05センバツ甲子園大会 11日目

準決勝第1試合 愛工大名電(愛知) 8−6 神戸国際大付(兵庫)

(名)斉賀(5回)−十亀(4回)
(神)大西(6回)−有元(3回)
愛工大名電
神戸国際大付

愛工大名電の先発・斉賀投手と神戸国際大付の先発・大西投手という好投手同士の対決となったこの試合は、
同点・勝ち越し・逆転・再逆転というシーソーゲームの打撃戦となり、
両エースから2番手投手勝負となって愛工大名電が逃げ切り、2年連続の決勝戦へと駒を進めました。

斉賀・大西投手ともに立ち上がりはボールのキレを欠き、不安定なピッチングだったんですが、
3〜4回にそれぞれ立ち直りのきっかけを掴んだんですが、
これまでのピッチングの疲れもあったのか、
中盤に両投手ともにボールの威力がなくなり相次いで失点してしまいました。
6回以降は継投勝負となり、神戸国際大付はリードこそ許していましたが、
既に甲子園初登板を済ませており、大西投手との2枚看板と言われた有元投手がいました。
ですから甲子園初登板となる愛工大名電の2番手・十亀投手次第だったんですが…
6回裏こそ力みからか四球で満塁のピンチを作ってしまいますが、
神戸国際大付の3・4番を打ちとって無失点で凌ぎ、
9回の味方エラーによる1失点のみに抑え、愛工大名電の勝利に貢献した形になりました。
好投した十亀投手、その立ち上がりを叩けなかった神戸国際大付、
これがこの試合の勝敗を決めたように思います。

今日の試合の得点経過です。
1回表 愛工大名電の攻撃
1番山田選手が四球で出塁するも、2番柴田選手はスリーバント失敗。
1アウト1塁となるも、3番佐々木選手が2塁へ送り、
4番堂上選手が初球(大西投手が外角を狙ったストレートが真中へ)を捉えて
左中間突破のタイムリー3ベースを放ち、愛工大名電が1点を先制します。
その後、5番小島選手が四球で2アウト1・3塁となるも、6番斉賀投手が倒れて追加点はならず。

1回裏 神戸国際大付の攻撃
1番前田選手が四球で出塁し、送りバントの構えを引いて1塁ランナーが2塁へ盗塁!
意表を突かれたキャッチャーは2塁へ悪送球、ランナーは3塁を狙おうとするも転倒でストップ。
ノーアウト2塁から送りバントを決めて、1アウト3塁。
ここで3番井内選手が低めスライダーを捉える三遊間抜くタイムリーヒットを放ち、
神戸国際大付が同点に追いつきます。
さらに4番正木選手が外角低めスライダーをバットの先で打つセンター前に落ちるヒットを放ち、
5番堂本選手がピッチャー返しの痛烈な打球!
この打球が斉賀投手の左手首付近に当たってセカンド前へ。セカンドゴロでアウトにはなります。
斉賀投手の状態が心配されましたが、コールドスプレーだけですぐに続投。
6番打者を外角低めいっぱいのストレートで見逃し三振にとって3アウトチェンジに。

2回表 愛工大名電の攻撃
先頭打者が四球で出塁し、送りバントで2塁へ。
ここで9番石黒選手が3塁手前へのナイスセーフティバントを見せて、1アウト1・3塁。
2塁ランナーが盗塁を決めた後、1番打者が空振り三振に倒れるも、
2番柴田選手が外角スライダーに全く合わずに空振りした直後に投げたカーブが真中に入り、
これを押し込むように打って左中間突破の2点タイムリー3ベース!
愛工大名電が2点を勝ち越します。

2回裏 神戸国際大付の攻撃
斉賀投手が対天理戦から続いて6イニング連続となる先頭打者への四球を出し、
際どい牽制球をボークに取られてしまって、ランナーが2塁へ。
送りバントでランナーを3塁へ進められるも、
9番打者に対してノースリーから立て直して外角いっぱいストレートで見逃し三振、
1番打者を低めストレートでレフトファールフライに打ち取り、
自ら作ったピンチを無失点で凌ぎます。

3回表 愛工大名電の攻撃
この回から神戸国際大付はスタメンキャッチャーの中上選手に代えて、
これまでマスクを被り大西投手を支えてきた桜井選手にスイッチ。
4番堂上選手を外から低めに落ちる小さなカーブで空振り三振を奪うなど、
テンポのいいピッチングに変わり、大西投手が立ち直ります。

