センバツ甲子園大会から考える今後
今大会は開会式直後の試合が雨で中止になるなど、
天候的にはかなり厳しい状況での大会となってしまいました。
雨天中止こそ開会式直後の1日目の試合の順延、5日目の第3試合の順延のみでしたが、
試合中に雨に見舞われたり、グラウンドがぬかるんでいたり、
雨が降ってないまでも気温が低い中での試合になったりと試合環境としては良くありませんでした
そんな悪天候の中での試合でしたから、とりわけピッチャーには大変な気候だったと思いますが、
大きく乱れることはなく、どの投手も安定した投球を見せていました。
天候に負けずにどの選手も頑張りました。全力プレーが光る大会だったと思います。

ただ昨年の東北・ダルビッシュ有投手(現:日ハム)のような話題性のある選手が少なかったこともあり、
一般的にはそれほど認知度の高くない大会だったかもしれません。
柳ヶ浦の山口投手が148キロ(球団スカウトのスピードガンでは151キロ)を計測しましたが、
1回戦で負けてしまいましたね…(もう少し勝ち進んでいたら、話題を呼んでいたかも)
昨年のような劇的な逆転勝ちもありませんでしたし、大会としては地味だった印象は拭えません。
でも140キロ以上のストレートを投げる投手が14人、
145キロ以上が実に5人もいるなどマニアにとっては堪らない大会でした(^^;
また慶応・高松といった伝統校の出場でOBが甲子園に押し寄せたり、
昨夏優勝の駒大苫小牧が選手宣誓・開幕試合とスタートを飾ったり、
済美同様の創部3年目での初出場・神村学園が決勝まで進んだりとチーム・学校の盛り上がりがありました。
全体的には地味な大会でしたが、面白みのあるセンバツ甲子園だったと思います。


今大会の特徴として挙げられるのは、ピッチャーの良さ、盗塁の多さです。
今大会では右の本格派投手が多く、昨年に続きレベルの高い大会でした。
柳ヶ浦の山口投手の148キロを始め、145キロの林・若竹・松橋・田中投手、
144キロの木下投手、140キロ以上の斉賀・有元・十亀・内田・上田・野上・柳田・藤井投手と
140キロ以上をマークした投手が実に14人もいました。
昨年の10人でも驚いていたのに、それを上回る結果は凄いと言うしかありません。
その中でも山口・林・若竹・木下・斉賀・有元・野上・田中投手といった所は、
ストレートの速さだけでなく、コントロールも安定していて自滅することはなく、
変化球にもいいものを持っているとプロ注目のピッチャーばかりです。
この世代のレベルの高さを示していますね。
これで昨年のセンバツに出場した社・大前投手、報徳・片山投手、優勝した済美の福井投手がいて、
全国では大阪桐蔭・辻内投手、近代付・鶴投手らがいるわけですから… ピッチャーの当たり年ですね。
山口投手を始め、プロとして見るとまだ荒削りな感じはしますが、まだセンバツですからね。
今後の成長が楽しみです。

またそれ以外のピッチャーのレベルも例年になく高かったと思います。
山形県勢初のベスト4入りに貢献した羽黒の片山マウリシオ投手を始め、
130キロ台ながらもコントロールの良いピッチャーが多かったです。
結果的には速球派投手が早々と散り、
内外角と両サイドを丁寧に突ける投手を要するチームが勝ち上がっていきました。
投手はスピードだけじゃないということを改めて教えてくれていると思います。
まぁ、それは毎年のことと言えなくもないですが、
今大会はそういったタイプに左のスリークォーター投手が多かった気がします。
神戸国際大付の大西投手は少しタイプが違いますが、
慶応の中林投手、天理の小倉投手、市和商の田島投手、如水館の政岡投手、宇部商の好永投手らは、
ほとんど同じタイプで、ストレート・スライダー・カーブ等を低めに集めるピッチングをしていました。
自滅するような投手は少なくなり、安定感のある投手が年々多くなっているような気がします。
各チームでの投球フォームの分析、プロ野球選手の講習会などの影響で、
高校野球全体のレベルが上がっている証拠であると言えると思います。

