05センバツ甲子園大会 6日目

第1試合 神村学園(鹿児島) 5−3 星稜(石川) 

(神)野上(9回)
(星)片岡(9回)
神村
星稜

「西口がいる」、この試合の最初の感想です(笑)
神村学園の野上投手は身長175センチ、65キロという細身の体で、
投げ終わると1塁側に倒れるように体が傾くフォーム、
腕のしなりが良く、スライダーの切れが良いピッチャーということで、
思わず西武の西口投手と重ねて見てしまいました。
まだ色々と課題が多い投手だと思いますが、なかなかに面白い投手だと思いました。
詳細は後でということで。

試合の方は創部3年目の神村学園が投打に力を見せ、
追いすがる星稜をかわして勝利を収めました。
女子高から共学となると同時にできた野球部、
その経歴から昨年優勝した済美高校と重ねられて見られる神村学園ですが、
選手達はそのプレッシャーに潰されることなく、伸び伸びとプレーできていました。
ピンチでは選手の方から集まって間を取ったり、ベンチ前で円陣を組んだりと、選手の自主性も光りました。
創部3年目で甲子園に来たチームだけのことはありますね。

簡単な得点経過です。
1回表 神村学園の攻撃
先頭の橋野選手がヒットで出塁するも、送りバントを失敗し、さらに盗塁失敗。
ミスが続いて得点を挙げることができません。

3回裏 星稜の攻撃
1アウトからショートのエラーでランナーを出し、エンドランセカンドゴロで2アウト2塁となるも、
ピッチャー返しグラブで弾いた打球をショートがナイスバックアップをするファインプレーが飛び出し、
ミスを帳消しにします。

4回表 神村学園の攻撃
1アウトから2番馬沢選手が低めの球を上手くミートするセンター前ヒットで出塁し、
3番椎葉選手が低めスライダーを打つライト前ヒットで繋いで1アウト1・2塁とし、
4番天王寺谷選手が真中低めの球をパワーで運ぶセンターオーバー2点タイムリー2ベースを放ち、
神村学園が2点を先制します。
この後、ランナーが3塁へ進むも、代打が三振に倒れて追加点はならず。

4回裏 星稜の攻撃
先頭の3番中井選手がレフト前ヒットで出塁し、送りバントで2塁へ進むも、
5番巌選手のサード右の打球を寺田選手が飛びついて捕り、2塁ランナーを挟んでタッチするファインプレー!
後続の打者も低目スライダーに空振り三振に倒れて無得点に。

6回表 神村学園の攻撃
先頭の2番馬沢選手が低めストレートを捉えるピッチャー返しのセンター前ヒットで出塁し、
送りバント・四球で1アウト1・2塁とチャンスを広げます。
ここで5番寺田選手がライト線へのタイムリー2ベースを放ち、1点を追加。
さらに途中出場の6番金堀選手が前進守備のセカンド右を抜くタイムリーヒットを放ち、2点目を挙げます。
この後、1アウト1・3塁から1塁ランナーがディレードスチールでスタートを切り、
わざと一二塁間に挟まれてホームスチールを伺うも、星稜の守備陣が1塁方向に挟み込み、
3塁ランナーのスタートにも冷静に対処、ホームタッチアウトとして相手の攻撃の流れを断ちます。

6回裏 星稜の攻撃
2アウトから4番富永・5番巌選手の連続ヒット・ワイルドピッチで2アウト1・3塁とし、
サードゴロを大事に行き過ぎてグラブで弾くタイムリーエラーが飛び出して1点を返します。
ただこの後の打者は低めスライダーに三振に倒れて2点目はなりません。

7回表 神村学園の攻撃
1アウトから9番谷口選手が一二塁間抜くヒットで出塁し、
送りバントの処理を星稜守備陣がミスしてオールセーフ、1アウト1・2塁のチャンス。
ここで2番馬沢選手がセーフティ気味の送りバントを試みるも、片岡投手がナイス反応を見せて3塁アウト。
しかし3番椎葉選手が高めの球を叩くセンター前のタイムリーヒットを放ち、1点を追加します。
この後、4番の天王寺谷選手に打席が回りますが、外角低めの変化球に空振り三振に倒れます。

