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年金火薬庫の爆発

官僚や識者からすれば、「何を今更」という感じなのでしょうが…
要はそれだけ国民が『年金100年安心プラン』の中身を理解していなかったということ。
その理解のギャップが「老後に2000万円不足する」という衝撃と共に、
誤魔化しきれずに、大爆発しちゃったというだけのお話ですよ…


国民が『年金100年安心プラン』を理解できていなかったのは無理もありません。
小泉構想改革時代に行われた改革の一つで、
物価スライド方式がマクロ経済スライド方式に改められたものの、
その後はデフレ不況が続いたために、実際にマクロ経済スライドは行われず、
日の目を浴びたのは安倍政権によるアベノミクス以降の話ですから…
そりゃ実感が湧かないはず。

マクロ経済スライド方式は、かなりややこしいものの、
簡単に言えば、インフレ局面では物価に合せると年金が大変なことになるので、
実質賃金ベースに年金額の上昇を抑える一方、
デフレ局面では適用せずに、物価に合せて年金給付額を決めるということです。
まぁ、つまり、景気に左右されずに年金給付額を抑えるという話なわけで…

デフレ時は物価スライド方式(従来の方式)と変わらないので、
安い物価に応じた安い年金給付額が行われてきましたが、
安倍政権によるアベノミクスは、日銀が国債を買い漁って市場に資金をばら撒き、
意図的に貨幣価値を下げ、物価を上げようとする政策なわけですから、
物価が上がれば、年金給付額も上がる物価スライド方式は都合が悪い。
そこでマクロ経済スライド方式が適用され、
実質賃金はほとんど上がってないよね=年金も上げる必要ないよね、
ということが長らく行われてきました。

すると、年金世代としては、ニュースや政治ではアベノミクス景気と騒がれ、
実際に食料品を中心に値上げが続き、物価の上昇は感じられるものの、
年金給付額は増えるどころか減る一方で、
大きな不安を抱えることになりました。
政府からすれば、実質賃金も上がってないので年金上がらないのも妥当ですが、
年金世代からすれば、物価が上がってるのに年金減るでは生きていけません。
実際に物価の上昇局面に入って強まった年金制度に対する不信感が、
今回の「2000万円必要になる」で爆発したのも当然の帰結です。

まとめますと、
小泉構造改革当時の100年安心プランを理解してなかった国民が、
安倍政権のアベノミクスによって物価上昇局面に入ったことで、
マクロ経済スライド方式による年金据え置きの悪夢に悩まされ、
細々と貯蓄を取り崩して生活していたところに、
今回の「2000万円必要になる」という報告書によって、
とんでもない悪夢だったと気づかされ、怒りが爆発したということです。
まさに年金火薬庫に火が付いたわけです。


こう見ていくと、安倍政権自体は別に悪いことはしていないのですが、
そもそも第二次安倍政権が始まったのは、
民主党政権時代に「消費税増税・社会保障改革・議員定数の削減」の三党合意に基づく
解散総選挙がきっかけであり、
消費税は8%に上がったものの、相次ぐ使い道変更で骨抜きにされ、
今回の10%の増税も保育料無償化に使われて年金制度の立て直しはスルー。
安倍政権になってから社会保障制度改革は遅々として進まず、
議員定数は削減するどころか増やす始末です。
民主党政権は税方式(消費税増税)を強化することで制度の立て直しを図りましたが、
安倍政権は100年安心プランによる保険料方式で十分と国民を誤魔化し、
消費税の使い道を変更して年金改革を骨抜き&バラマキに利用、
実際には金融庁が「2000万円必要」ではお話になりません。
保険料方式で年金制度が成り立つという嘘がバレちゃったわけですよ。
それも政府が自ら、公然の嘘だったよとネタバレしちゃったわけです。

確かに試算の数字は平均値を取った一例に過ぎませんが、
80歳以上生きても1000万円は必要となるわけで、
家計的にも年金だけでは赤字になるという実感もあることから、
わりと説得力のある数字として国民に広く受け止められたように思います。
年金生活に向けて資産運用をしましょうという金融庁の意図も分かるのですが、
年金制度の破綻することと、個人の生活が破綻することは全くの別問題なわけで、
国民としては制度の破綻よりも自身の生活の破綻の方が実感湧くだけに、
今回の「赤字2000万円」の衝撃は大きかったように思えます。

