秋色恋華・秋色謳華 ゲームレビュー


 <どんなゲーム?>

『夏色小町』『まじぷり』を生み出したパープルソフトウェアの代表作が作品がこの「秋色恋華」です。
「秋色謳華」は秋色恋華のファンディスクであり、恋華のシナリオを補完する役目を担っています。
2つを切り離して考えることはできないので、ここでは一緒にレビューしていこうと思います。

まず「秋色恋華」はオーソドックスな純愛学園アドベンチャーゲームです。
序盤でヒロインの顔見せ、選択肢分岐でシナリオを決定することになり、
中盤は少しずつ恋心へと変わっていくヒロインの心理描写を描き、
終盤に告白・主人公との恋愛模様といった流れになっています。
1プレイは5〜8時間ほど。
伊吹・香澄はシナリオ分岐が早いため、プレイしている時は分量的に短いのかなと思いますが、
そこからが長く、やり応え十分です。
長すぎず短すぎず、ちょうどいい分量だと思います。

このゲームの特徴として挙げられるのはヒロインの個性が強いことでしょう。
設定はオーソドックスな学園モノですが、
主人公の義妹・葵が駆け出しのアイドル、復学してくるクラスメート・伊吹がプロテニスプレイヤー、
同じくクラスメート・香澄が理事長の娘でお嬢様といったように、各キャラの設定がはっきりしています。
また全体的にヒロイン同士の掛け合いが多く、
ヒロイン個別のシナリオに入っても友人として登場し、主人公以上に美味しい所をかっさらっていきます(笑)
主人公がわりと平凡なのですが(まさにプレイヤーの生き写し程度の能力)、
そこを個性的なヒロイン・サブキャラ達が補っている感じですね。
ヒロイン・サブキャラの活躍が秋色の世界を色鮮やかにしてくれます。


一方の「秋色謳華」は秋色恋華のファンディスクです。
各ヒロインの後日談を2本ずつ(Hあり・エンディングの補完エピソード)、
サブキャラであった戸倉翼をヒロインとするシナリオ・秋色恋華〜翼〜、
他にスクリーンセイバー・時計・システムボイス・OPムービー、それと雑誌掲載分の版権CG集が付いています。
各ヒロインの後日談は15〜30分程度の短いものですが、
翼シナリオは秋色恋華の各シナリオまるまる1本分の量があります。
この翼シナリオは恋愛模様に特化していた秋色恋華のシナリオを補完するもので、
「家族」「夢」といった恋華では置き去りにされていたテーマを取り扱っていくことになります。
各ヒロインの後日談も、恋華の不十分だったエンディングを補完する役割を担っており、
秋色恋華を語る上では謳華を切り離して考えることはできないと思います。

秋色謳華は秋色恋華の半年後の発売ということで、大きく時期がずれてしまっているのですが、
それぞれ単体で評価していた場合、やや厳しい評価になってしまったかもしれません。
私は2本をほぼ同時にプレイしたので、セットで考えることができ、高い評価を出せました。
既にプレイした人よりも、これからプレイする人の方がチャンスかもしれません。
是非とも2本同時で楽しんでください。

…っと、またいきなり締めてしまった(^^;
大まかな特徴はこんなところですから、それぞれの特徴を詳しく見ていくことにしましょう。

 <簡単なあらすじ>

〜秋色恋華 簡単なあらすじ〜

主人公「新山志伸」は、数年前から両親が海外赴任をしたことで、義妹の「新山葵」と二人暮しすることに。
両親の代わりに面倒をみることになった隣のお姉さん「佐川英理子」の3人で仲良く過ごしていたが、
ひょんなことから義妹の葵がアイドルになると芸能界入りし、そのまま別居することに。
別居したとはいえ、葵は家にちょくちょく顔を出し、二人の兄妹関係は相変わらずで、
隣のお姉さん・英理子も主人公のクラスの担任教師になっても秘密で面倒を見続けるなど生活に変化はなかった。
そんなある日、ずっと休学していた世界的テニスプレイヤーの「南条伊吹」が怪我を理由に学園へ復帰することに。
学園のお嬢様「世良香澄」、バイトに追われるクラスメート「戸倉真由」を交え、
秋の鮮やかな恋愛模様が彩られていく…