3回裏 神戸国際大付の攻撃
愛工大名電の斉賀投手はストレートを軸とするピッチングで立ち直りを見せます。
2アウトから4番正木選手にストレートが甘くなって三遊間抜くヒットを打たれるも、
他の打者は打ちとって無失点。

4回表 愛工大名電の攻撃
先頭の7番井坂選手が真中ストレートを打つレフトオーバー2ベースヒットで出塁し、
あわや内安打になるかというナイス送りバントを決めてランナー3塁へ(大西投手がナイス反応)
9番石黒選手のカウント1−1から愛工大名電はスクイズを敢行するも、
大西投手が低くグラブトスし、ちょうどキャッチャーがタッチに行く場所にボールが届き、
ブロックしてタッチアウトに。
大西投手のナイス反応・桜井捕手のナイスブロックでスクイズを防ぎます。

5回表 愛工大名電の攻撃
1アウトから3番佐々木選手が低めスライダーを上手く捉えるレフト線への2ベースヒットで出塁し、
4番堂上選手が左ひざ横に当たる死球で出塁(臨時代走・その後は出場)
1アウト1・2塁のチャンスを作るも二者連続三振に倒れて得点なりません。

5回裏 神戸国際大付の攻撃
1アウトから1番前田選手が四球で出塁し、2塁への盗塁成功。
2番打者はショートゴロに倒れるも、3番井内選手の所で3塁へ盗塁を決めて2アウト3塁。
井内選手は粘って四球、4番正木選手も四球で2アウト満塁のチャンス。
ここで5番堂本選手がフルカウントから低めストレートを叩いて三遊間深くへのゴロを放ち、
ショートの柴田選手が飛びつくもグラブで弾いてしまう2点タイムリー内安打で同点。
さらに6番長谷川選手が置きに行った感じの外角低めスライダーを上手く当てて、
ライトオーバーの2点タイムリー2ベースを放ち、神戸国際大付が逆転します。

6回表 愛工大名電の攻撃
先頭の7番井坂選手が低め甘く入ったスライダーを捉えるレフトフェンス直撃の2ベースヒットで出塁し、
大西投手はバントを警戒しすぎてしまい、打者はボールをよく見て四球、ノーアウト1・2塁に。
送りバントでランナーを進め、1番打者が低めスライダーで空振り三振に倒れるも、
2番柴田選手が内角ストレートを捉えるライトオーバー2点タイムリー3ベースを放ち同点に追いつき、
3番佐々木選手が初球真中低めのスライダーを捉える左中間突破のタイムリー2ベースで勝ち越します。
さらに堂上選手がよく選ぶ四球で2アウト1・3塁とした後、
ワイルドピッチでボールが1塁側ネクストバッターサークル付近を打球が転がっていき、
2塁ランナーが一気にホームへ、ヘッドスライディングセーフとなる好走塁を見せ、
愛工大名電が7−5と2点差にします。

6回裏 神戸国際大付の攻撃
愛工大名電は2番手の十亀投手にスイッチ。斉賀投手は1塁に下がります。
甲子園初登板ということで先頭打者に力んで四球を与えるなど、1アウト満塁とピンチを作るも、
3番井内選手を外角低めボール球スライダーで空振り三振に、
4番正木選手をスライダー連投で追い込んで134キロストレートでレフトへの浅いフライに打ち取り、
このピンチを無失点で凌ぎます。

7回表 愛工大名電の攻撃
神戸国際大付は大西投手に代打を送った関係で2番手の有元投手にスイッチします。
6番斉賀選手にヒットを許すも、牽制タッチアウトなどで無失点で抑えます。

9回表 愛工大名電の攻撃
先頭の3番佐々木選手が外角ストレートを叩くセカンド内安打で出塁し、
4番堂上選手は外角低めスライダーでショートゴロに打ち取られるも、
野手がこぼすエラーがあってオールセーフに。
送りバントで1アウト2・3塁としたところで、6番斉賀選手がスクイズバントを決めて1点を追加します。

9回裏 神戸国際大付の攻撃
先頭の3番井内選手の右中間を抜けるかという打球をライトの小島選手が一直線で落下点に走り、
スピードを落とさずにランニングキャッチするこの日2つめの超ファインプレーを見せて1アウトとします。
4番正木選手には死球を与えてしまい、5番打者をショートフライに打ち取って2アウトとするも、
6番長谷川選手の飛んだ所が良かったセンター前ヒットをセンターの佐々木選手が処理を誤ってしまい、
その間にランナーホームイン、タイムリーエラーとなって1点を失ってしまいます。
しかし最後は内角低めシンカーの後の高め133キロストレートでセカンドフライに打ち取り、
愛工大名電が2年連続の決勝戦へと駒を進めました!


