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静岡県知事選の結果

●静岡県知事選挙 鈴木康友氏が初めての当選 約72万票集め自民推薦候補ら退ける【速報】
当初から浜松市長を4期16年務めた元衆議院議員の鈴木康友氏が有利と見られていて、
大村氏も自民党の全面協力の下で盛り返したものの、鈴木氏が競り勝った形となりました。

今回の選挙における最大の注目点は、市町村別の投票率です。
選挙前の報道でも浜松市周辺の経済界の支援を受ける鈴木康友氏と、
静岡市周辺の経済界の支援を受ける大村氏の対立と騒がれ、
いずれにも属さない県東部の動向が注目されていましたが…
県東部は両者が拮抗しつつも、大村氏がいずれも競り勝つ形となりました。

●今回の静岡県知事選挙の市町村別投票率
投票率を見ると、静岡市は前回よりも増、浜松市は微減に留まった一方、
県東部の富士市・富士宮市・沼津市・三島市・熱海市はいずれも2%近く投票率減、
特に伊豆市・御殿場市・下田市では5%以上下がっています。
下の町村の投票率に関して言えば、賀茂郡・田方郡・駿東郡の3つが県東部に位置しますが、
明らかに残りの2つの郡よりも投票率が下がっていることが分かります。

つまり、報道が地域対立を煽ってしまった結果、その影響がモロに出てしまった形です。
候補者がいなかった県東部の関心が下がってしまったことは間違いありません。
その結果、自民党の組織的選挙による各種団体の取り込みによって、
組織票の分だけ自民党に優位に働いたと言えます。
なお、投票行動は、自主投票となった公明党支持層の半分以上は大村氏に投票し、
無党派層は鈴木氏の方が多く投票していることから、
やはり低投票率下では組織票の多い自民党に優位に働くことが分かり、
国政選挙でも政治に失望して投票を棄権すれば、それだけ自民党に有利になることが分かります。

極端な話、自民党が暴政に暴政を重ねて、あまりに国民が政治に失望してしまうと、
逆にその元凶となった自民党の方が組織票で勝利しかねないという皮肉な結果になるわけです。
国民が政治に関心を持ち続けることが、なによりも大切であることが分かります。


また、連合が推す鈴木康友氏と自民党が推す大村氏の与野党対決という見方もありました。
●静岡県知事選 出口調査の結果
NHKの出口調査の結果を見ると、その傾向は顕著に出ており、
支持層の投票行動は与野党の支持の動きと一体になっています。
先に述べたように、自主投票を決めた公明党支持層も半数以上が大村氏に投票しています。

ただ、一方で、自民党支持層の3割近くが鈴木氏に投票していることが分かります。
浜松市を中心に、自民党市議の一部が実績ある鈴木氏の支援をしていたこともあって、
県西部の自民党支持層の造反は考慮できたものの、想像以上に多くなっています。
とはいえ、出口調査の結果では鈴木氏優位だったわりに、想像以上の接戦となった感があり、
実際に開票速報も、開票速報では大村氏優位⇒県東部集計時も大村氏優位
⇒県西部集計時に鈴木氏逆転⇒中部集計終わる前に当確情報となったことからも、
期日前投票では大村氏の方がリードしていたのではないかと考えられます
(出口調査の結果はあくまで当日の投票行動を取材したものになるので)。

つまり、選挙期間中に自民党支持層の造反が進んでいたと予想できます。
考えられるのは、①リニア問題を1年以内に解決するという公約凍結の影響、
②自民党の消極的な政治資金規正法改正案への批判です。
①に関しては無党派層の投票行動に関する部分で詳述しますが、
大村氏は立候補時から1年以内にリニア問題を解決しますと啖呵を切ったものの、
岐阜県の工事による水枯れ報道を受けて、投票1週間前に公約を凍結してしまいました。
自民党支持層は川勝県政に批判的で、リニア問題も推進派が多いことから、
早期解決を望んでいたことは間違いなく、
この突然の公約変更にはしごを外された感はあったと思われます。
②今、国政で話題になっている政治資金改正法等の改正に関して言えば、
自民党が個人よりも企業・団体を重視している姿勢は変わらないことが問題で、
考える単位が個人ではなく、企業・団体単位なのが問題なんです。
今回の選挙戦でも大村氏の選挙態勢は、自民党議員が仕切ることになり、
旧来通りの組織力を用いた企業・団体狙いの選挙戦を展開しました。
そのことが逆に自民党の自浄能力の無さを露呈してしまい、
逆に失望に繋がった感は否めません。
他にも岸田政権の不人気や選挙期間中の「生まねば女性ではない」発言も然りで、
先の衆議院補欠選挙と同じく、自民党支持層の失望感の広がっているのは間違いありません。


最後に無党派層の投票動向を中心に、両者の勝因と敗因を分析します。
勝った鈴木氏の勝因を挙げれば、
①スズキの鈴木会長のバックアップで、早々に連合の支援を取り付けて候補の一本化に成功したこと、
②候補者の中で唯一まともな経済政策を持っていたこと、
③選挙終盤に川勝路線の継承を打ち出したこと、です。