〜秋色謳華 翼シナリオ開始までの簡単なあらすじ〜(秋色恋華・ゲーム開始から10日までの流れ)

主人公「新山志伸」のクラスに復帰してきた世界的テニスプレイヤーの「南条伊吹」は、
全米トーナメントで優勝した注目選手にも関わらず、全く飾った所がなく、
それどころか、どこかネジが外れている天然娘だった。
主人公の義妹「新山葵」の計らいもあって、すぐに3人は仲良くなることに。
主人公が伊吹に学園を案内している最中、同じクラスメートで学園のお嬢様である「世良香澄」から、
自身の誕生日パーティーを兼ねた伊吹の歓迎パーティーを開きたいとの申し出を受け、2人はそれを受諾する。

数日後、購買でパンを買い損ねた主人公は、クラスメートで購買でバイトをしていた「戸倉真由」にパンを譲ってもらう。
主人公はそのお礼を言おうと真由に話しかけるも、真由はクラスでも男子にほとんど口を聞くことがなく、
なかなか話しかける機会がなかった。
公園でようやく真由を捕まえて話をするも、思うように話が進まず、ある失言で真由を怒らせてしまうことに。
その際に真由が溢した飲み物が主人公の足にかかってしまい、すぐさま真由がハンカチを差し出した。
普段とは違う真由の姿に主人公は驚くも、真由の態度は相変わらずで、結局その場は解散となってしまう。
後日、主人公はハンカチを返そうとするも、こちらでもなかなか真由を捕まえられず。
結局、ハンカチを返すために家を探すことになり、そこで真由の妹「戸倉翼」と出会う。
翼は言葉少なな真由とは違い、元気でおしゃべり、ちょっぴりおマセな女の子で、
家を訪れた主人公を真由の友達(彼氏)と思い、すぐさま家に上げようとするなど歓迎ムード。
そこに真由が帰ってきて、主人公を警戒して何しに来たと強気に追求するも、翼の計らいで丸く収まることに。
真由は妹の翼のことを溺愛しており、翼には甘甘だったのである。
その後、おマセな翼のお節介(?)もあって、主人公と真由の関係は少しずつ近づいていくことになる。

伊吹が学園に復帰してから一週間が経った10月7日の朝、
主人公は学園のテニスコートに伊吹の姿を見つける。
主人公は怪我をしているとはいえ、テニスのことがやはり気になるのかと思い、伊吹に尋ねるも、
伊吹は歯切れの悪い返答をするだけで、うやむやのうちに話は終わってしまう。
翌朝、主人公はその時の伊吹の姿が気になり、再び学園のテニスコートに出かける。
だがそこには伊吹の姿がなく、代わりに伊吹の専属コーチであった「生方蘭子」と出会う。
そこで主人公は伊吹がもうテニスをしたくないと言って、蘭子の下から逃げ出したことを聞かされる。
戸惑う主人公… 伊吹にそれを尋ねようとするもなかなか話を切り出せない。
結局、主人公は伊吹がテニスを辞めた理由を話してくれるまで、その話題に触れないことを選ぶ。

香澄・伊吹のパーティー当日、主人公の部屋にチャイナドレスの女性が尋ねてくる。
それは隣のお姉さんで主人公のクラスの担任教師でもある「佐川英理子」だった。
英理子はパーティーに誘われていなかったが、どこからかその噂を聞きだし、セルフ参加すると言い出したのである。
2人は迎の車に乗り、世良邸へ向かう途中、戸倉家に寄っていくことになる。
戸倉家は姉の真由がアルバイトに追われるなど裕福な家庭ではなかったが、
母親のお下がりであるドレスを着た真由の姿は美しく、
普段とは違う格好に真由は恥ずかしがりながらも、妹の翼や主人公の言葉を受けてパーティーに出かけることに。

本来(秋色恋華)は、主人公・英理子・真由の3人でパーティー会場に出かけることになるのだが…
唐突に英理子が「翼ちゃんは行かないの、今日のパーティー?」と言い出す。
最初は翼も渋るも、英理子がセルフ参加だったことや、真由のお許しが出たことで、一緒にパーティーに参加することに。
秋色恋華本編では描かれなかった翼の成長ストーリーがここから始まっていく…

