久々にこれだけシナリオが良いゲームをプレイしたなというのが私の感想ですね。 確かに美少女ゲームは全般的にレベルが上がってきましたが、 逆にレベルが均一になってきたからか、特色がなくなって見極めにくくなってると思います。 それ故、02年は設定による差別化(妹、多人数ヒロイン、ハーレム、職業物)が目立っていました。 内容で勝負したくても、まずは買って貰えるだけの設定が必要だったのでしょう。 でもそれだからこそ、逆にユーザーは決め手がなく、新作ゲームに手詰まり感を感じていたように思います。 私自身、02年も幾つかゲームをプレイしましたが、大きな満足感を得られたゲームは少なかったです。 満足だったのは以前から楽しみにしていたBasiLの「それは舞い散る桜のように」だけでした。 03年はどうかな〜と不安に思っていた自分…美少女ゲームもそろそろ卒業かと思ってた自分… そんな時にプレイしたのがこの「モエかん」でした。 いきなり無政府資本主義という言葉から入り、パッケージとは裏腹の男同士の策略めいた会話。 雰囲気変わって、まったりと登場してくるヒロインキャラ。 バカでのほほんとした会話の中、キャラそれぞれの魅力をプレイヤーに伝え、萌え〜状態に。 そして中盤から急展開するストーリー。推理を入れて、プレイヤーをドキドキわくわく。 さらに終盤では熱い戦闘シーンが繰り広げられ、気分は完全燃えモード。 最後のヒロインとのやり取りに涙し、エンディングで心を奮わせる… 実に多くのテイストが散りばめられた作品でした。 推理や世界観・設定解説というのは物語には組み込みにくいんですよね。 物語というのは一定のリズムとテンポが存在してこそ成立します。 推理や解説というのはそのリズム・テンポを崩してしまうだけでなく、 描かれている世界観を「ツクリモノ」と感じさせてしまう危険性を秘めています。 物語はその世界観に共有する・入り込むだけの魅力、要素が大事だと私は思います。 その魅力がこの「モエかん」では失われていませんでした。 前作である「二重影」ではやや推理・解説が浮いていましたが、今回は上手く物語とマッチさせていたように思います。 そんなシナリオにおいて難しい要素を上手く混合できたことが、このゲームシナリオの大きな魅力と言えるでしょう。 ただ不安がないわけではありません。 幾つかレビューを眺めさせてもらいましたが、完全に理解されているとは思えないものがありました。 勿論、批判ももっともでしょうし、分かりづらいシナリオにも問題はあるでしょう。 けれど元々作品というのは自分の中で醸造するものです。 そのまま与えられるものではありません。 自分の中で醸造し、解釈することが作品を楽しむコツです。 そういう作業を本当にしているのか…? そんな疑問を抱くものを見かけました。 「それ散る」の時にも感じたことですが、行間の意味を追わず、文字だけを追ってるケースを多く見かけます。 現代人は仕事に追われ、趣味の時間に追われ、ゆっくりと考える時間が減っているのは確かです。 美少女ゲーマーも発売するソフトの早さ、プレイするゲームの多さに追いつかず、 クリアしたら次のゲーム、次のゲームへと時間に追い回され過ぎてる気がします。 どうせ楽しむなら、ゆっくりと、色々な要素を噛み締めて楽しんだ方が得じゃないですかね。 個人的にはもう少し時間をかけて楽しんで欲しいです。 楽しみ方は個人の自由ですが、評論する以上はそれなりの礼儀がありますよ。 「モエかん」はそれだけ味わう価値があるゲームです。もっと味わってゲームを評価してあげて欲しいです。 ただ問題らしいがないかと言えば、そうでもないです…システムがね… あれ、どうにかなりませんか?