらいに、投手はとことん走らされますから、
体力のない投手は練習に付いていけません。
これはドラフト5位の佐藤勇投手にも言えることですが、
この秋・冬の間にしっかりとした備えをしておかないと、日の目を見ずに終わることでしょう。
ライオンズは高卒の投手が育たないと言われますが、その主な原因がコレです。
今からでも陸上部に混ざって、とことん走りこみ、来年の春に備えて欲しいです。
そこを乗り越えることができれば、大きな飛躍が待っているのは間違いありません。


【ドラフト3位】 金子侑司 立命館大 遊撃手
関西のスピードスタート呼ばれる俊足の選手。
立命館宇治時代はセンスの高い走攻守の3拍子揃ったタイプという評価だったものの、
大学時代は打撃が伸び悩み、スケールダウン。
今秋は打率は.220で盗塁0、失策は4。精細を欠いたシーズンだったようです。

報道では「ポスト中島」なんて声もありましたが、現時点では到底無理で、
内野の守備代走要員といったところでしょう。
外野は秋山選手や熊代選手、斉藤選手と俊足揃いですが、
内野は鬼崎選手が一番速いぐらいで、これといった俊足な選手がいなかっただけに、
そういう意味では、育成枠の水口選手同様にチャンスはあります。
でも、守備代走要員を3位で獲得というのは寂しいとしか言いようがないです。

ただ、高校時代は打撃の評価も高かったわけで、プロで一から鍛え直せば化ける可能性もあります。
178センチの65キロとまだまだ細身で、身体能力の高さは感じるタイプなので、
野手育成に定評があるライオンズで一から作り直せば、巧打の内野手に育つかもしれません。
ライオンズのドラフト3位は当たりが多いだけに、そうなってくれることを期待したいですね。


【ドラフト4位】 高橋朋己 西濃運輸 左投手
プロフィールを見て、静岡県の加藤学園出身で驚いて、さらに三島市出身で二重に驚きました。
中郷の方の出身らしいですが、地元にいて全く知りませんでした。ごめんなさい。
加藤学園時代は入学時が最速98キロ、卒業時も120キロ後半ぐらいで目立ちませんでしたが、
大学・社会人でグングン成長して、今では最速148キロをマーク。
140キロを越すストレートとスライダーで高い奪三振率を誇るサウスポーのようです。

ライオンズで言えば、松永投手に近いタイプのようですが、
松永投手よりもストレートに速くて力があり、コントロールが少し荒れる感じでしょうか。
映像で見ると、球持ちも悪くないですし、プロで活躍できそうなタイプです。
ライオンズの左リリーフは、ウィリアムス投手を除けば、松永投手ぐらいですし、
他は先発争いをしている武隈投手と小石投手で、宮田投手と中崎投手が伸び悩んでいるだけに、
今年の指名選手の中では最も早く活躍する可能性を秘めている投手だと言えます。
三島市出身の投手というと、横浜に在籍した森中聖雄氏がいますが、
松井秀喜キラーとして名を馳せたように、左殺しの切り札として活躍してもらいたいですね。


【ドラフト5位】 佐藤勇 福島・光南高校 左投手
最速143キロのストレートと鋭いスライダーで勝負する福島のドクターKで、
甲子園常連校となった聖光学院をあと一歩のところまで追い込んだ左腕投手。

こちらもドラフト2位の相原投手と同じく素材型のタイプで、
菊池雄星投手に近いタイプでしょうか。
相原投手と同じく、走り込みをしっかりと行って、
プロの練習に付いていけるように備えてもらいたいです。


【育成枠】 水口大地 香川オーリーブガイナーズ 二塁手
個人的には育成枠の制度には反対なので、6位で指名して欲しかったんですが…
独立リーグに所属し、169センチの小柄な選手ということなので、
育成枠の本旨に従った指名ということで納得しておくことにします。
他球団のように、高校生をアルバイトのように使い捨てることは絶対にして欲しくないですが。

話を戻しまして、水口選手は俊足巧打の左打ちの内野手のようです。
楽天から横浜へ移籍した内村選手のようなタイプですかね。
ドラフト3位の金子選手と同じく、俊足の内野手は少なかっただけに、
活躍のチャンスはあります。
足の速さや守備の安定感を考えれば、育成枠ではありますが、金子選手よりも1軍に近いかも。
順調に行けば、そう遠くないうちに支配下登録を勝ち取れると思われます。
ハングリーさを忘れずに、最後まで諦めない野球を見せてもらいたいですね。