少し長くなってしまいましたが、大体こんな感じです。
「秋色恋華」が手に入らないよ〜、でも「秋色謳華」はやってみたいよ〜という人は、
パープルソフトウェア等にある秋色恋華の体験版(ゲーム開始時〜8日目の朝まで楽しめます)と、
上のあらすじを合わせれば、大体の内容は把握できると思います。
もちろん、十分ではないので、オススメはしませんが… どうしてもという場合はどうぞ。

 <キャラクター性>

メインヒロインは、
 世界的テニスプレイヤーながらもネジが外れた天然娘、『南条伊吹』(月杜尋デザ)
 主人公の義妹で駆け出しアイドルの危険な(?)お兄ちゃん大好きっ子、『新山葵』(月杜尋デザ)
 隣のお姉さんでなにかと世話を焼いてくれるちょっぴりお茶目な女教師、『佐川英理子』(月杜尋デザ)
 主人公のクラスメートで牛丼大好きなお嬢様、『世良香澄』(悠樹真琴デザ)
 主人公のクラスメートでバイト生活で、妹の翼をはじめとする全ての妹の味方(?)、『戸倉真由』(月杜尋デザ)
この5人ですが、他にも多くのサブキャラが登場します。
 翼の妹で家事万能のしっかりもの、けれど恋に恋するところは年頃の女の子(?)、『戸倉翼』(悠樹真琴デザ)
 ワガママな葵の無理難題に振り回されっぱなしの芸能マネージャー、『小暮史佳』(月杜尋デザ)
 神出鬼没な自称伊吹ちゃんの専属コーチ(処女)、『生方蘭子』(月杜尋デザ)
 ナンパを生きがいとするも成功率0%の主人公の友人、『結城隼人』
 香澄の父親で学園の理事長でもある、『世良?』(名前、不明)


秋色謳華ではサブキャラだった戸倉翼がメインヒロインとなります。
翼シナリオはメイン所を始めとして、女性キャラが全員登場します。
ちなみに秋色謳華でHシーンのあるサブキャラは翼と小暮史佳の2人。
蘭子さんはありません。永遠の処女ですよぉ(爆)

キャラクターの特徴としては、どの女性キャラも動きが活発ということが挙げられます。
攻略ヒロインが決定しても、友人としてヒロイン達が大活躍します。
主人公がやや行動力がないので、プレイヤーは不満に感じるかもしれませんが、まぁ、現実はこんなもんでしょう。
議論や決断は色々な人の意見が混じり合って、より純化・一般化されていくわけですから、
主人公一人がヒロインの悩みを背負い込むのではなく、多くのキャラでそれを支えあったのは良かったと思います。
確かにその点で主人公の爽快感がなく、物語としては物足りなさを感じますが、
その分を他ヒロインや魅力的なサブキャラが上手く補っています。
プロテニスプレイヤー・アイドル・お嬢様と雲の上的キャラが多いのですが、
そういった互いに補完しあう関係が、キャラをより人間くさくし、親しみ易さが生まれたように思います。

それと主人公を含めて、このゲームのキャラクターが共通で抱えているのに「家族への満ち足りなさがあります。
主人公は葵や英理子がいるものの基本的に独り暮らし、伊吹も独り暮らしで家族への憧憬が強い、
葵もアイドルになったものの主人公への想いは相変わらず、
香澄も厳しい家庭環境下で育っていて母親が仕事で不在で寂しさを抱えており、
真由・翼の戸倉姉妹は諸事情で姉妹2人だけの生活…
どのキャラも寂しさを抱えており、家族の愛情・憧憬を強く持っています。
 (もっとも家族に「完璧な」充足感を持っている人間なんていないと思いますが(^^;)
またプロテニスプレイヤーの伊吹、アイドルの葵と「夢」に挑戦しているヒロインがいますから、
当然その2つがシナリオのテーマになってこなければいけないんですが…
まぁ、その辺はシナリオ解説の所で詳しく触れます。ここでは導入だけで終了と(^^;


