05センバツ甲子園大会 2日目

第1試合 福井商業(福井) 9−0 新田(愛媛)

(福)林(8回1/3)−斉藤悠葵(2/3)
(新)門田(4回0/3)−三好(5回)
(本)斉藤進吾(2回表・福井商・1号ソロ)
福井商
新田 ×

福井商業が投打で新田高校を圧倒し、9−0で勝利しました。
新田の門田・三好投手はそんなに悪いピッチングはしていなかったんですが…
2回に福井商のキャッチャー・斉藤進吾選手にホームラン、
4回にはピッチャーの林選手に2点タイムリーとバッテリーに打たれてしまったことで、
流れを完全に福井商業にやってしまいました。
それで5回の守備のミスでしょう。ちょっと流れを止められませんでしたね。
試合の流れを早い段階で掴むことができた福井商が有利に試合を進めたということだと思います。
こういう1つの流れで試合が一瞬にして決まってしまうのが高校野球の怖いところですね。

簡単な得点経過です。
1回裏 新田の攻撃
福井商のエース林投手は140キロを越すストレートを投げるなど前評判通りのピッチング。
ただインフルエンザによる投げ込み不足なせいか、ボールが抜け気味になったりボールはまちまち。
そんな立ち上がりの先頭打者の打球はセカンド左を襲うヒット性の打球を、
セカンドの奥井選手が追いついて1塁へ送球アウト。
ナイスプレーで林投手を盛り立てます。
これで流れに乗ったのか林投手は素晴らしいピッチングを見せ、新田打線を寄せ付けません。

2回表 福井商の攻撃
6番斉藤進吾選手が低め内よりのストレートを軸回転で上手く捉え、
レフトスタンドに飛び込む大会第一号のソロホームランを放ち、福井商が先制点を挙げます。

4回表 福井商の攻撃
先頭の4番小坂選手がヒットで出塁するも、送りバントを打ち上げてしまいランナーを進められず。
しかしホームランを打っている6番斉藤選手に打席が回り、警戒しすぎたのか四球。
7番原田選手のセカンドゴロの間にそれぞれのランナーが進塁して2アウト2・3塁。
ここで8番林投手がセンターへの2点タイムリーヒットを放ち、追加点を挙げます。
打った林投手は2塁を狙うもこれはタッチアウト。

5回表 福井商の攻撃
先頭の9番斉藤昇平選手がヒットで出塁して、1番奥田選手が送りバントを敢行。
この打球をキャッチャーが2塁へ送球するも、これはセーフ。フィルダースチョイスでノーアウト1・2塁に。
2番奥井選手は送りバントを試みるもファールでツーストライクに。
福井商は果敢にスリーバントを敢行して1塁線へナイスバント。
この時のピッチャーの1塁への送球が逸れてしまい、一気に2塁ランナーがホームイン。さらに無死1・3塁。
続く3番宮前選手がバスター打法でセンター前へタイムリーヒット、
4番小坂選手がライトへタイムリーヒットを放ち、連打で畳み掛けます。

たまらず新田は投手交代、2番手の三好投手をマウンドに送ります。
しかし新田の守備陣が乱れ、セカンドゴロ併殺コースを落球してしまうエラーでノーアウト満塁に。
6番打者はピッチャーゴロに打ち取るも、
7番原田選手に高めに行った変化球を捉えられてセンター前タイムリーヒットを浴びてしまいます。
その後は三好投手が踏ん張って0点に抑えます。

7回裏 新田の攻撃
先頭の5番石井選手が詰まりながらもライト前に落ちるラッキーなヒットで出塁し、
続く6番門田選手(投手からライトへ)がストレートをコンパクトに弾き返すセンター前ヒットを放ち、
ノーアウト1・2塁とようやくチャンスらしいチャンスを作ります。
しかし福井投手の速いストレート・縦のスライダーを捉えることができず、得点を挙げることができません。

