06センバツ甲子園大会 準決勝

第1試合 横浜(神奈川) 12−4 岐阜城北(岐阜)

(横)川角(5回)−西嶋(1回)−落司(1回1/3)−浦川(1回2/3)
(城)尾藤(3回)−山下(1/3)−種田(1/3)−太田(5回1/3)
(本)白井(横浜・3回表・1号ランニングホームラン)
横浜 12
城北

昨日、雨天中止が決定する前に発表されたオーダーでは、
岐阜城北の先発はそれまで一人で投げ抜いていた尾藤投手ではなく、
山下投手と発表されるなど岐阜城北が先に奇襲をしかけていました。
しかし結果的に雨で流れてしまって… 注目された今日の先発は尾藤投手に変更。
この判断がどうなるかと思いましたが… 裏目とは言いませんが、厳しい結果でしたね。
先発の尾藤投手は打ち込まれ、山下投手は四球等で自滅。
両投手ともに横浜打線に掴まってしまいました。
奇襲は奇襲でなければ意味がないわけですから、岐阜城北にとって昨日の雨天中止は痛かったです。
オーダー発表前だったら良かったんですが…
自力に勝る横浜相手に正攻法では及びませんでした。

勝った横浜は走攻守と全ての面においてレベルの高さを見せ付けました。
特に今日目立ったのは攻撃面ですね。
今大会のNO1左腕・尾藤投手を見事打ち崩しました。
尾藤投手が変化球の制球に苦しんでいたこともあり、ストレートに狙いを絞り、
引っ張らずに逆方向にライナー性の打球を打ち返していました。
3回は2アウトから1番白井選手がライトのグラブを僅かに抜き、
フェンスにまで到達、相手がクッションボールの処理を誤る間に一気にホームへ、
ランニングホームランで一点を先制しました。
その後はもう横浜ペースで3番高浜選手のエンドラン三遊間抜くヒットや
6番福田選手のライト前タイムリーといった逆方向の打撃で計7連打!
2アウトから一挙5点を奪い、一気に試合の主導権を握りました。
4回には代わった岐阜城北の山下・種田投手らから四球を誘い出すなどして追加点、
さらに6番福田選手がそれまで打ち取られていた外角低めスライダーを打つ一二塁間抜くタイムリーヒットを放ち、
6点を追加、序盤で11−0として試合を早々に決めました。
これまで長打を狙いすぎていた福田選手が右方向にミート中心の打撃をするなど、
徹底されたチーム打撃が功を奏した形ですね。
狙いが各選手に徹底されるなど、勝ち上がるに連れて、チーム全体のまとまりも強くなってきたように思います。
走塁面では白井選手のランニングホームランなど、隙あらば次の塁へという意識が強いです。
4回の攻撃などは横浜の走塁によるプレッシャーが大きかったと思います。
守りもサード以外はほとんどミスがありませんでした。
岐阜城北も走攻守の揃ったチームでしたが、横浜の方がレベルが上でしたね。

投手陣は早期に決着したことで、4投手を注ぎ込む早めの継投となりました。
エースの川角投手は5回62球2安打5奪三振無四球無失点で降板。
今日はスライダー・カーブが低めに集まり、岐阜城北の打者のタイミングを完全に外していました。
明日への余力を残した降板だったのでしょうが、もしそのまま続投していたら完封していたかも。
それぐらい安定していました。
2番手の西嶋投手は早稲田実戦の続くリリーフ登板。
川角投手と同じく長身から投げる左腕投手で速球が130中盤と力強さはあります。
ただコントロールがやや不安定なところが。決勝はもしもの時の繋ぎ役でしょうか。
3番手の落司投手(2年)は横浜投手陣の中で唯一の右腕投手。
ストレート135前後(137)、投げ方は松坂投手似の本格派タイプ。
今日は1回1/3を投げましたが、3失点と投球の方はイマイチ。
ストレートの勢いはあるんですが、変化球がまだまだ甘いところが。
そこを狙われて崩されてしまいました。
まだ2年生、ストレートがいいだけに今後の成長に期待です。
明日の登板というよりは夏に向けての登板だったのかもしれません。
4番手は2回戦以降ナイスリリーフを続けている2年生左腕・浦川投手
こちらは1回2/3をピシャリ。左腕らしいカーブが効果的で左打者は打ちづらそうです。
おそらく明日の継投は川角投手から浦川投手に繋ぐ形になるでしょう。
この2人がどういう投球を見せるのか、そして継投のタイミングをどうするのか。
平均的レベルの高い投手を揃えながらも、突出した投手がいない今年の横浜、
決勝でも継投策が試合の鍵を握ってきそうです。
その中でも川角・浦川投手が良い形で決勝を迎えられるのは好材料。
明日も今日同様のピッチングを期待したいですね。
決勝進出は3年前の成瀬(ロッテ)・涌井(西武)投手を擁して以来、
優勝すると8年前の松坂(西武)投手以来となります。
偉大な先輩投手達に負けないよう頑張ってもらいたいです。

