2018年プロ野球ドラフト会議の総括
一言で言えば、『高校生野手バブル』な年だったと思います。
11球団が高校生を1位指名したのは史上初の出来事でしたし、
外れ1位でも辰巳選手が4球団重複したのも意外でした。
また、吉田投手らが外れ1位単独指名だったのも意外でした。
2位指名以降も高校生野手が積極的に指名された印象で、
西武は伝統的に上位で投手、中位で野手指名の傾向にありましたが、、
3位の時点でめぼしい野手がいないという状況でした。
そうなった理由は幾つかの理由が重なったためだと思われます。
第一に昨年入団した清宮・村上・安田選手らが1軍で一定の結果を残したこと、
第二に巨人の岡本選手が3割30本100打点をマークする主軸に育ったこと、
第三に高校生野手を育てた広島と西武がそれぞれリーグ優勝したこと、が挙げられます。
特に西武は中村剛也・浅村・森友哉選手の大阪桐蔭出身のスラッガーを擁し、
大阪桐蔭の春夏連覇も相まって、評価が高騰した印象を受けます。
もっとも、大阪桐蔭出身だから将来が約束されているわけでもなく、
西武勢以外では日ハム・中田選手、中日・平田選手、阪神解雇の西岡選手ぐらい
岡本選手を一流にするのもそう簡単な道ではありませんでしたから、
各球団が高校生野手という金の卵をどう孵化させるのかは大きな課題です。
日ハムが外れ1位で甲子園準優勝投手の金足農・吉田投手を指名し、
2位で昨年甲子園優勝メンバーの花咲徳栄・野村選手、
4位で横浜高校の万波選手、5位で甲子園優勝投手の大阪桐蔭・根尾投手など、
甲子園を沸かせたスター選手を指名して評価されていますが、
ドライに言えば、毎年ドラフト選手で活躍するのは多くて3人まで、
4人活躍したら奇跡とさえ言えます。
半分以上の選手が1軍の舞台で活躍することなくチームを去るわけですから、
高校生のみに偏った指名をするのも考えものです。
ちょっと今年は「高校生野手」を育てるという意識に過熱した感があります。
即戦力投手が少ない⇒高校生野手にしよう⇒外れたら、同タイプの大学生野手、
と最初の出発点から少しずつズレていったように見えるわけです。
その中で、ドラフト1位で日体大・松本航投手を単独指名した西武は、
比較的冷静に独自路線を貫いたように見えてしまいます。
来年は各球団ともに、もう少しバランスの取れた指名をして欲しいです。
結果的に世代をズラすことで、多くの選手が活躍できるチャンスが生まれるわけですからね。
西武の中村剛也選手と栗山選手の同い年の同期が長年レギュラーで活躍する方が稀なんです。
◆埼玉西武ライオンズのドラフト
1位 松本航 日体大 右投手 先発型
2位 渡辺勇太朗 浦和学 右投手 先発型
3位 山野辺翔 三菱自岡崎 二塁手 俊足巧打型
4位 粟津凱士 東日本国際 右投手 万能型
5位 牧野翔矢 遊学館高 捕手 強肩型
6位 森脇亮介 セガサミー 右投手 中継型
7位 佐藤龍世 富士大 三塁手 巧打型
育成 東野葵 日本経大 左投手
育成 大窪士夢 北海高 右投手
育成 中熊大智 徳山大 捕手
ライオンズファンからすれば、満足度の高いドラフトだったことは間違いないでしょう。
課題の投手陣に、松本航投手と渡辺勇太朗投手という先発候補2人が加わり、
即戦力のリリーバーとして粟津投手と森脇投手の2人が加わりました。
もう一つの課題であった左腕は、育成の東野投手だけだったのが残念ですが、
今年は左の候補が少なかったこともあるので、致し方ない面もあります…
昨年のドラフト1位の斉藤大将投手が一皮剥けてくれないと困りますなぁ…
一方の野手に目を向けてみると、多少不満が残るところです。
源田選手のバックアップという辻監督の期待とは裏腹に、
FA権を持っている浅村選手のセカンドと、
ベテランの中村剛也選手のサードを獲得する形となってしまいました。
ただ、万が一にも浅村選手が出ていったとしても、
セカンドには外崎選手が回るでしょうし、そういう意味ではレギュラーの壁は厚い。
今の内野陣でレギュラーを狙えそうなのは若い強打のサードのみ、
それ以外は1軍で活躍の場を得ることさえ難しいのが現状です。
代走や守備固め、どこでも守れるユーティリティさなど、
自分の武器をアピールし、石に齧りついてでも1軍で生き残る気持ちが重要です。
辻監督もアマ時代は4番サードの主力選手ながらも、
プロでは1番セカンドの職人肌の選手として黄金時代を生き抜いただけに、
どうやって1軍に残るかを各自が考え、実践していって欲しいように思います。
そんなこんなで、チームとしては若い右の強打者が獲得できなかったのは残念ですが、
最初に書いたように、高校生野手の価値が高騰した面があるので、致し方なしか…
総じてみれば、投手を中心に指名する独自路線を貫きつつも、
捕手と内野手という補強ポイントを押さえた指名ができたことは高評価。
何よりも松本航投手と渡辺勇太朗投手のエース候補2枚を取れたのは大きいです。
気分的には、多和田投手と今井投手が増えたようなもの、
一気に2倍ですから格別な嬉しさです!