最後に、政府の言うように、年金制度自体は破綻しませんよ。
だって年金として払える額しか給付しないのが今の年金制度ですから…
入ってくる分が少なくなれば、払う分も少なくなるだけ。
確かに、国レベルで年金制度は破綻せずに100年持つでしょうが、
個人レベルでは年金に頼った家計は容易に破綻するでしょう。
若い世代が払った分の年金を年取ってから回収することは相当難しいと思います。
保険制度だけでは成り立たないから、税方式導入=消費税増税なのに、
その消費税増税を骨抜きにすれば、
保険制度前提の年金制度が上手く行かなくなるのは当然というお話。

そういう意味では、今の若い世代はとても2000万円じゃ済まないでしょうね…
あの計算では年金収入を月20万としてましたが、おそらく半分以下になるから、
赤字15万×12×30=5400万円必要という名の無間地獄orz


◆政治ネタ 令和改元以降の政治状況
期間空いちゃったので、それぞれ簡潔に。
一連の流れを通してみると、やっぱり「誤魔化し」色が強い感じですねぇ…
大体、衆議院では予算員会が開催されてないし。
そして久々に安倍総理が出席した参議院の決算委員会で、
立憲民主・蓮舫議員の「2000万円追及」ですから、
このまま参議院選挙まで誤魔化し続けて引き籠るのかね?

●(元)維新・丸山穂高議員の戦争奪還発言
大家の息子が一緒に下宿することになったものの、
歓迎会の場で大家の息子が「ここは俺の家だ。お前ら全員出てけ!」と叫んだら、
一体全体どうなりますかね? もはや狂人ですわ。
国内のツィッター等で同種の発言をしたら、言論の自由の問題でしょうが、
北方領土友好事業の一環でそういう発言をしたら外交問題になるなのは当然。
維新が首を切ったのは正解だけれども、
飲酒暴行騒動や橋下氏との舌戦等の問題行動を起こしながらも、
予算員会で質問者として使い続けたりと、
そもそも何でこんな人を同行させたの?という道義的責任は感じます。

●トランプ訪日 8月にも良い報告ができる発言
政府としては「密約などなかった」と言いたいのでしょうが、
トランプ大統領自身が8月という時期を区切って結論を出せると言うことは、
アメリカ優位に交渉が進んでいることの裏返しであり、
「密約などなかった」なんて、とても信じられません。
参議院選挙後はアメリカペースで貿易交渉が進んでいくことは明らかで、
こちらも誤魔化しが効かない次元に突入しつつあります。
大相撲観戦も最悪だったし、トランプ大統領自身が望んだならまだしも、
明らかな過剰接待で相撲の伝統をぶち壊すとは恐れ入りました。
いや、まぁ、相撲協会自体が既にぶっ壊れてるので、今更感はありますが、
白鳳を怒る前にトランプ大統領と安倍総理を怒れよと思ったりする。

●安全保障問題 北朝鮮の「飛翔体」発射。イージスアショア騒動。F35A墜落原因
それら全てに見えてくるのが、「アメリカへの忖度」。
北朝鮮が発射したのは明らかに弾道ミサイルだったのに、
「飛翔体」と誤魔化して大事にせず。
大陸間弾道弾でなければアメリカに影響はないのかもしれませんが、
日本と韓国からすれば、問題の深刻度は変わらないと思うんですけど…
イージスアショアの配置場所に関しても、従来言われていた、
日本防衛のためではなくハワイ・グアム防衛のため説が信憑性を増す結果に。
最初から秋田に決まってたから、計算が適当だっただけ、説明会で居眠りしてたのと同じ。
F35Aの墜落原因は死人に口なしで、パイロットの責任にされました。
自分自身も分からない平衡感覚の喪失を、何で客観的に証明できるのか?
大体、その前にアメリカから追加購入を決めちゃってるし、
絶対に機体の責任にできない状況がアリアリ、とても信用できません。
アメリカから武器を買って、アメリカを防衛してあげる。
そりゃロシアが脅威を抱くのも無理はない。まぁ、ロシアも他人のこと言えんが。

●天皇制の議論
立憲民主党が「女性天皇・女系天皇」の容認を打ち出し、
国民民主党が「女性天皇」の容認を打ち出したようです。
国民民主党のスタンスは分かりませんが、女性天皇だけだと一代限りになるので、
あまり意味ないようにも思えるんですが、どうなんかな。
女系容認の場合はイギリス王室と同じ感じのイメージになるんですかね。
こちらの問題は皇位継承権が無限に増え続けることなので、そこが議論の焦点。