8回表 福井商の攻撃
先頭の8番林投手がしぶとくセンター前に弾き返すヒットを放ち、セーフティ気味の送りバントで2塁へ。
内野ゴロの間に3塁へ進み、2番奥井選手がレフト線抜くタイムリー2ベースを放ち、1点を追加します。

9回表 福井商の攻撃
エラーでランナーを出、送りバントでランナーを進めると、
7番原田選手がセンター前へタイムリーヒットを放ち、9点目を挙げます。

9回裏 新田の攻撃
完封ケースで来ていた林投手ですが、1アウトを取った所で投手交代。
今後の戦いを考えてか、左腕の斉藤悠葵投手をマウンドに送ります。
その斉藤投手は四球でランナーを出すも、最後は三振を奪って試合終了。
9−0で福井商が完勝しました。


勝敗を分けたのは守備の差でしょう。
福井商は幾つかエラーがありましたが、初回のヒット性の打球をナイスプレーでアウトにするなど、
随所で守備の良さが目立ちました。
エースの林投手は2月下旬にインフルエンザにかかり、投げ込みが不足するなど不安を抱えての登板でした。
ですが、堅い守備が林投手を盛り立て、キャッチャーの斉藤選手のホームラン、
さらに自らのタイムリーヒット、中盤の連打などで楽に投げさせることができました。。
初回の守備のリズムの良さが林投手を調子付かせ、試合の流れを呼び込んだのだと思います。
逆に新田は堅守を誇っていたものの、5回の大事な場面でミスを連発してしまい、
試合の流れを福井商に上げてしまいました。
林投手のスタミナが不安視されていましたから、3点差のまま終盤に行ってれば試合は分かりませんでした。
大事な場面での守備力の差が試合を決めてしまいましたね。

勝った福井商は常に140キロのストレートを投げられる本格派右腕・林投手と、
安定感のある左腕・斉藤投手を揃えるなどレベルの高い投手陣を持っています。
エラーがあったものの守備陣も安定しており、ディフェンス面がしっかりしています。
打撃陣もセンター方向を中心に弾き返す打撃ができており、繋がりのある打線です。
投打にバランスの取れた良いチームです。
課題は林投手のスタミナ。
投げ込み不足でストレートの引っ掛かりが悪く、序盤から抜ける球が多く見られました。
また終盤にはシュート回転する球が多く、危ない場面もありました。
強力打線を相手にした時、これらの球が致命傷にならないといいのですが…
今日のピッチングがいいリハビリになったでしょうから、次の試合に向けて上手く調整して欲しいです。

負けた新田は守備のミスが悔やまれます。
門田・三好投手ともにコントロールが良く、縦の変化球もあり、打たせて取るタイプの投手ですから、
守備陣がしっかりと守りませんと。
もう一度守備を鍛えなおし、夏の大会に備えてもらいたいです。
あとは打撃陣の強化ですね。
林投手の前に僅か3安打。タイミングがあっていたのは2安打を放った門田投手だけでした。
愛媛は昨春優勝の済美、今大会に出場している西条とライバルが多く、
夏の甲子園に戻ってくるのも大変です。
勝ちあがるためには好投手を打ち砕くだけの打撃力が必要不可欠です。
夏に向けて更なるレベルアップを図って欲しいです。


目に付いた選手は福井商の林投手です。
バランスの良い投球フォームで、鋭い腕の振りからコンスタントに140キロを投げられる本格派右腕です。
昨日の駒大苫小牧はスライダーでカウントを稼いでいたので本格派というイメージはなかったんですが、
この林投手はストレートで勝負できる本物の本格派投手です。
指に引っかかったストレートは球速以上の伸びがあり、球威も抜群。
最後まで球威は衰えず、8回にもこの日最速の144キロをマークするなどストレートの良さが際立っていました。
ただ投げ込み不足が影響してか、立ち上がりから指が引っかからずに抜ける球を多く見かけました。
下半身の安定感はあったので、問題は指先の感覚ぐらいでしょう。
このまま投げていけば、こういった抜け球も減ってくることでしょう。
変化球は120キロ台の縦スライダー、100キロ台のカーブ、フォークと持っている模様。
特に縦スライダーが良く、回を追うごとに切れを増していきました。
ストレートだけでなく、変化球にもいいものを持っており、今後の成長が楽しみな投手です。
課題としてはクイックモーションでしょうか。
8回に2盗を決められただけでなく、3盗まで(しかも左打者時に)決められてしまいました。
ややクイックがゆったり気味なので、今後はその点を修正する必要がありそうです。
素質的には昨年の横浜・現西武の涌井投手に近いものがあり。
私の好きなタイプのピッチャーです^-^;