負けた岐阜城北は尾藤投手の出来が誤算でした。
今日の尾藤投手は立ち上がりからもう少しでした。
得意のスライダーがストライクに入らなかっただけでなく、
生命線である速いストレートも球速表示で130前半止まり。
130後半をマークしていたそれまでとは明らかにボールの勢い・キレが違いました。
昨日の山下投手先発という作戦も、尾藤投手に限界が来てたからなのかも。
尾藤投手の調子の悪さが最大の誤算でした。
今後の課題としては、更なるスタミナ強化、
そして右打者対策として外へ逃げる球・チェンジアップなどを練習して欲しいです。
チェンジアップを投げるそうなんですが、今大会ではほとんど記憶していません。
夏になると打者が振れてきますから、上手く外す球が欲しいところです。

その後も山下・種田投手ともに、足を意識しすぎて四球で自滅。
一時はどうなるのかと思いましたが、サードのキャプテン太田選手が投手に入り、
ヒットや盗塁を許しながらも5回を1失点と好投しました。
クイックができないなど、投手としてはまだまだですが、
経験を重ねれば尾藤投手のサポートはできそう。
岐阜城北にとっては太田「投手」が収穫でしょうね。
太田選手は投手として登板すると、これまで無安打だった打撃の方も開花。
タイムリーを含む2安打と気を吐きました。
これで投手としても野手としてもチームを引っ張っていけますね。
今日の試合はキャプテンの活躍が最大の収穫でしょう。
今日の試合でミスしてしまった中継処理などを徹底して練習し、
さらに一回り大きくなって甲子園へ戻ってきて欲しいです。

それと打線では1回戦の太田投手、今日の川角投手など左腕投手対策に苦戦しました。
特に左投手のスライダー、これにやられているので左投手対策が課題ですね。
同じタイプ(むしろ上)の尾藤投手がいますから、練習はできるはず。
打線は左投手対策を課題にして打ち込んでいってもらいたいです
負けはしましたが堂々のベスト4入り。
岐阜県勢の野球レベルを示せたと思います。
この岐阜城北の躍進をきっかけとして、
岐阜県全体の高校野球が活性化することを期待したいです。





第2試合 清峰(長崎) 6−0 PL学園(大阪)

(清)有迫(9回)
(P)前田(6回2/3)−三宅(1回1/3)−冨田(1回)
(本)木原(清峰・7回表・1号2ラン)
清峰
PL

清峰打線が今年のドラフト候補のPL・前田投手を攻略、
11安打6得点を奪い、マウンドから引き摺り下ろしました。
一方の投手陣はというと、エース有迫投手がテンポのいい投球で、
9回115球2安打3四球4奪三振で完封勝利。
投打に充実した清峰がPLを下し、センバツ初出場ながら決勝へ進みました。
話によると、長崎県勢の決勝進出は春夏通じて初めてだとか。
昨夏から大物食いをしてきた清峰、
大阪桐蔭には敗れましたが、今大会で同じ大阪のPL学園にリベンジ、
そして最後の大物・横浜高校へと挑みます。
かつて町の希望を一心に受ける清峰高校、その挑戦が実を結ぶかどうか、明日の決勝戦に注目です。

試合に関してですが、最大の注目点であったPL・前田投手と清峰打線の対決は、
清峰打線の完勝に終わりました。
今日の前田投手はこれまでで最悪の状態でしたね。
楽をして投げていたわけではないんでしょうが、腕が全く振れていませんでした。
自慢のストレートも130中盤止まり、140を越す球は一球もありませんでした。
かといって、有迫投手のようにキレがあれば別なんですが、腕が振れていないのでキレもイマイチ。
もうボールを離してから腕を振っている感じで、バランスがよくありませんでした。
ボールのキレがないために、清峰打線に際どいコースを見られてしまい、
四球を避けたいがためにストライクを取りにいったストレートや、
高めに浮いた失投を痛打されるといった形でピッチングになりませんでした。
ストレートが悪いなら変化球でかわせばいいんでしょうが…
現時点で使えるのはカーブぐらいみたいで…
頼みのカーブも高めに入るなど変化球を有効に使うことができませんでした。
5回に3番広滝選手に打たれた球(110台)がカーブなのか、スライダー・フォークなのかというぐらい。
変化が少なく、抜けたような球だったので、カーブ・フォークの投げ損ない?
結局、他の変化球による立て直しも効かず、ズルズル行ってしまいました。
全体的にまだスタミナ不足。四球を怖がって勝負を急ぐ傾向もあります。
投球術という面では先輩の桑田投手らにまだまだ及びません。
能力的には素晴らしいものを持っているんですけどね。まだまだかなぁと。
もう一伸びしてこないとドラフト1巡指名は難しいように思います。
(とはいえ、分離ドラフトの今なら高校生の目玉候補であることは変わりありませんが)
今回の失敗を胸にもう一回り大きな投手になって欲しいです。