キャラ萌えは主観によるので判断は難しいのですが、萌える要素は十分にあると思います、
伊吹の能天気さと家族の話題に触れたときの寂しい姿のギャップ、
葵のお兄ちゃんからかいモードと真剣告白モードのギャップ、
香澄のお嬢様然としたおっとり思いやりモードと牛丼絡みでのイライラガミガミモードのギャップ、
真由の素っ気無い態度と少しずつ主人公に惹かれてきて表情豊かになってくるギャップと、
萌える要素は十分にあると思います。
キャラの掛け合いも多いですし、個性は強い方だと思います。
もっとも、こればかりは主観ですから、体験版をプレイするなりしてご自分でお確かめください。
私は真由に萌えました、悶えました、惚れました(^^;

 <CG>

CGはパープルソフトウェアで原画を務めている月杜尋氏と悠樹真琴氏の2人です。
月杜尋氏が伊吹・葵・英理子・真由・史佳・蘭子を担当。
悠樹真琴氏が香澄・翼を担当しているようです。
意識して細かく見ていけば、CGの差は分かるでしょうが、
ゲームをやっている時に違和感は感じられませんでした。
真由・翼の戸倉姉妹はツーショットが多いですし、気にはならないでしょう。

CGクオリティは高いほうだと思います。
キャラデザインの特徴としてはお目目パッチリの顔重視型です。
一部の立ちキャラCGで、全体的バランスが悪く、違和感を感じることがありましたが、
それほど多くはありません (個人的に感じたのは真由の水着立ち絵ぐらいかな?)
上記のように等身の全体バランスに若干の違和感はあるものの、
顔重視だけあって表情の変化は豊かですね。
立ち絵のパターンも多く、イベントCGでも色々な表情を見せてくれます。
秋らしく色々な表情を見せてくれる秋色のキャラを上手く表現していたように思います。

背景絵も文句なしです。
背景のキャラ絵にパープルソフトウェアの過去作品キャラがちょこちょこ登場していたりします。
過去作品をプレイしたことがある人は探してみるのも面白いかも?
秋色謳華の方には背景鑑賞がありますので、そこでチェックしてみてください。

OPムービー・その他CG演出は、後述の演出の方に回させていただきます。

 <シナリオ>

〜シナリオ評価 秋色恋華編〜
秋色恋華のシナリオの基本は文字通り「恋」です。
恋愛第一、テーマ第二(^^;  とにかく恋が中心です。
ですから、キャラのところで触れたシナリオテーマ「家族」「夢」といったものは直接的には述べられていません。
伊吹のテニスにしても、葵のアイドルにしても、香澄・真由の家族にしても、
主人公とヒロインの恋愛模様を描く「道具」に過ぎず、それ以上の意味は持っていません。
ですから、秋色恋華のシナリオは恋のシナリオだと言えます。

恋華のシナリオ長所は、恋重視なだけにプレイヤーが感情移入しやすい点にあるでしょう。
ヒロインが色々な姿を見せてくれ、少しずつ仲が深まっていくわけですから… 萌えます^-^;
シナリオのテンポも良く、中だるみしませんし、
ヒロインに夢中になれるという意味では良かったと思います。
また攻略対象ヒロインが決まっても、他ヒロインが友人として登場するなど、
普通の美少女ゲームよりもキャラの掛け合いが多いです。
サブキャラを始めとして、ヒロインの様々な表情が見られるのも秋色の特徴でしょうね。

逆に短所としては、シナリオテーマを放棄してしまったが故に、
エンディングがスッキリしなかったことが挙げられます。
伊吹にしても、葵にしても、真由にしても、結局、どうしたかったのかが良く分かりません。
秋色恋華はあくまで「恋」を描いた作品ですから、主人公とヒロインが結びつけばそれでいいんですけどね。
やはりプレイヤーとしては2人の間の問題をどう解決したのかも知りたいところでしょう。
そこらを曖昧にしてしまったのは、秋色恋華の最大の欠点だと言えます。
あとは主人公が優柔不断で行動力が少ないことでしょうか。
まぁ、そこはユーザーの生き写し程度の能力と理解しておけば(苦笑)
そこは他ヒロインやサブキャラが補っていると理解してください。