他には福井商の斉藤進吾選手。2回のソロホームランは完璧な当たり。
低めの球を軸回転で打ち、見事にスタンドイン!
守っては小学校時代からの付き合いである林投手を好リードと大活躍でした。
中学では斉藤捕手が軟式、林投手が硬式と別々の道を歩んだそうですが、
高校では小学校時の夢を叶えて福井商で2人でバッテリーを組み、2人揃って甲子園で大活躍、
まさに絵に描いたような理想的な夫婦、バッテリーとなりました。
今後の試合も2人のコンビネーションに注目です。
あとは福井商の2番手斉藤悠葵投手
2/3イニングだけでしたが、左スリークォーターから130キロ前後のストレート(Max135キロ)を投げ、
100キロ台のカーブで緩急を付けるなど安定感を感じました。
この斉藤投手と林投手との2本柱は脅威です。

新田では三好投手がナイスピッチング。
登板直後の5回はミスなどで失点してしまいましたが、ピッチングは悪くありませんでした。
腕の振りが良く、130キロ前後のストレートと縦の変化球を効果的に投げていました。
先発した門田投手も右左の違いこそあれ、同じタイプでボールの出し入れで勝負できていました。
ただ2人とも投手としては小柄でストレートに角度がないのがネック。
甘い球が行ってしまうと簡単に打たれてしまいますから、そこを今後の課題として欲しいです。



第2試合 一迫商(宮城・21世紀枠) 5−2 修徳(東京)

(一)佐藤勇(9回)
(修)斉藤勝(4回2/3)−増田(1/3)−磯部(4回)
一迫商
修徳

21世紀枠での出場となった宮城の一迫商が、
昨夏ベスト8のメンバー全員が残った修徳を見事に下し、初出場初勝利を収めました。
正直言って、こんな展開になるとは夢にも思いませんでした。
組み合わせが決まった時は「相手が悪いなぁ…」と思ったものですが…
いやいや、やるじゃないですか。
上手いバントと積極的な走塁で故障上がりで不安を抱える斉藤投手の立ち上がりを攻めて着実に得点、
投げては佐藤勇投手が低めに集める丁寧なピッチングを見せ、修徳打線にバッティングをさせませんでした。
伸び伸びとした一迫商の野球が、怪我などで不安なまま試合を迎えざるを得なかった修徳を圧倒した形です。
つくづく野球はメンタルなスポーツだと思います。

簡単な得点経過です。
1回表 一迫商の攻撃
修徳の先発は昨夏のピッチングで故障し、秋季大会でまともに投げられなかったエース斉藤投手。
心配された立ち上がりの第1球のカーブを1番三浦選手が叩き、三遊間抜くヒットで出塁します。
続く2番佐藤裕也選手は送りバント時に3塁方向を狙いながらも1塁側に転がすナイスバントを見せ、
これに引っかかった修徳はピッチャーとセカンドの間を抜かれて内安打に、ノーアウト1・2塁。
3番熊谷選手はバントファールで追い込まれるも、スリーバントを決めて1アウト2・3塁。
ここで4番佐々木選手はスリーバントでセーフティースクイズを試み、
見事に1塁線方向に打球を転がしてスクイズ成功、1点を先制します。
さらに続く5番佐藤投手の打球は三遊間深くへのラッキーなタイムリー内安打となり、
一迫商が卒のない攻撃で初回に2点を奪います。

