05センバツ甲子園大会 1日目

第1試合 駒大苫小牧(北海道) 2−1 戸畑(福岡)

(戸)木下(1回2/3)−矢野(6回1/3)
(苫)田中(9回)
戸畑
駒苫 ×

昨年夏の大会で優勝し、最後まで甲子園にいた駒大苫小牧がセンバツの第1戦目に登場という
なんとも不思議な縁を感じる試合でした。
その駒大苫小牧が僅差で逃げ切り。夏春連覇に向けて第一歩を踏みしめました。

駒大苫小牧の先発は昨年登板した松橋投手でもなく、
吉岡投手でもなく、2年生右腕の田中投手でした。
この起用がどうなるのかと注目してみていましたが、総合力の高いバランス型投手だったようで、
素晴らしいピッチングを見せて戸畑打線を抑え込みました。
一方の戸畑は2年生左腕の木下投手が先発。
こちらは起用が裏目に出てしまい、調子に乗る前に駒大苫小牧打線に得点を許してしまいました。
その後はエースの矢野投手が丹念に外角低めに変化球を集めるピッチングを見せて、
駒大苫小牧打線を手玉に取っていくものの、
戸畑打線はバントミス・走塁ミスなどの拙攻が続いてしまってあと1本が出ず。
結局、駒大苫小牧が逃げ切るという試合になりました。

簡単な得点経過です。
1回表 戸畑の攻撃
1番の中村選手がヒットで出塁するも、送りバント失敗・エンドラン打ち上げ併殺となって無得点。

1回裏 駒大苫小牧の攻撃
1番林選手が左中間突破の3ベースヒットで出塁し、2番辻選手は死球でノーアウト1・3塁。
3番五十嵐選手の叩き付けたショートゴロをショートが弾くタイムリーエラー。駒大苫小牧が1点を先制。
この後、1アウト2・3塁でライトフライが打ちあがるも、3塁ランナーはタッチアップできず。
2塁ランナーが走り出してしまい、挟殺プレーでタッチアウト。1点止まりに。

2回裏 駒大苫小牧の攻撃
2アウトから四球でランナーが出塁し、9番小山選手が詰まりながらも振り切ってライト前へのヒット。
2アウト1・3塁となったところで1番林選手が初球の変化球を引き付けて打ち、
左中間へのタイムリー2ベースヒットを放ち、駒大苫小牧が1点を追加します。
ここで戸畑は先発の木下投手を諦め、エースの矢野投手をマウンドに。
変則的右サイドスローから低めに変化球を集め、駒大苫小牧打線を0点に抑えていきます。

6回表 戸畑の攻撃
先頭打者が死球で出塁するも、再び送りバントが失敗して1アウト1塁。
しかし3番高橋選手が高め変化球を叩くセンター前ヒットを放ち、センターがボールを弾く感にランナー3塁へ、
1アウト1・3塁となった所で4番井上選手が痛烈なライトライナー。
犠牲フライとなって戸畑が1点を返します。

7回表 戸畑の攻撃
先頭の6番氏畑選手が3塁線を痛烈に抜く2ベースヒットで出塁するも、送りバント失敗。
1アウトからバントで2塁へ進めるも、次打者のセーフティバント空振りで2塁ランナーが飛び出してしまい、
キャッチャーからの牽制でタッチアウト。拙攻で得点できません。

9回表 戸畑の攻撃
エラーなどでランナーを出すものの、進められずに無得点。
駒大苫小牧が序盤の得点を守りきり、見事に勝利しました。


勝敗を分けたのは得点を取るべき所で取れたかどうかでしょうね。
駒大苫小牧は序盤のチャンスを確実に得点に繋ぐことができました。
2番手の矢野投手を打ちあぐんだだけに、序盤の効果的な得点が生きてきた形になりましたね。
逆に戸畑は送りバントやエンドラン・盗塁でランナーを進めることができず、拙攻が続いてしまいました。
ランナーを出してからの機動力が武器だったはずなんですが…
それを自らのミスで潰してしまったのが悔やまれます。
駒大苫小牧も得点には昨夏にサイクルヒットを達成した林選手の一打が絡んでいましたし、
甲子園での経験の差が出たんでしょうかね。

