<どんなゲーム?> | ||||||||||||||||||||
『終ノ空』『二重影』と異色作を出してきたケロQがお届けするのがこの「モエかん」。 パッケージを見て分かるように、メイドさんウハウハの「萌えゲー」 …と単純なものでなく、世界の果ての孤島萌えっ娘島で繰り広げられる人間ドラマを描いた作品です。 ゲーム形式はオーソドックスな選択肢分岐型のアドベンチャー。 前半の選択肢によってキャラルートを決定し、各ヒロインのシナリオへと分岐していきます。 基本的に純愛路線ですが、クリア後のオマケや一部陵辱シナリオが隠されていて、 鬼畜路線が好きな方もOKという作りになっています。 もちろんケロQお馴染みのアレもありますよ、アレも(笑) プレイ時間はおよそ10〜15時間ぐらい。2回目からは5〜6時間で終わると思います。 このゲームの特徴は「萌え」と「燃え」が同居している点、 そして推理・解説部分が綺麗に物語に溶け込んでいる点です。 流れとしては前半にテンポ良いキャラの会話で萌え、 後半は息が詰まるような緊張の中でストーリーに燃えるという形になっています。 ただ後半部分でも重要箇所でしっかりキャラを生かしており、上手く物語を魅せていたと思います。 あとは推理・解説部分が物語から浮いていなかったのも良かったです。 推理・解説というのは作り手からの一方的な情報であるため、 どこかプレイヤーを置き去りにして、物語世界を一気に「ツクリモノ」と感じさせ、冷めてしまいます。 けれどその部分をキャラ同士の会話に組み込んだり、謎解き部分を分散させることで、 ストーリーのテンポを損なわせないようにし、リズム良く物語を描いていました。 この一見簡単なようで難しい2点を上手くクリアしていたと思います。 |
||||||||||||||||||||
<簡単なあらすじ> | ||||||||||||||||||||
萌えっ娘カンパニー 南南部第2563号室 通称『萌えっ娘島』 そこはメイドさんを育てるための島 メイドさんに囲まれた夢のような島 優しさにあふれる島 そんな島に事件が起こります そして物語は急展開!! それぞれの過去、それぞれの謎… 徐々に明かされる物語… ケロQの贈るキュートでラブリー そしてハートウォーミングな物語 萌えてるゲーム『モエかん』 ついに登場…… |
||||||||||||||||||||
(『モエかん』パッケージ裏より抜粋) | ||||||||||||||||||||
<キャラクター性> | ||||||||||||||||||||
ヒロインは全部で5人です。 ドジでマヌケなメイド、ハイテク機械がダメなローテクアンドロイド、「リニア」 のほほんとした図書館司書メイド、絵本好きの、「実相寺冬葉」 破天荒な元気メイド、ザ曲芸料理人、「朝霧かずさ」 謎のメイド(?)、「鈴希」 主人公の神崎貴広を助ける有能な秘書、でも外見・言動はお子ちゃま、「霧島香織」 この他にも整備のおやじさん、灯台に居るおばさん等が登場します。 名前こそありませんが、各シナリオで良い味を出してくれる重要なキャラです。 キャラクター性は強い方だと思います。 癖のある喋り方こそありませんが、(霧島のみ赤ちゃん言葉だけど) イベントCG中のデフォルメキャラ絵が実に愉快で、キャラ個性を上手く表現していました。 テンポの良い会話に、面白いデフォルメCG、軽快な音楽と3つの要素が交じり合うことで、 各キャラクターの特色を引き出していたと思います。 残念なのはキャライベントにおいて、メイドという特性があまり生かされていなかったことでしょうか。 (ストーリー上では重要なんですけどね) メイドならではのイベントがあるのは、かずさぐらいでした。 もう少し際どいギリギリの変化球を投じて欲しかったですね(笑) それでも全般的にはタイトル通り「萌え」ますので、キャラ重視の人も安心でしょう。 |
||||||||||||||||||||
<CG> | ||||||||||||||||||||