3回表 一迫商の攻撃
先頭の2番佐藤裕也選手がストレートの四球で出塁し、ワイルドピッチで2塁へ。
3番熊谷選手のピッチャー返しの痛烈な打球は斉藤投手のお尻に当たってセカンドゴロに。
ただランナーは進塁して1アウト3塁。
ここで再び斉藤投手がワイルドピッチ、3塁ランナーホームイン。
斉藤投手の乱調で一迫商が1点をもらいます。

4回裏 修徳の攻撃
先頭の4番磯部選手が外角低めスライダーに体勢を崩されながらも打つレフト前ヒットで出塁し、
5番長島選手がセンターフライに倒れた後、
6番佐藤寛巳選手がヒットエンドランで食らいつくセカンド後方に落ちるヒットで1アウト1・3塁とするも、
7番長野選手の外角低めの球を上手く流した打球は不運にもファースト正面のライナーに。
1塁ランナー戻れずに併殺、無得点に終わってしまいます。

5回表 一迫商の攻撃
先頭の2番佐藤裕也選手がない安打で出塁し、送りバント等で2アウト2塁に。
ここで5番佐藤勇投手の打球がピッチャー返しで斉藤投手の左手を掠り、
セカンドベースに当たってセンターへと転がるタイムリーヒットに。
さらに6番千葉選手がストレートを捉えるセンターオーバーのタイムリー2ベースを放ち、
修徳のエース・斉藤勝投手をKOします。

6回以降
6回の頭から修徳はファーストを守っていた2年生の磯部選手がマウンドへ。
135キロ前後のストレートでテンポ良く投げ、一迫商に全く付け入る隙を与えず。
しかし修徳の打線も一迫商の佐藤勇投手の球を打ちあぐみ、終盤へと試合は進んでいきます。

7回裏 修徳の攻撃
2アウトから9番山口選手がファーストとセカンドの間を抜く見事なプッシュバントを決めて内安打に。
続く1番佐藤直樹選手もセーフティバントを試み、3塁前への内安打、
さらにサードの1塁への送球が逸れ、1塁ランナーが一気にホームイン。
修徳が小技でようやく1点をもぎ取ります。

8回裏 修徳の攻撃
クリーンアップに打順が回るも、あっさり三者凡退。

9回裏 修徳の攻撃
先頭の6番佐藤寛巳選手、続く7番長野選手と三遊間抜くヒットを放ち、ノーアウト1・2塁、
さらに死球があってノーアウト満塁と得点のチャンス。
しかし代打は敢え無く三振、1番打者の打球もショートゴロ併殺崩れで1点を返すのみ、
最後は変化球を引っ掛けてショートゴロ。
21世紀枠出場の一迫商が強豪・修徳を破り、初戦を突破しました。


勝敗を分けたのはメンタルの差でしょうね。
試合前の監督へのインタビューがあったそうですが、
修徳は怪我人だらけで調整ができなかったことに対する不安を口にし、
対する一迫商は21世紀枠出場にも関わらず「やるからには全国制覇」と口にし自信満々だったそうです。
その試合に臨む姿勢がそのまま試合にも出たんじゃないでしょうかね。
修徳の先発・斉藤投手は力みもあって全くボールが行かず。昨夏とは別人のようでした。
逆に一迫商はバント・走塁でも積極的で、伸び伸びとプレーしていました。
試合前から勝てるぞという暗示をかけたことが一迫商の勝因なのかもしれません。

勝った一迫商は積極的な攻撃が光りました。
立ち上がりに不安のある斉藤投手の初球をいきなりヒットにし、
技術の高いバントで修徳の守備陣をかく乱することで、有利に試合を進めることができました。
積極的な攻撃・走塁、そしてバントの卒のなさと自分達の野球ができたのが大きかったですね。
また投げては佐藤勇投手が低めにボールを集めるピッチングを見せ、修徳打線に付け入る隙を与えませんでした。
修徳は硬さがあったのか、引っ張り一辺倒。
それをバッテリーがしっかりと見極め、低め低めへとコントロール、
外角低めへと丁寧にボールを集めて内野ゴロの山を築きました。
派手さはないものの、一つ一つのプレーが丁寧なチームでした。
強い相手との戦い方のお手本を見せてもらいました。
次の試合は強豪・天理との対戦。
今日と同じように戦うことができれば、試合をものにすることができると思います。
21世紀枠の代表として、一迫町の代表として頑張ってもらいたいです。

