06センバツ甲子園大会 8日目

第1試合 清峰(長崎) 3−2 東海大相模(神奈川)

10 11 12 13 14 (清)有迫(14回)
(相)高山(14回)
清峰
相模

小雨が降り、グラウンドの所々にぬかるみがある最悪のコンディションで開始されたこの試合は、
清峰・有迫投手と東海大相模・高山投手の投げ合いとなって、互いに一歩も譲らないまま延長戦へ突入。
試合が動く気配が全くなく、昨日に引き続きいての引き分け再試合かと思われた14回表、
1アウト2塁の場面で直前のピンチを凌いだ有迫投手がバッターボックスに立ち、
3塁線を破るタイムリー2ベースを放って、ついに清峰が勝ち越し。
有迫投手がその裏を三者凡退に締め、この熱戦に終止符を打ちました。

試合展開は、まず3回表に清峰が押し出し四球で先制、
しかし3回裏に東海大相模が四球でチャンスを掴み犠牲フライで1点を返して同点に。
6回表に清峰が犠牲フライで再び勝ち越すと、
東海大相模は8回裏に4番田中大二郎選手の右中間真っ二つのタイムリー2ベースで再び同点に。
その後は両投手ともにヒットや四死球でランナーを出すものの、
守備のナイスプレーにも助けられて粘り強く投げていきます。
試合が動いたのは13回裏、清峰・有迫投手が先頭打者を四球で歩かせてしまい、送りバントで2塁へ。
ここで同点タイムリーを打った田中選手に回ってきますが、清峰ベンチは敬遠指示で1アウト1・2塁。
続く5番打者の当たりは外野の頭を越すかと思ったものの、
思ったよりも伸びずに失速し、この打球にセンターが追いついてアウト。
続く打球はレフト前に落ちそうになるも前進守備のレフトが追いついてアウト。
東海大相模の反撃を断ち切ります。
こうして迎えた14回表、先頭打者がファースト田中選手のエラーで出塁し、送りバントで2塁へ。
ここで9番有迫投手に打順が回り、
三塁ベースに当たってレフトへと抜けていく執念の2ベースヒットを放ち、清峰が勝ち越します。
その裏、有迫投手は三者凡退に抑えて、ゲームセット。清峰が激闘を制しました。
ピンチの後にチャンスあり、終盤のエラー・四球は失点に繋がる、まさにその言葉通りの展開でしたね。
最後は一番頑張っていた投手の一打で決まるというドラマチックな試合r展開は、
今大会屈指の好ゲームだったことを印象付けてくれます。。


勝った清峰はグラウンドコンディションが悪く、
気温も上がらない悪条件にも関わらず、無失策と堅い守備が光りました。
延長13回裏のように抜けると思った打球に外野手が追いついたり、
内野手がぬかるんだ地面をものともせずにアウトにしたりと守備が堅かったです。
この堅い守備が有迫投手を支えましたね。
有迫投手は寒さのせいか10四死球を与えたものの、被安打はわずかに4。
最後まで東海大相模打線に連打を許しませんでした。
今日は1回戦のような投球フォームの乱れもなく、安定したピッチングでした。
最後の一打は直前にピンチを凌いだ勢い・執念ですかね。素晴らしい一打でした。

負けた東海大相模は清峰同様に守備が上手く、今日もサード村瀬選手など好プレーが目立ちましたが、
最後の最後に悔やまれるエラーが出てしまいました。
やはり終盤・延長戦でのエラーは怖いです。
直前の13回裏にチャンスを生かせなかっただけに尚更です。
この試合の流れを決めてしまったシーンでしたね。
東海大相模の高山投手は120後半のストレートとスライダー・スクリューを制球良く投げるなど、
安定感のある投球を見てくれせました。
1回戦で好投した長谷川投手同様に計算できる投手だと思います。
夏に向けての課題を挙げると打線強化でしょうか。
四死球で何度もチャンスを貰いながらも、あと一本が出ず。
最後まで有迫投手を捉えられませんでした。
期待された4番田中大二郎選手も1安打のみ。
厳しいマークの中でどれだけ結果を残せるかが今後の課題ですね。
チームとしては牽制タッチアウトなど走塁面のミスもありました。
卒のない攻撃がで得点を積み重ねていけるように取り組んでいって欲しいです。

