<どんなゲーム?> | ||||||||||||||||||||
西又葵氏が原画を描いていることで有名な「BasiL」の3作目が「それは舞い散る桜のように」です。 ヒロインの心理描写を中心に描いた「BLESS」、サスペンス的な謎解きストーリーの「21」、 そしてテーマ性を強くもった作品が「それは舞い散る桜のように」です。 このゲームはオーソドックスな選択肢分岐型のアドベンチャーゲームです。 序盤はテンポの良い会話でキャラクターの性格等をプレイヤーに伝えやすくし、 中盤はヒロインとの恋愛ストーリーを中心に語って行き、 終盤はシナリオテーマへと変わっていきます。 ですから序盤は明るく、中盤はセンチメンタルに、終盤はシリアスに話が進行していきます。 このゲームの特徴として、ギャグが知的(ボストン茶会事件・会議は踊るされど進まず等)であり、 難しい語彙や哲学・文学の言いまわしなども上手く会話に用いていることが挙げられます。 人によってそれらの知識に通じてなければ分かりにくいかもしれませんが、 全般的に見て非常に面白くテンポの良い会話が繰り広げられています。 またメインヒロイン以外の登場人物も多く、ヒロインとの恋愛部分である中盤以降も登場してきます。 人によってはこれを煩わしく感じるかもしれませんが、 サブキャラがメイン所の感情を代弁しており、テンポ良く話を進めていきます。 1回目のプレイ時間は10〜13時間はありましたが、時間を感じさせないテンポの良さが特徴的ですね。 |
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<簡単なあらすじ> | ||||||||||||||||||||
北国に住んでいた主人公『桜井舞人』、彼は進学のため、少年期を過ごした懐かしい街「桜坂市」に引っ越してきた。 新しい友人ができ、旧知の知り合いに再会して1年が経った頃… 何気ない生活の中で、何かが変わり始めていた…そんな桜咲く頃に始まる物語… |
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<キャラクター性> | ||||||||||||||||||||
メインヒロインは、 気さくな学園内のプリンセス、『星崎希望』 主人公を追いかけてきた相方、『雪村小町』 冷たいツッコミが武器な恋愛否定組、『八重樫つばさ』 見た目は○学生でも先輩な文筆家志望、『里見こだま』 「お兄ちゃん」と呼ぶ隣に住むホームヘルパー、『森青葉』 この5人ですが、他にも多くのサブキャラが登場します。 二枚目な親友、『相楽山彦』 主人公を敵視する正義かぶれの後輩、『牧島麦兵衛』 こだまの友人で姉御肌な先輩、『結城ひかり』 主人公と旧知の仲で青葉の親友、『芹沢かぐら』 対称に位置する2人の教師、『浅間弥太郎』『谷河浩暉』 主人公の母親の友達で保護者的な存在、『佐伯和観』 和観の息子で大人びた少年、『佐伯和人』 その他の幼子達(笑)、『水無月瑛』『川原瑞音』『恵美椿』『郁原郁奈』 メインヒロイン以外にも魅力的なキャラクター達が多く、思わず幼子達に妖しい感情を抱いてしまうほどです(笑) どのキャラもボケ・ツッコミも上手なので、会話が非常に楽しいものになります。 複数のキャラクターが絡むイベントが多いですし、掛け合いがとても面白いです。 キャラ造型もしっかりしていますし、どのキャラにもちゃんとした役回りがあります。 時にはメインヒロイン以上の活躍を見せたりするなど、うまく話を盛り上げていますね。 「個性的なキャラクター達の活躍」はこのゲームの魅力の一つと言えます。 |
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<CG> | ||||||||||||||||||||
CGは西又葵氏が全て原画をしています。 西又氏の絵が好きな人は十分満足いくものですね。 今回は西又氏には珍しくショートカットの女の子や幼子が多く登場するので、 今までとは違った西又葵ワールドを楽しめると思います。 ただ西又氏のファンでない人は、動きが足りない絵・顔と体のアンバランスなどが気になるかもしれません。 ですが、全体としては上手く描けている方だと思います。 あと背景に色々なポスターやキャラグッズみたいなのが置いてあり、見ていて楽しめます。 BasiL作品に出ていたキャラが背景にいることもあるので、探してみるのも面白いですよ。 |
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<シナリオ> | ||||||||||||||||||||