愛工大名電先発の斉賀投手は立ち上がりからボールのキレがありませんでした。
それでも3回ぐらいからストレートを丁寧にコーナーに投げ分けることで0点に抑えていったんですが、
5回にはもう腕が振り切れず、ボールを置きにいくようなピッチングになっていました。
ボールを置きに行くのでストライクは先行するんですが、決め球にキレがないために見送られ、
力んで投げようとすると全てボールが高めに抜けてしまう、そんな状態でした。
6回表から十亀投手をマウンドに送ったのも頷ける内容です。

一方の神戸国際大付の大西投手はカーブのコントロールが定まらずに、
コントロールの荒れた立ち上がりになっていました。
3回にキャッチャーがこれまでマスクを被っていた桜井選手に代わったことが転機となり、
ストレート・スライダーをテンポ良く投げることで本来のピッチングを取り戻していきました。
ピンチは大西投手の方が多かったですが、投球内容自体は大西投手の方が安定していた気がします。
ストレートも130キロ中盤で威力がありましたし、
愛工大名電の打線がボール球に手を出すほどキレもありました。
ただ6回に柴田選手に打たれたことでガクッと来てしまったのか、一気にボールの力が衰えました。
躍動感あった投球フォームがバラバラになってしまい、かなり悪い状態になってしまいました。
序盤のピンチなどで球数が120球を超えていましたし、もう少し早いタイミングで継投できていたかもしれません。
ところで柴田選手に打たれた2本のタイムリー3ベースですが(2回と6回)、これはリードミスだったと思います。
2回は外角のスライダーに全く合わないスイングをしていたのにも関わらず、次に投げたのはカーブ。
6回も内角のスライダーに腰を引いたのにも関わらず、打たれたのは逆球のストレート。
コントロールが悪かったといえばそれまでですが、それでも防げたのではないかと…少し勿体無かったです。
6回に打たれたのははさすがにショックだったようで、
直後の3番佐々木選手にはその前の打席に打たれた低めスライダーを投げて勝ち越しを許すなどもう少し。
大西投手の場合は勝負を早くしすぎたりと精神面の成長が必要な気がします。
(バントで打者がボールを見送った時に、ちょっとブツクサ言ってたのも気になります(^^;)
やや精神的に張り詰めていた状態が続いていただけに、早めの継投ができなかったのか。
有元投手という力のある投手がいるだけに少し残念な結果でした。

愛工大名電の勝利に貢献した十亀投手はナイスピッチングでした。
右サイドスローの投手で、コントロール型というよりは球威型。
腕を大きく使ったフォームから130中盤(Max142)のストレート、
スライダー、シュート気味なシンカーを投げるピッチャーです。
コントロールは良くもなく悪くもなく、ただボールの威力があり、低めにキレのあるボールが投げられます。
立ち上がりこそ甲子園初登板で力みがあり、四球などでピンチを招きましたが、
3番井内選手には外角低めのボール球のスライダーを振らせて空振り三振に、
4番正木選手はスライダー攻めでレフトフライに打ち取るなど、要所では良いボールを投げられました。
2イニング目からはもう自分のピッチングができていましたし、
甲子園初登板とは思えない堂々としたピッチングだったと思いますね。
これまでエースの斉賀投手が投げきってきたチームだけに、十亀投手の活躍は助かりましたね。
なかなか絶対的なエースがいるチームでは2番手投手は力があっても活躍できないケースが多いんですが…
十亀投手は自分の力をしっかりと出すことができましたね。
ここまでの準備とハートの強さが生きた形だと思います。


負けた神戸国際大付はベンチワークが上手くいきませんでしたね。
正直言って愛工大名電とチームを比べてみれば打撃面では劣っていたと思います。
勝っていたのはピッチャーの量ぐらい。大西・有元投手という2枚看板を持っていたことだけでした。
けれどスタメン捕手をこれまでの桜井捕手から中上捕手に変えるなど、
結果的に裏目に出る作戦を引いてしまい、
今度は序盤の球数の多さを計算せずに大西投手を引っ張り過ぎてしまうなど、
継投勝負に出ることができませんでした。
大西投手の性格からすると勝ち越した直後の降板は受け入れなさそうですが…
あの場面は敢えて代えるべきだったように思います。
勝つチャンスがあったとすれば6回の継投でしょうね。
ただ今日の経験はチームにとってマイナスではないはずです。
特に大西投手には良い経験になったことでしょう。
一球の怖さ・油断大敵・勝負の厳しさ…そういったものを嫌というほどに痛感したと思います。
この経験を胸に夏に向けて精進し、一回り大きくなって帰ってきてもらいたいですね。
こういう本当に苦い経験は甲子園でしかできません。そういう意味では最高の経験をしたと言えます。
神戸国際大付の選手達にはこの敗戦を無駄にしないよう頑張って欲しいですね。