攻撃面では盗塁の多さが目立ちました。
2塁への盗塁はもちろん何ですが、3塁への盗塁もかなり多く見られましたね。
特に上位に進出したチームは走塁の意識が高く、
愛工大名電を始め、神村学園、神戸国際大付、羽黒、沖縄尚学、慶応らは積極果敢でした。
セーフティバントを成功させる選手も多かったですし、
隙あらば次の塁を狙おうという好走塁も多かったですし…
慶応のダブルスチールによるホームスチールなんてのもありましたね。
例年以上に走塁の意識が高い大会だったと思います。
昨年の愛工大名電のバント野球に触発されたのかどうかは分かりませんが、
単純に打つだけではない、抜け目のない野球、
甲子園ではそう連打は続かないからこそ違う形で得点をする野球、
そういった姿勢が現れたものが今大会の走塁意識の高さだと思ってます。
高校野球も随分とレベルが上がってきましたね。

ただ一方ではバッテリーエラーが随分と目に付きました。
これは例年のことなんですが… 全く解消される雰囲気がありません。
バッティングマシーンの普及などで打者が140キロ以上の球でも軽々打ち返せるようになったこともあり、
縦に落ちる変化球、フォークボール等を投げるピッチャーが増えたという影響もあるんでしょうが…
あまりにワイルドピッチが多いです。
おまけに今大会は盗塁が多いもんだから、キャッチャーの盗塁阻止率が大変なことに。
盗塁死を見た気億がほとんどありませんでした。
覚えているのは東邦・水野選手と羽黒・押切選手の2人のみ。他は走られた記憶しかないですねぇ…
送球してセーフになるだけならまだしも、暴投となってさらにランナーを進めてしまうことも…
改めてキャッチャー育成の難しさを感じました。
近年は投手・内野から捕手にコンバートされるケースも多いですし…
捕手の人材難が全く解消されていない気がします。

あとはバントの技術、かなり格差が出てきたように思います。
上手い学校は凄く上手いです。
優勝した愛工大名電や21世紀枠の一迫商などはバントの姿勢・コース・打球の殺し方と完璧でした。
けれどそれ以外の学校ではちょくちょくバントミスを見かけました。
左打者などがセーフティ気味のドラックバントをしかけるケースもあったんですが、
スタートに意識が行き過ぎて、肝心のバントが疎かになっているケースがちらほら。
バントを打ち上げてしまう選手が多かったですね。
もうバントの上手いチームとそうでないチームは姿勢を見た時点ですぐ分かります。
バットを平行ではなく斜めに構え、
顔をバットから離さないようにして最後までバットとボールが当たるのを見ている、
そういったバントの正しい構えができているチームはまずミスをしません。
愛工大名電はこの姿勢が徹底されていました。
どうしてあんなに速い球を最後まで近くで見ることができるのか、不思議になるくらいの神業でしたね。
バントにも技術があるんだということを各チームに認識してもらいたいです。


地域性はもう関係なくなったと言っていいでしょう。
センバツは早春の時期ということもあり、直前まで雪の影響を受ける北海道・東北地方には不利と言われてきました。
ただ今大会では昨夏優勝の駒大苫小牧が1回戦突破、21世紀枠の一迫商も1回戦突破、
羽黒に至っては山形県勢初のベスト4入りを果たすなど大健闘を見せました。
県・学校・地域での室内練習場の普及・暖かい地域での合宿・遠征といった取り組みが良い方に出てますね。
気候面のハンデといったものは考えなくて良い時代になったようです。
また今大会ではここ数年低迷がちだった九州・沖縄が頑張りました。
柳ヶ浦を始め、5校中3校は初戦突破できませんでしたが、
沖縄尚学はベスト8、神村学園に至っては準優勝するなど九州・沖縄の復活を印象付ける結果を残しました。
逆に元気がなかったのは中国・四国。
四国からは21世紀枠・希望枠を含めて4校出ていたんですが…
初戦を突破したのは西条のみで、中国地方を含めて上位進出とはなりませんでした。
ここ数年は広島の広陵、愛媛の済美と優勝チームを出していただけに、
より一層、中国・四国勢の不振を感じる結果となってしまいました。