7回裏 星稜の攻撃
代打の沢野選手がヒットを放ち、送りバントで1アウト2塁とするも、後続が倒れて無得点。

8回表 神村学園の攻撃
先頭の5番寺田選手がレフト前に落ちるヒットで出塁し、送りバントで2塁へ。
7番作増選手がナイスセーフティ内安打を見せて1アウト1・3塁とチャンスを広げるも、
1塁ランナーの盗塁が失敗し、8番打者も倒れて無得点に。

8回裏 星稜の攻撃
1アウトからファーストのエラーでランナーが出塁し、5番巌選手がセンター前ヒットで繋ぐも、
6番打者がセカンドゴロ併殺打に倒れて無得点に。

9回表 神村学園の攻撃
先頭打者が死球で出塁するも、ショートゴロ併殺打などがあって無得点。

9回裏 星稜の攻撃
1アウトから途中出場の8番紺選手がセンター前ヒットで出塁し、
9番栗田選手が三遊間抜くヒットで繋ぎ、1アウト1・2塁のチャンス。
ここで代打の堀井選手が初球打ちレフト左へのタイムリーヒット、
2番斉田選手も初球打ちライト右へのタイムリー2ベースを放ち、2点を上げ星稜が追い上げます。
しかし3番打者の打球はレフト手前のライナーで3塁ランナー動けず、
4番富永選手の一二塁間のゴロにセカンドが回り込んでベースカバーのピッチャーに送球してアウト。
神村学園が星稜の反撃をかわし、5−3で勝利を収めました。


勝敗を分けたのはやはり先制点でしょう。
序盤、神村学園にミスが出るなどやや波に乗れていない面がありました。
ただ3回に4番天王寺谷選手に2点タイムリー2ベースが飛び出して先制点が取れたことで、
伸び伸びと試合を進められたように思います。
星稜も終盤に粘り強さを見せ、持ち前の終盤の反撃がありましたが、
ちょっと反撃が遅かったように思います。
甲子園は先にペースを掴んだ方が有利ですから… 仕掛けが遅かったと言わざるを得ません。
先制点を挙げて、試合を優位に進めた神村学園の快勝でしたね。

勝った神村学園は甲子園初戦ながらも伸び伸びプレーができていました。
序盤こそミスがありましたが、それ以降は積極的にプレーしていました。
エラーもありましたが、それは前に出てのプレーで消極的なものではありませんでした。
打線は4番の天王寺谷選手を中心に中軸打者がしっかりしており、
左右両方向に打ち分けるバッティングが持ち味です。
追い込まれるまでは積極的にフルスイングしてきますが、
追い込まれると逆方向を意識したバッティングをするなど柔軟性がありました。
今日のヒットは低めの球を流し打ったものが多く、どんな投手にも対応できる打線だと思います。
エースの野上投手は内角を強気に攻めるピッチングが持ち味で、スライダーのキレもよく安定感があります。
守備陣もエラーがあったものの、ナイスプレーもありましたし、守備力自体はあると思います。
心配なのは野上投手のスタミナと勝気な性格。
終盤はスライダーのキレが落ちていましたし、9回は自分で決めようとピッチングが窮屈でした。
連打が続いた時などに熱くならないか心配です。

負けた星稜は9回に積極的な初球打ちで追い上げるなど、
持ち前の終盤の集中打は見せることができました。
ただ仕掛けが遅く、試合の流れを掴むことができませんでした。
片岡投手は低めの球を神村学園打線に上手く弾き返されていましたが、
最後まで低めに集める粘り強いピッチングができていました。
夏までに打線の強化を行い、早い段階で攻撃が仕掛けられるチームになってほしいです。


目に付いた選手は神村学園の野上投手、天王寺谷選手、馬沢選手です。
野上投手は細身の体型から腕のしなりで投げるスライダー投手です。
最初から体を開き気味にモーションに入り、投げ終わると1塁側に体を傾ける感じの投球フォームをしています。
西武の西口投手のフォームに似ている感じです(前半は違う、後半はほぼ)
ストレートは常時130キロ台後半(Max140キロ)、120キロ前後のキレのあるスライダーが武器です。
ストレートとスライダーの腕の振りが同じでなのが良いですね。
右打者に対しては内角のストレートで強気に攻め、外角低めのスライダーで打ち取り、
左打者には膝元のスライダーで攻めるなど自分のピッチングスタイルを持っています。
課題としては開いて投げる投球フォームでしょうか。
打者に見やすかったり、ストレートがシュート回転したりするので、体の開きをどうするかが問題です。
今は最初から体を開くことで対処していますが、
西口投手のように体を後ろに絞る方法も試してみるといいかもしれません。
課題は多いと思いますが、面白いピッチャーだと思います。