負けた修徳は自分達の野球をすることができませんでした。
昨夏は1・2年生だけでベスト8、そのメンバーがそのまま残っていたわけですから、
優勝候補といってもおかしくないチームだったのですが…
それが逆に硬さに繋がり、怪我などで調整不足だったチームを余計に焦らせてしまった気がします。
エースの斉藤投手はコントロールがバラバラで、ボールに体重が乗らず、
ストレートが全く走っていませんでした。
今日のピッチングを見る限りでは先発は酷だったかなと。
3番手の磯部選手が130キロ台後半のストレートで一迫商を抑えていただけに、
先発起用は裏目に出てしまった気がします。
また打撃陣も工夫がなく、引っ張り一辺倒。点差が付くことで焦り始め、淡白な打撃になってしまいました。
センター方向に逆らわないバッティングを徹底できるかどうか、それが今後の課題でしょうね。
夏の大会に向けてしっかりと調整し、万全な形で甲子園に戻ってきてもらいたいです。

目に付いた選手は一迫商の佐藤勇投手と修徳の磯辺選手です。
一迫商のエース・佐藤勇投手はテイクバックをあまり取らず、上体だけで投げ込むコントロールタイプの右腕投手。
ストレートは125キロ前後ですが、低めにしっかりとコントロールされており、
スライダー・カーブといった変化球も高めに浮くことなく安定して低めに投げ込まれていました。
後半には疲れからかストレートが浮くこともありましたが、
意外と力があるようで、力強い修徳の打者を詰まらせていました。
今日のように低めに集めるピッチングができれば、次の試合も大崩れせずに投げることができると思います。

修徳の2年生4番ファーストの磯部選手は打者としても投手としても素晴らしい選手です。
どっしりとしたフォームから左足を少し上げてタメを作り、鋭いスイングでボールを捉える強打者です。
本来はパワーヒッターですが、今日は技巧派の佐藤投手に対して着実にミートして合わせる打撃をしていました。
パワーだけでなく、器用な面もあるようで、将来が楽しみな選手です。
投げては135キロ前後のストレート(Max139キロ)をテンポ良く投げ込む本格派投手。
変化球は速いスライダーと遅いスライダーの2種類。
コントロールが安定していて、ポンポンとストライクを取ってくるので、見ていて気持ちがいい投手です。
エースの斉藤投手の調子次第では磯部選手の登板も増えそうです。
打者としてだけでなく、投手としても注目が集まります。



第3試合 天理(奈良) 4−0 柳ヶ浦(大分)

(柳)山口(8回)
(天)小倉(9回)
柳ヶ浦
天理 ×

つくづく野球はメンタルなスポーツですね。
今大会No1投手、松坂投手の再来とも言われる柳ヶ浦の豪腕・山口投手が登板したんですが、
終わってみれば被安打9、押し出しを含む2四死球、4失点。
牽制悪送球やボークありと独り相撲で完敗となってしまいました。

立ち上がりの山口投手は素晴らしいピッチングでした。
いきなり初球147キロストレートを計測、次のファールは148キロを計測するなど、
がっしりした体から繰り出される重くて速いストレートに球場はどよめいていました。
110キロ台の落差ある縦のカーブも良く、「凄い」の一言で打たれるような気配はありませんでした。
それがどうして被安打9、押し出し・牽制悪送球・ボークという大荒れのピッチングになってしまったのか?
それはたった一人の打者の存在にありました。天理の3番眞井選手の存在です。