(苦笑) 初期設定時で音楽がプチプチ切れたり(アクセラレータを切って普通になりましたが)、 エフェクト処理・立ち絵変更時にラグを感じますし、メッセージスキップが遅く感じてストレスですし、 終いにはイベントCGがずれて表示されるバグがあったり… 一昔のシステムなら我慢できますが、最近の向上したシステムの中では見劣りしてしまいます。 もう少し繰り返しプレイに優しい仕様にして欲しかったです。 他にも欲しかった機能は読み返し時の音声再生、せっかく声優さんが熱演してるんですから欲しかったです。 オマケでは音楽鑑賞がないことが残念、ギャラリーもヒロイン別アルバム形式が良かったなぁと。 他メーカーが良いシステムでゲームを出しているのですから、 プレイしやすさという点にもっと気を配って欲しかったように思います。 それでもストーリーは素晴らしい内容でしたし、 何気なく散りばめられている言葉も私達に当てはまることばかりで最高のものだったと思います。 「カンパニー」という組織自体が現代人の病を象徴し、 閉鎖的な環境の萌えッ娘島がオタクを表してるようにも思えました(逆にも捉えられますけどね) 各シナリオともにテーマがあって、大きな古時計・星の銀貨・鈴・思い出のたこ焼と効果的に使ってたのも良かったです。 話の魅せ方も上手でしたし、シナリオは美少女ゲームの中でも屈指のものと言っていいでしょう。 今回は音楽もCGも良くなってましたから、間違いなくオススメと言える作品でしたね。 ケロQさんには今後もこの調子で頑張って欲しいです。 |
一部分かりにくい話もあるので、私なりに解釈したことをまとめておきます。 まずは各シナリオに関しておさらいし、世界観全体を考える事にしましょう。 (1)リニア このゲームのストーリーの根幹部分を担ったシナリオでした。 アンドロイドがどう生み出され、カンパニーの目的が何かなど、戦闘シーンを交え、大規模に展開していきました。 貴広と(リニアの心である)千歳は仲間に入れない寂しさを抱えていた2人、 共に意気投合し仲良くなり、別れる度にまた会えるよう貴広の時計を千歳が受け取っていた。 けれど千歳は入院してしまい、貴広に時計を渡せぬまま死んでしまうが、 父である庵原博士がその心を保存し、千歳の心をシュミレートするアンドロイド「リニア」を生み出す。 そしてリニアから心を分けてもらう形で生まれたのが完璧なアンドロイド「隷」…という設定でした。 隷は貴広の事を愛してたからこそ、離れたくなく追いつきたくて…そんな愛憎ストーリー。 千歳という少女の純粋な想い、その想いが繰り広げる見事な人間ドラマでしたね。 戦闘など大規模に展開しながらも、その実は個人レベルと、良く出来た構図だったと思います。 このシナリオに関する疑問はほとんどないでしょう。上手く解説されていました。 リニアシナリオはゲーム中の年代を測る上でも重要な箇所、新聞等が出てきますからね。 世界観に関しては最後にまとめるので、ここでは省かせていただきます。 あ、そうだ、千歳の死亡年が新聞と本とで記述が異なっていました。 新聞では2014年の前年2013年に、本では庵原博士の研究転機である1999年とありました。 どちらを採用すべきか考えると本の方が妥当でしょうね。 新聞だと余計な記述、余計な混乱をもたらすものは省くでしょうから、 10年以上に渡る長期間娘の心を保存していたというのは良い情報とならないかもしれません。 ここは本で書かれている1999年を庵原千歳の死亡年にするのが良いと思います。 (2)冬葉 他のシナリオがナーサリークライム神崎貴広の色が強いのに対し、ほとんど出てこないシナリオです。 これは癒しのシナリオ、傷ついた心の持ち主である貴広と冬葉の心を描いた感動ストーリーですね。 幼い頃から人を癒す能力を使って、最前線にいて死を直視してきた冬葉… 自分を捨ててまでも相手を助けてきた冬葉、 能力が弱くなって萌えッ娘島に飛ばされても、深い深い悲しみを抱えた貴広のために生きる冬葉、 けれど後半ではその優しさを失ってしまい、貴広の献身な態度によって徐々に心を取り戻す冬葉。 