①は川勝氏の辞任直後から動き出し、浜松市長時代も後見人であり、
浜松の政財界に強い影響力を持つスズキの鈴木会長のバックアップを取りつけ、
早々に連合静岡の支持をまとめ上げたことで、
川勝氏に後継者指名されて前向きだった立憲・渡辺周氏との票割れを防ぎ、
旧民主党勢力で一致して選挙戦に臨む態勢を作ることに成功しました。
一時は自民党も相乗りを検討していたほどで、事前準備の成功が知事選の最大の勝因だと言えます。
②は各候補者がまともな経済対策を打ち出せない中で、
企業誘致とスタートアップ支援を公約に掲げるなど、経済対策を前面に出してきました。
本来は自民党がお得意とする公約ですが
(自民党は公共事業でゼネコンと下請け企業だけが私腹を肥やし、地元は不採算で赤字で苦しむことを指しますが)、
浜松市長時代の実績があるだけに、口先だけでない説得力のある言葉として届きました。
特に県東部は企業誘致を求めていることもあって、若い世代には魅力的に映ったと思われます。
県民の関心調査でも、経済対策がトップに来ており、
まともな経済対策を出せなかった大村氏との差がここに出ていました。
③全国的な批判もあって、選挙戦当初は川勝県政の継承の有無は誰も表明しませんでしたが、
選挙戦を戦う中で、県内では川勝県政は評価されていると空気感を掴んだのか、
選挙戦終盤では川勝路線の継承を打ち出してきました。
そこら辺は政治家ならではの勘の良さがありましたよね。
実際に出口調査の結果を見ると、投票した人の6~7割は川勝県政を評価しており、
全国的な批判とは明らかに流れが違ったことが分かります。
川勝支持層の評価を最終的に掴むことができたことも勝因の一つだと考えられます。

なお、前任知事の川勝氏が評価されていることは、全国的には理解できないかもしれませんが、
リニア問題で孤立無援の中、静岡県民の利益を主張したことは、
県民を守ってくれる存在だと強く印象付けたのは間違いありません。
つまり、静岡県と川勝氏が叩かれれば叩かれるほど、
静岡県民も一緒に叩かれる気持ちになり、
それに負けじと踏ん張った川勝氏が県民の代弁者として評価が上がったということです。
ですから、川勝批判を繰り広げても、逆にお前たちは何もしてくれない癖に、
文句ばかり言ってくるんじゃねぇよと思われてたと言うことです。
芸能人コメンテーターの皆様、ご愁傷様です。好感度、底値ですwww


逆に負けた大村氏の敗因を挙げると、
①政策に魅力がなかった(二転三転のリニア問題・浜松球場問題・災害対策等)こと
②強すぎた自民党色(上川議員「生まずして女性ではない」、宮沢議員の不祥事等)
③イメージ戦略の失敗(配布ポスター、官僚出身の頼りなさ、「大村」という名字)
ということになります。

①は前回選挙と違い、リニア問題を正面から取り組みに行き、
1年以内に結果を出すと息巻いていましたが、岐阜県内の工事における井戸水の水枯れを受け、
事実上の公約凍結となってしまい、一貫性を欠くことになってしまいました。
そもそも、主導権はJR東海側にある話なわけで、
交渉相手であるJR東海が誠意をもって対応してくれなければ、1年以内に解決できるわけがありません。
それでも1年以内に解決するなら、JR東海側の提案を丸呑みしなければならず、
これまでの議論が置き去りになってしまう所でした。
それに岐阜県内の工事のニュースが飛び込み、JR東海の誠意に欠けるとなれば、
1年以内に問題を解決するという前提が崩れることになり、撤回せざるを得なかったのでしょう。
次いで主張した浜松球場の建設問題にしても、見直しを叫ぶだけで具体的提案はありませんでした。
そして目玉政策として災害対策を主張しましたが、
災害対策はお金をかけるものであって、お金を儲けるものではないので、
経済対策を望む県民との意識の乖離が大きすぎました。
元々、静岡県民は災害対策にお金をかけている自負があるだけに、
プラスよりもマイナスの対策に映ったように思えます。

②強すぎた自民党色(上川議員「生まずして女性ではない」、宮沢議員の不祥事等)
大村氏は自民党の独自候補というわけではなく、オール静岡を表明して広く支持を求めましたが、
結局は自民党のみが推薦を出す結果となりましたが、
その自民党に選挙運動がおんぶにだっこになったのは、マイナスだったと言わざるを得ません。
選挙期間中に上川議員の「生まずして女性ではない」という発言が飛び出し、
一部報道で女性差別的と揶揄されましたが、
むしろ「大村知事が生まれなかったので、女性はいなくなった」のが問題なのであり、
投票行動を制限するような脅迫まがいの表現を使ったことが問題だったわけです。
いずれにせよ、上川議員は自民党支持層から切り抜き報道やら擁護する声はあったものの、
そのことに関して何の対応もしなかった大村氏本人には頼りなさしか感じられませんでした。
本来なら、私は女性蔑視的な考え方は持ち合わせていないので、
誤解を生みかねない上川議員の選挙活動は辞退するとして、
断固とした対応を見せていればいいのに、何もせずにその後の集会にも参加を認めたことは、
大村氏に主導権がないことの表れとしか言いようがありませんでした。
自民党支持層で上川議員の株は上がっても、大村氏の株が上がることはなかったということです。
また、自民党が前に出過ぎたことで、国政選挙の与野党対決の前哨戦という意味が生まれてしまい、
岸田内閣の不人気、特に政治資金規正法改革が進まないことの苛立ちが、
旧来の自民党的選挙戦を展開する大村氏のイメージを悪くしたように思えます。