目立った選手は清峰の有迫投手です。
前の試合から肩の開きを修正したらしく、その成果なのか今日はバランスが良かったです。
ストレートは抑え気味に入り、序盤は120キロ後半でコントロール重視の投球、
中盤ピンチになってからは130前半のストレートで大胆に内角を攻めるなど、
打者に向かっていく姿勢が前面に出ていました。
ストレートに勢いがあったからこそ、スライダー・カーブといった変化球で振らすことができたのでしょう。
ナイスピッチング。今日の投球が続くようにして欲しいですね。





第2試合 PL学園(大阪) 1−0 愛知啓成(愛知)

(P)前田(9回)
(啓)水野(9回)
PL
啓成

この試合もPL・前田投手と愛知啓成・水野投手の投げ合いとなりました。
試合は愛知啓成が4番森越選手の長打でノーアウト2塁のチャンスを作るなど押し気味に進めるも、
2回裏にはバント処理で前田投手が好フィールディングを見せて3塁タッチアウト、
7回裏にはバントを引いた際に2塁ランナーが飛び出してしまって、仲谷捕手の牽制でタッチアウトと、
PL学園のバッテリーの守備に阻まれる形となり、得点することができませんでした。
一方のPL学園は愛知啓成・水野投手の低めへのコントロールとキレのいいスライダーの前に抑えられ、
初回以降はチャンスらしいチャンスを作れなかったものの、
9回表に先頭の4番前田投手が四球で出塁し、送りバントと6番戸沢選手のファーストゴロで3塁へ、
そして7番仲谷選手がこのチャンスをものにするセンター前タイムリーで1点を取ります。
最後はそれまで打たれていた4番森越選手を外角高め138ストレートで空振り三振に奪うなど三者凡退。、
PL学園が1点で勝利を収めました。

PL学園は勝ったとはいえ、内容的にもう少しでした。
完封こそしましたが前田投手は全般的に抑え気味の投球で、腕の振りはあまりよくなかったです。
簡単に長打を許すなどノーアウトのランナーを出してしまったのはそこらが理由です。
1回戦では終盤に疲れを見せてしまったので、ペース配分をしようと思ったのかもしれませんが…
投球のテンポも早すぎるくらいで、やや投げ急ぎ気味、あまり良い投球内容ではありませんでした。
それでも得点圏にランナーを置くと、腕を振ってキレのいいストレートを投げていましたから、
状態が悪いというわけでもなかったんですけどね。
良く言えば「力配分ができている」、悪く言えば「手抜き」といったところでしょうか(^^;
危ない場面もありましたから、今日のような投球は避けて欲しいところ。
打線の方はコントロールのいい水野投手に苦しみ、なかなか攻略できませんでした。
特に7番戸沢選手ら左打者が膝元のスライダーに空振りすることが多く、
全体的に打線が淡白で、簡単にアウトになってしまった印象を受けました。
もう少し投打に粘り強さが欲しかったところ。
勝ったとはいえ、課題の多い試合だったと思います。
優勝候補には変わりありませんが、ちょっと心配。

負けた愛知啓成は水野投手がPL打線をよく抑えたと思います。
ピンチらしいピンチは初回と9回のみ。それ以外はほぼ完璧に抑えていました。
とりわけ左打者の膝元のスライダーが冴え渡り、
1回戦で大会タイ記録を打ち立てた戸沢選手を4打数ノーヒットと完全に抑えました。
コントロールとボールのキレがあれば、強力打線相手でも抑えられることを証明してくれましたね。
守備も安定していましたし、守備面は非常に良かったと思います。
あとは打線。ノーアウト2塁のチャンスで送りバントを決められなかったのが痛かったです。
着実なバントと走塁を身につけ、効率の良い打線を作っていって欲しいです。





第3試合 秋田商(秋田) 4−3 今治北(愛媛)

10 11 12 (今)西原(11回1/3)
(秋)佐藤(12回)
今治北
秋田商 1×

秋田商の佐藤投手が1戦目とは別人のような投球を見せ、8回終了までに3−0。
しかし9回表にエラーからピンチを招き、タイムリー2ベースで1失点、
さらに2アウトからセカンド後方・センター手前に落ちる2点タイムリーヒットが飛び出して同点に。
試合はそのまま延長戦へと突入していきます。
そして迎えた12回表、秋田商のライト・小山田選手のファインプレーでこの回を無失点で乗り切ると、
もう流れは秋田商。
頭部死球で出たランナー(臨時代走起用、脳震盪)を送りバントで進め、
3番佐々木選手が左中間へのタイムリー2ベースを放ち、見事なサヨナラ勝ちを収めました。

