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1試合9イニング22奪三振

夏の全国高校野球甲子園大会が開幕し、大会2日目にして前人未到の大記録が生まれました。
神奈川代表の桐光学園の2年生エース左腕・松井裕樹投手が10者連続三振を含む、
9回22奪三振の完封勝利を挙げ、甲子園に新しい歴史を刻みました。
今年の神奈川県大会で、優勝候補筆頭だった横浜高校を破り、
その横浜高校のベテラン監督である渡辺監督をして「高校生では打てないスライダー」と言わしめたことから、
甲子園大会開幕前から大阪桐蔭の藤浪投手や愛工大名電の浜田投手と並び、注目の投手ではありましたが、
まさか、いきなりこんな大記録を打ち立てるとは思ってもいませんでした。
これまでの記録が現西武の坂元弥太郎(浦和学院)投手や現巨人の辻内崇伸(大阪桐蔭)投手、
センバツでは現中央大学の島袋(興南)投手らがマークした19奪三振でしたから、
その記録を大幅に更新することとっただけでなく、
18回での記録である坂東英二氏の25奪三振や、15回での23奪三振をマークした江川卓氏ら、
伝説の名投手が延長戦でマークした20奪三振以上の記録を9回で出したことから、
この記録が10年や20年で破られるとは思えず、歴史に残る大記録になるのは間違いありません。
27個のアウトのうち22個ですからね、信じられない数です。

その桐光学園・松井祐樹投手の投球フォームは元西武の工藤公康氏を彷彿させる形で、
投げる前に少し状態を逸らして始動するなど、背筋の強さを生かした形です。
ストレートは140キロ中盤で、イニング中盤には130キロ後半まで落ちましたが、
終盤には再び140キロを越してくるなど、スピードの方もあります。
打者が短く持ってスイングしても打球が前に飛ばず、回転の良さが分かるストレートです。
変化球のスライダーは左投手特有のカーブのような大きな曲がり方をしますが、
カーブよりも速い120キロ台後半のスピードで鋭く曲がるので、
ストレートとの見極めが付かず、狙っていても空振りしてしまう打者にとっては「消える魔球」です。
投球のテンポも速く、ストライクが入ると、ポンポン投げてくるだけに、
相手打者は考える暇がなく、ボール球につい手を出してしまう場面が多かったですね。
三振の多くはスライダーでしたが、イニングを経るにつれてストレートでの三振も多くなり、
それだけ相手打者が見極めに苦労していたことが分かります。

課題はコントロールで、右足の接地からリリースまでが不安定で、
突如としてコントロールを乱すことがあり、自滅してしまう可能性も残っています。
それでも、積極的に勝負はできる投手で、修正能力もあるだけに、
一気に崩れてしまうようなタイプではなさそうですね。
上半身に比べて、下半身の成長はまだまだですから、成長の余地がまだあると言えそうです。

今後はことあるごとに「22奪三振」が取り上げられるでしょうから、
2年生でまだ先があることを考えれば、それは大きなプレッシャーになりかねない数字ですが、
そんな数字に負けない大投手へと成長していってもらいたいですね。
新しい怪物が甲子園に登場したのは間違いありません。

次は初戦大勝した強打の常総学院との対戦ですか。
ただ振り回すだけでなく、逆方向にも狙い通り速い打球を打てる打線なだけに、
そんな強力打線を相手に松井投手がどういったピッチングを見せるのか、注目の対決です。
2回戦屈指の好カードになりそうで、今から両校の戦いが楽しみですね。


◆夏の甲子園大会 大会1日目・2日目
開幕試合となった福井工大福井と常葉橘の試合は、常葉橘が裏の攻撃だったのが響きましたね。
開幕試合という緊張に加えて、始球式の間が大きく空くなど、
先発投手にとって「嫌な間」が大きかっただけに、立ち上がりを心配していましたが、
微妙な当たりが三遊間の真ん中を抜いていったりと不運な当たりもあって3失点。
これが結果的に勝敗を大きく分けてしまいましたね。
表と裏が逆だったら、全く違った試合展開になっていたように思います。
これが開幕試合の難しさでしょうね。緊張するしないとは別に、いつもとはまるで違う雰囲気ですから。
常葉橘はリリーフで好投した2年生左腕の高橋投手を中心に、1・2年生が多いチームですから、
この経験を来年に生かしていってもらいたいです。

福井工大福井の菅原投手は、上から投げ下ろす本格派オーバースロー。
ストレートは140キロ前後で、最速145キロ。
変化球はスライダー・カーブ・ナックルカーブといった縦に落ちる変化球が中心です。
ナックルカーブの曲がりは非常に大きく、高校生では打つのが難しそうです。
ただ、コントロールはアバウトなだけに、ナックルカーブを見送られるとボールになってしまい、
自滅する可能性も秘めています。
まだ荒削りな印象が強く、もう少し下半身が使えるようになれば、
体重が最後まで乗ってくるでしょうし、今後の成長に期待というタイプです。


大会2日目の第1試合の作新学院と佐久長聖は、甲子園経験の差が最後に出てしまった感じです。
試合前半は佐久長聖が押していたんですが、エラーなどが重なって追い上げられ、
作新学院の代打・吉田選手の一発で逆転され、
継投に出るも、立ち上がりに失点してしまい、勝敗が決してしまいました。
4番サードの寺尾選手はフォームに無駄がなく、どんな球でも対応できそうな雰囲気があり、
5番ファーストの板垣選手は豪快なスイングで、
6番レフト2年生の小川選手はバットコントロールが良いなど、
全体的にスイングが鋭く速い強力打線だっただけに、経験があれば良いチームに育ったように思います。
それだけに早々と負けてしまったのが残念でしたね。
センバツベスト4の作新学院の意地が勝ったという感じでしょうか。

目立った選手は佐久長聖の五味投手。
ストレートの球速こそ130キロ後半ですが、
リリースポイントが前にあり、球速表示以上の力を感じました。
変化球は緩いスローカーブにスライダー、SFF。
武器となるSFFはチェンジアップのような落ち方をするブレーキがかった変化球で、
コントロールも安定していて、低めに集められる好投手だと感じました。
ただ、作新学院打線を警戒するあまりに、SFFに頼りがちな組み立てとなってしまい、
ストレートを効果的に使えず、ピッチングが苦しくなってしまいました。
もう少しストレートを多めに混ぜていたらと思いましたね。
今後の成長に期待したい投手です。

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