勝った愛工大名電は思い切った継投策が見事に決まりました。
エースの斉賀投手の代え時だったとはいえ、
甲子園で一度も登板のなかった十亀投手をマウンドに送るのは勇気がいる決断だったことでしょう。
その勇気ある決断に十亀投手が応え、勝利を呼び込みましたね。
愛工大名電にとってはエースの斉賀投手以外にもう1つ投手の駒が増えたのは大きなことです。
決勝に向けて新たな戦力がチームに加わりました。
打線の方は3番佐々木選手に本格的に当たりが戻り、打線がよく繋がるようになりました。
もうこれで万全ですね。1・2番打者が出塁し、3・4・5番が返す。あとはバントなどで相手をかく乱する
そんなバランスのいい打線になっています。
エースの斉賀投手がここ2試合連続で不安定なのが気がかりですが、それ以外に死角はなし。
守備も安定していて、ライトの小島選手が2度の超ファインプレーを見せるなど、
内外野ともにプレーの質が高いです。
昨年は済美の打力に屈してしまいましたが、今年はそれさえも跳ね返す力を持っています。
愛工大名電の初優勝に向けて、明日の決勝戦、頑張ってもらいたいですね。



準決勝第2試合 神村学園(鹿児島) 4−0 羽黒(山形)

(神)野上(9回)
(羽)片山マウリシオ(9回)
神村学園
羽黒

神村学園が初回に4番天王寺谷選手らのタイムリーで3点を先制し、
その得点をエースの野上投手が4安打1四球完封という素晴らしいピッチングで守りきり、
昨春の済美高校に引き続き、創部3年目の初出場での決勝戦進出を果たしました。

今日の試合はなんといっても野上投手のピッチングですね。
昨日の第2試合、9回2アウトから左足に打球を受けるというアクシデントがあり、
今日の登板への影響が心配されていたんですが…
実際の所はどうだか分かりませんが、怪我の光明になった気がします。
これまでの野上投手はリリース後に1塁側に倒れこむような感じで傾くことが多かったんですが、
今日は本塁方向に真っ直ぐ体が向いていました。
軸足に打球を受けたことで逆に力が抜け、余分な動きをせずにシャープになった感じがします。
試合後の野上投手のコメントに「楽しく投げられました」という言葉がありましたが、
それはこのフォームの欠陥が修正された点にある気がします。
体が開かないことでストレートがシュート回転せず、思う所に投げられていたと思いますし、
軸足に打球を受けたことで却ってフォームが完成したような感じがしますね。
これまでは西口投手似の投球フォームと言ってきましたが、
今はもう西口投手のフォームになっています。
足を上げた時のタメも1回戦で見た時よりもセンター方向に引き上げられていますし、
今の野上投手はちょっと高校生レベルでは対処しきれない感じがしますね。
アクシデントがあったことで、逆により良いピッチャーになった気がします。
明日の試合は連投となるので、スタミナ面の不安はありますが、
今の野上投手はフォームに無駄がなくなっているので、あまり関係ないような気がします。
今日の試合の疲れもそんなに残ってないでしょうしね。明日のピッチングも期待です。

攻撃面では長沢監督の采配が光りました。
試合後のインタビューを聞いていると、名将という風には思えないんですが、
ここまでの試合を見る限りではソフトボール日本代表のヘッドコーチを務めただけあり、
なかなかしたたかな人物ですね。
まず相手に対する観察眼が素晴らしいです。
相手の弱点を的確に見抜き、それに合わせた攻撃・守備をしていく、そんな野球ができる監督です。
昨春優勝の済美・上甲監督がいつもベンチで笑みを絶やさず、選手の士気を上げる指揮官タイプとすれば、
長沢監督は鋭い観察眼で作戦を練る副官タイプ、そんな雰囲気のする監督さんです。
今日の対片山投手の打線として考えたのは、
1番から5番までズラッと左打者を並べて、片山投手にスライダーを投げづらくし、
初回にボールをじっくり見たり、逆に初球から積極的に打って行ったりと、
上手く片山投手の立ち上がりを攻めました。
6回に追加点が入っていますが、結果的にはこの初回の3点が勝負を決めたわけですから、
長沢監督の作戦勝ちだと言えます。