4番レフトの天王寺谷選手は腰が座った打撃フォームで、トップの位置が安定している強打者です。
今日は低めの球をセンターの頭を越す所まで運ぶなどパワーも見せてくれました。
ややベースから離れて立っていることもあり、内角真中〜高め、外角低めの変化球の対応を見てみたい所。
今日の試合後半では低めの変化球にバットが回っていただけに、次の試合では変化球を上手く打って欲しいです。

2番セカンドの馬沢選手には打撃センスを感じました。
低めの難しい球を上手くミートしてセンター前に運ぶなどバッティングの上手さを見せてくれました。
次の試合でも注目してみてみたい選手です。



第2試合 市和歌山商(和歌山) 6−5 常総学院(茨城)

(市)田島(9回)
(常)伊勢(4回0/3)−関根(1回1/3)−飯田(3回2/3)
(本)古谷(8回裏・常総・1号2ラン)
市和商
常総

常総学院は木内監督から持丸監督に変わって始めての甲子園でしたが、
自慢の守備にエラー、ピッチャーの継投が上手く行かないなど、
試合巧者の常総らしくない試合になってしまいました。
逆に市和歌山商が四死球・エラーによって貰ったチャンスを確実にものにし、
投げてはエースの田島投手が11安打を打たれながらも無四球、
粘り強いピッチングで最小失点に抑え、勝利を収めました。
四死球とエラーが勝敗を分けてしまいましたね。

得点経過です。
1回表 市和歌山商の攻撃
常総学院の先発・伊勢投手は立ち上がりコントロールが定まらず。
2者連続四球・送りバントで1アウト2・3塁となり、
4番伊藤選手が振り遅れながらも甘い球をミートし、3塁線抜く2点タイムリー2ベースを放ち、
市和歌山商が2点を先行します。
この後、死球で1アウト1・2塁となるも、セカンドゴロ併殺で追加点はならず。

1回裏 常総の攻撃
2アウトから3番佐藤貴之選手がレフト左へのヒットを放ち、レフトが処理を誤る間に2塁へ。
ここで4番勝田選手が甘いカーブを捉えるセンター前タイムリーヒットを放ち、1点を返します。

2回表 市和歌山商の攻撃
先頭打者が四球で出塁し、送りバント・ショートゴロでランナーを3塁へ。
ここで1番川端選手の高めストレートを叩いたショートゴロがタイムリーエラーを誘い、
ノーヒットで1点を追加します。

3回裏 常総の攻撃
先頭の1番湯浅選手がセンター右へのヒットを放ち、外野を抜けなかったものの一気に2塁を突く好走塁!
2番福本選手は送りバントをファールにするも、センターへヒットを放ち、ノーアウト1・3塁。
続く3番打者はキャッチャーファールフライに倒れるも、1塁ランナーがタッチアップして2塁を陥れる好走塁!
しかし4番勝田選手が外角変化球に空振り三振、5番打者もセンターフライに倒れて無得点に。

4回表 市和歌山商の攻撃
先頭の6番坂選手が1塁線へのファースト内安打で出塁し、送りバントで2塁へ。
8番上野選手の右中間への打球にライトが追いつくもこぼしてしまい、ヒットに。
打者走者は暴走気味だったものの、2塁を陥れてセーフ、2ベースヒットとして1アウト2・3塁に。
そして9番田島投手のショートゴロを弾くエラーがあり、サードが1塁へ送球するもセーフ、
3塁ランナーを刺そうとファーストが3塁へ送球するもこれが逸れてしまって3塁ランナーホームイン。
さらに1アウト2・3塁から1番川端選手がライトへ犠牲フライを放ち、もう1点を追加します。

4回裏 常総の攻撃
先頭の6番佐藤一平選手がヒットで出塁し、盗塁を決めてノーアウト2塁。
この後、ショートゴロ2つの間に3塁へ達し、
ショート手前の弱いゴロを川端選手がエラーして3塁ランナーホームイン。1点を返します。

