赤線街路 Diary過去ログ |
執筆日時 | 2008年02月20日 |
◆ゲームの話 『赤線街路』 C−sideの『赤線街路〜昭和33年の初雪〜』をプレイしました。 いやー、なかなかに面白いですね。 今のアンニュイな気分の自分にピッタリの作品です。 こういう作品こそが年齢制限のあるゲームに相応しいように思えます。 舞台はタイトルを見ても分かるとおり、昭和33年の冬。 戦後からこの昭和33年の売春防止法が施行させれるまでの間、 合法的な売春街だったのが「赤線街」。 敗戦後の経済混乱期を生きるために、娼婦となって赤線街に行くこととなった母を探しながら、 そこに生きる人々と、主人公の精神的成長を描いたのが、この作品です。 雰囲気的には落ち着いた感じで、ちょっとセンチな叙情的なストーリーです。 恋愛要素や萌え要素は少ないものの、展開的に無理がなく、 「赤線街」という舞台や、そこで生きる人々の生活、 社会的偏見とその実態といったテーマからぶれることがなかったことは、高く評価できます。 売春街ということで、遊郭モノのような華やかさと悲哀の対比をイメージするかもしれませんが、 そういった感じではなく、むしろ所謂「社会の影」の部分で生きる人も、 普通に喜怒哀楽を感じているのだという、ごく当たり前の姿が描かれているだけです。 そんな「普通」の姿こそが、私達の社会的偏見の愚かさを感じさせ、 この赤線街路という作品を綺麗に彩っているように思いました。 作品の中身を評価しますと、シナリオは上記のように叙情的でよく描けているものの、 多少、主人公が幼いことが鼻に付く部分がありました(特にシナリオ序盤)。 よく分からないのが主人公の年齢設定。 18歳ぐらいなのでしょうが、それよりも幼いと感じさせたり、 逆に大人びているように思わせたりと、多少のバラつきがあったように思います。 千尋とのイベントCGを見ていると、 どう見ても中○1年生です、本当にありがとうございました、とか思えるし… まぁ、そのCGだけ妙に幼かったと捉えれば問題ないわけですが、 それでも主人公の青臭さが鼻に付く部分がいくつか見られますので、 そこを笑って流せるかがシナリオを楽しむ1つのポイントだと思います。 CGや音楽は美麗。ただ主題歌はあまり好きじゃないかな。 こちらもシナリオと同じく、煌びやかさよりもしっとりとした感じ。 やや各キャラクターの肌が白すぎるんじゃないかと思いますが、 ゲームの雰囲気には合ってますし、これはこれで良い味を出していたと思います。 各キャラクター(男女問わず)魅力的ですが、 その中でもヒロインの一人、来生千尋(声:一色ヒカル)は凄く魅力的なキャラでした。 第一印象等はそんなに良くないものの、 (というか、このゲームの大概のキャラは第一印象良くない) シナリオが進むにつれて、千尋の色々な面が見られるようになり、 一番多く人間らしさを感じたキャラクターでした。 私達が思い浮かべるような「娼婦」の姿に最も近いと思わせながらも、 最も「娼婦」らしくないと思わせるそんなキャラクター。 姉的存在であり、母的存在でもあり、時には妹的存在でもあり、そして恋人でもあるキャラ、 大人な女性と少女の心を同時に併せ持つ彼女の姿は、 赤線街に生きる人々の「普通さ」を強く感じさせてくれます。 一色さんの声もあいまって、非常にいいキャラに仕上がっていたと思います。 総評としては、是非とも美少女ゲーマーの人にはプレイしてもらいたい作品です。 恥ずかしながら「赤線街」というものが実際に存在したことを私は知りませんでした。 そしてそこでの生きる人々の姿も想像したことはありませんでした。 「赤線街」に生きる人々の姿から多くのものを感じ取ってもらいたいです。 もし、この『赤線街路』という作品をジャンル分けするとすれば、 「社会的ゲーム」だと言えます。 美少女ゲームはここまでわりと特殊な発展をしてきたと思いますが、 それでも中心にあったのは「恋愛」であり、「性」でした。 所謂、学園恋愛モノだけでなく、 ファンタジー・伝奇要素や社会的要素を取り上げた作品も数多くありますが、 それらは「恋愛」や「性」を描くための背景的要素であり、 その構築された世界そのもの、その社会そのものが主役ではなかったように思います。 そんな中で、そういった社会そのもの(街の風景・人々)の姿を主として描いた作品が、 ねこねこソフトの『Scarlett』であり、 このC−sideの『赤線街路』であるように思います。 美少女ゲームの新しい可能性を感じさせてくれる作品でしたね。 |
<評価点> | ||||||||||||||||||||||||
※属性※ 「同居モノ、歴史、娼婦、哀愁、センチメンタリズム、ジャーナリズム、大衆」 ※一言コメント※ 「昭和33年という時代と、赤線街という舞台を、”味わう”作品」 |