シナリオを評価するには3つの部分に分ける必要があります。 1つ目は序盤からOPムービーまでのギャグ部分、 2つ目はヒロインとの恋愛部分、 そして3つ目は終盤におけるシナリオのテーマ部分です。 おそらく1回目のプレイだけではこれらを全て把握するのは難しいと思われます。 ストーリーの謎を考えることで、ようやく見えてくることなので、その点では難解なシナリオだったかもしれません。 ただそのギミックさえ分かってしまえば、シナリオの読み説きはスラスラと進みますし、 噛めば噛むほど味が出てくる素晴らしいシナリオであったと感じています。。 まずは1つ目のギャグ部分について。 最初に話しましたが、知的ギャグや難しい語彙が多くて分かりづらく思う人がいるかもしれませんが、 私自身はテンポある会話でとても面白いと感じました。 もしギャグが分からなかったのであれば、辞書と世界史・日本史の教科書を片手にし、2回目に楽しんでください(^^; 私は何回読んでも面白かったです<当然分からない言葉もあり、調べました このギャグ部分の面白さがこのゲームでは随分と際立っていたように感じますね。 主人公の面白さはさすがなのですが、ヒロインやサブキャラも全然負けていません。 常にボケとツッコミを繰り返してくれるので、キャラがより一層魅力的に映っていたように思います。 この描写力には恐れ入った、完全敗北という感じでしたね。 2つ目はヒロインとの恋愛部分。 恋心を抱き始めてから、揺れる心を描き、晴れて恋人になるまでを描いています。 この場面でもテンポの良いギャグ部分は残っていますが、 それ以上に序盤では見せなかったヒロインの可愛らしさが存分に発揮されていました。 この部分におけるサブキャラの活躍も素晴らしく、心打たれる場面もありました。 キャラ萌えの方も楽しめる内容だったと思いますし、 好きになり始めたことを自覚するまでの過程、それからの迷い、決意を込めた告白、 そしてラブラブな恋人の関係と順序だててキッチリ描いていたと思いますね。 恋愛部分の見せ方も上手だったように感じます。 3つ目のテーマ部分は残念なことに、どれだけの人が理解できたのか疑問に思います。 かく言う私自身もゲームを全て終えて内容を考え直すまでは気付かなかった部分です。 ネタバレになるので多くは語れませんが、中盤以降のサブキャラ(特に和人を始めとするチビッコ)の心理描写、 中盤以降に出てくる桜の丘の上で会う登場人物らがシナリオの核心・テーマを担っています。 終盤はストーリー全てが語られるわけではありませんが、 これらの中盤の会話を思い起こすことで理解できるようになっています。 プレイヤーによっては終盤の展開がやや早く思えたり、展開に疑問を持つこともあるかもしれませんが、 それには十分な理由があり、それを考えていくとシナリオの核心・テーマが分かっていくようになっています。 少し隠されている部分ですが、「それは舞い散る桜のように」というゲームタイトルや OPムービー曲の「days」の内容を考えてみても、このゲームの中心部分はこれであると思われます。 そのシナリオテーマはずばり「自己と他者の関係」、それを代表する「恋愛」でしょう。 それを「舞い散る桜」、つまり桜の樹に例えることでシナリオが進行していくのです。 サブキャラの会話、主人公のモノローグなど考えていくと色々なことが分かってきます。 身近なテーマで在り来たりのものですが、それだからこそ難しいテーマでもあります。 それをこれだけ綺麗に描いたシナリオは少ないでしょう。 誰しも必要とするものなので、是非とも感じ取ってもらいたいテーマです。 けれど前述の通り、この3つ目のシナリオテーマ部分は分かりにくかったようです。 実際いくつかのレビューを読ませていただきましたが、ほとんど3つ目の点には触れられていません。 製作者の説明不足によるものか、プレイヤーの読解力不足かは分かりませんが、 このテーマ部分が理解されていないのは寂しい限りです。 プレイ後にこれを見ている人も、これからプレイする人も、一つ注目してプレイして欲しい点ですね。 シナリオ全体としては「ギャグ」「萌え・ラブ」「シリアス」「シナリオテーマ」と上手く配合されていました。 序盤の展開だけで早急に判断せず、このゲームの色々な面を味わって欲しいです。 シナリオの欠点として挙げられるのは、今説明した「プレイヤーの読解力を要求する難解さ」、 それともう一つ「各キャラのEDがほとんど変わらない点」でしょうか。 初回プレイと2回目のプレイは楽しめると思いますが、 終盤の展開が基本的に同じなので、それ以降はメッセージスキップが多くなってしまうでしょう。 繰り返しプレイが難しかった点は問題であったと思います。 もう少しヒロインごとに特色を出した方が良かったかもしれません。 |
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<音楽・音声> | ||||||||||||||||||||