5回表 市和歌山商の攻撃
先頭の3番梶本選手に四球を出したところで常総は投手交代。左の関根投手をマウンドに送ります。
2アウトを取るも盗塁で2塁へランナーを進められ、
6番坂選手にセンター前タイムリーヒットを許し、1点を取られてしまいます。

6回表 市和歌山商の攻撃
1アウトから9番田島選手に2ベースヒットを許したところで、常総は投手交代。右サイドの飯田投手。
四球で2アウト満塁とし、4番伊藤選手を迎えるもストレートで見逃し三振に取って無失点に。

7回表 市和歌山商の攻撃
先頭の5番皆本選手がセンター前ヒットで出塁するも、盗塁失敗で無得点。

8回裏 常総の攻撃
先頭の4番勝田選手がファーストへ強いゴロを打ち、
これをグラブで少し弾く間に勝田選手が駆け抜けてセーフ、記録はエラー。
代打の円城寺選手は一二塁間をしぶとく抜くヒットを放ち、ノーアウト1・2塁。
送りバントで1アウト2・3塁とし、7番小池選手がライトへ犠牲フライを放ち1点。
さらに8番古谷選手が低めカーブにやや崩されながらも上手くバットに乗せ、
ライトポール際に飛び込む2ランホームラン!
常総学院が3点を返し、1点差と追い上げます。

9回表 市和歌山商の攻撃
1アウトから3番梶本選手がホームラン性のライトフェンス直撃の2ベースヒットを放つも、
4番伊藤選手はセカンドゴロ、
5番打者の一二塁間への当たりは常総のセカンドが上手くバウンドに合わせてアウトに。

9回裏 常総の攻撃
三者凡退に倒れて試合終了。6−5で市和歌山商が逃げ切りました。


勝敗を分けたのは言うまでもなく常総学院の四死球・エラーです。
2回の失点はノーヒットで、4回の失点もタイムリーではなく守備の乱れから失点しています。
他の失点も四死球が絡んでいるなど自滅に近い内容でした。
逆に市和歌山商はタイムリーエラーでの失点はありましたが、
田島投手が粘り強く自分のピッチングをし、無四球で投げきりました。
ミスをした方が負ける、そんな典型的な試合でしたね。

勝った市和歌山商は田島投手の粘り強いピッチングが光りました。
11安打打たれたものの四死球は0。ここらが最後まで粘れた理由でしょう。
打線は相手のミスを利用して上手く加点することができました。
守備も安定していましたし、今日のような粘り強い試合展開で勝ち上がって行きたいところです。

負けた常総学院はらしくないエラーが目立ちました。
予選でも堅守を誇っており、そんなにエラーをするチームではないんですが…
四死球で守備のリズムが乱れたのか、甲子園初戦ということで緊張していたのか…
いずれにせよ課題の多い試合となってしまいました。
投手陣はコントロールに、野手陣はもう一度守備を確認して欲しいです。
ただ攻撃の面では常に先の塁を狙う常総野球ができていたので、その点では安心しています。
夏に帰ってくることを期待したいです。


目に付いた選手は市和歌山商の田島投手と川端選手、常総学院の勝田選手です。
田島投手は165センチと小柄ですが、テイクバックの小さなフォームから、
120キロ後半のストレート、スライダー、カーブを低めに集めて打たせて取るピッチングをする投手です。
コントロールが安定していて、ランナーを出してもペースを乱すことなく、自分のピッチングができていました。
打たれながらも、無四球で抑えたことが光ります。次回も粘り強いピッチングを見せて欲しいです。
1番ショートの川端選手は俊足強打の左打者。
オープンスタンスで引き付けて打つフォームでセンスある良い打者だと思います。
今日は四球が多く、2打数ノーヒットだったので、バッティングは次の試合に期待したいです。
ただ守備の方は肩がどうなのかなと。あまりいい送球がいってなかっただけに少し心配です。

常総学院の4番ライトの勝田選手は無駄のないフォーム・スイングのできる左の強打者です。
1打席目のタイムリーは変化球を上手くバットに乗せたタイムリーヒットでした。
ただ守備では落球をしてしまうなどもう少し。他の打席も抑えられてしまい、あまり見ることができませんでした。
夏の大会ではもう一回り大きくなって戻ってきて欲しいです。



第3試合 神戸国際大付(兵庫) 4−0 駒大苫小牧(北海道)

