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2018年08月21日

大阪桐蔭高校が春夏連覇達成

記念すべき第100回目となった全国高校野球選手権甲子園大会は、
北大阪代表の大阪桐蔭が13-2で秋田代表の金足農業を下し、
春のセンバツ大会に続く春夏連覇を達成しました。
大阪桐蔭は昨夏こそ、準優勝した仙台育英に逆転負けを喫したものの、
昨年春も優勝しており、これで4シーズン中3回の全国優勝、
圧倒的な強さを誇りました。

4番センター藤原選手と5番ショート根尾選手というドラ1級の2人を擁し、
140キロ後半をマークするエースの柿木投手、長身左腕の横川投手、
他にもキャプテンの中川選手ら昨年からのレギュラーを数多く擁し、
タレント軍団であったことは確かなのですが、
それ以上に今大会で光ったのは控え選手・ベンチ入りできなかた選手の輝きでした。

沖学園戦では沖学園の選手にアクシデントが発生すると、
すぐさまコールドスプレーをもって飛び出すなど、
控え選手でも試合に集中しているのはさすがだと感じさせられました。
そして、毎試合試合終了後の監督談話で飛び出す「データ班」の存在、
対戦相手の学校を研究し尽くす部員の存在が大阪桐蔭の強さになっています。
決勝戦でもランナーが出ると、初球バントの構えで揺さぶった辺りも、
バントの構えを見せると高めにボール球を投げる吉田投手の癖を利用したものでしょう。
試合に出ている選手だけではない、ベンチ入りしている選手だけではない、
部員全員が勝利のために何ができるかを徹敵的に考え抜いた結果、
それが大阪桐蔭の勝利に対する執念なのだと思います。

今大会も順風満帆といったわけではなく、北大阪大会のライバル履正社との逆転勝ちを始め、
試合前半は負けている展開が多く、決して楽に勝てたわけではありませんでした。
それでも、最少失点で凌ぎながら、最後は勝負所で打ち勝つ野球、
部員全員が勝利に対して貢献する大阪桐蔭の野球が見せた勝利への執念だったと思います。


それに比べると、準優勝した金足農業はレギュラー9人で戦い続けた結果、
最後は力尽きた感もあり、やや時代遅れな感じはなきにしもあらずでした。
昨年は1回戦を突破した学校のほとんどが複数投手制を敷いていましたが、
今回はベスト4の愛媛の済美、ベスト8の下関国際付属等々、
エース1人を中心に勝ち上るチームも多かったように思えます。
正直に言って、県予選で100校以上のチームが参加する大会を勝ち抜くのと、
30校程度しか参加しない大会を勝ち抜くのとでは、やはり労力の違いはあります。
県予選ならエース一人で勝ちぬけたとしても、甲子園大会で勝つのには無理が生じますし、
高校野球より先の将来も野球を続けたいのであれば、
やはり複数投手制を基本にすべきだと思います。
もはやエースが投げ続けるのが美徳とされる時代は終わったんです。
それを金足農業も他の学校も大阪桐蔭を手本に学んでほしいように思えます。


それと今大会で話題になったのは、
創志学園の西投手のガッツポーズと、金足農業の吉田投手の侍ポーズ。
まぁ、正直言って西投手のガッツポーズはやり過ぎな感もありましたが、
そこまでとやかく言うのもどうかとも思います。
個人的にはもっと自由で良いと思います。相手を侮辱する行為でなければ何の問題もありません。
こういう問題になると、すぐに「日本は武道の精神で礼節をもって~」とか言い出しますが、
いつから野球は武道になったのか? それは野球の本質じゃありませんよね? 関係ないよね?
日本人はすぐに問題の本質を見失う。簡単に出る答えもゴチャゴチャにして考えてしまう。
中指を立てたり、親指を下に向けたりといった相手を侮辱する行為は、
スポーツの本質に関わる問題なので論外ですが、
それ以外のポージングは何の問題もないと思います。

そういうことを言うなら、1塁へのヘッドスライディングも禁止した方が良い。
一説では駆け抜けるよりも、ヘッドスライディングの方が速いという話もありますが、
それはスライディングが上手い人の話、前傾姿勢のままスピードを殺さずに滑れる人の話です。
今大会を見ていても、ほとんどの選手が一拍止まった後に頭から飛び込んでる、
明らかな失速、駆け抜けた方が速いです。
そういうヘッドスライディングはダメだった時のアリバイ行為でしかないんですよ。
それよりも駆け抜けてダッシュでベンチへ帰れ!と思います。
投手のガッツポーズには苦言を呈する癖に、
打者走者の1塁ヘッドスライディングは青春と称える高野連は歪んでます。
意味がない行為を称えてもしょうがないことに気づけ。どっちも同じです。