そんな2つの相反する心を見事に描き、「生きる事は何か」「人が物語に感銘するのは何故か」を現していました。 アイテムとしてグリム童話の「星の銀貨」を効果的に使っていたのが印象的でしたね。 貴広が考えた星の銀貨のラスト…それをあの大事な局面で使うとは思いもしませんでした。 1テーマを上手く魅せた綺麗なシナリオだったと思います。 このシナリオに関しての疑問はエンディングでの貴広復活ぐらいでしょう。 ナーサリークライムは基本的に不老不死です。ナーサリークライムとは五行の潮流。 渦のようなものであり、それは決して途絶える事がなく、世界に存在し続けます(細かい解説は後ほど) ですからその驚異的な再生能力で貴広は甦ったと考えるのが適切なようです。 (3)霧島 やや中途半端な感がありますが、ナーサリークライムの謎を解くのに重要なシナリオです。 金のナーサリークライムの血族である「霧島」、その力を持つ霧島差異はカンパニーの中心人物ながらも、 何らかの理由で動きが取れずカプセルの中で力を蓄えざるを得なかった。 カンパニーの目的はナーサリークライムに対抗する事、最強のナーサリークライム極東日没の力を抑え込む事、 そして霧島差異と香織の目的は五行の輪廻を断ち切る事、不老不死の輪から抜け出す事… 極東日没の土の力に勝てるのは木のみ、けれど木のナーサリークライムはおらず、 水である貴広によって産み出される必要があった。 そのため香織の金の力によって、弱まった貴広の力を覆い隠し、極東日没から守っていた… 香織は貴広のことが好きであり、島での平和な生活が好きだったが、 リニアパーツ調達に出たときに極東日没に見つかったことで事態は急変。 極東日没がカンパニーの情報を探してたこともあり、貴広を対抗手段として挙げざるを得ない苦汁の決断をする… 力に目覚めた貴広は五行の輪廻を解く鍵を探し、香織を探して旅に出てゆく…そんなストーリー。 私なりに補完したストーリー解説なので適切かどうかは分かりませんが、こんな感じだと思います。 不満だったのは香織の心情があまり描かれてなかったことですね。 こればかりはリニアシナリオ等で想像するしかないでしょう。 先が気になる終わり方だったので、香織の心情やその後に関して何らかの形で描いて欲しいものです。 このシナリオは宝の山。ナーサリークライムに関してはまとめるので後述ということで。 霧島香織の兄、霧島差異が何故カプセルから出てきたのか… 彼の目的は何なのか… それを考えていくと面白いシナリオですね。 二重影からのファンとしては九字兼定がでてきたのが嬉しかったり(^^; |
自分自身で受け止め切れなかったこともあり、整理してたら長文になったので、 かずさと鈴希は別途欄を設けて解説することにしました。 少し長いですが、参考になれば幸いです(^^; (4)かずさ 猫の恩返し…というより、かずさ人類補完計画(嘘) 「ここにいてもいいんだ」みたいなのがエヴァ26話っぽいですね。 一見ふざけたように思えるシーンなのにも関わらず、ジーンと来てしまうそんな不思議なシナリオでしたね。 「井上先生、井上先生!」と駆け寄るかずさ、文字だけ追うとギャグなんだけど、感動してしまう見事な演出です。 コロコロ変わるかずさを上手く声優さんが表現したおかげでしょうかね。 冬葉と同様に感動するシナリオですが、むしろ「暖かさ」を表現したシナリオだったように思います。 最後の全員での写真撮影といい、なんとなく心が温かくなる、そんな良いシナリオでした。 (シナリオのあらすじを書く前に疑問について考えたいので、あらすじは下へ) 普通に見る分にはいいんですが、理論的にシナリオ全体を眺めると混乱します・ かずさは御主人様に恩返しがしたかったのにも関わらず、洞窟の話では御主人様を救えていません。 