■張 孟卓
名は邈。
曹操・袁紹らの友人。
困窮しているものには惜しみなく私財を投じる男伊達で、大勢の人が彼を頼ったという。
曹操も彼を非常に信任しており、陶謙の失策で徐州に遠征に赴く際、
もしもの時は張邈を頼るようにと家族に伝えていた。
そんな張邈がなぜその直後に曹操を裏切ることになったのか…
そこには呂布や袁紹も絡んだ、少々複雑な勢力図と人間関係がある。
まず袁紹。
こちらは、反董卓連合の折に張邈に諫言を受けており、
それ以来、実力も人望もある彼のことを疎ましく思うようになったらしい。
そして呂布。
こちらは董卓殺害後に李カクらに破れて長安を追われ、袁紹の元に身を寄せていたが、
戦功と武勇を驕り、当然のように袁紹に疎まれ反目。
袁紹から離れる際に、張邈と合い、親密になった。
一方の曹操は、このころはまだ勢力と呼べる存在にやや足りない。
中原は袁紹と袁術の争いの最中。その流れの中で、袁紹派に属している状態だった。
しかしながら、本心ではとっくに袁紹を見限っており(袁紹の項参照)、
袁紹が「張邈を始末したい」という意図を見せても、頑として受け付けなかった。
それなのに当の張邈は、曹操が、結局は袁紹と共に自分を滅ぼそうとするのではないかと
内心不安でたまらなかったという。
これは、曹操が曖昧な状態を維持しすぎたことにも関係するだろう。
小さな組織のための選択肢が、旧友を精神的に追い込んでいたという結果となる。
そこに絡んできたのが弟の張超と、同じく曹操の行動に疑念を抱いた陳宮。
理由と経過は違えど、曹操への不安・不満が共鳴した形と言えるだろう。
結論だけは簡単なのだが、経緯は非常に複雑なのである。
後にその反乱に呂布が加わったのも納得がいく。
自主的に離反した弟の張超と違い、巻き込まれる形ではあったのだが、ここが運命の分かれ道。
次第に劣勢に陥り、袁術を頼る途上で部下によって殺された。
端的に言えば、中原の群雄割拠に巻き込まれた形。もう少し世渡りが出来たと思うのだが…
ゲームでは優柔不断で疑り深い性格ばかりが強調されている。やや哀れ。