以上、指名した6選手の簡単な寸評を書いてみましたが、やっぱり素材型の感は否めません。
最も即戦力で活躍しそうなのはドラフト4位の高橋投手で、左のリリーフとして期待できます。
あとはドラフト1位の増田投手がどれぐらいの力を持っているのか、楽しみですね。
野手の2人は内野手の補強にはなったものの、レギュラーを脅かす力は持っておらず、
将来性の高い主軸候補の打者が必要不可欠です。
高校生の投手2人は練習に付いていけるかが心配、
ライオンズの高卒投手は2軍に漬ければ漬けるほど腐っていくだけに、
1年目にしっかりと練習に付いていき、2年目にそれなりの結果を残せないと厳しいです。
そういう意味では高卒の投手とはいえ、覚悟を持って臨んでもらいたいです。

結局、キャッチャーの補強もしませんでしたし、
こうなると来年は大阪桐蔭の森捕手で決まりですかね。
兎にも角にも、主軸を打てる大砲候補が欲しい。


以下は、日ハムの花巻東・大谷投手の強行指名の問題に対する考察です。

◆考察 プロ野球のドラフト制度は職業選択の自由に反しないのか?
最初に私の考えを示しておきますと、これまでのドラフト制度は一応合憲、
今回の花巻東・大谷投手の一件に関しては違憲状態です。

これまでのドラフト制度が一応合憲であったのは、
ドラフトにかかる選手は日本のプロ野球志望であることは間違いなく、
各球団間に大きな労働条件の格差がないためでした。
過去には社会人残留を望む選手や、進学志望の選手を強行指名した歴史もありましたが、
いずれも入団の自由、最終判断は本人にあり、拒否する自由もあり、
なおかつ、拒否によって進学が難しくなったり、社会人チーム残留ができなくなるわけでなく、
直接的な被害が生じず、法律論争で必要な具体的な損害が生じていなかったため、
ドラフトでの強行指名自体に違憲性はありませんでした。
また、チームによって試合数が多かったり少なかったり、
オフシーズン返上で海外で野球をやらされたりすることはなく、
概ね均一の条件で、日本にいて野球興行を行うことに変わりはありませんので、
球団の好き嫌いはあったとしても、そこに問題性は見当たりません。
唯一問題があるとすれば、指名凍結期間でしょうね。
例えば、第1指名権の球団、第2指名権の球団と複数あれば、全く問題はなくなることになりますが、
そこまでする必要性が現時点であると思えないので、違憲状態になるほどのことではないでしょう。

しかし、今回の花巻東・大谷投手の一件はこれまでとは大きく異なります。
第一に、大谷投手は日本プロ野球ではなく、アメリカメジャーリーグを目指している点です。
日本のプロ野球チームに所属しても、アメリカで野球ができるわけではなく、
メジャーリーグのチームと直接対戦できるわけでもありません。
日本のプロ野球選手とアメリカのプロ野球選手が同一の職業と言えるかどうか、これが第一の問題です。
第二に、ドラフト指名拒否の場合の弊害です。
具体的な弊害として、メジャーリーグ側が日本との軋轢を避けるため、
日本球団の独占交渉権が終了する来年3月31日まで待つ可能性が高く、
大谷投手は本来ならシーズン前に契約できたはずが、シーズン開始後の4月まで契約できないという、
具体的な不利を伴ってしまいます。
さらに、ドラフト拒否した選手が海外メジャーリーグ挑戦した場合は、
帰国後3年はドラフト指名できないという取り決めに引っかかることとなり、
帰国後にプロ野球選手としてすぐに働けないという不利益を蒙ることになります。
これらの不利益が適切であるかどうか、損害として認められるかどうかが第二の問題です。