勝った秋田商は佐藤投手のナイスピッチングが勝因でしょう。。
ストレートの球威・コントロールがもう1回戦とは別人。
1回戦は球威を感じなかったものが、今日は下から伸びてくる感じで威力がありました。
秋季大会の成績では奪三振が多かったので、これが佐藤投手の本来のピッチングなんだなと。
スライダーも良かったですし、今日は文句なしでしたね。
9回にエラー絡みで失点してしまったのが残念でしたが、それ以外は完璧。
1回戦の失敗を見事に取り返してくれました。
打線は持ち前の長打力を発揮して、同じく調子の良かった西原投手に力負けしませんでした。
結果的にはもつれてしまいましたが、投打がガッチリ噛みあった快勝だったと思います。
課題は守備。9回のエラーなど、ややボールをこぼすことが多かったです。
ただ1塁手や捕手、そして延長12回表のライト小山田選手といったところが、
スライディングキャッチを見せるなど随所でファイト溢れるプレーをしていました。
エラーも多かったですけど、同時に積極的なプレーも光っていました。
集中力はありそうですから、大事な場面でミスさえしなければ大丈夫でしょう。

負けた今治北は西原投手が力強いストレートとキレのあるスライダーで好投していたんですが…
秋田商の佐藤投手がそれと同じぐらいの投球をしたため、援護に恵まれませんでした。
悔やむとすれば、試合後半に甘い球を痛打されたことでしょうか。
それでも失点した場面以外はしっかりと抑えていましたし、ナイスピッチングだったと思います。
課題はスタミナ。終盤でも球威で抑えられる力とコントロールを養って欲しいです。

目立った選手は秋田商の佐藤洋投手です。
右アンダースローから投げる投手で、本人がロッテ・渡辺俊介投手を手本にしたと言うように、
長いリーチを生かした浮き上がるストレートが武器の投手です。
前回は調子が悪かったのか威力がありませんでしたが、今日は力十分。
浮き上がる120キロ前半のストレートで空振りやポップフライを打ち上げさせていました。
今日はコントロールの方も良く、スライダーもコーナーにしっかりと決まっていました。
ストレートに威力があり、スライダーの変化も良かったことで、緩急差も付いていました。
今日は良い投球内容でしたね。
次はPL戦。戸沢選手など左の強打者がいますから、次の試合で佐藤投手がどういう投球をするのか楽しみ。
上手く緩急をつけてPL打線を翻弄してもらいたいです。





第4試合 早稲田実業(東京) 4−3 関西(岡山)

(早)塚田(2回)−斉藤(7回)
(関)中村(9回)
(本)斉藤(早実・5回表・1号ソロ)
   下田(関西・8回裏・1号2ラン)
早実
関西

この試合を語る前に日程に関して触れておきます。
この試合は昨日の第三試合が延長15回で決着がつかなかったための引き分け再試合で、
ベスト8が出揃うという試合でしたので、今日に試合を伸ばすことには文句ないんですが、
準々決勝の試合がそのままというのはどうなんでしょう?
センバツは最初から日程が組まれているとはいえ…
引き分け再試合が決まった時点で対処できなかったんですかね?
準々決勝は2日に分けて開催されるわけですから、後の方に回すことも可能だったのではと。
もちろん当初組まれている日程に合わせて応援する側は移動しているので、急な変更はできないでしょうが…
中1日あったのなら、対応できたと思うんですがねぇ…
早稲田実業は勝って嬉しいでしょうが、疲れが残ったまま明日の第二試合で横浜と対決…
明日も斉藤投手は投げるでしょうから、3連投ということに。
今後もあるケースでしょうから、高野連には検討してもらいたい事例です。


さて試合の方ですが… もう劇的すぎて、そして残酷すぎて何も言えません。
3年前の東洋大姫路と花咲徳栄の試合のサヨナラ暴投もショッキングでしたが、
今日の試合もそれに負けず劣らずショッキングな結末でした。
もう最後はどっちを応援していいのか分からなくなり、とりあえず同点になってくれと(^^;
2アウト満塁だったので、ヒットが出れば二者生還でサヨナラ、斉藤投手が不憫に…
かといって、点数が入らなければ関西のライトが可哀想で仕方なくなりますし… 複雑。
結局、最後は斉藤投手が渾身の内角ストレートを投げて、4番安井選手がキャッチャーファールフライ。
昨日の9回裏と同じ状況ながら、今度は斉藤投手が抑え、早稲田実に勝利をもたらしました。
でもその陰では関西のライトが… 勝負の残酷さを改めて感じました。

