04夏の甲子園大会から考える今後
今年のセンバツ甲子園がかなりレベルが高く、夏はどうなることかと思いましたが、
その予想に違わないレベルの高い大会となりました。
センバツ同様、今大会も好投手が多く、140キロを計測した本格派が15人。
他にもほとんどの投手が130キロ台後半をマーク、
コントロールも良く、自滅する投手が少なかったです(疲れから自滅はありましたが)
130キロ前後の投手でも低めにしっかりと制球されていてコーナーワークが抜群でした。
これだけレベルの高い投手が揃う大会も珍しいですよ。
またエースだけではなく、2番手以降の投手のレベルも上がってきています。
優勝した駒大苫小牧の岩田・鈴木・松橋投手ら3人を中心に、
昨年から活躍している東北高校もダルビッシュ・真壁・采尾投手らエース級が3人、
他にも天理、明徳義塾、千葉経大付、佐土原、PL学園らはダブルエースと呼べる投手が揃っていました。
全国に好投手が現れ、また同チームに複数いたのが今大会の特徴だと思います。
それだけ高校生投手のレベルが上がっているということなのでしょう。

そんな好投手が多い中、勝ち抜いていったのは駒大苫小牧と済美という強打線でした。
140キロのストレートを苦にせずミートし、150キロ近いボールに対応するなど、
打者の方のレベルも上がってきています。
甲子園を沸かせるようなスラッガーはあまりいませんでしたが、
コースに逆らわずに外野の間を抜く打球を放つ中距離タイプが数多くいました。
速い球に負けない逆方向への打撃が徹底されたことが、好投手を打ち崩せた要因でしょう。
スイングスピードの速さといい、最近の高校生は凄いですね。
上位・下位に関係なく、振りが鋭くて力強い打者ばかりでしたし。
高校野球のレベルは順調に上がってきています。

その高校野球レベルが上がっている証拠として、1・2年生の主力選手の多さが挙げられます。
今年は準優勝の済美を始め、先発投手を1・2年生が務めるケースが多く、
1・2年生がクリーンアップを打つチームが数多くありました。
3年生だけというチームの方が少なかったんではないでしょうか?
感覚としては2/3以上のチームが主力に1・2年生を抱えていたはずです。
中にはベスト4の東東京代表・修徳のようにレギュラー全てが1・2年生というチームさえありました。
これは別に今の3年生のレベルが低いというわけではありません。
間違いなく昨年の3年生よりは上、今の3年生も2年生で中心選手として試合に出ていましたからね。
昨年の先輩よりも今の3年生の方が上、そしてそれ以上の力を持っているのが今の1・2年生ということでしょう。
荒削りな投手ではありましたが、駒大苫小牧の松橋投手は2年生ながら147キロをマークして、
ダルビッシュ・涌井投手といったプロ野球のドラフト1巡候補に肩を並べています。
また甲子園出場はなりませんでしたが、PL学園と死闘を演じた大阪桐蔭には辻内投手という151キロ右腕がいます。
打者では涌井投手からサイクルを記録した駒大苫小牧の林選手、
ベスト4の修徳で高打率をマークした1年生3番磯部選手がおり、
地方大会では大阪桐蔭の平田選手、履正社の岡田選手などが活躍しました。
下の世代に行くに連れて、素晴らしい素質を持った選手が出てきているわけです。
やはり高校野球のレベルが全体的に上がってきているように思います。

そして何より、南北海道代表の駒大苫小牧の優勝ですよね。これで地域格差は完全になくなりました。
東北勢は大阪・東京からの野球留学生との混合チームで強くなってきましたが、
駒大苫小牧は全員道内の道産子ばかり。
まぁ、あれだけ広い土地なので良い選手も多いとは思いますが、
今まで野球が盛んでないと思われていた地域が一気に伸びてきて、これだけの結果を残したんです。凄いことです。
大会的にも東高西低で、九州勢が1回戦でほぼ敗退。近畿以西でベスト8に残ったのが天理と済美の2校だけでした。
今まで野球が盛んだと思われていた近畿・九州がこれですからね。
東北勢も負けはしたものの、東北や聖光学院が健闘していましたし、
センバツに引き続き関東以北のチームが頑張ったように思います。
また見逃してはいけないのが愛知の中京大中京のベスト8入り、
ベスト8には及ばなかったものの静岡の東海大翔洋、富山の富山商の健闘も忘れてはいけません。
東海・北信越ブロックも復活してきています。
山梨の東海大甲府のベスト4入りも中部地区の健闘をよく現していますね。