初回は先頭打者を内角高めストレートで空振り三振、2番をライトフライと順調な立ち上がりでした。
けれど3番眞井選手に対するカウント2−2の5球目、
内角を狙った球が外角高めに行った148キロストレートを見事に叩かれてセンター前へ。
逆球とはいえ、自慢の速球をいとも簡単に弾き返されてしまいました。
ただまだこの時点では問題ないんです。これはあくまで伏線、問題は4回裏。
先頭打者の眞井選手に対し、カーブを2球続けてボール、
外角低めにスピードを落とした130キロ台中盤のストレートで2ストライクを奪ってカウント2−2、
ここで山口投手はキャッチャーのサインに首を振り、ニコッと頷いて投げられたボールは
先ほど打たれた外角のストレート。
先ほどより2キロ遅い146キロだったものの、狙ったコースなだけに威力は十分、
のはずが眞井選手はこの外角146キロストレートを完璧に捉え、
それを右中間方向に引っ張り、真っ二つの3ベースヒットに。
これが山口投手のピッチングを完全に壊しました。
自身が一番自信のあるストレート、それをヒットにされただけでなく、
完璧に引っ張られたわけですから、ショックを受けないわけがありません。

もうその後は眞井選手を意識するばかりに独り相撲。
続く4番田中選手にはカーブが甘く入ってタイムリー2ベース、
6回裏には眞井選手を意識する余りに1塁ランナーに対して牽制悪送球+ボーク、
眞井選手に対しては速いストレート一本で勝負しに行ったり(その打席は打ち取り、意地を見せる)、
打たれた眞井・田中選手に全力投球する余りに終盤にはスタミナ切れで
押し出し四球を与えたりと散々な結果に。
自分の速いストレートを信じすぎる余りに単調なピッチングになってしまった山口投手、
つくづく野球はメンタルなスポーツだと感じました。

簡単な得点経過です。
1回表 柳ヶ浦の攻撃
先頭の1番大野選手が死球で出塁し、送りバントで2塁へ進めるも、後続が倒れて無得点。

1回裏 天理の攻撃
柳ヶ浦の先発・山口投手は初球いきなり147キロを計測。甲子園をどよめかせます。
順調に2人を打ち取った後、
3番眞井選手に外角高め148キロストレートを叩かれてセンターへ抜けるヒットを許すも、
4番の田中選手を打ち取って無失点。上々の立ち上がりを見せます。

2回表 柳ヶ浦の攻撃
先頭の5番山口投手がセンター前ヒットで出塁し、続く6番高田選手もヒットで続いてノーアウト1・2塁。
送りバントで1アウト1・3塁とするも、
ショートゴロ、ショートゴロ2塁走者守備妨害アウトで得点ならず。

2回裏 天理の攻撃
この回の山口投手、ストレートの球速を落としてストライクを取りに行くも逆に腕が振れず、
いきなり先頭打者にストレートの四球を出してしまいます。
すると天理は2盗を決め、送りバントでランナーを3塁へ。
ここで7番森川選手は2ストライク1ボールと追い込まれるも、スクイズを敢行し、
内角高めストレートを弾かずに1塁線に転がして見事にスクイズ成功、天理が1点を先制します。

3回表 柳ヶ浦の攻撃
1アウトから2番工藤選手が3塁線抜く2ベースヒットで出塁するも、後続が倒れて無得点。

4回表 柳ヶ浦の攻撃
2アウトから7番平見選手がライト前ヒットで出塁し、
ワイルドピッチ・ショート内安打・盗塁などで2アウト2・3塁とするも、後続が倒れて無得点。

4回裏 天理の攻撃
先頭の3番眞井選手が外角146キロストレートを捉えて右中間真っ二つの3ベースヒットで出塁し、
4番田中選手が甘いカーブを捉えてレフト右を抜くタイムリー2ベースを放ち、1点を追加します。
この後、送りバントでランナーを3塁へ進めるも、後続が倒れて1点止まりに。