勝った駒大苫小牧は投手力が素晴らしいですね。
今日先発した田中投手はセットからのコントロールが乱れるなど課題は多いものの、
ストレートは140キロ前後、変化球もスライダー・カーブ・フォークと多彩、
総合力で勝負できる将来性のあるピッチャーでした。
これに松橋投手と吉岡投手がいるわけですから…
昨夏優勝の3投手以上の力を持つ素晴らしい投手陣だと思います。
打線は林選手を軸にまとまりのある印象。
ただ戸畑の2番手・矢野投手のコントロールのいいピッチングに抑えられてしまいました。
外角低めに上手く変化球を集めていたので無理もないんですが、
ちょっと強引に引っ張る打撃が多かったかなと。
昨年のようなセンター方向に弾き返すバッティングを心がけて欲しいです。
今後勝ちあがっていくためには逆らわない打撃ができるかどうかにかかっていると思います。

負けた戸畑は送りバント・エンドラン・走塁など攻撃のミスが悔やまれます。
機動力を生かした本来の野球をすることができず、拙攻になってしまったのが残念ですね。
ただエースの矢野投手は変則サイドながらも安定感がありますし、
2年生左腕の木下投手も将来性があるなど投手力は伸びてきています。
打撃陣の確実性が増してくれば、夏にもチャンスはあるでしょう。
今日のミスを取り返す野球をしていってもらいたいですね。


目に付いた選手は駒大苫小牧の田中投手と林選手、本間選手。
戸畑の木下・矢野両投手です。
2年生右腕の田中投手は185センチの長身から140キロ前後のストレート(Max142キロ)と
縦のスライダー、カーブ、フォークを投げ分ける総合型のピッチャーです。
オーソドックスながらも腕を大きく使った投球フォームをしており、
縦のスライダーでカウントを稼ぎ、ストレートを見せ球にしつつ、低めのスライダー・フォークで打ち取ります。
これといったボールはありませんが、どの球もそれなりのレベルでまとまりのある投手という印象です。
課題はセットポジションからのピッチング。
ストレート・変化球ともに高めに浮きがちになり、コントロールを乱す傾向があります。
低めにキチンとボールを集められるようになれば、安定感のある素晴らしい投手になれると思います。
あとはスタミナ面でしょうか。
後ろに松橋・吉岡投手が控えていたことで飛ばし気味に入り、
中盤にやや疲れを見せていましたが、8・9回に再び持ち直して142キロをマーク。
投げる力はありそうなので、1試合を考えて投げるスタミナを養って欲しいです。
今後の成長が楽しみな投手です。

1番セカンドの林選手は小柄ながらも打撃センスは抜群。
下半身の軸がしっかりしているので、見た目以上にパンチ力があります。
ボールの捉え方が上手いだけに今後も注目。左投手も苦にしませんし、いい打者だと思います。
2年生の4番センターの本間選手はガッチリした体格でパワフルな印象を受けるバッター。
巨漢という表現がピッタリで、94キロで重たそうに見えるんですが、足は遅くないようです。
この試合でもボテボテのピッチャーゴロが1塁セーフの内安打に。
ポジションもセンターですし、運動能力は高そう。こちらも今後に注目。