それじゃ最初から御主人様が死んでいた事は明白じゃないか、という結論に至ってしまうんですよね。 そこは理論よりも感情。かずさの真の目的は不老不死となった化け猫の「存在理由」を欲しているのです。 分かりやすく感情の変遷を書けばこうなります。 1、死にそうな所を御主人に拾われて飼い猫になる⇒ありがとう、御主人大好き 2、御主人の両親(詳細不明、葬列と表現)が死亡⇒死を感じる、御主人とずっと一緒にいたい、永遠を望む 3、御主人に死の危険、かずさだけ外に出され助かる⇒力を手に入れれば御主人を助けられると思ったのに… 4、自分の居場所を探す⇒見つからない、人間になれば見つかるかも… 5、人となっても自分の居場所は見つからなかった⇒自分を受け入れ、助けてくれたのは大好きな御主人だった… 6、そうだ御主人を探そう、ひょっとしたら…⇒貴広と会う 7、貴広のために、御主人のために生きることで、自分の居場所が見つかると信じる 8、御主人≠貴広と知らされ、動揺。自分の居場所がないと思い込む⇒引き篭もり 9、貴広がありのままを受け入れてくれる、さらに鈴によって貴広が御主人であると感じる⇒居場所見つかる 言うなれば、館に居る時のかずさと洞窟でのかずさは別人のようなものです。 館に居る時のかずさは存在理由を全て「御主人のため」という心の指針を作り出す事で自身を支えていました。 けれどそれが崩れてしまい、洞窟に戻ったかずさは何もない状態。 それを貴広が救った、ありのままのかずさを受け入れたということでしょう。 かずさの御主人と貴広は同一人物かどうかという方に気を取られてしまうので分かりにくい箇所です。 で、かずさの言う御主人と貴広は同一人物であるかどうかの答えですが、YESでしょうね。 根拠を鈴希シナリオに求める事もできますが、鈴が厳然たる証拠です。 貴広は祖先だと思ってるようですが、貴広に身寄りが出てこず、孤独だったはず。 それならば鈴はどこで手に入れるのか? その血族はどこにいるのか説明つきません。 かずさの説明では御主人は倒壊家屋に下敷きになり、火の中に消えてしまってますから、普通は死んでますもん。 貴広がたまたま落ちていた鈴を拾ったとなると、シナリオが台無しですし、 条件に合うのは不老不死のナーサリークライム神崎貴広しかいないです。 たぶんかずさは「旦那は旦那だったんだね」というセリフにあるように御主人=旦那と分かったのでしょう。 つまり知らぬは貴広だけ。敢えてぼかす必要はあったんでしょうか? 素直で良かったと思いますが。 鈴希シナリオに向けての伏線、もしくは別にシナリオとして語りたいことがあったのかもしれません。 (「悲しい思い出でも点と点を繋いで線にしてゆく」、これを表すのに都合よかったのでしょう) そんなわけで最後にかずさシナリオのあらすじ。 白髪山に住んでいた子猫は死にそうになっていた所を御主人様こと、神崎貴広(子ども)に拾われる。 貴広(もしくは貴広の扶養家族)は子猫に易者から買った鈴を付け、かずさという名前で子猫を可愛がった。 けれど幸せは長く続かず、貴広の扶養家族はこの世を去ってしまう… その時、かずさは初めて「死」というものを認識し、貴広とずっと一緒にいたいと願った。 だがその願いも虚しく、地震によって貴広は家屋の下敷きになってしまい、 かずさを外に放り投げて火に包まれてしまうのだった… かずさは己の居場所を見つけるため、人の形になって貴広を探したのだった… ん? 今閃いたんですが、火に包まれたシーンがかずさと貴広の別れじゃないのかも。 かずさが秘密をばらすシーン(ベッド)、 「人の姿になるために旦那とはいつのまにか御主人と離ればなれになっちゃって」 この言葉を上記の「錯乱」と捉えれば上のあらすじに落ち着きますが、この言葉が正しいなら状況は変わります。 