5回表 柳ヶ浦の攻撃
先頭の1番大野選手がヒットで出塁するも、後続が倒れて無得点。

6回裏 天理の攻撃
先頭の2番高田選手がやや抜けた128キロストレートを打つ三遊間抜くヒットで出塁し、
3番眞井選手に初球を投げる前の1塁牽制が悪送球に、ランナーは悠々2塁へ。
眞井選手に対しては140キロ台の速いストレート一本で勝負しに行くも、
ファーストゴロに打ち取った時にボークがあり、ランナーは3塁へ。
眞井選手に対しては意地の内角高め143キロストレートを投げて見逃し三振に。
続く4番田中選手に対してもストレート攻めを行うも、詰まりながらもレフトまで運ばれて犠牲フライ。
5番橋間選手にもライト線への2ベースヒットを打たれるも、後続を打ち取って1点止まりに。

7回裏 天理の攻撃
2アウトから9番藤原選手が高めの抜いたストレートを捉えるレフトオーバーの2ベースヒットで出塁するも、
後続が倒れて無得点。

8回裏 天理の攻撃
1アウトから3番眞井選手がカーブを叩いてファーストゴロも、イレギュラーしてファースト内安打に。
続く4番田中選手は真中137キロストレートを弾き返すセンター前ヒットで繋いで1アウト1・2塁。
5番橋間選手は低め137キロストレートを引っ張り、三遊間抜くヒット、1アウト満塁。
ここで6番東選手が押し出し四球を選んで1点を追加。
しかしここも後続が倒れて1点止まり。

9回表 柳ヶ浦の攻撃
前半はランナーをよく出していた小倉投手でしたが、6回以降は僅か2安打のみ。
安定感あるピッチングを見せて、そのまま柳ヶ浦に対して完封勝利。
天理が4−0で神宮大会制覇の柳ヶ浦を下しました。


勝敗を分けたのは前述の通り。1回裏の山口VS眞井、4回裏の山口VS眞井の対戦です。
あとは序盤に柳ヶ浦がチャンスを生かせなかったことでしょうかね。
小倉投手を打ちあぐねたことで、苦しい試合展開になってしまいました。
もし序盤に得点できていれば流れが変わったことでしょうに… まぁ、それぐらいですか。
天理の完勝ですね。
序盤のピンチを上手く凌ぎ、好投手の山口投手を上手く攻めました。それに尽きると思います。

勝った天理は攻撃陣が見事でした。
どの打者も山口投手の140キロを越すストレートに振りまけず、
中軸打者は145キロオーバーのストレートでさえも前に打球を弾き返していました。
速い球に対する練習の成果が出ましたね。
金属バットにバッティングマシーン、特打ができる分、
スピードボールに対する対処はしやすいようです。
それでも振り遅れないスイングスピードの速さ、打撃フォームの対応力、素晴らしいものがありますね。
また小技もしっかりしており、堅実な攻めが得点に結びついていました。
守っては小倉投手が粘り強いピッチングを見せ、守備陣も堅守で小倉投手を盛り立てました。
小倉投手はピッチングが上手く、打者の打ち気を外すようなピッチングをしていました。
ストレート系のボールが小さく変化するなど、見た目以上に打ちづらい投手のようです。
防御率1.06という数字を残すだけあります。クレバーないい投手ですね。
神宮大会優勝の柳ヶ浦を下したことですし、この勢いのまま優勝を狙って欲しいです。
それだけの戦力がありますからね。今後の試合にも注目〜

負けた柳ヶ浦は山口投手の独り相撲が悔やまれます。
ストレート・カーブ以外にチェンジアップ・フォークを持っているそうですが、
センバツではストレートとカーブ以外は使わないと決め、結局投げることはありませんでした。
でもそれで負けてたら分けないと思うんですが… どうなんでしょう?
自分のストレートを過信したというのは言い過ぎかもしれませんが、
あまりにも無謀なチャレンジだったようです。
ポーカーフェイスで表情は分かりにくかったので本当のところは分かりませんが、
眞井選手や田中選手に打たれてカッカしていたような気がします。
自分の美学を捨て、チームの勝利のために投げてもらいたいです。
柳ヶ浦のチームを考えると山口投手が頑張るしかないんですから。
ワンマンチームに甘えるのではなく、逆にハングリーに考え、チームの勝利のために投げて欲しいです。
チーム全体としては柳ヶ浦は山口投手一のワンマンチームだと言われないように、
各自のレベルアップを図って欲しいです。
特にバッティング面。山口投手を上手くサポートできるだけの打線にすることが必要不可欠。
夏の大会にはさらに大きくなってくることを期待したいです。