(神)大西(9回)
(苫)松橋(3回)−吉岡(2回)−田中(4回)
神戸国際大付
駒大苫小牧

神戸国際大付の大西投手があわやノーヒットノーランという好投を見せ、
駒大苫小牧の強力打線を封じ、1安打の完封勝利を収めました。
大西投手は9回ノーアウトから2番辻選手の速いカーブを打たれるまでノーヒット。
尻上がりに調子を上げていて、
雰囲気的にはノーヒットノーランをやってもおかしくなかっただけにちょっと残念です。
最後の最後で駒大苫小牧の意地が出たということでしょうか。
立ち上がりこそ調子はあまりよくありませんでしたが、中盤以降のピッチングは素晴らしかったです。
ナイスピッチングでした、大西投手!

簡単な得点経過です。
1回表 神戸国際大付の攻撃
2アウトから2者連続四球があるも、空振り三振に倒れて無得点。

1回裏 駒大苫小牧の攻撃
1番林選手が死球で出塁するも、送りバント失敗。
残ったランナーの辻選手が盗塁を決め、4番本間選手が四球を選んで2アウト1・2塁とするも、
後続が倒れて無得点。

3回表 神戸国際大付の攻撃
1アウトから2番伊田選手がストレートを打つ三遊間抜くヒットで出塁し、3番井内選手は四球。
ワイルドピッチがあって1アウト2・3塁。
ここで4番正木選手がノースリーから低めストレートを捉える右中間への2点タイムリー2ベースを放ち、
神戸国際大付が先制点を挙げます。
代打の長谷川選手も外角低めストレートを弾き返すライト前ヒットを放つも、
2塁ランナーがホームタッチアウト。
この後、6番堂本選手がヒットを放つも、後続が倒れて追加点はならず。

4回表 神戸国際大付の攻撃
この回から駒大苫小牧のピッチャーは吉岡投手に。
先頭の8番桜井選手が初球カーブを捕らえる三遊間抜くヒットで出塁し、
送りバントを失敗するものの、盗塁を決めてランナー2塁へ。
1番前田選手のファーストへの当たりは投手のベースカバーが遅れてセーフ、内安打で1アウト1・3塁。
2番打者はピッチャーゴロに倒れるも、3番井内選手が四球を選んで2アウト満塁。
ここで4番正木選手が外角低めスライダーをしぶとくバットに当ててレフト前に落ちる2点タイムリーヒット!
この後は3塁への盗塁が失敗して3アウトチェンジ。

5回裏 駒大苫小牧の攻撃
大西投手が三者連続三振に。
ここら辺から大西投手のテンポが上がり、変化球のコントロールも良くなります。

6回表 神戸国際大付の攻撃
この回から駒大苫小牧のピッチャーは1回戦で好投した田中投手に。
1回戦以上のピッチングを見せ、6〜9回まで三者凡退に抑えます。

9回裏 駒大苫小牧の攻撃
8回終了までノーヒットピッチングを続けてきた大西投手。
尻上がりに調子を上げてきており、ノーヒットノーランの雰囲気が漂います。
しかし直後、先頭の2番辻選手が速いカーブを打つレフト前ヒットを放ち、ノーヒットノーランの夢を砕きます。
この後、3番打者はセカンドゴロで併殺を避けるのがやっと、
4番本間選手がエンドランショートゴロで1塁ヘッドスライディングセーフ(記録はフィルダースチョイス)
5番打者はこの日チーム12個目となる三振に倒れ、パスボールでランナーが2・3塁に進むも、
最後の打者がサードゴロに倒れて試合終了。
神戸国際大付の大西投手が1安打完封勝利を収め、ベスト8一番乗りを果たしました。


勝敗を分けたのは前半戦の戦いぶりでしょう。
立ち上がりの大西投手はコントロールが定まらず、調子自体は良くありませんでした。
1〜4回まで毎回死球を与えるなど、付け入る隙はあったはずです。
ですが、駒大苫小牧の打者は大西投手の速い投球テンポに付いていけず、
自分達のバッティングをすることができませんでした。
前半に不安定なピッチングをしていた大西投手を打ち崩せなかったことで、
大西投手を返って調子付けてしまい、手も足も出ない状態になってしまいました。
逆に神戸国際大付は駒大苫小牧の先発:松橋投手が変化球のコントロールに苦しんでいる所を攻め、
ストレート一本に絞って狙い打ちで得点を挙げるなど、早い段階で崩すことができました。
不安定だった先発投手を序盤に崩せたか崩せなかったかが勝敗を決めたように思います。