★第一の問題 NPBとMLBは同じ職業なのか?★
第一の問題は非常に難しい議論です。具体例を挙げながら考えて見ましょう。
海外でサッカー選手になりたかったが、日本のサッカー選手にさせられた。一応合憲っぽいです。
日本の力士になりたかったが、モンゴル相撲の力士にさせられた。微妙。
ボクシングの選手になりたかったが、フェンシングの選手にさせられた。違憲っぽい。
和菓子職人になりたかったが、洋菓子職人にさせられた。微妙。
アイドルになりたかったが、お笑い芸人にさせられた。本人の同意次第。
グラビアモデルという話だったのに、AV女優にさせられた。ありがち。
つまり、何が言いたいかというと、同じ格闘技の選手でも競技が違えば違う職種に思えますし、
人によっては和菓子職人も洋菓子職人も同じじゃないかと思う人もいるでしょう。
でも、それを目指す人からすれば、それぞれは明らかに違う職種です。
それだけ同じ職業であるかどうかを判定するのは難しく、
それ故に採用の自由と入社の自由が緩く解されており、当事者の契約に任されている面があります。
プロスポーツ選手は芸能人と同じく個人事業主ですから、最終的には本人の意思次第となります。

より深く考えるために、プロサッカー選手の例を考えてみましょう。
私はプロサッカー選手の場合は日本であろうと海外であろうと同一の職種だと考えます。
それは基本的に移籍の自由があるからです。
契約の基本は1年ごと、海外移籍に具体的な障害があるわけではありません。
両者の行き来が自由で、ワールドカップという国際大会があるため代表召集も多い、
あまり国境の壁を感じることはないと言えましょう。

それに対してプロ野球選手はどうか。
NPB(日本プロ野球)からMLB(アメリカ・メジャーリーグ)へ移籍するためには、
自由契約やポスティングシステムという方法がなくはないですが、これは球団の意思次第で、
選手が自らの意思で移籍するためにはFA制度を使うほかなく、最低9年以上の歳月が必要です。
これは最低9年であって、一定年数で自動的に取得できるわけではありませんから、
極端な話、2軍で客寄せパンダだけにしておいて、最後まで飼い殺しすることもできるわけです。
逆に、MLBからNPBに移籍するにしても、日本のドラフト指名を受けていない日本人は、
ドラフトにかからないといけませんし、前述の指名凍結期間があれば影響を受けます。
そういった諸々の事情を考慮すると、移籍の自由は著しく制限されており、
NPBとMLBの間には大きな壁があると言わざるを得ず、同一の職業とするのは難しいです。


★第二の問題 ドラフト指名拒否の弊害★
現在のドラフト制度を一般の会社に例えるなら、
プロ志望届けを出した志願者に対して、内定通知を出すのがドラフトとも言えましょう。
ただ、問題なのはこの「プロ志望届け」の性質です。
名前だけ聞くと、日本プロ野球に対する願書やドラフトにかかる誓約書にも思えますが、
厄介なのはメジャーリーグに行きたい選手も出す必要がある点です。
つまり、日本プロ野球に行くつもりがなくとも、出さなければいけないわけで、
プロ志望届けを出しているなら、無条件に指名できるとするのは乱暴な議論です。
あくまで、プロ志望届けは無用な軋轢を防ぐための意思表示の一環に過ぎず、
ドラフト指名されても文句は言いませんという誓約書の類ではありません。
一般社会で言えば、学校の「進路調査票」程度のもので、
進学か就職かの意思表示をしている程度の効果しか持ちません。

そういった点を考えれば、ドラフト指名を受けること自体が損害になり得ます。
今の時代では考えられませんが、過去にプロ野球が職業野球と馬鹿にされていた時代、
そんな時代にドラフト制度があって、自分の意思とは無関係に指名されてしまったら、
それだけで銭のためにスポーツをする「守銭奴」と周りから後ろ指を差されかねず、
名誉毀損となりうる場合も想定できます。
ですから、ドラフト指名自体は損害を生じさせないということはありえず、
当然ながら選手側の損害も考える必要があるでしょう。

今回の大谷投手の一件で生じる具体的な損害は、
「メジャーリーグ球団との契約の遅れ」「帰国後のドラフト指名凍結選手の取り決め」です。
まず、メジャーリーグ球団との契約の遅れは、
シーズンが始まる前に間に合わないという非常に大きな損害になりえますが、
あくまで紳士協定に過ぎず、契約しようと思えばドラフト後でも可能なので、
その点が難しくなるのですが、
仮に指名した日ハム側が明確に拒否の姿勢を打ち出されながらも、
3月31日までのメジャーリーグ球団との接触を絶ったとすれば、
意図的に契約の遅れを狙った妨害活動と言わざるを得ず、具体的な損害が生じえます。
ドラフト指名した後に、大谷投手と交渉をした上で拒否をされ、11月には撤退となり、
12月以降のメジャーリーグ球団との交渉は認めるという姿勢であれば、
契約遅れの妨害活動とはならず、損害が生じない可能性が高くなります。