戸畑の2年生左腕の木下投手は打たれはしたものの、
体を柔らかく使った投球フォームから120キロ後半のストレートと緩いカーブをコントロールよく投げるなど
ピッチング自体はそんなに悪くなかったと思います。
やや高めに変化球が浮いた分だけヒットになってしまったという感じでしょうか。
投球フォームがいいだけに、さらに走りこんでいけば安定感のある良い投手になりそうです。
エースの矢野投手は右サイドスローなのですが、
テイクバックをあまり取らず、腕を折りたたんで投げる変則的な投球フォームをしています。
120キロ前半のストレートなど球威があるようには思えませんが、
110キロ台の緩いスライダーを外角低めにしっかりとコントロールして集めることができるので、
見た目以上に打ちにくいピッチャーのようです。
一発勝負の高校野球ではこういった変則投手を打つのは苦労しそうなだけに、
夏の大会でも活躍できるでしょう。
タイプの違う2投手で夏の大会を勝ち抜いてきてもらいたいです。



第2試合 神戸国際大付(兵庫) 4−1 甲府工業(山梨)

(甲)三森(8回)
(神)大西(9回)
甲府工
神戸国際大付 ×

終盤まで0行進の神戸国際大付の左腕・大西投手と甲府工の右腕・三森投手の投手戦は、
終盤に疲れが見えた三森投手を上手く攻めた神戸国際大付に軍配が上がりました。
守備に安定感があった神戸国際大付、守備に不安を抱えていた甲府工、
その差が少なからず影響していたのかもしれません。
ディフェンスの面で神戸国際大付が勝ったという感じですね。

簡単な得点経過です。
1回裏 神戸国際大付の攻撃
1番の前田選手が死球で出塁し、送りバントで2塁へ進めるも、後続が倒れて無得点。

2回以降は両チームの投手戦が続きます。
甲府工の三森投手はスライダーを武器に両コーナーを上手に使ったピッチング、
神戸国際大付の大西投手はストレートと緩いカーブのコンビネーションで打者を打ち取ります。
中盤の展開はどちらかというと甲府工ペース。
大西投手のカーブを掬い打つなど対応を見せていた感じ。
ただ後半からストレートを多めに使うなどピッチングの組み立てを変えるなどして抑えていきます。

6回裏 神戸国際大付の攻撃
1アウトから2番伊田選手がライト前ヒットで出塁し、三振・パスボールで2アウト2塁に。
ここで四球・死球で満塁のチャンスをもらうも、レフトフライに倒れて得点ならず。

7回表 甲府工の攻撃
2アウトから8番青木選手がセンター右へのヒットで出塁し、死球もあって2アウト1・2塁。
ここで1番小野選手がカーブをコンパクトに叩く左中間へのタイムリー2ベースを放ち、
甲府工業が均衡を破ります。

8回表 甲府工の攻撃
クリーンアップがわずか4球で凡退。

8回裏 神戸国際大付の攻撃
先頭の1番前田選手が1・2塁間を抜くヒットで出塁し、送りバントを敢行するも小フライで進められず。
けれど3番井内選手の所で1塁ランナーが盗塁を決めて1アウト2塁に。
井内選手はレフト・3塁方向にファールを打ち上げるも風の影響もあって甲府工が捕球できず。
救われた形の井内選手がその直後にストレートを捉えてレフト前へのタイムリーヒットを放ち、同点に。
さらに死球等で2アウト1・2塁のチャンスを作り、
6番堂本選手が右中間突破の2点タイムリー3ベースを放ち勝ち越し。
さらに代打の長谷川選手もショートの右を抜くタイムリーヒットを放ち、この回4点目。
神戸国際大付が試合をひっくり返します。

9回表 甲府工の攻撃
大西投手の前に反撃できずに三者凡退。試合終了、4−1で神戸国際大付が勝利しました。


勝敗を分けたのは、やはり守備力の差でしょう。
どちらかと言えば甲府工業が押していた試合だったんですが、
神戸国際大付のバッテリーはカーブが狙われていると分かると、
中盤からストレート主体のピッチングに切り替え、甲府工打線に狙い球を絞らせませんでした。
また守備陣も安定しており、緩急で勝負する大西投手も安心して投げることができたと思います。
逆に甲府工は三森投手が低めにボールを集めるタイプにも関わらず、内野守備に不安を抱えていました。
同点打を許す直前にもファールフライを捕球できないということがありましたし、
ストレートが甘くなっていたのにも関わらず、それに頼らざるを得ませんでした。
1点を争うゲームだっただけに、投手力・リードを含めた守備力の差が勝敗に現れた気がします。

