06センバツ甲子園大会 決勝

決勝戦 横浜(神奈川) 21−0 清峰(長崎)

(横)川角(6回)−浦川(3回)
(清)有迫(2回0/3)−富尾(3回0/3)−有迫(1回)−
  佐々木(2回)−木原(1回)
横浜 21
清峰

打撃戦になるだろうとは思ってましたが、まさかこんな大差が付いてしまうとは。
21−0。
センバツ大会の決勝の史上最多得点(当然最多得点差)記録となりました。
3年前の広陵−横浜戦(横浜が当時の最多失点)も凄いと思いましたが、まさかこうも簡単に抜き去るとは。
メンバーが違うので、3年前の悔しさを晴らしたというわけではないでしょうが、
これだけの記録を作るとなると、何か因果があったのかなとも思ってしまいます。
3年前に決勝で打ち込まれた当時2年生の涌井投手は、西武に入団して今年ここまで先発2戦2勝です。
やっぱり色々と感慨深くなります。
多くの人はこの優勝を松坂投手の春夏連覇と並べて見るんでしょうが、私は3年前と並べてみたいですね。
横浜にとっては3年前の敗退がスタートで、今回雪辱を果たしました。
清峰もまたこの大敗がスタート。落ち込むことなく、雪辱を果たして欲しいです。


試合は横浜の良いところばかりが目立ちました。
2回表に四球・送りバントでランナーを2塁へ進めると、
9番越前選手が内角ストレートをおっつけて打つ一二塁間抜くタイムリーで先制、
その後も1番白井選手のヒット・死球で満塁とし、
3番高浜選手の三遊間抜くタイムリーヒットで、
2塁ランナー白井選手がアウトのタイミングも俊足とナイス走塁でセーフ。
小技と逆方向へのバッティング、そして素晴らしい走塁で3点を横浜が先行しました。
3回には5番佐藤選手の2ベースが出た所で、清峰のエース有迫投手が降板。
2番手の富尾投手がマウンドに上がりますが、ワイルドピッチで1点を献上。
さらに4回に相手の四球・エラーに付け込んで2点を追加、
6回には積極的な盗塁策でランナーを進め、3番高浜選手の三遊間抜く2点タイムリーなどで9点を追加。
途中で再登板した有迫投手も流れを止められず、火に油を注ぐ結果となってしまいました。
その後、登板した佐々木・木原投手からも点を奪うなど、
最後まで手を緩めなかった横浜が14安打9盗塁で21得点を奪いました。

守りの方では先発・川角投手のコントロールが不安定で、甘い球もあったのですが、
粘り強く投げて、6回3安打2四球3奪三振無失点とまとめました。
2回の1アウト2・3塁のピンチではセカンドフライ、空振り三振と踏ん張り、
3回の2アウト1・2塁では4番木原選手の一二塁間を抜くかという打球に対して
セカンドの白井選手がダイビングで止め、素早く1塁に送球してアウトにするなど、
バックの助けもあって最後まで清峰に流れをやりませんでした。
ショートの高浜選手は3回の先頭打者の打球処理など、
三遊間深くの打球でも強肩を生かした守備で何度もアウトにし、最後まで守備は乱れませんでした。
2番手の浦川投手も好投し、3回をノーヒット・四球1個に抑えて完封勝ち。
投打の噛み合った横浜が21−0の大勝となりました。

14安打で21得点を奪ったという数字から分かるように、
決して横浜が派手に打ちまくっての勝利というわけではありませんでした。
清峰の与えた四死球はなんと17個。
横浜の放った長打は14本のうち、3本のみ。ホームランはなしです。
つまり最後まで繋ぎの野球に徹し、荒っぽい野球をしなかったということです。
準決勝の岐阜城北戦で見せたバッティングと同じで、
逆方向へライナーで打ち返すことを心がけて、
振り回さずにボール球を見極めて四球で出塁しては積極的に盗塁を仕掛けるといったように、
最後まで手を緩めませんでした。
見ている方からすれば、「おいおい、もうその辺にしといてやれ」なんですけど、
一発勝負でビッグイニングの多い最近の高校野球では仕方ないことですよね。
今大会でも横浜は八重山商工戦で前半に7−0とリードするも、
2番手大嶺投手から点を取れずに、1点差まで追い上げられましたから、
最後まで手を抜かなかったのは攻撃だけでなく、守りのためでもあったのでしょう。
21得点を挙げたのにも関わらず、エラーなしの0点で終わったのは、
そういった手を抜かない攻撃の姿勢があったからこそだと思います。