戦術面の変化では… ホームランが30本ぐらい(?)と多かったですね。戦術というのもアレですが。
今大会は天候に恵まれたものの、台風の影響が大きく、強風の日が多かったのが原因かもしれません。
「あれが入ってしまうの?」という当たりもありましたから。
ただそれでも数える程度でしたから、バッターの技術とスイングスピードが上がっているということなのでしょう。
またホームラン数の多さで忘れてはいけないのが140キロ前後の球を投げる速球派投手の存在です。
高校生は金属バットですから、反発力の強い速いボールがミートすればそれだけ打球は飛んでいきます。
遅い球は上に上がらないもの。木製バットのようにバットが折れることないので速球には打者が有利です。
そしてホームランにされたボールの大半は高めのボール。
高めに来た数少ない失投を打者が捉えたということだと思います。
これからも速球派投手は増えてくるでしょうから、低めにどうボールをコントロールするのかが勝利の鍵になってきそうです。

他にはセーフティースクイズが減って、ノーマルスクイズが増えていました。
理由はちょっと分かりませんが、1点を争うゲームが多かったからなのかもしれません。
一か八かの勝負をかけなければならない試合が多かったということでしょう。
バントの技術はどのチームも高かったです。バットが横に寝ず、基本に忠実なバントが多かったですね。
福島の聖光学院を始め、強打で沸かした駒大苫小牧・済美・東海大甲府のいずれもバントが上手。
ただ打つだけではない、攻撃のバランスの取れたチームが多かったのも今大会の特色です。

守備面に関しては文句のつけようがありません。
今大会に出てきたチームはほとんどが守備のチーム。
エラーが少なく、卒のない野球で地方大会を勝ち抜いたチームばかりでした。
内野ゴロの連携も素晴らしく、併殺の多さも今大会の特徴だと言えます。
また対岩国戦で見せた済美の甘井選手と鵜久森選手のファインプレー、
外野手の球際の強さも目に付きました。
本当にどのチームも完成度が高く、プロ顔負けのプレーが多かったですね。
外野手なら五輪予選に参加している代表選手と遜色ないかもしれませんよ。年々上手になってきています。
やはりメジャーが近くなったというのが大きいんですかね。
内野手はメジャーのダイナミックなプレーを学び、
外野手はメジャーで夢を実現しようと意欲的に練習できる(わりと外野守備自体のレベルはアレなんで)

それに比べて付いていけてないのがキャッチャー… と言わざるを得ず。
これはプロ野球も同じなんですが、投手の変化球レベル向上についていけていません。
今大会もワイルドピッチ・パスボールといったバッテリーエラーが数多くありました。
地面に叩き付けたスライダー・フォークの処理をもっと練習していきませんと。
プロ野球でも捕手の打撃ばかりがピックアップされてしまっているせいなんでしょうかねぇ…
もう少しワンバウンドのボールを的確に処理できる捕手が増えていって欲しいです。
んー、プロにお手本になるような選手がいないというのがアレだよなぁ…
城島捕手はスローイングと判断力が素晴らしいけれど、意外とポロポロやるし、
古田捕手は怪我がちで衰えを隠せませんし…
伊東さん、育成頼む(^^;
今の日本球界で一番人材難なのがキャッチャー。それは間違いありません。

あとはディレードスチールを結構見かけましたね。
成功もあれば失敗も数多くあったわけですが。
牽制死が多かった理由にこのディレードスチールの多さがあったはずです。
理由はよく分かりませんが、隙あらば次の塁を狙おうという心がけの強さかもしれませんね。
走塁に対する意識も年々高まってきているように思います。
あー、ただ単独スチールが減ってるかな?
エンドラン・ランエンドヒットが多いし。そこは残念といえば残念。

ピッチャーのスピードに関して補足。
今大会の140キロ以上の計測投手は…
147キロのダルビッシュ有(東北)、涌井(横浜)、松橋(駒大苫小牧)投手の3人。
次が146キロの佐藤剛士(秋田商)投手。
140キロ以上が小椋(中京大中京)、小松崎(下妻二)、岩本(広島商)、金原(県岐阜商)
鶴川(明徳義塾)、鈴木(駒大苫小牧)、浅香(日大三)、岩下(塚原盛青雲)、黒木(佐土原)、
福井(済美)、柳田(青森山田)ら11人、合計15人です。



今大会は本当に見所が多く、最後まで展開が読めない素晴らしい試合ばかりでした。
高校球児の方々に心からありがとうと言いたいですね。
来年は今年経験を積んだ1・2年生選手が大きく成長し、
さらに熱い大会としてくれることを期待しています。
甲子園球場であなた方の雄姿を待っていますよ!