勝った神戸国際大付はエースの大西投手を中心に守備の堅いチームだと思います。
打線も派手さは欠けますが、バントで着実にランナーを進めるなど堅実な攻めが光っていました。
課題は大西投手のピッチングでしょうか。
ストレートとカーブの組み立てなだけに、どちらかに狙いを絞り込まれると苦労しそうです。
今日の試合の3〜5回辺りはかなり甲府工業に対応されていましたしね。
今日の後半のようにピッチングの組み立てを工夫するなどして投球の幅を広げてもらいたいです。

負けた甲府工業はデイフェンス面の脆さが負けに繋がってしまいました。
エースの三森投手はスタミナ不足で、
ストレートがシュート回転して真中付近に集まってしまうなど、今日も終盤に打ち込まれてしまいました。
あまり身長はないんですから、しっかりと走りこみませんと。
球威のなさ・スタミナ不足をカバーしていかないと夏の大会は厳しいと思います。
打線は悪くないだけに夏に向けての守備面のレベルアップを期待したいです。


目に付いた選手は神戸国際大付の大西投手と甲府工の三森投手です。
大西投手はクイック気味の投球フォームでテンポ良くボールを投げ込む左腕投手。
ストレートは130キロ前後。最高で133キロぐらい。スピードは最後まで変わらず、9回にも133キロ。
変化球は落差のある100〜110キロのカーブ。
投球フォームと大きなカーブとの緩急が見事で、フォームに吊られてカーブについ手が出てしまう感じです。
課題としてはストレートとカーブの腕の振りの差をなくすことでしょうか。
3〜5回ぐらいはその差を見極められたのか、カーブを溜めて打たれていました。
前半だったことでボールに力があり、外野の頭を超えませんでしたが、
これが試合終盤に出ていたならば致命傷になりかねませんでした。
カーブに頼りきらず、上手くピッチングの組み立てをしていくことが必要だと思います。
甲府工業の三森投手は130キロ台後半のストレート(Max139キロ)と
キレのいいスライダー、シュートなどをコーナーに投げ分ける安定感あるピッチャーです。
ただ球威はあまりないようで、球速のわりには威力を感じませんでした。
腕が少し下がったスリークォーターで角度もあまりなく、
シュート回転気味で真中付近に集まるケースも多々ありました。
コントロールは基本的にいいだけに勿体無い…
スタミナをしっかりと付け、勝てるピッチャーになって欲しいです。

打者ではTV実況の解説のタイミングも相まって神戸国際大付の2年生3番井内選手が目立ちました。
守備では2度のファインプレー、打っては貴重な同点タイムリーと大活躍!
10年前の震災で母親と弟を亡くし、自身も足に大怪我を負ったそうで、
元気に野球ができていることを多くの人に見せたいという旨のコメントが紹介されていました。
内角高めのそれほど甘くない球を弾き返す気持ちのこもった一打でした。素晴らしい活躍だったと思います。。
次の試合でも大暴れし、同じ心の痛みを抱えている人々を勇気付けて欲しいですね。



第3試合 慶応(神奈川) 8×−7 関西(岡山)

(関)西所(8回1/3)
(慶)中林(9回)
関西
慶応 1×

4回ぐらいから雨・風が激しくなり、2時半に夕方のように暗くなって早々と点灯試合に、
その後も強い雨などで試合中断を挟むような悪天候の中で行われた試合は、
45年ぶりの出場となった慶応高校が執念を見せてサヨナラ勝ちを収めました。