個別にシナリオを見ていきますと、大きく3つに分類できると思います。
 1:恋愛至上主義シナリオ=葵・真由
 2:主人公ヘタレ・友人大活躍型シナリオ=伊吹・英理子
 3:ドタバタコメディ劇=香澄
シナリオライターさんが3人いるようですが、誰がどのシナリオを書いているかは分かりません。
ただおおよそ3つの特徴に分かれると思います。
最初の分類に入れた葵・真由のシナリオは、とにかく恋愛恋愛恋愛、萌え萌え萌えです。
心理描写が上手く、キャラの心情の変化を中心に描いたシナリオです。
「綺麗な恋愛」という言葉がしっくりくるシナリオですね。
二番目に分類した伊吹・英理子のシナリオは、主人公が塞ぎ気味で友人達が大活躍するタイプです。
主人公の行動力が乏しく、周囲の励ましや気遣いによって恋愛を成就していくシナリオです。
「周囲への感謝」が第一に来るシナリオですね。
三番目に分類した香澄シナリオは、もはや毛色が違います(^^;
パーティーが終わるといきなり究極の牛丼探しですよ? 何のゲームかと思いました(笑)
どこかコミカルな感じがするドタバタシナリオです。恋愛よりも笑い、人間性そのものに着目しています。
おそらく秋色謳華のシナリオを書いた人は、3番目の分類である香澄シナリオを書いた人でしょう。
会話文主体な文章に若干の難がありますが、独特のセンスが感じられます。

上記のように同じゲームでありながら、シナリオの雰囲気が違いますから、評価も人によって変わってくると思います。
一般的には1のグループが高い評価を受けるでしょうね。
シナリオの形態が凄く綺麗ですし、淡々としながらも描写がしっかりしています。
ただ恋愛至上主義に走りすぎていて、家族・夢といったテーマがかなり放棄されている感があるのが欠点です。
コメディタッチなシナリオが好きな人は3のシナリオを高く評価するでしょう。私はその部類です。
ありえないストーリー展開というか、斬新さがあります。
着眼点が面白く、恋愛だけではない、香澄という一人の人間のありのままの姿を描いている姿勢がいいですね。
エンディングもこのシナリオでしかありえない結末になってますし(笑) ↓ネタバレにつき白文字
普通はピアノテスト成功させて終わりですよね。ヘタレな主人公を香澄が襲うとは思わなかった(笑)
そういった独特のコメディタッチを許せるかで、このシナリオの評価も変わってくると思います。
グループ2のシナリオは一般的に主人公ヘタレと言われて、あまり評価されない傾向にありますが…
私もそういう人間なので、あまり良い所を挙げられませんが… まぁ、脇役達の活躍が良かったです(^^;
↓ネタバレにつき白文字
特に伊吹シナリオは… 主人公、グズリ過ぎで、結末が中途半端な感があります。
伊吹が現役でいる理由がないでしょう、アレは。スッパリ諦めて、主人公の熱血コーチになった方がスッキリしたかと。

まとめとしては、秋色恋華は恋愛を中核に据えたシナリオで、萌え重視の仕様になっています。
個別的に見ていくと、大きく3つのグループに分けられ、それぞれ長所・短所を持っています。
全部のシナリオを気に入るということはないでしょうが、全く好きなシナリオがないということもないでしょう。
大きな感動があるわけでも、大作という感じでもありませんが、
魅力的なヒロイン達と恋愛のできる安心して遊べるゲームシナリオだと言えます。
個人的評価は、真由>香澄>葵>伊吹>英理子、といった感じですね。



〜シナリオ評価 秋色謳華・翼シナリオ編〜
ここでは秋色謳華の中核をなす翼シナリオに関して述べていくことにします。
秋色謳華の翼シナリオの特徴は、恋華が「恋」ならば、謳華は「愛」です。
秋色恋華が恋愛を中核に据えすぎて置き去りにされてしまっていたシナリオテーマ「家族」「夢」といったものを、
翼シナリオでは正面から取り扱っています。
恋華は恋愛中心、謳華は家族愛が中心だと言えます。

えーっと、主題歌は…メーカーサイトからダウンロードできますね。
2つのシナリオの違いは歌を聴けば分かってもらえると思います。
恋華の主題歌「秋色」は燃え盛る恋をイメージしたような情熱的な曲です。
序盤こそ、まったりしたシナリオですが、秋色恋華の後半は情熱的なシナリオになっていきます。
一方の謳華の主題歌「Growth」は明るめのアップテンポな曲で、
翼をイメージしたさわやかなものに仕上がっています。
どこか包み込むような柔らかさが感じられる曲調で、家族をテーマにした翼シナリオを象徴しています。