今大会の有力選手一覧
独断と偏見なので気にしないでください(^^;

A+
右投手 ダルビッシュ有(東北)
涌井秀章(横浜)
柴田雄也(天理)
小椋健太(中京大)
黒木優也(佐土原)
本間裕之(聖光学院)
浅香明生(日大三)
今成純太郎(浦学)
小松崎将司(下妻二)
鶴川将吾(明徳義塾)
金原正二郎(県岐阜商)
真壁賢守(東北)
井上雄介(千葉経大付)
佐野恵太(東海大甲府)
岩下一茂(塚原青雲)
玉置隆(市和歌山商)
山本浩之(鳥取商)
巻田洋貴(浜田)
山下真之介(天理)
山本勇伍(明豊)
堀考義(岡山理大付)
大谷侑(京都外大西)
工藤優輔(盛岡大付)
藤村竜也(西日本短大)
安本秀敬(塚原青雲)
左投手 鈴木康仁(駒大苫) 岩見優輝(熊本工)
松本啓二朗(千葉経大付)
岩田聖司(駒大苫)
金丸将也(佐土原)
金城宰之左(中部商)
川口真(東海大翔洋)
三浦怜一郎(盛岡大付)
賀川歳浩(鳴門一)
村中健一郎(鹿児島実)
高森将平(浜田)
捕手
糸屋義典(駒大苫)
梅田大喜(明徳義塾)
中西健太(北大津)

斉藤雅央(東海大翔洋)
一塁手
松島侑也(日大三)
篠崎直樹(桐生第一)
佐藤俊司(横浜) 桑島優(駒大苫)
二塁手
清水満(東海大甲府)
半田健一(桐生第一)
中山健蔵(遊学館)
三塁手 石川雄洋(横浜)
横田崇幸(東北)
仲沢広基(東海大甲府)
佐々木大輔(日大三)
久保田健仁(明徳義塾)
遊撃手
小山琢也(浦学)
井原努(千葉経大付)
佐々木孝介(駒大苫) 松原史典(明徳義塾)
外野手 鵜久森淳志(済美) 小松紘之(済美)
大沼尚平(東北)
山中一大(日大三)
原田勝也(駒大苫)
甘井謙吾(済美)
田辺真悟(明徳義塾)
浜村拓司(遊学館)
家弓和真(東北)
竹上諒平(西日本短大)
村田金彦(佐世保実)
桑原佳之(駒大苫)
石谷潔(岡山理大付)
赤堀良太(横浜)
松間啓介(市和歌山商)


2年生 1年生
右投手 松橋拓也(駒大苫)
福井優也(済美)
金谷駿(東海大翔洋)
渡辺亮真(桐生第一)
松下建太(明徳義塾)
中西良輔(遊学館)
滝隆浩(富山商)
穴水龍太(東海大甲府)
金本明博(酒田南)
前田健太(PL学園)
左投手 柳田将利(青森山田)
片山博視(報徳)
曽根瑛二(遊学館)
斉藤勝(修徳)

捕手 西田佳弘(済美)
今成亮太(浦学)
西平貴成(中京大)
福田永将(横浜)
一塁手 西下文也(京都外大西)
中田亮二(明徳義塾)
磯部泰(修徳)
伊藤翔(市和歌山商)
二塁手 林裕也(駒大苫)
白取将(青森山田)
梶本宙(市和歌山商)

三塁手 五十嵐大(駒大苫)
長島一成(修徳)

遊撃手 磯村拓範(中京大)
加藤政義(東北)

外野手 真井翔太(天理)
中村翔(中京大)
橋本達也(横浜)
柳裕太(日本文理)
鈴木将光(遊学館)
巽裕也(鳥取商)
佐藤勇太(酒田南)
北田亘(酒田南)
小川佳矩(中京大)
平林拓朗(京都外大西)
成田恭佑(東北)
佐藤直樹(修徳)


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