「生死が分からないような状態」を「いつのまにか」と考えるのは無理があります。 でもかずさが子猫だったために、「死」という状況判断ができないまま、ゲーム舞台に至った可能性もあるし… そうだなぁ、逆もまた然り。錯乱状態が逆であったとしたら、どうでしょうか? 洞窟内での会話が冷静な状態のものだと思ってましたが、 洞窟での会話の方が失望感で錯乱しているかもしれません。 まず第一に貴広が御主人でないと思ったので、その前後の御主人(本当はどちらも貴広)を別人と考えてしまい、 御主人を助けられなかったと思い込んでいる可能性が考えられます。 そしてもう1つ、話の趣旨が「己の無力感」についてであって、「御主人との関係」ではない点に注目したいです。 「永遠の命があれば御主人を助けられる」について語っているのですから、 御主人自身の力でその苦境が乗り越えられた可能性もあります。 つまり御主人が生き残り、その後に再びかずさと過ごしていたが、 かずさは人間になるために離れ離れになったという解釈もできるかもしれません。 鈴希シナリオとかずさシナリオに矛盾がないならば、この解釈の方が正しいと思えてきます。 鈴希シナリオにおける過去の特徴は、 「破棄された灯台の管理室にこっそり住んでいた」 「周辺住民からさげずまれていた」 「その日食うものに苦労するほど貧しかった」、この3点が挙げられます。 かずさシナリオ過去では日本家屋があったのですから、鈴希シナリオの方が後になります。 さらにかずさ過去の葬列が鈴希でなく、扶養家族と捉えるのはきちんとした葬式をしていることが理由です。 話を整理してあらすじを書けばこうなります。 だがその願いも虚しく、地震によって貴広は家屋の下敷きになってしまい、 かずさを外に放り投げて火に包まれてしまうのだった… しかし小さいといえども、御主人である貴広は水のナーサリークライム。 その窮地を脱し、生き延びたのだった(怪我の程度は各自想像して) 全ての財産を失った貴広であったが、子猫のかずさと再会し、破棄された灯台の管理室で暮らし始める… そこで鈴希という少女と出会うのであった(以下、鈴希シナリオへ続く) それじゃいつ貴広とかずさは離れ離れになってしまったかといえば、鈴希が死んでからでしょうね。 殺人を犯したことで連行され、ボコボコにされ… 猫のままでは助けられない、貴広の寂しさを埋められないと思い、人となるために貴広の元を離れた… うん、こちらの方がスマートですね。 かずさの洞窟内の会話は喪失感ゆえの無力感と考えれば説明できます。 いやー、自分が一番スッキリしました(^^; かずさが一番好きですから、自分なりに消化しませんとね〜 そういえば典太三世って何だったんだろう…典太光世の間違い? それとも別銘柄があるんでしょうか? 目立たないけど密かな謎です(^^; (光世の方は前田利家系の情報を探してくだしゃい) (追加:やはりゲーム中の記述は変換ミス説が有力な模様です<掲示板より) (5)鈴希 一番最後に登場し、ベールに包まれた謎キャラ。 貴広の過去に関係していて、かずさシナリオの内容補完もしています。 冬葉と同じように「貴広の癒し」を目的としたシナリオですね。 家を失った貴広は破棄された灯台の管理室に身を寄せて暮らすことになる。 そこに現われた同じ孤児の鈴希。 最初は貴広も煙たがるも、2人とかずさを含めた3人は家族のように暮らしていた。 だが鈴希は病気で死んでしまう。 その後、かずさとも離れ離れになった貴広は孤独の人生を過ごす… 多くの人の命を奪い、悲しみと苦しみを一心に背負って生きていった貴広…彼の心を癒すものはいなかった… そこで天国に居た鈴希はそんな貴広の心を癒そうと、かずさの力を借りて、再び貴広の前へ舞い降りるのだった… ストーリーとしては分かりやすかったので、あらすじはこれで十分でしょう。 