そしてなにより一番元気だったのは愛知県ですよね。
愛工大名電が優勝、東邦がベスト8と2校とも上位進出を果たしました。
万博で活気付いている愛知県の勢いがそのまま甲子園でも出た形です。
愛知にはこの2校以外にも昨夏代表の中京大中京もいるわけですから… 夏は狭き門ですね。
このセンバツを見る限りでは、夏の最激戦区になりそうです。
今年は高校野球の面でも愛知から目を離すことができませんね。


21世紀枠は一迫商が1回戦を突破したものの、2回戦で大敗。
同じ21世紀枠での登場となった高松は初戦敗退。希望枠の三本松も初戦敗退。
一迫商の1勝で十分かな〜とも思いますが…
四国に特別枠が2つ与えられただけに、高松か三本松のどちからは1勝して欲しかったです。
伝統校である高松が久しぶりの出場を果たし、
OBなどの応援もあって応援団賞を取りましたから、そこを救いとしたいです。



今大会の有力選手一覧
独断と偏見なので気にしないでください(^^;

A+ 2年生
右投手 林啓介(福井商)
木下達生(東邦)
若竹竜士(育英)
山口俊(柳ヶ浦)
野上亮磨(神村)
松橋拓也(駒大苫)
片山マウリシオ(羽黒)
小泉圭市(東海大相模)
斉賀洋平(名電)
上田大貴(八幡商)
有元一真(神戸国際)
吉岡俊介(駒大苫)
十亀剣(名電)
酒井大介(東筑紫)
前嵩雄基(沖縄尚学)
佐藤勇(一迫商)
井上弘(浦和学院)
三森祥平(甲府工)
西田修二(天理)
田窪朋広(高松)
三好太一(新田)
津島卓也(西条)
矢野亨(戸畑)
田中将大(駒大苫)
野田雄大(青森山田)
藤井貴之(天理)
中野匠(神戸国際)
左投手
大西正樹(神戸国際)
中林伸陽(慶応)
小倉彰信(天理)
柳田将俊(青森山田)
斉藤勝(修徳)
斉藤悠葵(福井商)
田島康平(市和商)
政岡望(如水館)
好永貴雄(宇部商)
大西克典(大産大付)
門田真光(新田)
宮崎啓佑(三本松)
木下渉(戸畑)
捕手
押切拓也(羽黒)
水野祐希(東邦)
今成亮太(浦和学院)
椎葉謙(神村)
兼屋辰吾(沖縄尚学)
斉藤進吾(福井商)
一塁手

東修介(天理)
黒木一有(東筑紫)
松田規誉(沖縄尚学)
湯浅亮一(慶応) 磯部泰(修徳)
田中大二郎(東海大相模)
二塁手
林裕也(駒大苫) 馬沢裕也(神村) 松本雅俊(関西)
三塁手
正木修平(神戸国際) 寺田真也(神村)
比嘉翔太(沖縄尚学)
長島一成(修徳)
角一晃(東海大相模)
堂上直倫(名電)
遊撃手 川端慎吾(市和商) 柴田亮輔(名電) 近藤竜二(育英) 船引俊秀(関西) 谷口達也(神村)
外野手 天王寺谷(神村) 勝田憲司(常総)
佐々木孝徳(名電)
眞井翔太(天理)
田中克誠(天理)
小島宏輝(名電)
末藤一樹(東邦)
山田修平(名電)
田母神浩平(修徳)
本間篤史(駒大苫)
中島ユン(羽黒)
山口尚記(慶応)
竹内一真(慶応)
新谷拓也(慶応)
伊藤翔(市和商)
内田雄大(大産大付)
井内良介(神戸国際)
長谷川肇(神戸国際)
橋野孝絋(神村)


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