翼シナリオは恋華の第3グループ:香澄シナリオのようなコメディタッチなものになっています。
簡単に内容を述べてしまうと、翼シナリオはオールキャストのドタバタ同居モノです。
家族に欠陥を持つ主人公・ヒロイン達が集まって大規模な家族ごっこをしていくというストーリーです。
翼を中心として、家族の姿とは何か、夢とは何かを描いていきます。
香澄シナリオの所でも触れましたが、基本的には会話文が主体で、
登場人物がプレイヤーに対するメッセンジャーの役割を担っています。
問題はそこに慣れるかどうかでしょう。
哲学とまではいきませんが、人生論のようにやや説教くさい部分もありますので、
恋愛劇だけをやっていればいいんだという人には向かないかもしれません。
逆にそういった色々なことに思い悩み、考える姿がいいんだという人にはプラス評価になると思います。
最後の方の翼のシーンなんかはいいですよ〜 思わずウルっと来てしまいました。
感動的だったのは秋色恋華よりも翼シナリオでしたね。

そんなわけで翼シナリオは恋愛という面では弱い所があります。
けれど秋色恋華で置き去りにされた「家族」「夢」を取り扱っているだけに、シナリオの出来自体はとても良いです。
最後の展開はドタバタ劇にありがちなスピードアップな展開になりますが、
恋華の結末よりも却って説得力があるような気もします。
特に伊吹・葵辺りはこちらの方がハッピーエンド(?)だろうとも思ったり(^^;
そういう意味で翼シナリオは秋色恋華のグランドエンドとも言えるシナリオではないでしょうか。

ただ真由好きには辛いかも(^^;
最初のイベントの主人公の失言によって、真由を警戒させてしまい、
主人公を信頼するまで時間がかかってしまいますから…
その展開を許せるかどうかもポイントの一つです。
まぁ、アプローチの仕方が違うだけなんですけどね。
↓恋華・謳華のネタバレによる説明につき白文字注意。
恋華の真由は信頼に依拠しており、謳華は警戒に依拠しています。
どちらの真由も翼が第一であることは確かですが、自分一人では面倒を見切れないことも自覚しています。
翼が父親を求めていると思うと同時に、真由自身も甘えられる男性を求めているのだと思います。
だからこそ、男性に求める理想が高い。姉妹二人だから人一倍警戒心が強い。
男性に心を許さないこと、それが真由を支えているものの一つです。
恋華の真由は主人公と葵の関係を見て信頼に足る人物と認識しており、
それが翼の強烈なプッシュもあって恋へと変わっていきます。
逆に謳華の真由はパーティーの一件でやはり父親的存在が必要だと自覚しながらも、
主人公の不用意な発言によって警戒せざるを得なくなった、その警戒心が真由を支えているものなのでしょう。
どちらにせよ、主人公を強く意識していますから、それがどのタイミングで心変わりするかだけなのだと思います。
最初のスタートがプラスかマイナスか、そのアプローチの違いだけです。



最後に秋色恋華・謳華のシナリオについてまとめると、
恋華は「恋愛中心」、謳華は「家族中心」のシナリオだと言えます。
恋華で語りきれなかったテーマを謳華は拾っているわけです。
恋華は心理描写中心の萌え仕様、謳華はドタバタコメディで笑いあり涙ありのシナリオになっています。
この2つは互いの足りない所を補完し合っている関係にあり、
2本で1セット、秋色の世界は両者を合わせて初めて完成すると言えるでしょう。

 <音楽・音声>

秋色恋華の音楽は全部で23曲、そのうち歌付きが3曲ありますね。
音楽の出来はいいと思います。
キャラテーマ曲はイメージに合っていましたし、明るい曲から切ない曲まで幅がありました。
全体的には明るめの曲が多いですね。

主題歌は「秋色」。
他のBGMよりも情熱的な感じの曲です。
最初聞いた時はやや違和感を感じましたが、シナリオが進むにつれて、バッチリ合ってきました。
お気に入りの一曲ですね。
EDソングは「wintry breeze」。落ち着いた曲調でスッと入ってくる歌です。
もう一つの歌は…秘密。実際にプレイしてお確かめください。