選手個人の評価では、投手より野手が目立った大会だったと思います。
大阪桐蔭の藤原選手と根尾選手を双璧に、報徳学園の小園選手、
日大三高の日置選手、近江の北村選手、浦和学院の蛭間選手、
花咲徳栄の野村投手のバッティング等々、3年生では野手が目立ちました。
投手では金足農業の吉田投手がドラ1クラスですが、
他は大阪桐蔭・柿木投手、平安高校・小寺投手がドラフト中位かなという印象。
投手では逆に2年生が目立ち、
創志学園・西投手、星稜・奥川投手、木更津総合・根本投手、
日大三高・井上投手と広沢投手と、
150キロ近いストレートを投げる本格派投手がゴロゴロいました。
今年は野手、来年は投手、それがプロ側の評価じゃないでしょうか。

No1を決めるなら…大阪桐蔭の根尾選手ですかね。
センバツの時はバッティングも守備もまだまだ粗削りといった印象ですが、
今大会ではショートの守備の安定感が凄まじく、
打撃の方でもボール球に手を出さず、大振りもせずにコンパクトに振りぬくなど、
攻守に洗練された感じがありました。
逆にピッチングの方はあまり調子が上がらず、
決勝のマウンドも好調の柿木投手に譲ることになり、投手よりも野手の評価でしょうね。
ライオンズで活躍した松井稼頭央選手のような、
ダイナミックな守備と打撃で、プロ野球でも活躍を見せて欲しいです。


◆高校野球ネタ タイブレーク制度について
今大会では2試合ありました。
そのうち1試合は済美が2点取られた後に、サヨナラ満塁弾で4点、
ただ試合展開的には点の取り合いだったので、それほど違和感ありませんでしたが…

県予選の静岡県大会では、島田商が8回まで3-1と静岡市立をリードしていたものの、
3-3の同点に追いつかれて延長戦へ。
延長11回に島田商が1点をリードするも、11回裏に静岡市立が同点に追いつき、
延長13回のタイブレークへ突入。
延長13回タイブレークに島田商が1点取るも、静岡市立も1点取って再延長、
延長14回に島田商が5点を取るも、静岡市立は4点を返して1点差、
しかし一歩届かずに、終わってみれば、3-1の試合が10-9になってました…

終盤は点の取り合いになりましたが、決して乱打戦というわけではありませんでした。
それが4-4のタイブレークの結果、10-9の試合になってしまったわけです。
これはもう試合の印象そのものが変わってしまうのでは?
タイブレークのスコアはサッカーのPK戦の結果と同種に扱うべきです。
「4-4の延長タイブレークの結果、6-5で島田商の勝利」という形に。
タイブレークのスコアは通常試合のスコアから外すべきだと考えます。

記録的にも、予め設定される走者2人は責任ランナーではないので、
投手の防御率に直接的に影響することはありませんが、
予め設定された走者に得点は記録されるなど、やや腑に落ちない点もあります。
いっそ、タイブレークの記録は参考記録に留めた方が分かりやすいと思うのですが…

接戦の印象そのものが変わってしまいかねないだけに、
タイブレークの記録方法に関しては一考の余地があると思います。


◆高校野球ネタ 投手の連投とその限界
最近、話題になっている投手の球数制限ですが、一概には言い切れません。
プロ野球のキャンプでも投手が100球・200球と球数を投げる理由は、
実戦を想定した数を投げるという意味よりも、
一度疲れて余計な力が入らない状態にした上で、
無理のないフォームを作ることに意味があります。
それと一緒で、多少疲れがあった方が余計な力が抜けて、
コントロールとキレが向上することがあります。

今大会の金足農・吉田投手の投球を見ていると、それが分かります。
1回戦はほぼストレートでしかカウントが取れず、ボールの威力で押す投球でしたが、
2回戦には変化球でカウントを稼ぎ始め、
3回戦の横浜戦では直球と変化球の割合がちょうど良くなっていました。
内容的に一番良かったのは準決勝の日大三高戦で、
ストレートのキレと変化球のコントロールが冴えわたっていました。
もしも、決勝でも同じような投球ができていたなら、結果は分かりませんでした。

一方で、疲れから投球フォームそのものを崩してしまう恐れもあります。
一番ありがちなのが、変化球で楽をしようとして肘の位置が下がること、
スライダーを多投する結果、小手先で曲げようと意識する余り、
肘の位置が下がってしまい、ストレートの威力が落ちることがあります。
それが決勝の吉田投手のピッチング、連投となった準々決勝の近江戦も危うい所でした。

総合的に考えると、エースを中心に戦うことは決して悪いことではなく、
逆に多少疲れている時の方が余計な力が抜けて好投することもあるものの、
連投で150球近く投げることはやはり肉体的負担の方が大きいように思えます。
連日の連投であるならば、100球以上投げることは避けた方が無難でしょう。

毎試合複数投手で継投をする必要はないと思いますが、
連日の先発連投は避ける方が良いように思えます。
ただ、ルール化するというよりも、指導者のモラルとして確立すべきでしょうね。
選手の方でストップかけるようでは手遅れ。
指導者が勇気をもって止めなければダメです。