裏を返せば、勝った清峰は上手く攻めましたよね。
PL・前田投手という名前に負けず、思い切った攻撃をしていました。
各打者がストレート・カーブのどちらかに狙いを絞り、
大振りせずに上から叩いてライナー性の打球を打ち返すなど、
チームとしての狙いが徹底されていました。
作戦面では前田投手の制球の良さを利用した積極的なヒットエンドラン、
セーフティバントやランナー3塁での内野ゴロ本塁突入など、
失敗を恐れずに積極的にプレーしているのが伝わってきました。
その積極的な姿勢が名門PLを飲み込んだのだと思います。
同時にただ闇雲に打つのではなく、各打者の選球眼も良く、
ボール球を増やすことでストライクを取りに来た球を見逃さずに打つなど、
積極性の中にも冷静さがありました。
ミスを恐れない積極さ、そしてそれを確実に行うだけの状況判断、
新鋭校ならではの勢いと強豪校の冷静さを兼ね備えているのが今の清峰ですね。

守備面では有迫投手がPL打線を僅かに2安打で完封。
課題の制球力も立ち上がりにボールが高かったぐらいで、
中盤からスライダー・カーブといった変化球も低めに集まり、結局四球は3つ、安定感抜群のピッチングでした。
見ている感じだとそんなに良くは見えなかったんですけどね。
日本文理戦同様にボールの出所が見えにくかったんでしょう。
手元で伸びるストレートにPL打線は戸惑ったんだと思います。
やはり甲子園で投げるに連れ、投球フォームが固まってきたのが大きいです。
最初は力みがちで体が硬かったものが、
投げることによって良い方に力が抜け、スムーズに腕を振ることができています。
先日、昨夏登板した古川投手のフォームと比べて見たんですが、今の有迫投手の方がフォーム的に良いです。
ストレートの球速が130前半〜中盤ぐらいなので、
今のフォームで130後半ぐらいがコンスタントに出るようになれば…ですね。
今大会を通じて一番成長している投手だと思います。
明日の決勝戦はその集大成にできるかどうか、有迫投手の投球に注目です。

守備走塁面ではエラーがあったものの、どれも積極的に行ってのものですから、問題はないと思います。
むしろ積極的なプレーで有迫投手を救うことが多かったです。
守備も打撃同様に積極果敢でハツラツとした動きをしています。
走塁面もエンドランや内野ゴロ本塁突入のように積極的、ミスを恐れずに大胆に次の塁を狙う姿勢が見事です。
若いからこそミスを恐れずに思いっきりプレーする大胆さ、一か八かの走塁は強豪校ではできない攻撃ですよね。
この思い切りの良さが清峰の大きな武器となっています。
昨夏から大物食いができているのはこの思い切りの良さなんでしょうね。
明日の決勝は強豪校ながら大胆に攻めてくる横浜高校が相手、
ちょっとこれまでの相手とは違いますが、
今日と同様に思い切った攻撃・守備で相手のリズムを崩していって欲しいです。


負けたPL学園は前田投手の出来が全てでした。
前田投手に関しては最初に触れたのではここでは省略。
その後に出てきた左スリークォーターサイド気味の変則左腕・三宅投手と、
センターを守っていた130後半の直球(139)とキレのあるスライダーを持つ冨田投手が、
清峰打線を抑えていただけに、もう少し早く継投しておけばとも思います。
特に冨田投手のスライダーは良かったですね。
このスライダーを前田投手が投げられれば鬼に金棒なんですが(^^;
絶対的なエースがいる故に、継投が遅くなってしまいました。残念。

…にしても、打てなければ話になりません。
ヒットを打ったのは1番岡本選手の左中間への2ベースと、
4番前田投手の深く守っていたセンターの前にポトリと落ちるヒットの2本だけです。
実質的なヒットは岡本選手の打球だけでしたね。あとは全て凡打。
1回戦で大活躍した戸沢選手も以降はノーヒット。
打線が機能しなかったのが一番の敗因でしょう。
夏に向けては打線強化がポイント、
2番木野・3番岡崎・5番戸沢選手と2年生の中軸打者が多いだけに、彼らの今後の成長が期待されます。
守備力は大会を通じて素晴らしかったですから、
前田投手のスタミナ強化・打線の強化で夏には全国制覇できるチームを作ってきてもらいたいです。
名門PL学園復活まであと少し。夏にもう一頑張りしてもらいたいですね。





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