もう執念ですよね。
超エリート高校とは思えない、いや、そうだからこその精神的強さがありました。
「Enjoy Baseball!」、野球を楽しむことで辛い場面も立ち向かっていける、
自分の好きな野球をやっているから苦しくない、楽しいんだ、そんな強さが現れていました。
8回に打球を直接頭部額付近に受けたエースの中林投手、最後まで投げきった姿は感動的でした。
攻撃ではダブルスチールでの本塁盗塁を決めるなど野球をよく知っているチームですよね。
神奈川の強豪校を破ってきただけはあります。

またそんな慶応に負けじと頑張った関西も見事。
中軸打線の鋭い打球は強豪校の意地を垣間見た気がします。
エースの西所投手も悪いながらもよく投げました。
悪天候ながらも最後まで集中力の切れない素晴らしい試合だったと思います。

簡単な得点経過です。
1回表 関西の攻撃
1番安井選手がショート内安打で出塁し、送りバント・ショートゴロでランナーは3塁へ。
ここで4番松本選手が三遊間抜くタイムリーヒットを放ち、関西が1点を先制します。

1回裏 慶応の攻撃
1番竹内選手がレフトオーバーの2ベースヒットで出塁し、送りバントでランナー3塁へ。
3番高尾選手が四球を選んで1アウト1・3塁となり、
4番湯浅選手のセカンドゴロ併殺崩れの間に3塁ランナーホームイン、慶応が同点に追いつきます。

3回裏 慶応の攻撃
1アウトから1番竹内選手が四球で出塁し、2番漆畑選手がヒットエンドランでレフト大飛球に倒れた後、
3番高尾選手が変化球を上手く捉えるライト前ヒットで繋いで2アウト1・3塁にし、
4番湯浅選手の所で2塁ランナーがスタートで盗塁成功、
キャッチャーが2塁へ送球する間に3塁ランナーがスタートを切ってセーフ。ダブルスチールで1点勝ち越し。
さらにワイルドピッチでランナーが3塁に進み、4番湯浅選手が1・2塁間抜くタイムリーヒット、
5番山口選手が右中間直撃のタイムリー3ベースを放ち、追加点を挙げます。
中継が乱れる間に山口選手はホームを突くもこれは暴走でホームタッチアウト。

4回表 関西の攻撃
先頭の4番松本選手がセカンド左への内安打を放ち、送球が逸れる間に2塁へ。
送りバントなどで2アウト3塁となり、7番平井選手がレフト線へのタイムリー2ベースを放ち1点を返します。

この辺りからかなりの強風になり、雨も強まる。3回から既に点灯試合に。
6回には試合が一時中断となるほど大荒れの天気。

6回表 関西の攻撃
3番船引選手がヒットで出塁し、
4番松本選手がレフト左へのタイムリー2ベースを放ち、1点差まで追い上げます。
ただその後は中林投手が踏ん張って1点止まりに。

7回表 関西の攻撃
先頭の石口選手がヒットで出塁し、送りバントで2塁へ。
さらに1番安井選手の打球はボテボテの内安打となって1アウト1・3塁に。
ここで2番長尾選手が左中間突破の2点タイムリー2ベースを放ち、逆転。
中継が乱れる間にランナーは3塁へ、
その後、3番船引選手が高め変化球を捉えるライト線へのタイムリー2ベースを放ち2点差となります。

7回裏 慶応の攻撃
2アウトから3番高尾選手がヒットで出塁し、4番湯浅選手がライト線抜くタイムリー2ベースを放ち1点差に。
5番山口選手も高め変化球を振りぬくレフト左へのタイムリー2ベースで同点、
6番中林投手もライトオーバータイムリー3ベースを放ち勝ち越しに成功します。

8回表 関西の攻撃
慶応の中林投手は簡単に2アウトを取るも、
9番上田選手のピッチャー返しの打球は中林投手の頭部額付近に当たりセンター方向に大きく弾むヒット。
中林投手の状態が心配されたものの、無事マウンドへ。
しかし1番安井選手に左中間突破のタイムリー2ベースを打たれ、同点に追いつかれてしまいます。