秋色謳華の音楽は全部で28曲。ほとんどが秋色恋華からの引継ぎです。
追加されたBGMは翼のテーマなど4曲。
そして秋色謳華の主題歌「Growth」です。
Growthはシナリオのところで触れたように、翼をイメージした明るめの爽やかな曲調です。
個人的には曲と歌詞が合ってないように感じちゃうんですけど(^^; まぁ、いい曲です。
私個人としては秋色よりもこちらのGrowthの方が好きですね。
聴いているとなんだか楽しくなってきます。包み込むような温かさがいいですね。


音楽に関連して音声面も触れておこうと思います。
音声面はもう文句なしですね。
佐々さんと木村あやかさん以外は個人的に馴染みなかったんですが、キャラと声が合っていて良かったと思います。
戸倉姉妹の声に萌え萌えです〜(爆)

 南条伊吹(CV:佐々留美子)
 新山葵(CV:木村あやか)
 佐川英理子(CV:美咲ゆうか)
 世良かすみ(CV:AYA)
 戸倉真由(CV:大花どん)
 戸倉翼(CV:文月かな)
 小暮史佳(CV:如月美琴)
 生方蘭子(CV:深井春花)
 結城隼人(CV:広野大地)
 理事長(CV:鈴木ロウ)


この中で一番凶悪(?)だったのは新山葵役の木村あやかさんのボイスです。
香澄シナリオにおける昇降口での怒涛なトークはもう… 危険すぎ(苦笑)  ↓以下、ネタバレ白文字
まさか「兄妹でセックス」「中出しバンバン」とか学園の昇降口で言い出すとは。しかも伊吹のいる前で言うとは(^^;
あと翼シナリオエンディングでの怒涛なトークも葵らしくて素敵(笑)
葵シナリオのどのセリフよりも葵らしかったっす(^^;

 <基本システム>

ゲームシステムはほぼ完璧。
メッセージスキップ、メッセージ自動送り機能(速度設定可能)、
履歴機能は音声読み返し機能も備えています。
クィックセーブが1つ、セーブ数は全部で90。
おそらくシステム面で苦労することはほとんどないと思われます。

オマケ要素としてはCG鑑賞・音楽鑑賞・シーン回想(Hシーンのみ)があります。
また秋色謳華ではそれらに加え、背景鑑賞とムービー・オートデモ鑑賞機能があります。
背景鑑賞はゲーム中で使用されている背景はもちろんのこと、
キャラの立ち絵パターンが一通り揃っており、ロング・アップ視点など自由に設定して見ることができます。
ムービー鑑賞では秋色謳華のOPムービーが見ることができ、
オートデモ鑑賞ではタイトル画面放置で見られる「なぜなに? あきいろ」が見ることできます。

また秋色謳華では横長のワイド画面に対応しているようです。
自分はワイド画面ではないので、どうなるのか分かりませんが…ワイド液晶等を持っている人は注目。
別にワイド画面でなくても支障はありません。
上下が空きますが、スッキリした形に見えます。

 <ゲーム性・演出面その他>

演出面としてまずOPムービーに関して述べさせていただきます。
秋色恋華のOPムービーは正直なところ、どうなんでしょうか…(^^;
まぁ、努力は認めるんですけど、微妙な違和感があるんですよねぇ…
一般的なCG垂れ流しでもなく、フルアニメーションでもありません。
トゥーンレタリングで2DCGを動かしたもの、と言えばいいんでしょうか。
まぁ、悪くないんですが、ゲームCGとの違和感が強いんですよね。
真由を見た時は涙を流しそうになりました(苦笑)
出来自体は良いと思うんですけど… 顔が小さくなり過ぎて、パッチリなお目目とのバランスが悪いような気がします。
ちょっとゲーム中のCGとの差が激しすぎましたね。

一方の秋色謳華のOPムービーは一般的なCG垂れ流し式。
やっぱりこちらの方がしっくり来るような気がします(^^;


次にオートデモですね。
秋色恋華ではタイトル画面でボタンを何も押さずに放置していると、キャラ紹介のオートデモが始まります。
秋色キャラの誕生日・趣味・好きな食べ物といった個人データを見ることができます。
本編では触れられないようなエピソードもあるので、一見の価値はあるかと。
ただオートデモですので、どのキャラの紹介が始まるかは完全ランダム。
狙ってみようとすると大変かもしれません。