原画は2C=がろあ〜氏(リニア・鈴希)、基4%氏(霧島・冬葉)、SCA−自氏(かずさ)の3人です。 複数人の原画家さんが手がけていますが、キャラによる違和感はありませんでした。 キャラ絵は瞳ぱっちりの萌え系の絵です。 ケロQさんは今までが異色だったので、ようやく絵に合ったゲームが来たと言えますね(笑) ゲーム中では通常イベントCG以外にもデフォルメCG、線画CGがあります。 デフォルメCGはキャラをコミカルに描き、絵に動きをもたらしています。 これは主にギャグシーンで用いられ、音楽・会話のテンポが相まって面白いものに仕上げています。 線画CGは劇画タッチな2色絵で、主に戦闘シーンで用いられています。 これは戦闘時の瞬間ごとの緊張感をプレイヤーに伝えてくれます。 線画CGの方はその特徴柄で大雑把に見えてしまいますが、 戦闘シーンが萌え画だと緊迫感なくて困るので私は線画形式で良かったと思います。 背景画は二重影の時に比べて格段に良くなってます。 西洋風屋鋪ということで広さを表現するのに遠近感を出さなければいけないのですが、 それらの表現をしっかりとできていたように思います。 絵は全般的に高いレベルでまとまっていましたね。 |
||||||||||||||||||||
<シナリオ> | ||||||||||||||||||||
シナリオは完璧と言っていいと思います。 『モエかん』というタイトル、パッケージ絵、設定からして「萌え中心」のシナリオを思い浮かべるでしょうし、 良く捉えたとしても「感動・泣かせ系」だと思うのがせいぜいでしょう。 けれどこのシナリオは世界観が良く練りこまれており、 「萌え」だけで終わらず、「燃え」「謎」「陰謀」「推理」「解説」と多くの要素を含んでいます。 設定やパッケージ絵を見ただけでは想像つかないと思いますが、終盤では戦闘シーンもあります。 これだけ多くの要素・設定を抱えているのにも関わらず、 ストーリーに集中でき、入り込める作りは見事と言うしかありませんね。 欲しい要素を全て兼ね備えた素晴らしいシナリオです。 シナリオのタイプは基本的にはハートウォーミングな感動系シナリオです。 ただキャラの楽しい掛け合いが繰り広げるギャグシーン、ヒロインの悲しい過去、 息が詰まるような激しい戦い、怒り、涙…といったように多くの要素を含んでいます。 言うなれば喜怒哀楽から成る人生そのもの。 作り物ではない、「モエかん」という世界の人々の生き様を表現していました。 欠点を挙げるならば、全てを語りつくしていないため、謎が分かりづらいことでしょうか。 各シナリオともに物語として完結しているのですが、 単一のシナリオだけでは「モエかん」全ての謎を解くことはできません。 また、それに対する明確な答えは提示されていませんから、 人によっては消化不良に感じてしまったり、分からないまま終わってしまう可能性もあります。 ただシナリオをよく読むことや、別ヒロインシナリオを考ることで、 理解できるケースがほとんどですから大きな問題とはならないと思います。 作品に対して読者(プレイヤー)の解釈を挟む余地を残すことは、 物語を楽しむ上で重要なことですから私はむしろ長所ではないかと感じます。 泣きたい人、熱い物語を楽しみたい人、心を打つシナリオを楽しみたい人、 考えさせられるシナリオを楽しみたい人…そんな多くの人が楽しめるシナリオです。 昨今は「泣きゲー」が流行し、設定上わざと人を殺したり、押し付けがましく泣かせたりしてましたが、 このシナリオはごく普通に、物語自体が生きているため、そんな感じは全く受けませんでした。 久々に精神衛生上、良いゲームをやったなというのが私の感想です。 戦闘シーンも内容のわりに残虐じゃないので、そういうのが苦手な人も大丈夫だと思います。 (ただオマケ・陵辱シナリオは人を選ぶので、本編とは別と考えましょう) |
||||||||||||||||||||
<音楽・音声> | ||||||||||||||||||||
音楽は二重影の時に比べ、バリエーションが増えて格段に良くなっています。 明るい音楽、ギャグ用の抜けた音楽、切ない音楽、戦いの緊迫した音楽…と表現豊かです。 出来も良く、シナリオの場面場面に合っていて良い演出になっていました。 主題歌は美少女ゲーム界の歌姫である佐藤裕美さんが歌っています。 ゲーム中ではこの主題歌のアレンジ曲(アコースティック・オルゴール調等)があるので、 気に入った音楽があるかどうかはこの曲次第かもしれません。 お気に入りの曲は…たくさんあるんですが、音楽鑑賞モードがないので曲名が分かりません(爆) 冬葉の曲(星の〜)、かずさの曲(おちゃらけ)、終盤の切ないピアノソロ曲(2曲)が良かったですね。 サントラ出るなら間違いなく買う…それぐらいのレベルと思ってください。 音声はキャラにマッチしていて、とても良かったです。各声優さんの熱演が光る作品でした。 特に冬葉とかずさの方は演じ分けが見事でしたね。 音声に関しては安心して良いと思います。 不満を挙げるとすれば、脇役に音声がないことでしょう。 整備のおやじさんや灯台のおばちゃん、他のカンパニー側の人間と重要な場面で出るサブキャラもいるので、 そういったキャラにも音声が欲しかったのが正直なところです。 リニア(CV:成瀬未亜) 実相寺冬葉(CV:ダイナマイト☆亜美) 朝霧かずさ(CV:乃田あす実) 鈴希(CV:永瀬江美弥) 霧島香織(CV:カンザキカナリ) 主題歌「風の中の青い鳥」(歌:佐藤裕美) |