エースの野上投手に4番の天王寺谷選手、そして長沢監督と。
どうしても昨年の済美高校を思い出してしまうようなチームです。
その済美高校にあやかって決勝でも勝利を収められるか。注目が集まりますね。

この試合の得点経過です。
1回表 神村学園の攻撃
1番橋野選手がセーフティバントを試みて上手く転がすも、片山投手が反応良く素手で捕って1塁送球アウト。
2番作増選手は外角チェンジアップなどをよく見て四球で出塁。
3番馬沢選手は3塁線へのセーフティバントを試みるも惜しくもファール、
その後外角のチェンジアップを引っ掛けてセカンドゴロ併殺コースに飛ぶもセカンドがこぼしてオールセーフ。
1アウト1・2塁で4番天王寺谷選手に打席が回り、
初球の外角低めに投げるつもりだったチェンジアップが真中低めに入り、
これを完璧に捉える右中間への2点タイムリー3ベースを放ち、神村学園が先制点を奪います。
さらに5番椎葉選手がフルカウントから四球を選んだ後、
6番寺田選手が初球低めシュート回転気味のストレートを捉えて三遊間抜くタイムリーヒットを放ち、
神村学園が3点を先行します。

2回表 神村学園の攻撃
1アウトから1番橋野選手がレフト前ヒットで出塁するも、2塁への盗塁を刺されてしまい、
結果的に3人で攻撃を終わってしまいます。

3回表 神村学園の攻撃
立ち上がりに左打者に対する得意のチェンジアップを見極められるなど3失点した片山投手ですが、
2巡目となるこの回はストレートと膝元のスライダーで勝負して行き、三者凡退に抑えます。
この回をきっかけに片山投手に本来のコントロールが戻り、調子を上げていきます。

3回裏 羽黒の攻撃
立ち上がりから三者凡退で抑える好投を見せている野上投手。
バックもそのピッチングに応えます。
まずセカンドの馬沢選手が前進してのランニングスローを見せれば、
ショートの谷口選手が三遊間深くのゴロを捕って1塁へ2バウンドスローでアウトにする
ファインプレーが飛び出し、神村学園サイドが活気付きます。
野上投手はこの回も三者凡退。

4回裏 羽黒の攻撃
先頭の中島選手が足で稼ぐピッチャーゴロ内安打で出塁し、送りバントで2塁へ進むも、
3番押切選手は内角ストレートにショートゴロ、
4番佐藤選手は外角低めにスライダーを集め、最後も外角低めボール球スライダーを振らせて空振り三振。
先頭打者を不運な形で出しても、落ち着いて後続の打者を打ち取ります。

5回裏 羽黒の攻撃
先頭の5番吉野選手のセカンド左への打球に対し、
馬沢選手が逆シングルで捕球して1塁へそのまま投げてアウトにするナイスプレーが飛び出し、
3回に引き続き守備陣も野上投手を助けます。
野上投手はこの回も三者凡退に抑え、危なげないピッチングを披露します。

6回表 神村学園の攻撃
1アウトから5番椎葉選手がレフト前ヒットで出塁し、
6番寺田選手がストレートを叩く一二塁間抜くヒットを放ち、1アウト1・2塁のチャンス。
ここで7番谷口選手のショートゴロは併殺かと思いきや、
セカンドの送球が悪送球となってカメラマン席に飛び込み、2塁ランナーがホームイン。
1塁走者はアウトで2アウト2塁から再開。
8番野上投手はピッチャーゴロに倒れるも、神村学園が貴重な追加点を挙げます。

7回裏 羽黒の攻撃
先頭の2番根村選手が真中付近のストレートを打つセンター前に抜けるヒットを放ち、
送りバントでランナーを2塁へ進めるものの、
4番佐藤選手がまたしてもスライダーに合わず空振り三振、
5番吉野選手は内角を攻められた後の外角低めスライダーでレフトフライに打ち取られ、
得点することができません。

8回裏 羽黒の攻撃
2アウトから微妙に外れる四球(この日初めて)を与えてしまい、
9番片山投手に叩きつけて一二塁間を抜くヒットを打たれて2アウト1・3塁となるも、
1番中島選手の叩きつけて高いバウンドになるピッチャーゴロに対して、
野上投手が俊足を警戒しながらも素早く的確なナイス送球を見せて間一髪アウトとします。