目に付いた選手は柳ヶ浦の山口投手、天理の小倉投手、眞井選手、田中選手です。
天理の小倉投手はスリークォーター気味のサウスポー投手。
バランスの良い投球フォームから腕を大きく使って投げます。
ストレートは130キロ前後、110キロ台のスライダー・100キロ台のカーブを低めに集める投手です。
小倉投手の非凡な所は打者を見れることです。
打ち気がないと分かればポンポンとストライクを取り、打ち気満々となるとカーブでタイミングを外すと。
試合後半は焦る柳ヶ浦打線を手玉に取っていました。
序盤は何度となくピンチを迎えましたが、ランナーを出しても返さなければいいと開き直り、
落ち着いたピッチングを繰り広げていました。
安定感抜群のいい投手ですね。
小倉投手を見ていてよく分からなかったのが120キロ台中盤のストレート系のボールです。
最初はストレートだと思ったんですが、柳ヶ浦の打者が空振りしたり、詰まったりと全く打てていませんでした。
試合中盤ではストレートの軌道で縦にスッと沈むなど小さな変化をしていました。
カットボールなのか、シンカーなのか、シュートなのか、ツーシームなのか…
ともかくストレートの軌道で微妙に変化するボールを持っているようです。
これを普通のストレートと考えて打っていると… 小倉投手の思うツボでしょうね。
見た目以上に打ちづらいピッチャーだと思います。

天理の3番レフトの左打者眞井選手は打撃センスが抜群。
オープンスタンスでシャープな構え、足を引き上げて打つ打撃フォーム。
スイングスピードも速く、山口投手の145キロを越すストレートを完璧に打ち返していました。
タイプ的には巨人のルーキー亀井選手。ミート力が高く、長打も打てる中距離打者といった感じです。
かなりセンスがいいので、今後の成長が楽しみです。
うーん、しかし身長が171センチか… もう少し上背があればプロを狙えるんですが…
身長にこだわらない球団、カモン!
4番センターの田中選手も山口投手の速球に振りまけず。
昨年も好投手相手に良いバッティングをしていましたし、眞井選手同様バッティングに見るものがありそうです。

注目の柳ヶ浦・山口投手ですが、投手としての能力は文句のつけようがありません。
187センチの長身でガッチリした体格。
相撲で鍛えたという強靭な下半身は全くブレがなく、安定感があります。
投球フォームもバランスがいいですし、そこから繰り出されるストレートはキレ・球威ともに文句なしです。
少し力んで顎が上がってたりしましたが、そんなに悪いフォームではありませんでした。
ストレートは力を入れて145キロ前後、最速が148キロ。
2回以降は初球カーブでカウントを稼ぎ、
130キロ中盤のスピードを殺したストレートでコーナーを狙ってカウントを整え、
最後は140キロを越えるストレートで決めに行くというピッチングをしていました。
ただあまりにも不用意というか、ストレートを打たれたことで逆にストレートで勝負しにいってしまって玉砕、
そんなことの繰り返しで、最後はスタミナ切れ、完全に独り相撲になっていました。
過去の名投手と比べると能力自体は変わりませんが、精神面が足りない印象。
松坂投手に匹敵する能力を持っていますが(むしろ大分ということで稲尾投手?)、
精神面は伸び悩んでいる寺原投手といった印象を受けました。
投手全体のセンスで言えば、昨年夏時点の涌井投手の方が上でしょうか。
ただまだ半年あるわけで、今日の試合をしっかりと反省し生かしていけば、
さらに一回り大きな投手になれるかもしれません。
今日の屈辱を胸に、勝てるピッチャーになってもらいたいです。



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