IZUMO
誰かが助けを求めているという不思議な夢を見た主人公「塔馬ヒカル」 彼はその夢の真意を確かめるために出雲学園にある一室に向かう。 そこにある鏡に触れた時、彼は時空の彼方へ… そして気がついたときには学園は魔物の巣窟と化していた… 同じく異世界に来てしまった仲間とともに協力し、 ヒカルは元の世界に帰るために戦うのであった… |
<どんなゲーム?> |
現代異世界ファンタジーRPGです。 タイトルから分かる通り、古事記を中心とした日本神話がモチーフになっています。 ゲーム中にはイザナギ・イザナミ・アマテラス・スサノオといった有名な人物も出てきたりします。 アマテラスは伊勢の方だろというツッコミはこの際禁止という方向でお願いします(笑) ゲームの各登場キャラともに過去に何かしらの重みを抱えており、 その過去に直面しながらも仲間と協力し合いながら悩みを乗り越え、本当の強さを身につけてゆく… …そんな姿を中心に描いたゲームです。 RPGということで固有の単体イベントも多くあり、 メイン部分がシリアスに展開しながらも笑いの部分があったりと見事な構成をしています。 メインの登場キャラ5人以外にも色々な精霊や魅力的な男性キャラがいたりと、 登場キャラクターが生き生きしてるように思えるのもこのゲームの良い点でしょう。 それでは順を追って細かに評価していきます。 ゲームシステム面はRPGということでマップ移動をしながらストーリーが進行して行くことになります。 特色としては3つ、五行相性によるコンボと勾玉の存在、霊力の概念です。 各キャラクター全て五行(火・土・金・水・木)属性が決まっており、 この理論を適用することで属性によるダメージ補正や技のコンボが行われます。 ダメージ補正は反対に位置する五行(火→金、土→水、金→水、水→火、木→土)に対して補正がかかり、 攻撃力や防御力に+10になります。 逆の場合は−10となってくるので、戦闘では相性が重要になってきます。 技のコンボは一体の敵に対して属性の順番で攻撃すると発生します。 例えば水から開始して、木・火・土・金・水と攻撃すれ6コンボとなり相手に大ダメージを与えることが可能です。 ただし、途中に敵の攻撃が入ったり、属性の違うキャラの攻撃が入るとコンボは途切れてしまいます。 キャラの素早さとは別に攻撃順番も定められるので、コンボを決めにいくか速攻で倒すかの駆け引きも重要になります。 対ボス戦ではコンボが重要な役割を担ってくるでしょう。 そして戦闘で勝利すると勾玉が手に入ります。 全部で15種類あり、これを手持ちのアイテムに装備することによって様々な効果を得たり、 呪法を使うことができるようになります。 例えば「火玉」を武器に装着すれば火属性に攻撃補正がかかり、 防具に装着すれば防御補正がかかり、装身具に装着すれば火属性魔法防御となったりします。 また装着すると呪法が使え、ファイア・エクスプロージョンといった呪法を使うことができます。 ただし、呪法レベルというものが存在しているので、いきなり強力な魔法が使えるわけではありません。 それには勾玉を装備して経験値を上げ、それぞれの呪法自体のレベルを上げなければならないのです。 ですから、常に呪法レベルを意識して装備を工夫して戦うことが必要になってきます。 それと「火玉」のような玉は呪法を使うと壊れてなくなってしまうので、常に新しい勾玉が必要になります。 けれども「火魂」「苦魂」のような魂の場合は何度使っても壊れることはありません。 ですが、ゲーム中で1個しか手に入らず、それもボス戦でしか貰えないので、かなり貴重な品です。 あとはRPGという所のMPである「霊力」という概念があります。 霊力は技(各キャラに定まっている技。ヒカルなら弧閃など)を使うときや、呪法を使う時などに消費されます。 消費された霊力は戦闘のターンごと回復していくのですが、 強力な技や呪法を使えば当然霊力の消費も激しくなり、その後の戦闘行動に影響を与えます。 よって霊力に気を配りつつ、技や呪法を使っていかなければならないので、 戦闘行動の多様性が広がってきて戦略性が増していきます。 「霊力」はレベルが上がることに上昇し、技・呪法の消費ポイントも上がりますが強力にもなっていきます。 また勾玉で補正をかけることも可能で、工夫次第で戦闘形態が多様化してゆくでしょう。 以上のような戦闘システムによって、戦術性が増していき、ゲーム性も向上しています。 グラフィックにおいても戦闘で3Dが採用されており、 精霊の呪法を使った時には迫力ある戦闘風景が展開されるなど演出面にも優れたものがあるので、 RPGでありがちなレベル上げに苦心するあまり、中だるみになってしまうということが極力防がれています。 戦闘システム面は今までのStudio e・go作品を統合したベストなシステムになっていたと思いますね。 CGに関しては文句ない出来です。 今回は立ちグラフィックも強化されており、目パチや喜怒哀楽の表情が豊かです。 また画面に締めるキャラの大きさもイベントCGと変わらないため、全編イベントCGのような感じがします。 髪の毛の細部まで丁寧に描かれていたり、 18禁ゲームではおざなりに扱われやすい男性キャラも魅力的なものに仕上げているので、 山本和枝ファンでなくとも満足な出来といえるでしょう。 従来までのStudio e・go作品との違いに着目すれば、HシーンのCGが少し変わりました。 細かいことを言うのは何ですので略(^^; 汁が、えーとその(爆) 音楽はいつも通り無難な出来です。 カッコイイ曲や静かな曲、お茶らけた曲など色々な曲があって楽しませてくれます。 私の記憶に残っているのは、タイトル画面曲でもあるアマテラスの「月下の祈り」でしょうか。 静かな和風の曲でIZUMOの世界へといざなってくれます。 主題歌はPromisedLandで出来は普通でしょうか。 