で、自民党はこれを受けてどうするのか。
どうも安倍政権はこの問題に関して消極的にしか見えません。
天皇の権威だけを政治利用できればそれでいいぐらいの感覚。
政治に口を出さなければ、誰でもいいんじゃないかという感じでしょうか。
国民の尊敬を集める天皇家は、安倍政権に最も足りないものを持っているだけに、
微妙な力関係を感じずにはいられません。
上皇陛下を見習って「人間天皇」を目指す皇室と、
天皇を権威づけて政治利用し、「上級国民」として振る舞おうとする政治家、
2つの皇室を巡る対立が今後深まっていくように思えます。


◆ニュースネタ 令和以降の社会的事件
園児の列に衝突事故自動車が突っ込んだり、
お年寄りの踏み間違えで自動車が暴走したり、と悲惨な事件が続きました。
マスコミの大口スポンサーが自動車業界なので、槍玉に挙がっていませんが、
オートマ全盛時代にもアクセルを改めなかった自動車業界の責任のような…
急ブレーキは踏んでも、急アクセルなんてほぼ必要ないでしょうに。
ようやく急アクセルを防止する機械が出てきたようですが、
むしろ当然に付けておくべき装置じゃなかったのか? リコール対象だろ。

●川崎殺傷事件の反応
芸能人の松本人志の「人として不良品」の発言は、
無理もないなと思うと同時に、品格を欠く発言でもありました。
優性主義的な発想であるのは間違いなく、
競争の勝利者がそういう発想に至るのは分からなくもないものの、
危険な思想である感じは否めません。
「不良品」であるなら排除しなければいけなくなりますからね。
また、生まれながらにして「不良品」が混ざるという発想も危険、
犯罪は遺伝的傾向よりも環境的傾向の方が強いですからねぇ…
うっかりそういう発言をしてしまったことは理解できるものの、
自分が危ない人間だと露呈する軽率な発言でもあったように思えます。

●元事務次官が引きこもりの息子を殺害
当初は「川崎殺傷事件が引き金」みたいな供述で一部の同情を買いましたが、
実際は事件が起こる前に殺害を決意していたことが報道され、
単なる息子殺しの言い訳に過ぎないことが明らかになりました。
そんな凶行に及ぶ前に、恥を捨てて相談すりゃ良かったじゃん…
今流行りの『上級国民』の意識が自分でどうにかしなければと追い込んだのか、
結局、殺した父親も殺された息子も「優性主義」的傾向が強く、
劣性種は殺しても構わないという発想に堕ちたのがこの事件の全てでしょう。

引きこもり対策は難しいけれど、実際は簡単。
そもそも、引きこもりが今に始まった問題だと思うからおかしくなる。
昔は引きこもることもできずに、精神と体を壊してでも働き続けて入院してただけ。
性格的に社会に馴染めなかった人は当然いましたし、
精神と体を壊して働けなくなった人も当然いました。
言わば、社会が放置してきた問題の帰結が「引きこもり」なんです。

引きこもり本人に社会に適合しろと言うのは簡単ですが、実際は適合できません。
社会の方が歪なわけですから、適合できるわけがありません。
何らかの理由で社会の歪さに気づいた人なのですから、その歪さに敏感なんです。
そう考えると、引きこもり本人を変えることよりも、
社会を変えることの方が根本的解決に繋がります。

要は就学・就職機会を逃し、閉鎖的な労働環境に耐えられないことが問題なので、
社会にワークシェアリングを導入すればいいわけです。
1週間のうち、同じ会社で働けるのを週3日に制限し、
2つ以上の職業に就くことを当たり前にする。
そうすると、就業機会・転職が豊富になり、
転職・兼業者が増えればその会社でしか通じない悪しき常識は通用しなくなる。
ブラックな労働環境は簡単に糾弾されますし、そもそも会社がおかしいことに容易に気付ける。
就業者や転職者を増やすことによって、
代替可能な労働でも情報共有せずに個人任せにする悪習も改められ、
代替可能業務のマニュアル化が進み、仕事の情報共有システムの構築が進むことで、
働きやすさは格段に向上することでしょう。

だけど、社会が変わる気がないから、引きこもりを吹き溜まりに追いやって安寧を得る。
だから日本の会社の生産性は上がらんのですよ。当たり前の話。

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