燐月 ゲームレビュー


 <どんなゲーム?>

『兄嫁』シリーズなど調教ゲームを主に手がけてきたSelenが製作した純愛ゲームがこの「燐月」です。
設定が多少ぶっ飛んでいて、過去の呪いによって男児が儲けられなくなったという一族に生まれた主人公が、
特殊な能力を持つ一族の子孫であるヒロイン達と子作りに励む、というものだったりします(^^;
所謂、「孕ませゲー」です。
ただ燐月の場合は、レイプや調教といった鬼畜な展開はしませんし、
当初から姉妹全員と子作り可能なハーレム状態というわけではなく、
各ヒロインと心を通わせてからHするという純愛ゲームのそれと同じストーリー展開です。
もちろん、Selenらしくハーレムエンドもありますが、どれも無理矢理ではなく、鬼畜要素はありません。
ゲームのストーリー設定等は極めて「エロゲー」らしいエロ設定なのですが、
ゲームの内容そのものは純愛一直線という感じです。

このゲームの特徴としては、やはり「孕ませ」という点にあると思います。
Hシーンとしてもそうですが、シナリオとしても、やはりそれが大きな特徴として挙げられるでしょう。
美少女ゲーム、とりわけ純愛ゲームの終着点は「SEX」です。
ですから、ヒロインと結びついて数回Hして終わりというのがほとんど。
人妻ゲームなどもありますが、大体は結婚前・出産後のどちらかに限定されます。
けれどこの燐月はヒロインと結ばれるまで、SEXして受胎するまでが話の中心ではありますが、
受胎から妊娠3ヶ月・妊娠9ヶ月・臨月・出産後とそれぞれ短いながらもエピソードが入っています。
駆け足気味で文量としては5分ほどですが、内容は出産という一大イベントをコンパクトにまとめており、
これまでのゲームとは違った印象を与えてくれます。
またHシーンではハーレムルートでボテ腹Hがあります。
そういうのがお好きな人はどうぞ。
各ヒロインルートではそういうシーンはありませんので、お嫌いな方は各ヒロインシナリオのみどうぞ。

SEXが娯楽化している昨今、美少女ゲームのSEXも純愛ゲームとして心を通わせたとしても、
それは結婚・妊娠・出産を想定していない娯楽のSEXです。
そうではないSEX本来の意味、
子孫を残すということ、出産が男女における重大な出来事であることを再認識する意味でも、
燐月はプレイする価値があると思います。
他のゲームにはない真剣さ・覚悟…というと大袈裟ではありますが、そういったものが燐月にはあります。

私は燐月をプレイするまでSelenの調教イメージが強いせいか、
失礼ながらシナリオはあってないようなものだと考えていました。
でも実際にプレイしてみると、これまでのゲームとは違うシナリオの展開に新鮮味を感じました。
お気楽にHを楽しめる萌えゲーが増える昨今、たまにはこういったゲームをプレイしてみるのも良いのでは?
シナリオ重視の純愛ゲーム好きの人にも是非プレイしてもらいたい作品です。
…って、ここで締めちゃダメだろ(苦笑)
あー、一応詳しくレビューをば(^^;

 <簡単なあらすじ>

主人公「燐堂直人」は燐堂家の次期当主候補。
しかし燐堂家は、はるか昔に退治した物の怪の呪いを受けてしまい、男児が儲けられないことに。
そこで一族が絶えないよう強い霊力を持つ「緋月家」の力を借りて、その呪いを封じることにした。
その後、燐堂家は三代ごとに緋月家の娘の力を借り、緋月の祭りまでに男児を儲けることとなった。

時が流れて現代、主人公「燐堂直人」はその呪いの当たる三代目当主候補、
主人公には許婚の「緋月鈴音」がいたが、交通事故で死んでしまうことに…
緋月の祭りまであと僅か、呪いを破るために緋月の血を引く四姉妹、
「結衣子」「詩乃」「鮎美」「美津菜」のうち誰かを孕ませなければならないことに。
主人公の決断はいかに?


 <キャラクター性>

メインヒロインは、
 四姉妹の三女で穏やかで家庭的な主人公の同級生、『緋月鮎美』
 四姉妹の四女で無口で表情に乏しく、本(辞書)を愛読する、『緋月美津菜』
 四姉妹の次女で怒りっぽく主人公に反抗的なものの、惚れると甘えん坊な女教師、『緋月詩乃』
 四姉妹の長女で正和と結婚済みも諸事情により最初に主人公と子作りに励む人妻、『緋月結衣子』
サブキャラは男性ばかりですので、省略と(^^;

ヒロインは大体紹介した通りをイメージしてくれれば。
長女の結衣子が「訳ありの人妻」、次女の詩乃が「ツンデレ(最初ツンツン、惚れるとデレデレ)」、
三女の鮎美が「正統派ヒロイン」、四女の美津菜が「無口系」です。