試合展開を簡単に説明すると、早稲田実の先発は秋季大会登板なしの2年生右腕・塚田投手、
関西は昨日も先発した2年生右腕・中村投手の先発で始まりました。
先制したのは早稲田実業。
ヒット・盗塁でチャンスを作り、昨日中村投手からホームランを打った2番小柳選手がタイムリー2ベース。
早稲田実業が1点をリードします。
すると早稲田実業は関西をノーヒットに抑えていた塚田投手に代えて、
昨日200球以上を投げた斉藤投手をマウンドへ。
本来のボールの威力はなかったものの、それでも直球・スライダーと気迫のこもった投球で関西を抑えます。
さらに斉藤投手はバットの方でも気迫を見せ、
5回表には変化球を捉えるレフトスタンドへのホームランを放ち、1点を追加します。
けれど関西も黙っておらずに反撃、7回裏に1番熊代選手のタイムリー2ベースで1点を返します。
そうして2−1で迎えた8回裏、関西は1アウト3塁のチャンス、
ここで5番下田選手の外角ストレートを弾き返した打球は一直線でセンターへ飛び込む2ランホームラン。
土壇場で関西が逆転し、勝敗は決し、斉藤投手の熱投も報われないかと思われました。

しかし9回表に本当のドラマが待っていました。
マウンドにはそのまま中村投手が上がります。
すると1アウトから4番後藤選手がヒットで出塁し、
昨日・今日とレフトでナイスプレーを見せた5番船橋選手が一二塁間抜くヒット、
これでチャンスが広がると思った瞬間、ライト熊代選手がまさかまさかのトンネル。
ボールはライトフェンスにまで達し、ランナーホームインはもちろんのこと、
何と打者走者までもが一気に駆け抜けてホームイン。
二者生還となり、早稲田実が3−2と逆転します。
トンネルしたライトの選手はボールを返球後に崩れ落ちて泣いてしまうほど。
他の選手に励まされてようやく守備位置に戻ったほどでした。
ランナーを3塁にやりたくないがため、思い切って突っ込んだのが裏目に。
打者に打たれたのなら、投手に抑えられたのなら、相手がいるので納得できます。
ただ飛んでくる打球に対しては… 誰にも当たれない。自分自身を責めるしかないわけです。
突きつけられた現実はあまりに過酷。
何ともやり切れない残酷な3点目でした。

けれど当然、関西もこのまま黙って引き下がることはできません。
9回裏に9番山本選手のポップフライを、照明が目に入ったのか風に流されたのか、
内野手が捕球体勢にも入れずに落球。
関西側にも奇跡が起き、チャンスを作っていきます。
エラーをしてしまった1番熊代選手はキャッチャーフライに倒れてしまったものの、
2番徳岡選手は四球を選んで出塁、
さらに3番上田選手の打ち取られた打球は一塁線へのセーフティバントのようになって内安打に。
2アウト満塁という絶好の場面で、4番キャプテンの安井選手を迎えました。
昨日の9回裏に安井選手は満塁のチャンスで走者一掃のタイムリーを放っていました。
それだけに昨日の再現なるか、それとも斉藤投手が昨日の雪辱を晴らすのかと注目が集まりましたが、
最後は渾身の141キロ内角ストレートでキャッチャーファールフライに。
2日で300球以上投げた早稲田実の斉藤投手が勝利を掴み取りました。


もうこの試合はそれだけです。この試合は事実だけでいい。評論するのはおこがましいです。
それだけ尊く、熱く、嬉しく、そして悲しい試合でした。言葉は要らないですね。
両チームともに良くやりました。どっちが勝ってもおかしくありませんでした。
最後は斉藤投手の執念が勝ったということでしょう。
個人的には明日のことを考えずにダース投手を最後投入して欲しかった。
その僅かな差がこの試合の結末に繋がったようにも思います。
野球の神様は残酷です。その残酷な運命に立ち向かった斉藤投手に最後微笑んだ、ということでしょうか。
やはりこの試合は分かりません。分かろうとしても分かりません。理屈ではないということですね。
両チームに賞賛の拍手を送りたいです。感動をありがとう!




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