勝った神戸国際大付は打線がコントロールに苦しむ松橋投手を上手く攻略しました。
4番正木選手が2本のタイムリーヒットを放つなど勝負強い打撃を見せてくれましたね。
得点は取れる時に取っておく、それができていたのが良かったと思います。
投げては大西投手があわやノーヒットノーランという1安打完封勝利。
立ち上がりは毎回死球を与えるなどテンポが悪く、コントロールが荒れ気味でしたが、
テンポの早い投球フォームに駒大苫小牧打線が合わなかったようで、随分と助けられていました。
けれど5回からは変化球が低めに決まり、ストレートの伸びも十分となり、
ピッチングのテンポが上がるなど素晴らしいピッチングに変わりました。
今日の後半のピッチングならば、どんな打線に当たってもそう崩されないでしょう。
次の試合のピッチングにも期待したいです。

負けた駒大苫小牧は打線の不振が痛すぎました。
大西投手がナイスピッチングを見せたとはいえ、あまりにも打てなさ過ぎました。
早いテンポで投げてくる大西投手にタイミングが合わず。自分の間合いで打席に入れていませんでした。
ボール球に手を出していましたし、バッティングが荒かったです。
投手陣ではエースの松橋投手がコントロールが悪く、ピッチングになりませんでした。
2番手の吉岡投手は単調なピッチングになってしまい、狙い球を絞られてしました。
1回戦・今日と2年生の田中投手が頑張った分だけ、3年生の2投手のピッチングが物足りないものでした。
この試合のピッチングをしっかりと反省し、夏には一回り大きくなって帰ってきて欲しいです。


目に付いた選手は神戸国際大の大西投手、駒大苫小牧の松橋・吉岡・田中投手です。
大西投手は立ち上がりこそコントロールが悪くかったものの、
5回からはキレのあるストレートと大きなカーブとスライダー系の小さなカーブとを効果的に決め、
テンポの早いピッチングで駒大苫小牧打線に付け入る隙を与えませんでした。
あと少しでノーヒットノーランだったんですがね。まぁ、違う機会にということにしましょう(^^;

駒大苫小牧の松橋投手はまだ荒削りな印象を受けてしまいます。
コントロールが悪いのはリリースポイントが一定しないからで、投げ終わった形がイマイチ一定しません。
ストレートは140キロ前後、Max145キロでボールの威力自体はあったんですが、
いかんせんコントロールが定まらなければ意味がありません。
スライダー・カーブといった変化球でストライクが取れず、
カウントを取りにいった威力のないストレートを打ち返されるなどピッチングになりませんでした。
どんなに速いストレートを投げられても、コントロールが定まらなければ、
スピードを殺して投げざるを得ません。
夏に向けて投球フォームをしっかりと固め、コントロールを安定させて欲しいです。

吉岡投手はオーソドックスなオーバースロー右腕で、腕のしなりで投げられるピッチャーです。
ストレートは135キロ前後、110前後のカーブ・スライダーのコンビネーションで、
コントロールが安定している投手です。
今日のピッチングは悪くありませんでしたが、右打者に内角を使わずに外角低めばかりを攻めるなど、
投球パターンの偏りがあり、それを狙われてしまいました
右打者の内角を有効に使うピッチングを覚え、投球の幅を広げて欲しいです。

1回戦も登板した2年生右腕の田中投手は前回とは比べ物にならないほど良いピッチングをしていました。
前回見た時には好投していたものの、変化球でかわすことが多かったですし、
腕の振りが効率的ではありませんでした。
けれど今日見るとフォームに変な間がなく、スムーズになっており、腕の振りもシャープになっていました。
投球フォームの無駄がなくなっていましたね。
ストレートは140キロ前後で最速145キロを計測、
110キロ台カーブ、120キロ台スライダー・フォークと腕の振りが良かった分、変化球も良かったです。
今日はストレートを勝負球にし、外角低めに速いストレートをガンガン投げていました。
スタミナを考えると今日のようなピッチングを1試合することはできないと思いますが、
前回・今日のピッチングを自信とし、夏にはエースナンバーを背負えるよう頑張って欲しいです。