しかしリニアといい鈴希といい、本来還るべき魂を無理に留めていていいものか(^^; まさに神をも恐れぬ所業。宗教的に見ると、マズイんじゃないかい? んー、でも貴広は世界を構成する五行なので神とも言えるから大目にみましょう(笑) (日本は多神教なので問題なしっつーことで(爆) 鈴希の存在に関してはあらすじの通り。 謎と言えるのは、髪の毛を腕にする能力とかずさエンドで鈴希が出てくることぐらい。 かずさエンドは23日の最終イベントから日数が経っていませんから、 鈴希が消えるのはその後であるとするのが一番説明しやすいと思われます。 だけどかずさは鈴希が消える事を知っているのですから、 貴広自身が気付かなければならないとはいえ、少し薄情な感じがしてしまいます。 ここはもう想像力で埋めてしまうのが一番です(笑) 解釈だ、解釈。物語は受け手によって変わるからいいのです(^^; そんなわけで以下のように考えてみるのはいかがでしょうか? 鈴希はかずさの力を借りて、現世へ舞い降りた。 ただかずさだけでは存在を維持できないので、「貴広が泣くこと」「期限」と誓約を付けることで存在を強めていた。 かずさエンドでは妖力の源である貴広との絆が強まることで、かずさの力が増幅。 かずさを媒介としてナーサリークライムの力が鈴希に作用し、現世での存在力を強化。 鈴希の特殊能力はその現われである。 かずさのアフターストーリーで貴広が影を伝って現われたりしていますよね? その能力がどこか鈴希に繋がっている感じがします。 影への同化能力を幽霊だからという理由だけでは不十分ですし、髪の物体化は説明できないっす(^^; だからといって鈴希はナーサリークライムの血族でないですし、貴広の妹でもありません。 (過去の灯台シーンでの「妹」は方便なので無視して可) なら力を付与しているかずさの能力かといえば、それも違うと。 そこでかずさシナリオでの「御主人=貴広」を導入し、力の源である貴広の血、つまりは漆黒そのものに求めます。 絆が強まることで能力が上がるというのは、動物変身物のパターンっちゅーことで(笑) リニア・鈴希両シナリオではかずさの傷は一晩で治りきらなかったし、鈴希シナリオでの猫サイズも小でした。 けれどかずさシナリオでは一晩で瀕死の傷が治り、猫サイズも巨大なものでした。 それらを理由にすれば説得力持つんじゃないでしょうか? 鈴希エンディングではかずさの能力を犠牲にすることで転生させた形ですね。 そういう方法あるなら不老不死の輪から抜け出せるんじゃないのか(^^; あ、でも猫のまま不老不死なのかも。それって可哀相な…まぁ、エンディングですので細かい事は良しと(爆) |
はい、皆さんお待たせの(待ってない!?)ナーサリークライム解説編です。 …と言いつつ、私もよく分かっていません。中国の陰陽五行説に詳しい人に聞いてくだしゃい(爆) 自分の分かる範囲で解説するとこうなります。 以下、倫理の教材から拝借(実教出版株式会社 新倫理資料より) 「宇宙の根源は物質的なエネルギーとしての気である。 一元気(初めの気)の運動から陽気(+・奇)・陰気(−・偶)の二気が派生し、 二気の交合から天上に星辰・方位が、地上に木・火・土・金・水の五気が生じ、 五気の作用(五行)から森羅万象が形成される。 したがって万物は同根、天地は互いに往来し交感・交合しあうものであり、その無限の循環が宇宙の生命である。 陰は静(柔順)、陽は動(剛健)の状態を言う」 五行には相生と相克の法則があります。 五行相克とは五行の力関係。「連邦はジオンに勝つが、ネオジオンに負ける」みたいな奴です←古い(^^; 木気が土気を滅ぼし、土気が水気を、水気が火気を、火気が金気を、金気が木気を滅ぼすという関係を指します。 