もう一方の帰国後のドラフト指名凍結に関して言えば、
これが職業選択の自由を制限する合理的な制限であるかが問題となります。
例えば、高校・大学在学中の選手は指名しない、勉学の邪魔はできないので合理的な制限です。
高卒から社会人の場合は3年、大卒から社会人の場合は2年の制限がありますが、
これも会社の雇用に配慮した制限と考えられますので、合理的だと言えましょう。
難しくなってくるのは、指名拒否で浪人生活をすると、1年間はプロ選手になれない点です。
昨年の菅野投手がこの例です。
ただ、菅野投手はドラフト制度を知っていて、NPB傘下のジャイアンツを志望し、
その上で拒否したわけですから、拒否のリスクを承知済みであり、
1年ぐらいなら制限を認めても良いかもしれないと思えます。
では、大谷投手の場合はどうなるでしょうか?
大谷投手がこの制限を承知済みだったとしても、合理的な制限と言えるでしょうか?
この制限は誰に配慮してるの? 高校? 大学? 社会人? MLB?
違うでしょ、全て内輪の問題、NPBのための制限です。
そんな内輪のための制限にも関わらず、ドラフト指名しないでとお願いしているにも関わらず、
強行指名して帰国後は指名凍結選手ですか、馬鹿げています。

ちょっと怒りのために法律論と明らかに脱線してしまいますが、
強行指名した日本ハム球団と一個人である大谷投手では、リスクがあまりにも不均等です。
日ハムはドラフトの1位指名権を失うだけですが、
大谷投手はMLBとの契約の遅れ、帰国後の指名凍結のリスクの2つを背負わねばなりません。
拒否した大谷投手は指名凍結というリスクを背負うのに、
強行指名した日ハムは全くのお咎めなしというのはおかしな話です。
MLB志望の選手を強行指名して入団に至らなかった場合の罰則を定めるべきでしょう。

以上の点を考えてみますと、具体的な損害が生じる可能性が高いと言えます。


★結論★
長々と語ってきましたが、身近な例に例えれば、こういった事態なわけです。
パソコン業界に就職したい青年は、できれば外国のパソコン企業に就職したいと思い、
就職希望で進路調査票(プロ志望届け)を出したら、
それを見た知らない国内企業から突然内定通知が届いてしまい(ドラフト指名)、
これを最終的に拒否することはできるものの、
来年3月31日までの5ヶ月以上も、その知らない国内企業としか面談が許されず、
さらに外国企業に就職したら国内企業へ転職する際に3年間失業状態を強いられる、そんな事態です。
…どんだけストーカーな企業だよ(苦笑)
一般社会でこんなことが起こったら、常識外れのとんでもない事態です。嫌がらせとしか思えません。

このように、仮に大谷投手が日ハムを相手に職業選択の自由を侵害されたと訴えた場合、
裁判の進め方次第ではありますが、大谷投手側が勝利し、
現状のドラフト制度は違憲状態にあると判定される可能性があります。
もっとも、大谷投手側がそこまでするとは思えませんし、
現実的にはあり得ない話ではありますが、
日ハムの強行指名はそれだけドラフト制度を破壊しかねない暴挙だと言えます。

これを教訓にドラフト改革をするとすれば、
MLB志望者のプロ志望届けの提出はやめさせるべきか、
もし、これが高野連の意向で仕方ないというなら、NPBとMLB向けとに分けるべきです。
もう一つ、日本の球団がMLB志望の選手の独占交渉権を得たならば、
メジャーリーグ球団の交渉は自由にさせるべきです。
そもそも、3月31日までの独占交渉権の期間が長すぎ、現実を見れば12月31日で十分です。
それならば、そこから交渉したとしてもシーズンには間に合うわけで、期間の短縮が必要です。

これではMLBへの人材流出が加速するかもしれませんが、
だからといってその流れを乱暴に止めることなどできず、魅力的なNPBを作るしかないと思います。
一人の人間の人権を尊重する気持ちがあるなら、愚かな制度は改めてもらいたいですね。

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