一番出番が多いのは三女の鮎美。
主人公が緋月家に引越しすることになって、最初にHすることになるのが鮎美なのですが、
結衣子以外は子作りに納得したわけではないので、
口説いてキスからHへと少しずつ段階を踏んでいくことになります。
鮎美が徐々に主人公を受け入れていく様子を始め、
結ばれてから後の嫉妬・自信喪失など、色々な表情を見せてくれます。
各ヒロインシナリオでも、シナリオの半分ないし1/3以上は鮎美とのやり取りになるので、
鮎美を気に入るかどうかがポイントだと思います。

 <CG>

原画は創美研究所の『ぱちもそ』『姫裸』を手がけたカワギシケイタロウ氏です。
ただ過去の絵と比べると綺麗さが全然違うので、CGはSelenのサイトでお確かめください。
私はこのレビューを書くために調べるまで気付きませんでした(^^;
絵は綺麗系で、万人受けするものだと思います。
イベントCGでの絵の崩れなども見かけませんでしたし、安心して遊べると思います。

CG枚数は表情変化なしで90枚ほど。
Hシーンの数はハーレムルートを抜いて各ヒロインで5以上。
ただCGの使い回しもあります。それでも十分な分量があるでしょう。

CGに関してはほぼ文句なしですが、
ただ一点、残念なのが死んだ主人公の許婚・鈴音のCGがないことでしょうか。
主人公が回想するシーンがあるのですが、その立ち絵は鮎美のCGに影を付けただけのもの。
実際の姿を見ることはできません。一応、重要人物なんですが…
唯一その姿を見られるのが、燐月ミニファンディスクの初回特典のマウスパッド… この点だけは残念。

 <シナリオ (ややネタバレあり)>

シナリオは最初に書いたように、鬼畜気味なストーリー設定ながらも、中身は純愛ゲームといった感じです。
冒頭は長女・結衣子とのSEXシーンで始まるのですが、その後はしばらく本番お預け、
子作りに同意できない残り三姉妹との仲を深めていくことになります。
まず最初に三女・鮎美と仲が進展していき、とりあえず子作りは別として付き合ってみるということになり、
キスから始まって鮎美の愛撫といったように、本番なしのHシーンがしばらく続いていきます。
鮎美との本番なしのHシーンを4回見た後に、実家から強制子作り指令が出てしまい、
酔っ払った勢いで鮎美をレイプしてしまうことに (※鬼畜な展開はここのみ)
けれど鮎美はそれを許してくれ、鮎美とのHシーンが続きます。
そこから結衣子・詩乃・美津菜にも手を出すかどうかでシナリオ分岐していきます。

純愛とはいえ、最初に鮎美に手を出してしまうわけで、完全な純愛モノとは言えないでしょうが…
ヒロインが決定すると、鮎美には手を出さなくなりますし、
しっかりと鮎美との清算もするので、シナリオの矛盾は感じませんでした。
鮎美への罪悪感はありますが、各ヒロインシナリオはすんなり受け入れられると思います。

攻略ヒロインが決定すると、色々な問題をクリアしながら愛情を深めていくことになり、
最後のSEXで受胎・妊娠することになります。
その後、妊娠確認のエピソード、妊娠3ヶ月のエピソード、
妊娠9ヶ月後のお腹が目立つ頃のエピソード、そして臨月・出産のエピソード、エピローグと展開していきます。
最後のSEX後の展開は駆け足で、5〜10分ほどで終わってしまいますが、内容は深いと思います。
妊娠3ヶ月後のエピソードでは味覚の変化・つわり・情緒不安定など妊婦さんの悩みが散りばめられています。
また妊娠9ヶ月後のエピソードでは胎教・父親教室といったものがあり、
出産という一大イベントがコンパクトにまとめられています。
短いながらも、新しい生命を生むということの大切さ・大変さが伝わってくるシナリオでした。
この点が燐月の最大の特徴であると言えるでしょう。
ただ中に出して孕ませればそれでいいというシナリオではありません。
本当の意味で相手を受け入れ、そして愛を育んでいこうという姿が描かれていたように思います。

ただハーレムシナリオに関しては全くの別物です(^^;
各ヒロインルートにあった主人公の葛藤が一切なく、
もうやりたくなったら穴に突っ込むような助平野郎です(苦笑)
まぁ、レイプでなく、和姦なわけですけど…「俺の体が恋しいだろう」みたいに脅しをかける辺りは鬼畜(^^;
ツッコミどころ満載のシナリオですし、これは実用性重視・孕ませスキーのためのシナリオと考えるべきでしょう。
内容はなし。音楽が象徴するように、ほぼBADエンドです。


Hシーンは描写がしっかりしており、普通に読む分にも邪魔になりません。
特に鮎美の初SEXまでの描写がしっかりしており、
少しずつ心と股を(下品だなぁ…)開いていく様は見事かと。
ただ「アンアン」言っているようなものでなく、読み物としても楽しめました。
勿論、実用性も高いので、使えると思います。