五行相生とは五行の循環を現します。 木気は火気を生じ、火気は土気を、土気は金気を、金気は水気を、水気は木気を生じる関係を指します。 また五行には味・色・獣・感・方位・十二支など多くのものが配当されています。 五行に関する解説はこれで十分。 あとはゲームのキャラクターに当てはめていくだけです。 ナーサリークライムとは五行の力を指すので、世界には五人しか存在しません。 ゲーム中で出てくるのは3人。 土気の極東日没、水気の神崎貴広、金気の霧島差異。 この中で一番力を持ち、世界で恐れられているのが土気の極東日没です。 貴広は水気ですから、土気の極東日没との関係は土剋水。極東日没に勝つ事はできません。 極東日没を倒すことができるのは、木剋土である木気のナーサリークライムです。 けれど木気のナーサリークライムは何らかの理由で存在しない、もしくは力を失っているようです。 つまり極東日没に対抗できるナーサリークライムは存在しないのです。 そこで五行相生が出てきます。 木気のナーサリークライムを生み出せるのは、水気のナーサリークライム神崎貴広のみ。 極東日没に対抗するには水気の神崎貴広を守らなければならない… そこで霧島香織が側にいて、貴広をサポート・監視、力を隠していたのでしょう。 ではナーサリークライムの呪われた輪とは何か? それは不老不死だと思われます。 五行は世界を構成する要素であり、その潮流が已むことはありません。 渦のようなもので力が弱まったとしてもいずれ復活する、そういう力。 だから死は存在しないようです。死んだとしても時間をかけながら肉体の再構築を図ります。 ただシナリオを見る限りでは、肉体の再構築の際に記憶が曖昧になる、失われるようですね。 かずさ猫時の記憶、鈴希の記憶、リニアの記憶…それらは再構築の際に失われた記憶なのでしょう。 かずさ・鈴希は一括りで良いとして、千歳と会うまでの間、そしてカンパニーに保護されるまでの間、 最低でも2回はそれぞれ肉体的な死を経験したと考えられます。 あと見た目の年齢ですが、時代によって成長具合は違うようです。 貴広の場合はカンパニーに保護されてから成長したようです。それまでの間は子どものままだったのでしょう。 金気の血族である霧島香織も10年以上幼児体系なので、これも成長が止まっている状態。 ひょっとしたら何十年、何百年経てば大人の女性になるのかも… でもツルベタちんちくりんじゃないと価値が(爆) ナーサリークライム解説の最後として各人の目的を整理しておきましょう。 カンパニー自身の目的は極東日没に対抗することだと思われます。 危険分子とも言える世界を構成する五行の力、その力を無効化し、絶対的な支配をしようとしているのでしょう。 そのためにLABがN計画を行い、人工ナーサリークライムを生み出したようです。 カンパニーのメインフレームに居ると思われる霧島差異の目的は五行の輪廻を断ち切ることです。 不老不死の呪いの輪から抜け出し、平和に人間として生きることが願いなのでしょう。 霧島エンドで差異がカプセルから出てきますが、あれは力が弱まっているためなのでしょうか? 萌えッ娘島を守るために力を貸せなかったことを香織に誤っていましたし、 普段はカプセル内で力を蓄えていると考えられます。 それは極東日没にやられたのか、他に理由があるのか分かりませんが… 極東日没の目的もまた五行の輪廻を断ち切ること。でもこちらはやや好戦的(?)に見えます。 戦うことに生きがいを覚えているようなので、他のナーサリークライムを一人ずつ消すのが目的と言えます。 あ、そうそう、妙な勘ぐりだと知ってて言いますが、 メインヒロインで冬葉だけ普通というのも変だと思い、何かに繋がらないかと考えたところ、 火のナーサリークライムではないかという結論に辿りつきました(爆) でも理由が2つしかないので困るんですが(苦笑) 1つは五行の火が意味する色は「朱」であること。 