||||||||||||||||||||
<基本システム> | ||||||||||||||||||||
基本システム等は残念ながら褒められたものではありません。 まずエフェクト処理が重いので、画面切り替えが遅く感じてしまいます… 設定でエフェクトを切っても大きな効果はなく、メッセージスキップも遅いです… またプレイ環境によって音楽再生時にノイズが入ったりするケースもあるようです… (ハードウェアアクセラレータ切りで解決します) それと誤字脱字が多く、イベントCG下半分がずれて表示されるケースもありました… シナリオが良いだけに、これは勿体無いとしか言いようがないです… あと声優さんの熱演が光るのに、読み返し機能に音声再生がないのも残念… セーブ数は最大128、クィックセーブ整備と嬉しいのですが、他機能がイマイチでしたね。 クリア後のオマケはCG鑑賞・Hシーン鑑賞・アフターストーリーとなっています。 CG鑑賞はアルバム形式ではないので、1枚1枚スライドして見なければならないので使いづらいです… アフターストーリーはキャラによって鬼畜モードだったりと、アナザー的要素が多いのが残念… どうせならラブラブと鬼畜の2本を用意して欲しかったですね。先が気になる話もありましたから。 それと上でも述べましたが、音楽鑑賞モードがないのがダメ… せっかく音楽が良いのですから、それを楽しめないのは残念を通り越して悔しいです… そういえばこのゲームには変な機能(?)があります。 「緊急回避」ボタンなんですが、これを押すと画面全体が関係ないCGに変わったりします。 「あー、誰か来る! ゲーム画面消さないと! あたふたあたふた…」って時にボタン1つで切り替え(^^; ただ音声を消すには隣の「mute」ボタンを押さなければいけないので、実質効果は謎です。 ちなみに緊急回避用のCGは6枚入っています。 面白い絵柄ばかりなのでPC壁紙として使うのがベターじゃないでしょうか(笑) 以上のように、システムは全般的にダメです。 せっかくゲーム自体が高いレベルでまとまっているのですから、プレイしやすいようにして欲しかったです。 これは次回作以降の課題として、クリアしていって欲しいです。 |
||||||||||||||||||||
<ゲーム性・演出面その他> | ||||||||||||||||||||
ゲーム性は選択肢分岐型ADVですのでありません。 完全ヒロインオンリープレイでないとクリアできないので、難易度は高めかもしれません。 何も知らずにやるとBadエンドの山。ヒロインルートに入れず終わってしまいます。 エンディングは各ヒロインEDと陵辱ED、それとBadエンドが沢山。 Badエンドにも一部重要な情報があるので、シナリオを考える上では見ておくことも必要かもしれません。 演出は音楽・デフォルメCGで上手く脚色していました。 また説明文のみビジュアルノベルのような全画面テキスト表示タイプ、 あとは会話ウィンドウでの表示になっています。 |
||||||||||||||||||||
<まとめ> | ||||||||||||||||||||
良く練られたシナリオを中心に、CG・音楽ともにレベル高くまとまった素晴らしい作品です。 残念なのはプログラム・システム面、少しプレイしにくいのが難点です。 ただそれを含めてもお釣りが来るような素晴らしい内容を誇っています。 シナリオの良いゲームに飢えている人も、涙に飢えている人も、同人・創作活動が好きな人も、 ケロQが届ける「萌え」の境地を堪能して欲しいですね。 今までの美少女ゲームを含めてもトップクラスだと思いますから、機会があれば是非プレイして欲しい良作です。 |
||||||||||||||||||||
<評価点> | ||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||
<動作環境等ゲーム詳細> | ||||||||||||||||||||
「終ノ空」 「二重影」(レビュー・攻略有) |