お気に入りのシナリオは、やはりメインの鮎美。次いで結衣子、詩乃、美津菜、ハーレムの順です。
鮎美は諸事情からやや癖のあるシナリオですが、
私はこういったシナリオが好きなので非常に良かったです。
あまり詳しく書いてしまうと、面白みがなくなってしまうのでアレですが(^^;
感動の涙とまでは行きませんが、涙線が緩むシナリオでした。良いシナリオだったのは間違いありません。

結衣子は人妻ということで、なぜ主人公に体を差し出すことをしたのかが焦点となります。
結衣子の夫・正和が主人公の兄貴分的存在ということで、その3人の関係が描かれていました。
自分は正和の気持ちは理解できませんでしたが、そういう考え方もあるのかと思い知らされた気がします。
近年は結婚後の問題も数多いですし、そういったものを感覚として理解するにも良いシナリオだったと思います。

 <音楽・音声>

音楽は全部で14曲、そのうち歌が1曲。
主題歌・BGMともにT’veが手がけています。
歌は相変わらずいい素晴らしく、主題歌の「eclipse」がカッコいいです。
お気に入りの一曲ですね。ゲーム全体の雰囲気にも合っていて良かったと思います。

その他の音楽は普通でしょうか。
ほのぼのとした音楽と暗い音楽の組み合わせ。
ゲームの雰囲気を損なうことはありませんが、特に印象にも残りませんでした。
まぁ、Hシーンが売りのゲームでは音楽が目立っても邪魔ですから、これはこれで良かったと思います。


音声に関しては上々だと思います。
鮎美の北都南さんの声が最高〜
清純派ヒロインがHシーンで恥じらいを交えながらも感じている様は最高です(^^;
全体的にも良かったと思います。

声優陣は以下の通り。Selen作品に出ている方が主です。
 緋月鮎美(CV:北都南)
 緋月美津菜(CV:くろさわまゆ)
 緋月詩乃(CV;みすみ)
 緋月結衣子(CV:北条明日香)

注:偽名に関してはよく分かりません。くろさわまゆ=岩田由貴? 詳細不明。

 <基本システム>

ゲームシステムは一通り揃っています。
メッセージスキップ、メッセージ自動送り機能(速度設定可能)、
履歴機能は音声読み返し可能も備えています。
クィックセーブが1つ、セーブ数は外部フォルダ保存のみでいくつでも。
プレイするのに支障はないと思います。

問題はオマケ要素ですよねぇ…
最近はCG鑑賞・Hシーン鑑賞・音楽鑑賞が必須となっているのにも関わらず…
あるのはシーン鑑賞のみです。
Hシーンのみでなく、全てのイベントが再生可能で、
ゲームプレイ中にも見ることができ、どのシナリオを見たかチェックが入る点は良いのですが、
CG鑑賞と音楽鑑賞がないのはもう致命的というしかありません。
そこは後日発売された燐月ミニファンディスクでカバーされたようですが…
それだけのために2980円も出すなんてバカらしいですしね。
こればかりは苦笑するしかありません。

 <ゲーム性・演出面その他>

燐月そのものではありませんが、その後発売された燐月ミニファンディスクについてもカバーしとこうと思います。
燐月ミニファンディスクの内容は、
「音楽鑑賞付きCGビュアー」「燐月音楽CD」「燐月壁紙集」の3つが主です。
これだけかと言われてもこれだけしかありません(^^;
壁紙以外は本来、燐月の製品に付属しているべきものですから、
これで2980円は高すぎると言うしかありません。
まぁ、初回特典の鈴音マウスパッドが付いていれば、なんとか許せるといった程度でしょうか。
発売から時期が経ってますので、中古店などで安く初回版が売っていればどうぞ。

 <まとめ>

まとめとしては、燐月はただのHゲームではないということです。
燐月は真剣にSEXをするシナリオゲームです。
娯楽としてのSEXではない、生命を育むというSEX本来の意味を感じ取ってもらいたいです。
勿論、Hシーン自体を楽しむ娯楽作品としての楽しみ方もありますけどね。
シナリオ重視の方も、実用性重視の方も楽しめるゲーム、それが燐月だと言えるでしょう。

メーカーサイトなどにある体験版では、序盤の展開(鮎美とSEXする前まで)が楽しめます。
本番シーンは冒頭以外ありませんが、燐月の雰囲気自体は楽しめると思います。
プレイしてみて鮎美が気に入れば全く問題なしです。是非プレイしてみてください。

 <評価点>
CG シナリオ 音楽 システム 萌え 演出 声優 コスト H度 総合点数
9点 8点 8点 5点 8点 7点 8点 8点 83点

 <動作環境等ゲーム詳細>
タイトル 燐月/燐月ミニファンディスク
メーカー Selen
発売日 04年8月6日/05年1月28日
メディア DVD−ROM/CD−ROM(2枚)
音声有無 主人公以外フルボイス
対応OS Win98・2000・Me・XP
CPU(必須/推奨) Pen2 266MHz以上/Pen2 400MHz推奨
メモリ(必須/推奨) 64MB以上/128MB以上(Win2000・XP)
解像度(必須/推奨) 800*600 フルカラー
その他備考 燐月ミニファンディスク初回版は鈴音マウスパッド付。



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