残念ながら決勝で大敗した清峰高校ですが、
春夏通じて長崎県勢初の決勝進出・準優勝となったわけですし、この結果に胸を張ってもらいたいです。
昨夏に愛工大名電・済美、
今春は東海大相模・PL学園といった名門校を次々と破ってたのは見事でした。
2季連続で旋風を起こした清峰高校、もう紛れもなく強豪校でしょう。
名門となるにはまだ歴史が足りないかな?
今回の悔しさを胸に練習に励み、今度は清峰が決勝の最多得点を更新する気持ちで頑張って欲しいです。
大差にはなりましたが、横浜とそう実力差があったとは思いません。
大会を通じては打線の卒のなさ・力強いスイングが目立ちましたし、
積極的なエンドランやミスを恐れない果敢な走塁は素晴らしかったです。
守りの方も積極的でファインプレーが目立ちましたし、
エース有迫投手は準々決勝・準決勝と完封勝利をするなど、
優勝した横浜同様に投走攻守と揃ったチームでした。
決勝はちょっとした試合展開の差だったと思います。
序盤の2回・3回のチャンスを生かせていたら、全く別の試合展開になっていたでしょう。
横浜は試合後半に失点することが多かったので、
序盤に1点を取っていれば試合は全く分かりませんでした。
試合の流れというのは怖いですね。一つのプレーで大きく変わってしまいます。
今日の試合で清峰も一つのプレーの大切さ・怖さを知ったことでしょう。
思い切りのいい野球に加え、プレーの正確さを身につけて、
夏にこの悔しさを晴らしに来てもらいたいです。

先発した清峰・有迫投手はこれまでの疲れが出てしまいましたね。
立ち上がりの制球の悪さを修正する前に横浜打線に掴まってしまいました。
最後は残念な形で終わってしまいましたが、
準々決勝・準決勝を2試合連続完封で抑えるなど成長も見せました。
投球フォームが固まったことで、ボールの出所が見づらくなり、
ストレートに切れが出てきたのが大きいです。
制球も大分安定してきましたから、今のフォームを忘れずにいてもらいたいです。
このまま成長していけば、夏には安定感ある左腕投手になれるはず。
さらにもう一回り大きくなって甲子園に戻ってきて欲しいですね。



優勝した横浜高校は投走攻守と全ての面が秀でており、
戦うに連れてチームワークも強まっていきました。
今年の横浜は福田・白井・高浜・川角選手ら素質ある選手が多かったのですが、
チームとしてのまとまりはもう少しでした。
それを象徴するように1回戦では持ち前の打線が発揮されず、
引っ張り過ぎて凡打したり、走塁ミスがあったりで、
打線の繋がりを欠く展開となり、1点を取るのがやっとでした。
しかし勝ち進むにつれて打線が繋がり始め、
盗塁やバント、右打ちも見事に決まり、チームプレーが徹底されていきました。
準々決勝以降はいずれも二桁得点。
早実・斉藤投手、岐阜城北・尾藤投手、清峰・有迫投手といった好投手を
逆方向への打撃や癖を盗む盗塁で見事に攻略しました。
今日はその典型的な例ですよね。
安打数は14ながら9個の盗塁、振り回さずに後ろへ繋ぐ姿勢が21得点という結果に結びつきました。
戦うに連れて徹底されていったチームバッティングが横浜の勝因ですね。

それに加えて鍛えられた守備です。
今日も守備はノーエラー。
3回のセカンド白井選手のダイビング好捕で相手の反撃を断ったのを始め、
ショート高浜選手の強肩を生かした守備と鉄壁の守備を誇りました。
2回戦の八重山商工戦の挟殺プレーで2つアウトを取ったりと、
今大会では高校生離れしたプレーが目立ちましたね。
今大会は打線が目立ちましたが、ほとんどがビッグイニングによる大量得点、
試合の大半を支えたのがこの守備です。
守備の安心感が多彩な攻撃を呼び起こしたように思います。

また走塁面の良さが際立ちましたね。
八重山商工や清峰といった打撃のいいチーム、
PL学園のような守備のいいチームなど、横浜に負けないチームもありましたが、
横浜以上の走塁を見せたチームは他になかったと思います。
今日の2回の3点目のホームを狙った白井選手の走塁は見事でした。
足の速さは勿論のこと、タッチをかわすスライディングの技術が素晴らしいです。
白井選手は初戦こそ暴走気味な走塁がありましたが、
以降はリードオフマンとしてチームを引っ張りました。
準決勝のランニングホームランにした走塁は高く評価していいと思います。
昨日・今日の盗塁も積極的というよりは、相手の癖を盗んで走っている感じで、
相手キャッチャーの送球等は全く問題になっていませんでした。
相手投手の癖を盗むだけの観察眼、そういったものも横浜は優れてましたよね。
名門校らしい野球意識の高さが伺えます。