一方の秋色謳華では「なぜなに? あきいろ」という某アニメをパクッたようなオートデモが始まります(^^;
こちらは伊吹と葵が司会を務め、秋色キャラに意地悪な質問をしてしまおうという企画。
蘭子さんが処女である事実などがここで発覚します(←微妙にネタバレ)
なかなか面白いので、一見の価値ありですね。下手すると本編のサイドストーリーより…(以下略)
ちなみにこちらのオートデモは一度見れば、オマケに登録されますので、何度も見ることができます。
恋華よりもこちらの方が親切設計になっております。


あとゲームの演出面で挙げられるのは、立ち絵のアップ・ロングですね。
美少女ゲームで一般的なのはロング。服装も写そうとするため、腰付近まで書くのが一般的です。
もちろん、秋色恋華・謳華にはロング視点の全体立ち絵もありますが、
肩付近から上を映した顔中心のアップ視点も数多く使われています。
BasiLの『BLESS』も随分とアップな立ち絵を使っていましたが、
それ以外では秋色のが一番大きいかもしれません。
プレイヤーとキャラの視点が近いことで、プレイヤーにドキドキ感が伝わり、
秋色の世界に入り込み易くしていたように思います。
これは良い演出でしたね。


最後に秋色謳華のオマケに関して少々。
「翼スクリーンセイバー」はデスクトップ上をたくさんの翼ちゃんが歩き回るというものです(^^;
普段着で掃除機をかけていたり、傘を差したり、格ゲーの真似をして演舞を始めたり、
体操服を着て体操を始めたり、水着姿で胸のないことを気にして牛乳を飲み始めたり…色々な翼ちゃんが見られます。
「翼クロック」はデスクトップ上に飾る時計付きマスコットです。
3時間ごとに時間を知らせてくれ、時間帯によって絵が変わります。0時以降はオヤスミモード。早寝早起きが基本です。
またメールの受信設定をすれば、到着を知らせてくれます。もちろんボイスあり。
「版権CG集」では雑誌に掲載された版権CGやショップ特典のテレカの絵柄などが見れます。
ゲームでは使われなかった際どい(?)CGがあったりするので、秋色のファンは要チェックです!

 <まとめ>

結論として、秋色恋華・謳華は、CG・シナリオ・音楽・システムとどれも高水準で、
安心して遊べるゲームだと思います。
体験版を少しやってみてキャラクターが気に入れば、まず損はないでしょう。
シナリオに関しては、恋華は「恋愛」、謳華・翼シナリオは「家族愛」と理解しておいてください。
そこを誤解してしまうと不満が生まれるかもしれません。偏ってるといえば、偏ってますから。
まぁ、色々なシナリオがありますから、全部が気に入らないということはないと思います。

萌えあり、笑いあり、涙あり… 秋色の世界に触れて、秋らしい様々な彩りを味わってください。
秋色恋華と秋色謳華、2本一緒にお楽しみくださいませ。


(追加)
2008年2月22日に『秋箱』が発売され、
秋色恋華と秋色謳華をゲーム1本分の値段で同時に楽しめるようになりました。
特に秋色謳華はかなり品薄でしたので、興味がある方はこれを機会にプレイしてみてください。

 <評価点>
CG シナリオ 音楽 システム 萌え 演出 声優 コスト H度 総合点数
9点 9点 9点 9点 9点 9点 8点 7点 6点 90点

 <動作環境等ゲーム詳細>
タイトル 秋箱(秋色恋華/秋色謳華)
メーカー パープルソフトウェア
発売日 08年2月22日
(05年2月25日/05年8月12日)
メディア DVD−ROM(1枚)
音声有無 主人公以外フルボイス
対応OS Win98・2000・Me・XP
CPU(必須/推奨) Pen2 450MHz以上/Pen3 600MHz推奨
Pen3 500MHz以上/Pen3 800MHz推奨
メモリ(必須/推奨) 128MB以上/256MB以上(Win2000・XP)
解像度(必須/推奨) 800*600 フルカラー VRAM 4MB以上
秋色謳華 WXGAワイド推奨
その他備考 DirectX7.0以上



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