オープニングはショートバージョン、エンディングがフルバージョンになっています。 音声面としては男女全キャラフルボイス仕様で、各キャラの音声のオン・オフ設定も可能になっています。 主人公の音声も入っているのですが、個人的には好感の持てる声だったので満足でした。 女性キャラメインはどの方もうまく演じていて、素晴らしい出来だったと思います。。 音声面は問題ないでしょう。 シナリオにはねこねこソフトのゲームや月姫でお馴染みのN−scripterの作者、 プログラマーの高橋直樹氏が担当しています。 ノベル系のアドベンチャーゲームとは違い、RPGでは細かいイベントが多くあったり、 一つ一つのイベントをあまり長くしすぎることができずに限定されてしまうのですが、 それらを上手く作品としてまとめ上げて、見事にZUMOの世界観を生み出していたと思います。 シナリオの内容としては、各キャラの過去に背負った辛い過去を描きながら進んで行き、 その過去をどう捉えて乗り越えていくかが中心になっています。 異世界で救世主と呼ばれる主人公ですが、そのような気概を感じさせないシナリオで 良くも悪くも現代的で自分で選んで行動した果てが描かれていて、 ファンタジーに迎合することなく首尾一貫した現代的思考スタンスを貫いてくれています。 テーマの背景となっている世界観に関しては、好みが分かれる所かもしれません。 日本神道を根底に置いているため、根の国・葦原の国といった生死輪廻の考えが中心となっており、 霊といった概念が頻繁に使われ、感動的場面でも霊を中心とした心のふれあいを扱うことが多くあります。 ですから心霊現象の類が苦手な人には楽しめる内容ではないかもしれません。 けれど霊的概念自体はオーソドックスな形になっており、矛盾点が少ないため、 抵抗感さえなければすっと入っていける世界観だと思います。 シナリオ全体を見渡すと、人間関係を中心に描いてあるという感じがします。 辛い過去もあれば、幸せな思い出もある…そんな心の触れ合いがテーマになっていました。 面白い話あり、シリアスで辛い話もあり、人間の暗黒な面が現れることもあり、 そして温かい心の触れ合いありと、非常に情緒豊かで人間の生きる様が現れたシナリオであったと思います。 文章が短いながらもその一節一節に大切な言葉や思いが込められていて、非常に味わい深い内容になっていました。 シナリオ重視のゲームが増えている昨今、悲しい涙を誘うようなゲームが増えていますが、 このIZUMOに関して言えば、心が満たされるような温かい涙を与えてくれます。 私自身、久しぶりに満足のいくシナリオというものに出会った気がしますね。 ゲームシステム面ではメッセージスキップ・読み返し機能など一通り揃っています。 それとゲームが3Dなのでスペックが辛い人のためにエフエェクトオフや2D処理にするなど救済措置もとられてます。 またクリア後のメニューなどはCG鑑賞・Hシーン回想モード・音楽モードなどがあります。 個人的にはRPGということもあったので、シナリオ面に没頭するためにも、 回想モードをHシーンだけではなく、通常イベント回想も入れるなどして欲しかった気がします。 それと贅沢かもしれませんが、音声読み返し機能も欲しかったです。 他社メーカーのゲームでは既にある機能なので善処してもらいたい所であります。 今回はRPGということで繰り返しプレイがどうなのか気になっていましたが、 どうやら1回のプレイで消化し切れるような作りになっているようです。 終盤まで一本道になっていて、最後の方で攻略対象キャラが決まるような作りになっています。 作品の幅という点で考えると残念ですが、 簡単気軽に遊べるという点を見れば良い判断であったと思います。 総括としては非常に面白いゲームですね。 シナリオ・ゲームシステム・音楽・CGともに高度な水準でバランスが取れています。 ゲームの設定に日本神道を中心とした霊的概念が根底にあるだけに、 ある程度は人を選ぶことは否めませんが、深い内容で素晴らしい出来です。 ただ繰り返しプレイを放棄していたり、ストーリーが一本道で分岐点がほとんどないため、 ゲームとしてやや物足りなさを感じてしまうということもあります。 本編のボリュームがあるために、プレイ時間自体は20時間近くと長時間なのですが、 『IZUMO』という作品・世界観が好きな私にとってはもう少し遊びの部分が欲しかったと思ってしまいました。 けれど作品自体を公正に評価すれば、非常に素晴らしい出来です。 必要スペックや推奨スペックが非常に高くて、PCの環境によっては動作が重かったりするかもしれませんが、 そういう点に目を瞑っても十分楽しめる作品です。 きっとプレイし終わった時には心に温かいものが残されることでしょう… IZUMOは2001年の私的ベストゲームに入るほどの出来です。 是非ともプレイしてほしい作品ですね。 |
<動作環境> |
CPU | Pentium2−233Mhz以上必須、Pentium3−500Mhz以上推奨 |
OS | Windows98/Me対応 |
メモリ | 64MB以上必須、128MB以上推奨 |
画面 | 800×600ドット、ハイカラー表示可能なもの。 DirectDraw(DirectX8)に対応したビデオカード必須。 |
サウンド | DirectSound(DirectX8)に対応したサウンドカード必須 |
<ゲーム評価> |
CG | 10点 | 細部まで丁寧に描かれているで賞 |
シナリオ | 10点 | 深くて味のあるシナリオで賞 |
音楽・音声 | 10点 | 無難な出来で賞 |
システム | 9点 | ゲームシステムが良いで賞 |
総合 | 9点 | RPGとして面白いで賞 |
合計 | 48点 | かなりオススメ!! |
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