9回表 関西の攻撃
中林投手は制球を乱し、3つの四球などで2アウト満塁に。
8番石口選手に対してもボール先行の苦しいピッチングになり、フルカウントまで達するも、
最後は気力でファーストゴロに打ち取ってこのピンチを無失点で切り抜けます。

9回裏 慶応の攻撃
1アウトから4番湯浅選手が詰まりながらもセンター前へ運ぶヒットで出塁し、四球などで1アウト1・2塁に。
続く6番中林投手が低めストレートを弾き返すセンター前ヒットで繋ぎ、1アウト満塁とサヨナラのチャンス。
ここで慶応は代打の新谷選手を起用。
スクイズを試みるつもりだったものの、サインミスで3塁ランナー・打者は反応せず。
けれど新谷選手の執念が打球に乗り移り、
詰まりながらも前進守備ショートの頭を越すタイムリーヒットとなり、慶応がサヨナラ勝ちを収めました。


勝敗を分けたのは慶応の卒のないワンプレーでしょうね。
終盤の猛打も光りますが、3回裏の攻撃も見事だったと思います。
あのダブルスチールは見事でした。
相手の隙を付く素晴らしいプレーでした。かなり勇気のいるプレーだと思うんですがね。
その後の山口選手の走塁といい思い切りの良さが光りました。
そういったプレーが慶応ナインを奮い立たせ、終盤の猛打に繋がったんだと思います。

あとは中林投手のピッチングですよね。
頭部に打球が当たった時は正直ダメかと思いました。多少逃げながらも直撃でしたからね。
そのまま続投したというのは驚きです。
9回にコントロールを乱したものの、最後まで投げきりましたからね。
その精神的強さには感服するばかりです。素晴らしいピッチングだったと思います。

勝った慶応は上記のように試合巧者ぶりが目立ちました。
エンドラン・ダブルスチール・バントと卒なくこなせており、
一つ一つのプレーが丁寧かつ思い切りが良かったように思います。
バントする時はバント、打つ時は打つ、ランナーを進める時は進めると目的意識がはっきりしていましたね。
守備やバッテリーのピッチングの組み立てにもそれらは見られ、
野球をよく知っているチームだと感じました。
今大会の台風の目となる可能性を秘めているチームだと思います。

負けた関西は3番船引・4番松本選手を中心とする強力打線は見事でしたが、
エースの西所投手が攻守に渡ってブレーキとなってしまいました。
ピッチングでは変化球のコントロールが定まらず不安定なピッチング。
上下の連動が上手くできず、最後までフォームに苦しんでしまっていたように見えました。
打撃でも中林投手にタイミングが合わず、3三振を喫するなどチャンスで悉く凡退してしまいました。
ただ調子が悪いなりに悪天候の中、よく踏ん張ったと思います。その点は評価したいです。
敗因を挙げるとすれば、継投のタイミングを掴めなかったことでしょうか。その点だけが残念です。


目に付いた選手は慶応の中林投手です。
慶応の左腕エースの中林投手は一度体を縮こませてから腕を大きく使って投げるスリークォーター投手。
ストレートは130キロ前後、最高で135キロぐらい。カーブ・スライダーで緩急をつけて勝負します。
ストレートの威力自体はそれほどですが、緩急がしっかり付けられているので、
130キロ前半のストレートがより速く見えました。
今日は変化球が高めに浮くなど危ないシーンも多かったんですが、
関西打線がそれを空振りするなど逆にプラスに作用していたようです。
そして何といっても頭部に打球を受けながらも最後まで投げきる精神力が素晴らしいですよね。
次の試合のピッチングも楽しみです。



センバツTV観戦日記のTOPへ戻る

〔FTcomのindexへ〕