③イメージ戦略の失敗(モンタージュ写真、「大村」という名字の問題)
県会議員・市議会議員選挙のような候補者が多い選挙で影響するのはポスターの出来です。
選挙ポスターに関して言えば、両者に差がない印象でしたが、
新聞広告に入れられた大村氏の写真はぼかしたモンタージュ写真で描かれており、
そのことが3億円事件等の犯人写真を彷彿とさせ、イメージが良いとは言えませんでした。
また、「大村」という名字が愛知県知事と同じというのも…
リニア問題において愛知県知事の大村知事とは対立を起こすことが多く、
特に感情的怒りをぶつけられることが多く、不満を感じていた県民は多かったと思います。
そこに同じ名字の大村氏が来ると…別人とはいえ、少しややこしく感じてしまいます。
あとは先の公約の変遷や自民党の全面バックアップによって、
官僚出身にありがちな頼りなさのイメージを払しょくすることができませんでした。
特にリニア問題ではJR東海との厳しい交渉が待っているだけに、
その頼りなさのイメージは致命的だったと言えます。


最後は、当選した鈴木康友知事の今後の課題としては、
①リニア問題の解決方法
②分断された民意・市町村長との関係改善
③浜松球場の問題
が挙げられます。

①リニア問題は山梨県内の検査ボーリングは認めると言っていますが、
静岡県内の検査ボーリングはどうなってくるのか。
特に検査時にも地下水が流出してしまえば、それだけ大井川に影響を与えかねないので、
どうやって流出した地下水の量を計測し、
戻せなかった分を田代ダムの取水制限で調整するのか、そういった実務面の問題が出てきます。
今まではあくまで「理論」上の問題でしたが、今後は「実践」として問題になってきます。
専門家との協議の上で、工事で失われる地下水の量をどう計測して補てんするのか、
問題発生時の損害賠償の範囲を含めて、現実的で難しい問題に直面することになります。

②結果だけを見れば、県中部と県東部は大村氏の支持の方が多かったと言えるので、
県西部の民意だけで逆転したと言えてしまうかもしれません
(実際は県東部での得票数は僅差だったので、全体として見ればそんなこともないんですが)。
マスコミが分かりやすくするために分断した地域差をどう埋められるかが今後の課題と言えます。
また、県西部以外の市町村長は軒並み大村氏の支持を表明していただけに、
両者ともに気まずい思いを抱きかねない状況になっています。
まぁ、私から見れば、勝ち馬にも乗れない政治センス皆無のバカ集団にしか見えませんが、
一応彼らも市町村長ですから、どういう形で水に流して県政に取り組むかが課題になってきます。
実際、100%鈴木氏が勝つと言ってましたし、何度やってもこの結果は変わらないと思いますけどね…

③浜松球場の問題に関して言えば、②が影響して西部のえこ贔屓と見られないかが問題となります。
浜松球場が老朽化していることから、新球場の建設が叫ばれているわけですが、
一応、浜松球場は年に数試合とはいえ中日ドラゴンズが使用しているプロ野球対応の球場であり、
どの規模の窮状を建設するかが問題になってきます。
また、建設予定地がアカウミガメの産卵地ということもあって、環境への影響が懸念されています。
これらをどう県民に納得させるのかが課題になってきます。
球場の必要性、環境への影響、費用対効果の問題…等々。
特に証明対策でドーム球場にするのなら、とても中日の数試合では割に合わず、
将来的なプロ野球の本拠地に使えるような球場を目指すのか否か、
静岡市のくふうハヤテのような新球団を目指すのかどうか、
そういった建設後の問題も考えていかなければならなくなるでしょう。
今回の選挙戦では、大きな争点となっていなかっただけに、
リニア問題以上の課題になってくる可能性は十分ありえます。


全国的な影響はほとんどないと見ていますが、
静岡県内の自民党議員が勝てると啖呵を切っておきながら、
こんな選挙戦しかできなかったということは、彼らの実力不足を示しており、
相対的に信頼度が低下することは間違いありません。
それ以前の吉川氏と宮沢氏の不倫不祥事も相まって、今後も逆風は続くでしょう。
一方で、低投票率下では組織票を固める自民党の底力も見せることができたのも事実で、
反自民層からすれば、いかに政治的関心を持続し続けるかが課題になってくると思われます。
結局は政策よりも地縁、人と土地の繋がり投票してしまう辺りは、
日本人の悪い所と言わざるを得ません。
早く政策本位の選挙ができるといいですよね…
まぁ、その転換期の兆しぐらいは感じつつありますが。

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