第4試合 慶応(神奈川) 3−1 福井商(福井)

(慶)中林(9回)
(福)林(9回)
慶応
福井商

うーん… さすがに4試合は疲れます…
プロ野球の試合もあるだけに…辛い。涌井投手が打たれただけにもっと辛い(苦笑)
あーぁ、打線が爆発して7点取ってるのに。どこの大学出身だよ、2番手投手…
高校出身の先輩は頑張ってるんですが…
…おっと、脱線しました。閑話休題。

慶応の中林投手が素晴らしいピッチングを見せ、福井商の左打線を封じました。
福井商の林投手も10三振を奪うなど良いピッチングを見せたんですが、
ランナーを出してから走られ、後半にスタミナ切れで連打を食らうなど上手く攻略されてしまいました。
慶応の卒のない野球が発揮された試合になりましたね。

得点経過です。
1回裏 福井商の攻撃
1番奥田選手が甘いスライダーを捉える右中間真っ二つの2ベースヒットで出塁し、
送りバントで3塁へ進めるも、
3番打者の三遊間不覚へのショートゴロで3塁ランナー動けず、
4番打者もレフトフライに倒れて無得点に終わってしまいます。

3回表 慶応の攻撃
1アウトから9番渕上選手が外角ストレートを流してレフト左に落ちるヒットで出塁し、
1番に抜擢された1回戦でサヨナラ打の新谷選手が
外角低めストレートを打ってセンター右抜くタイムリー3ベース! 慶応が先制点を奪います。
1アウト3塁で2番打者がスクイズを試みるも、外角低めスライダーに空振り、
3塁ランナーが挟まれて2点目はなりません。

4回表 慶応の攻撃
先頭の3番竹内選手がやや甘いストレートを捉えるセンター前ヒットで出塁して2塁へ盗塁。
キャッチャーの送球がランナーに当たってボールが転がる間にランナーは3塁へ。
ノーアウト3塁としますが、ここは林投手が踏ん張って無失点に。

4回裏 福井商の攻撃
先頭の2番奥井選手が外角高めストレートを叩く左中間抜く3ベースヒットを放ち、
1アウトから4番小坂選手がスクイズを決めて、福井商が同点に追いつきます。

5回裏 福井商の攻撃
先頭の6番斉藤進吾選手が外角低めスライダーを合わせるライト線へのヒットを放ち、
大胆に2塁を狙い、虚を疲れた慶応は送球が逸れてセーフ、2ベースヒットにする好走塁を見せます。
さらに送りバントで慶応が処理を誤り、オールセーフでノーアウト1・3塁。
しかし8番林投手がセーフティスクイズを試みるも中林投手が上手く処理してホームタッチアウト。
パスボールで1アウト2・3塁のチャンスを貰うも、スリーバントスクイズがファールとなって失敗。
この後も四球で満塁となるも、2番打者がショートゴロに倒れて無得点に終わってしまいます。

7回表 慶応の攻撃
先頭打者が四球で出塁し、2塁への盗塁を決め、さらに送球が少し逸れる間に3塁へ。
ここで6番高尾選手が三遊間抜くタイムリーヒットを放ち、1点を勝ち越します。

8回表 慶応の攻撃
2アウトから3番竹内選手が3ベースヒットで出塁し、
4番湯浅選手が内角変化球に詰まりながらもショート後方に落ちるレフト前タイムリーを放ち、
慶応が2点差とします。

9回裏 福井商の攻撃
尻上がりに調子を上げる中林投手を打てずに三者凡退。
試合終了、慶応が3−1で勝利しました。


勝敗を分けたのはチャンスをものにできたかどうか、でしょうね。
慶応も4回にチャンスを逃しているんですが、それ以外のチャンスでは確実に得点しています。
逆に福井商は、1回・5回と決定的なチャンスを逃しています。
特に5回はチャンスが2度もありました。それも相手がミスしてお膳立てしてくれたチャンスがです。
得点をどうぞ取ってくださいと言っていたのにも関わらず、そこで得点することができなかった…
それに尽きます。5回の攻防が試合を決めてしまいました。