9回裏 羽黒の攻撃
1アウトから3番押切選手の内角ストレート系の球で詰まらせたボテボテの当たりが内安打とりますが、
野上投手はこれまでのようにペースを乱さず、
4番佐藤選手にスライダーを連投して空振り三振、
5番吉野選手に対しては内角ストレートを攻めた後の外角高めボール球スライダーを打たせてライトフライに。
試合終了、4−0で野上投手が4安打1四球7奪三振の完封勝利を収め、
神村学園が初の決勝戦へ進出しました。


負けた羽黒としては残念な試合でした。
立ち上がりこそ片山投手は左打者へのチェンジアップが決まらず、
また神村学園の打者によく見られたことでコントロールを乱してしまい、
いつもの低めへの制球力がありませんでしたが、
3回からは左打者の膝元へスライダーを上手く投げることで立ち直り、
その後はエラーによる1点のみに抑えました。
ピッチング自体は悪くなかったと思いますが、相手の野上投手がそれ以上の投球をしてしまいましたからね。
やっぱり立ち上がりの失点が勿体無かった気がします。
反省するとすればピッチング内容に偏りがあったことでしょうね。
チェンジアップに自信があり、左打者に対してはそれでピッチングを組み立てていたことで、
逆にそのデータを神村学園に上手く利用されてしまいました。
今後は投球の幅を増すことも必要になってくると思います。

打線の方では野上投手のスライダーに中軸が全く合っていませんでした。
特に4番の佐藤選手に対してはスライダーしか投げていなかったはずなんですけど…
それでもタイミングが合わず、ボール球も真中に来た失投をも空振りしていたということは、
それだけボールの切れをバッターが感じていたんでしょうね。
今後は野上投手のようなスライダー投手に対してどう攻めて行くのか、
外角の変化球をどう打つのか、打線はもう一度鍛え直す必要がありそうです。
ただセンバツという冬が開けたばかりの早い時期の大会で、
東北のチームがベスト4まで来たのは大きなことだと思います。
東北の野球レベルは年々上がってきていますね。
今年から東北楽天ゴールデンイーグルスができたことですし、さらなるレベルアップを図り、
念願の優勝を果たしてもらいたいです。あと一歩なんですからね。


勝った神村学園は投打の中心選手が活躍する理想的な試合展開となりました。
1〜3番が出塁し、4番天王寺谷選手が返して先制点を奪い、
その得点をエースの野上投手が守りきる、最高の試合運びでしたね。
打線では4番の天王寺谷選手ばかりが目立っていますが、
1番の橋野選手は足が速く、積極的にセーフティバントを狙ってきますし、
馬沢選手はセンスのある巧打者ですし、椎葉選手はキャッチャーながらも強打のスイッチヒッター、
寺田選手は中軸では唯一の右打者で勝負強さも持っているとメンバーには特色があります。
またどの選手もバントが上手く、卒のない攻撃をしてきます。
相手投手に合わせた多彩な攻撃が仕掛けられるという意味では神村学園の打線は面白いです。

エースの野上投手は強気なピッチャーで、それが災いして1・2回戦では独り相撲を取ることもありましたが、
甲子園で投げるたびに成長しており、ピッチングが安定してきています。
マウンドの飄々とした表情にも磨きがかかってきたような気がします(^^;
ストレート・スライダーのキレの良さに注目が集まる投手ですが、
それ以上に内角のコントロールの良さが光っています。
2回戦こそ四死球が5つ(?)ぐらいで多かったんですが、それ以外の試合では1個以内。
内角を大胆に攻めている割には四死球が少ないピッチャーです。
失投もあるんですが、内角を攻めることで打者に踏み込ませず、
外角のスライダー・フォークを振らすことができるという高校生離れしたピッチングができる投手です。
連投となる明日、今日のようなピッチングができるかどうか分かりませんが、
セカンド・ショートがナイスプレーで盛り立てたようにバックには堅い守備陣が控えています。
打たせて取るピッチングで強打の愛工大名電を抑えて欲しいですね。

済美に続く創部3年目での初出場初優勝まであと1つ。
昨年準優勝の悔しさを愛工大名電が晴らすか、それとも昨年の済美に続いて神村学園が優勝するか。
明日の決勝戦が楽しみです。ナイスゲームを期待しています!!



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