来年は高校生投手の当たり年ですし、もう1枚加えれば、
将来的に投手王国を作れる可能性が出てくるように思えます。
◆来期以降の先発投手陣
菊池雄星投手のメジャー行きはほぼ確実でしょう。
他の投手にプラスアルファがないので、数字以外の面は全く惜しくない…
実績的にエースは多和田投手になるでしょうが、成長著しい今井投手にも期待。
そこにルーキーの松本航投手が加わる形。、
大学通算30勝300奪三振の実戦型ですから、
1年間ローテを守れれば数字も自然とついてくるタイプと見ています。
高校生の渡辺勇太朗投手は190センチと大柄ながらも、
フォームは大谷投手をお手本に理想的な形をしているだけに、
1年間じっくりと鍛えれば、2年目以降は活躍を期待できると見ています。
左の榎田投手もローテ確定ですから、先発4枠はほぼ内定済み。、
1枠は外国人投手(郭投手? カスティーヨ投手? 新外国人投手?)として、
残る1枠をベテランの十亀投手、
若手の伊藤翔投手と相内投手、左では斉藤大将投手らが争う形でしょうか。
おそらく来年も1位指名は投手でしょうし、
ドラフト2位の渡辺勇太朗投手の成長も期待されるだけに、
若手といえども来年はアピールのラストチャンスになるかもしれません。
(先発)多和田・今井・榎田、松本航、外国人投手
(候補)十亀、伊藤翔、相内、渡辺勇太朗、斉藤大将
◆来期以降のリリーフ投手陣
ドラフトで先発候補を2人補強したこともあって、
伸び悩んでいる高橋光成投手をリリーフに回すべきだと考えます。
良い時は完璧に抑えるんだけど、四球連発で崩れだすと止まらない悪癖、
コントロールを気にし過ぎて投げている感じがあるので、
楽天・松井投手のように、リリーフで全力で行く方が向いているかと。
今年抑えのヒース投手は8回を投げていた時が一番安定していたので、
できれば抑えを増田投手と高橋光成投手が争う形が理想。
奪三振率の高いマーティン投手を7回のセットアッパーに回せれば盤石。
あとは個々がどれだけ成長できるか。
1軍で経験を積んだ平井・野田・小川・松本直晃投手の成長と、
粟津・森脇投手の新戦力の台頭、
故障に泣かされた高橋朋巳投手と大石投手の復活に期待します。
そして中塚投手。
ストレートの速さと威力はピカ一だけに、決め球と制球力があれば…
高橋光成投手と中塚投手が大成すれば、
もう弱投リリーフとは言われないんですけどね、それだけの力があるんですから。
(右中継)平井・マーティン・松本直晃、粟津・森脇、大石
(左中継)野田・小川、高橋朋巳
(8回) ヒース、中塚
(抑え) 増田、高橋光成
戦力的に不足しているのは、ドラフトで補強できなかった左投手。
ヤクルトを戦力外になった成瀬投手と久古投手の現状はどうなんでしょうか?
左の先発と左のリリーバーという補強ポイントだけに、
戦力として見込めそうなら是非とも獲得して欲しいです。
◆来期以降の野手陣
なにはともあれ、FA権を獲得した浅村選手の残留です。
来年優勝・日本一を成し遂げるためには、浅村選手が必要不可欠。
CS敗退の悔しさを晴らすためにも、来シーズンの優勝を約束し、
勝てるチームを構築していって欲しいと思います。
万が一、流出となった場合は、外崎選手が3番セカンド。
能力的には十分こなせそうですが、やはり精神的主柱として浅村選手が必要です。
レギュラー陣はほぼ確定済み。
未確定なのがレフトとサード。
レフトは金子侑司選手が最有力ですが、ベテランの栗山選手も健在。
若手の俊足巧打の鈴木将平選手、長打力のある愛人選手も来季は勝負の年です。
サードは中村剛也選手の負担を減らすためにも、DHをメインにしたい所。
外野に回っている外崎選手がサードに回るのか、
それとも今季プロ初本塁打を放った山田・金子一選手ら若手、
ドラフト指名の山野辺・佐藤選手がアピールするのか、
限られた狭き門にはなりますが、1軍定着を目指して頑張って欲しいです。
1(中)秋山、2(遊)源田、3(二)浅村、4(一)山川、5(捕)森友哉、
6(三)外崎、7(指)中村・栗山・メヒア、8(右)愛人・鈴木将平、9(左)金子侑司