勝った慶応はエースの中林投手がよく頑張りました。
特に5回は自らのバント処理ミスがあったものの、
直後のスクイズの処理は的確にし、
フルカウントからのスリーバントスクイズはストレートで力勝ちしました。
今日はストレートの走り・キレが抜群で、スライダーも良い所に決まるなど文句なしのピッチングでした。
福井商の林投手に負けない素晴らしいピッチングでしたね。
また打線は前回の戸畑戦同様に卒のない野球が光りました。
常に先の塁を狙う積極的な走塁が徹底されていましたし、
福井商の林投手の弱点がクイックモーションにあると分かると積極的に走り、
福井商バッテリーを苦しめていました。
終わってみればこの盗塁が得点に結びついただけに、積極的な盗塁策が勝利を呼び込んだと言えます。
作戦面でも投げ込み不足でスタミナの不安のある林投手を攻めるために、
1巡目は待球作戦を徹底して球数を投げさせていました。
その効果もあってか、林投手は調子がいいと思って、飛ばし気味に入ってしまい、
後半に疲れでストレートのキレが少なくなるなど慶応の作戦にまんまとはまってしまいました。
こういった慶応の卒のない攻撃が効果的に作用したと思います。
やはり野球をよく知っている手ごわいチームです。今大会の台風の目ですね。

負けた福井商は5回の拙攻が悔やまれます。
もしもこの回に得点が入っていたら、試合は一気に福井商で決まっていたと思います。
このイニングの始まりがキャッチャーの斉藤進吾選手が見た感じであまり足が速くないのにも関わらず、
相手の虚を突く2塁への好走塁を見せていたからです。
得点が入っていれば、林投手も気分良く投げられたでしょうし、
斉藤捕手も上手くリードし、盗塁を仕掛けられても良い送球が行っていたはずです。
この回に得点できなかったことで一気に悪い流れに傾いてしまったように思います。
先発の林投手はナイスピッチングを見せていたものの、
クイックが遅いことを突かれて積極的に走られてしまいました。
また終盤にはストレートのキレが少なくなり、8回に慶応打線に掴まってしまいました。
ボール自体は素晴らしかっただけに残念です。
ただ今日の試合で課題がはっきりしたでしょうから、もう一度鍛えなおして、
夏の甲子園に帰ってきてもらいたいです。
チーム全体では左打者が5人と多いだけに、左投手への対応が課題ですね。
右打者の打撃力アップを図りたいところです。


目に付いた選手は慶応の中林投手、福井商の林投手です。
慶応の中林投手は1回戦よりもストレートが走っていました。
ストレートは常に135キロ前後をマークし、キレ味も抜群でした。
また福井商の左打線に対して外角のスライダーが面白いように決まるなど、
変化球も素晴らしかったです。
ピッチングのテンポも非常に良かったですし、
今日の内容なら神戸国際大付の大西投手に負けてないです。
スタミナも抜群で、ボールの勢いが衰えるどころか、尻上がりに調子が上がっていったように思います。
大西投手とタイプが似ているだけに3回戦はどんな試合になるのか楽しみです。

福井商の林投手は内容自体は良かったと思います。
1回戦のようにストレートが指に引っかからずに高めに抜けるということはありませんでしたし、
ストレートも常時140キロ以上でボールの威力もあったと思います(Max145キロ)
ただストレートがシュート回転することが多く、コーナーに決まっていた時は良かったんですが、
真中付近に行ってしまった時に慶応打線に捉えられてしまいました。
林投手の1つ目の課題はこのストレートのシュート回転ですね。
変化球はスライダー・カーブ・フォークと安定していたと思います。
意外とフォークボールが良かった気がします。高校生で130キロ台の落ちる球があるのは大きいですね。
まだスライダーほどキレ・精度はありませんが、将来的に磨いていくと面白いと思います。
2つ目の課題はスタミナ。投げ込み不足なせいか、終盤にストレートのキレが少なくなっていました。
それでも140キロをマークしていたことは素晴らしいんですが、打たれてしまっては…
あとはランナーを出した時のクイックモーション。
投球が乱れるということはないんですが、あれだけゆったりだとさすがに走られてしまいます。
夏に向けてクイックモーションの修得が3つめの課題になるでしょうね。
投げる能力に関しては柳ヶ浦の山口投手、育英の若竹投手に負けていないと思うので、
夏にもう一回り大きくなって甲子園に帰ってきてもらいたいです。
3人の中では一番将来性を感じる投手です。今後の成長を楽しみにしています。



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