作中でもサンタクロースが話題となったり、プレゼント箱が出てきたりと「朱」が良く出てきています。 もう1つは五行の火が意味する味は「苦」であること。 作中で紅茶が異様に苦かったりと、味覚が普通でないことがしつこく出てきます。 ひょっとしたら、何か意図があるんじゃないかと勘繰ったところ、こういう結論へ(^^; 飛躍ありすぎですね、すいません、忘れてください(爆) ネタバレ解説の最後は主人公である神崎貴広に関してです。 って、上のナーサリークライム編でほとんど解説してしまいましたね。 まぁ、最後にまとめておきましょう ゲーム中で一番古いのは大正時代、1910〜20年代となるので、そこから。 (1)大正時代、日本に住んでいた貴広。 その時は家族(直系か養子かは判別不能)と一緒に暮らしており、日本家屋の下、幸せに過ごしていた。 その時にかずさを拾ってきて飼い猫とする。 しばらくすると家族の者が亡くなってしまい、かずさと2人の生活。 さらに悲劇は重なり、地震で家屋が倒壊。かずさを外へ放り投げ、貴広は火に包まれる… けれどナーサリークライムであったため、死ぬことなく生き延びる。 (2)かずさ(子猫)と合流した貴広は廃棄された灯台の管理人室に隠れて暮らすようになる。 そこで同じ孤児の鈴希と出会い、2人+1匹の貧しいながらも楽しい生活をする。 けれど鈴希が病死してしまい、貴広はかずさとも離れ離れになってしまう。 (3)しばらく詳細不明。瀕死の状態に陥り、再生のため時間がかかる⇒かずさ・鈴希の記憶を失う (4)1990年代(98年?)に千歳と出会う⇒リニアシナリオ回想参照 (5)しばらく詳細不明。同じく瀕死の状態に陥り、記憶を失う。 (6)カンパニーに保護され、諜報機関幹部候補生のための教育を受ける。 この頃に成長し、子どもから大人の姿へと変わってゆく。 (7)朱キ日に極東日没と戦い、完敗。 (文章表記を見ると、ナーサリークライムの力はこの時既に使われてなかったように思えます 精神的なものなのかもしれないし、五行における陰の期間で能力が弱まったのかもしれません) 貴広に関してはこんな所でしょう。 1つ気になるのはゲーム舞台の時代設定です。 ファンムックなどは見ていないので、ゲームにおける記述のみで判断します。 時代判定できそうな情報はリニアシナリオとかずさシナリオにおいて見かけます。 (1)リニア18日 おやじさん「まだ俺が小さかった頃、まだ世界の終わりと言われる日は訪れておらず、 比較的どんな情報でも簡単に手に入れられた。 特に今ではカンパニーの技術者しかしらないようなアンドロイド関係のものがな。 その時に読んだ奇妙なアンドロイドの話を思い出してな」 (2)リニア20日 2014年12月26日の新聞を見て… 「100年近く昔の新聞をそのままデジタル情報で残していたものだ」 (3)かずさ21日 「大正って、年号の?」「うん」「それって百年くらい前の話だぞ」 「お前の言っていることは百年以上前の話だ…」 これぐらいでしょうか。アンドロイドと人間が暮らすようになって半世紀あまりという文もあったかもしれませんが。 どの情報が当てになるかと言えば(2)でしょう。 (1)だと情報規制前ですから、新聞報道でなく、本でおやじさんは知った可能性が強いです。 (3)は大正時代の詳しい年数を貴広が知っていると思えません。 百年というのは会話における年数の長さを示す尺度なので、百年以上という言い方が適切です。 以上のことから、(2)の意見を採用し、2100年前後と考えるのが妥当なところでしょう。 以上が私のモエかんのネタバレ解説・解釈でした。 私の想像・意見でしかありませんが、ゲームを考える上で参考になれば幸いです。 |