センバツ大会を見事優勝した横浜に期待されるのは、松坂投手を擁した時以来の春夏連覇です。
とはいえ、その道はそう簡単なものではありません。
神奈川にはセンバツにも出場した東海大相模を始めとする強豪がひしめいており、
さらに全国に目を向ければ昨夏優勝・神宮大会優勝と今大会も優勝候補筆頭ながらも、
出場辞退で涙を飲んだ北海道の駒大苫小牧がいます。
多くのライバルがいる上に、春優勝したことで松坂投手の時のチームと比べられたりと、
周囲も一気に騒がしくなり、かかってくるプレッシャーも相当なものだと思います。
夏の甲子園に戻ってくるだけでも一苦労、
そこを勝ち上がって連覇するのにはまだまだ険しい道のりが続きます。
今大会の結果を自信にするのは構いませんが、
慢心して個人プレーに戻ってしまうことなく、しっかりと練習に励んで欲しいですね。
今大会で高まったチームプレーに更に磨きをかけていくことを期待したいです。

精神的なもの以外で課題なのは投手力の強化。
川角・浦川・西嶋・落司投手と他校のエース級のレベルの高い投手陣ではありますが、
絶対的なエースという存在ではありません。
夏はさらなる激戦、連戦となっていきますから、
スタミナ強化とともに各投手の能力向上は必要不可欠です。
各投手が自覚を持って練習に取り組んで欲しいです。
目指せ、春夏連覇!
横浜の戦いは既に始まっています。プレッシャーに負けず頑張ってください!




大会を通じての感想ですが、今大会はそんな派手な大会ではなかった気がします。
一番熱かったのが2回戦。早稲田実業と関西の引き分け再試合辺りです。
その後はどちらかと言えば一方的な試合展開が多かったですね。
そういった一方的な試合展開やでもホームランといった派手さはありませんでした。
どちらかというとヒットを繋いで連打で大量点を奪うという形で、
ホームランによる得点は少なかった印象を受けます。
直前に行われたワールドベースボールクラシックで見せた日本野球のような
繋ぎの野球を各チームが実践していた感じです。
豪快な長打ではなく、相手の隙を突く走塁や果敢な盗塁、
相手の攻撃を断つファインプレーの数々といったように、
玄人好みの技術系のプレーが目立っていたように思います。
とりわけホームのクロスプレーが熱かったです。
今日の白井選手の走塁のようにスライディングが上手かったです。
それに対してキャッチャーの反応がイマイチ(今日のは普通でしたが)
余裕がある時にでも走者を待ってしまい、
結果、かわされて追いタッチになる場面がちらほら。
内野手のランナータッチを含め、走者を置いてのプレーをしっかり練習して欲しいです。
その点で優れていたのが横浜高校。
多くの学校に横浜の走塁とそれに対する備えを学んでもらいたいです。

選手個人では例年よりも不作かなという印象を受けてしまいます。
こちらもどちらかというと玄人好みの感じでした。
140キロ以上のストレートを投げたのは何人ですかね?
大嶺・前田・斉藤・ダース・唐川・尾藤・堀岡投手の7人ですかね。
尾藤・堀岡投手は141ぐらいでしたから、スピードの派手さはありませんでした。
どちらかというと横浜・川角投手のようなコントロールで勝負するタイプや、
秋田商・佐藤投手のように右アンダー、サイドで投げる変則投手が多い印象でした。
打者も目立ったのは1試合7打点のPL学園・戸沢選手(以降ノーヒット)と、
両打席でホームランを放った(別の試合ですが)八重山商工・金城選手ぐらい。
あとは守備や繋ぎのバッティングで目立つ選手ばかりでした。

まぁ、なんつーか、本当に「いぶし銀」みたいな大会でした(^^;
技術は凄いです、技術は。ホント昔と比べて上手くなっています。
ただ体力の方がまだかなという感じを若干受けます。
八重山商工や清峰など例外もありましたがね。
技術向上も大切ですが、高校生の時なんだから体の方もしっかり鍛えて欲しいです。
あと終盤のビッグイニング多すぎました。
これは経験なんでしょうけど… 精神面強化も必要な気がします。
プロの技術指導会を含め、技術向上は結構なことなんですが、
昔から言われているような精神面・体力向上も忘れないでいて欲しいです。





センバツTV観戦日記のTOPへ戻る

〔FTcomのindexへ〕