音楽は全部で22曲、歌付きのものが3曲あります。 OPはゲーム中盤の6月辺りにあるため、見る時期は遅くなってしまうかもしれません。 でもそれには理由があるようで、ゲーム内容を理解してからOPムービーや歌詞を眺めると、 「ああこういう意味だったのか」と新しい発見があります。 ゲーム中でもOPが流れる場所は1つのターニングポイントですし、良い演出だったと思います。 BGMの方はどれも良い出来でした。 最近はどのメーカーも音楽に力を入れているようで、これという差異はなくなってきてるようです。 明るい音楽がほとんどですが、中盤以降の場面に適しているセンチメンタルな曲やシリアスな曲もあります。 ゲームの雰囲気に良く合っていましたし、うまくストーリーを盛り上げていたと思いますね。 中には音楽の切り替えによって、ゲームの雰囲気を変えるなど効果的な使い方もされていました。 私自身が印象に残ってる曲は3曲ほどでしょうか。 どれも素晴らしくゲーム中の場面が合間って、印象深いものがあります。 特に小町シナリオの終盤にかかるあの曲は忘れられません。 ぜひともプレイして確認して欲しいですね。 歌の方はOP曲・挿入歌は素晴らしい出来でした。 歌詞にも音楽にも思いが込められているようで胸に響くものだったと思います。 ED曲はあまり印象に残っていませんが、EDとしては合っていたように感じます。 音楽全体としてはかなり高得点をあげたい内容ですね。 音楽に関連して音声面も触れておこうと思います。 メインキャラ・サブキャラともに有名な声優さんが出ていて、その名に恥じない名演技をされていました。 テンポの良い会話といい難しい場面が多かったと思いますが、 どの声優さんも上手に演じており、ストーリーを盛りたてていたように思います。 この声優さん達が声をあてているからこそ、キャラクターが際立ち、物語を面白くしていたのではないでしょうか。 声優さんの名演技も「それは舞い散る桜のように」における重要なポイントでしょうね。 星崎希望(CV:佐々留美子) 雪村小町(CV:九条信乃) 八重樫つばさ(CV:櫛引絵里) 里見こだま(CV:高山沙希) 森青葉(CV:楠木真理) 相楽山彦(CV:青川輝) 注:偽名ばかりに見えますが、詮索しないでおきましょう。 「小町=ぽんこつ、こだま=リアル麻雀、青葉=酒豪SGガールズ、山彦=W」ということはありません。 声が似てても別人というお約束。各人の心の中に秘めておきましょう(^^; |
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<基本システム> | ||||||||||||||||||||
ゲームシステムはほぼ完璧に近いでしょう。 メッセージスキップ、メッセージ自動送り機能(どちらも速度設定可能)、 履歴機能は音声読み返し可能で文章量も一気に見ることができます。 クィックセーブが3つ、セーブ数も16あり、さらに拡張セーブとしてPCに保存が可能になってます。 おそらくシステム面で苦労することはほとんどないと思われます。 現在のゲームで用意されている中で最高水準のものが取り揃っていると言っても過言ではないでしょう。 クリア後はCG鑑賞・音楽鑑賞・シーン回想(Hシーン・ED)が追加されます。 他のオマケ要素はありませんが、最低限のものは備わっているので十分でしょう。 ただ一部PC環境によってはOPムービーが再生されないなどの不具合があるようです。 DirectSoundを使用しているので、サウンドカードやPC環境をご確認ください。 |
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<ゲーム性・演出面その他> | ||||||||||||||||||||
特になし | ||||||||||||||||||||
<まとめ> | ||||||||||||||||||||
以上が「それは舞い散る桜のように」の評価です。 CG・シナリオ・音楽・音声・システムともにレベルが高く、かなりバランスの取れた作品です。 繰り返しプレイがし辛いので、ゲーム性は高くありませんが、素晴らしい作品に入るレベルだと思います。 このゲームは色々な側面があり、どのプレイヤーもそれなりに楽しめると思います。 「キャラ萌え」重視な人も、「物語」重視な人も、「絵」目当ての人も、「音楽」目当ての人も。 …ですが、終盤の展開からして「シナリオテーマ性」が非常に高くなっています。 その「シナリオテーマ」が分からなかった場合は、やはり「それなりに」しか楽しめず、EDに不満を持つでしょう。 それだけに一番楽しめるのは「シナリオ中心主義」「シナリオ読解・想像が好き」な人かもしれません。 ただ一度気が付けば「ああ、そうなのか」と納得いくシナリオですし、 2回目以降は「シナリオテーマ」を考えながらプレイして欲しいですね。 是非ともプレイする際は「それは舞い散る桜のように」というタイトルを頭に置き、 毎回起動後に「days」を聞いてからゲームをプレイしてください。 きっとプレイする度に新しい発見があることでしょう。 自分と他者との関係をどう生きるか、それを散りゆく桜に例えたのがこのゲーム。 多くの人が「それは舞い散る桜のように」をプレイして、このテーマを感じ取ってくれることを期待したいです。 私のオススメゲームの1つですね。 |
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<評価点> | ||||||||||||||||||||
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<動作環境等ゲーム詳細> | ||||||||||||||||||||
「BLESS」(レビュー・攻略有) 「21」(レビュー・攻略有) |