04センバツ甲子園大会 10日目

第1試合 愛工大名電(愛知) 7−1 秋田商(希望枠)

(秋)佐藤剛士(7回1/3)−佐々木洋樹(2/3)
(名)丸山(9回)
(本)梶田京太(名電・4回裏・ソロ)、鈴木啓友(名電・5回裏・ソロ)
秋田商
愛工大名電

プロ注目の右腕・佐藤剛士投手と愛工大名電打線の対決は名電に軍配が上がりました。
これだけバント攻撃が効果的ならプロ野球でもやればいいのに。
昨日のダイエー・西武戦でも川崎選手がセーフティーバントやって西口投手の乱れを誘い出したっしょ。
見習ってくれよ、西武… 上手く転がせば足の速さなんて関係ないんだから。
…と、ついプロ野球の方のストレスを思い出してしまう自分です(笑)

1試合目にも書きましたが、愛工大名電のバント攻撃が怖いのは「何をしてくるか分からない」ことです。
長打力を持っているのにも関わらずバントをしてくる、それが怖い。
しかも選手が渋々バントしてるのではなく、バントで揺さぶることを楽しんでさえいるように見えます。
投手がダッシュをしてくればバットを引き、してこないとセーフティーバントと休ませる暇を与えません。
とにかく相手投手の嫌がることをやってくる打線です。
秋田商の佐藤投手が揺さぶりで崩れないことを悟ると、中盤から強打に切り替えてホームランで得点。
打力がなければコントロール重視でストライクを先行させられるんですが、
打力が下手にある分、警戒してしまってフォアボール。
逆にストライク先行させようとすると、長打で得点と抜け目がないです。
ピッチャーのテンポを崩す打線、ギアを自由自在に入れ替えることのできるチームです。
「攻撃的なバント」それを愛工大名電は教えてくれています。

この試合の簡単な得点経過です。
2回裏、愛工大名電の4番松井選手がセーフティーバントの構え、内角ストレート・ボール球が来て死球。
 (バントの構えだった分、やや避けるのが遅いようにも)
ここで送りバントで2塁へ進め、
6番佐々木選手が初球バントの構え引いた後に、2球目をセーフティー気味のバント。
2アウトながらランナー3塁とします。
そして7番打者を迎えた所で低めストレートをキャッチャーが逸らしてランナーホームイン。
 (記録はワイルドピッチ)
愛工大名電がノーヒットで先制点を挙げます。

4回表、愛工大名電の丸山投手は順調に投げていたものの、
2アウトから3番菊池選手に不用意な四球、4番吉田選手を警戒して四球、
5番渡部選手にストライク入らずの四球と三者連続四球を出してしまい、
6番伊藤選手に押し出し死球、秋田商が1点を返して同点に追いつきます。
その後も満塁のチャンスがあったものの、7番佐藤投手が空振り三振に倒れてチェンジ。

4回裏、愛工大名電の3番梶田選手が2ストライクと追い込まれながら、
佐藤投手の内角高めストレートを軸回転で打ち、ライトスタンドに入るホームラン!
同点に追いつかれた直後、愛工大名電が一振りで勝ち越します。

5回裏、愛工大名電の7番鈴木選手が内角高めスライダーボール気味を打ち、
ライトポール際に飛び込むホームラン!
長打攻勢で点差を2点とします。

6回表、秋田商は2番佐々木智樹選手がカーブをコンパクトに打ち返すセンター前ヒットで出塁し、
3番菊池選手の送りバントが1塁線に上手く転がって内安打、ノーアウト1・2塁の大チャンスを作ります。
しかし4番吉田選手の所で、低めのボールをキャッチャーが少しこぼすワイルドピッチがあって、
2塁ランナーが3塁へ、けれどキャッチャーは前に少しこぼしただけだったので3塁悠々アウト、
走塁ミスによって1アウト1塁となり、チャンスを逸してしまいます。
その後、後続も倒れて無得点。

6回裏、愛工大名電の1番青山選手のセンター正面ライナーを目測誤ってセンター落球、ノーアウト1塁とし、
2番柴田選手が木のバットで送りバントを決め、
3番梶田選手の1塁線への送りバントを秋田商守備陣がファールになるか見てしまって内安打、
1アウト1・3塁とチャンスを広げます。
4番松井選手はファーストファールフライに倒れるも、5番池田選手の所でまたしてもワイルドピッチ。
愛工大名電が貴重な1点を追加します。

7回表、秋田商は2アウトから代打の泉谷・9番大高選手の連続ヒットでチャンスを作るも、
空振り三振に倒れて得点することができません。

8回裏、名電は1番青山選手がレフト左を抜く3ベースヒットで出塁し、
2番柴田選手がショート後方に落ちるレフト前タイムリーヒットで1点追加。
さらに盗塁・送りバントでランナーを進め、4番松井選手がライト線抜くタイムリー3ベースで2点目。
ここで秋田商は2番手の佐々木洋樹投手を送るも、連続四球で満塁としてしまい、押し出し死球で3点目。
愛工大名電のリードが大量6点と変わります。

今日の愛工大名電:丸山投手は過去2試合と比べても一番良い出来。
4回こそ三者連続四球+押し出し死球で1点を失ったものの、他は大きな乱れはなく、
秋田商を5安打15奪三振の快投を演じて勝利しました。


勝敗を分けたのは、愛工大名電の1点目だと思ってます。
6番佐々木選手のバント、これが全てでした。
愛工大名電は1ストライク目まではセーフティーバントを試みるも、それ以外は基本的にフリーです。
ですから、この場面、既に1ストライク取られてるわけですから、佐々木選手はヒッティングで来るはず。
けれどヒッティングではなくバント… 送りバントのサインが出てたかと考えると、そうでもなかったように思います。
なぜなら佐々木選手は一度バントを引いて、改めてバントしにいったからです。
もちろんセーフティーだったのかもしれませんが、名電は1回にセーフティやってフライを打ち上げています。
もしもランナーを進めたいなら、確実にバントをさせていたと思うんです。ノーサインだったような気がしてます。
この時に秋田商:佐藤投手の投げた球がカーブ、軌道がゆっくりでダッシュが不十分になってました。
たぶんそれを見てセーフティーやったんじゃないでしょうか。
おそらくストレートでダッシュしてくればそのままヒッティングでいったのでしょう。
その一瞬の判断(勿論、セーフティーは頭にあったはず)ができるのが今年の名電打線の嫌らしさです。
良い意味で周りが見えている、視野の広い攻撃をしています。

それにしても4回・5回のホームランは見事でした。
どちらも簡単にホームランにできるような球ではなかったんですがね。上手く打ったと思います。
名電のバント攻撃に対しても動揺せずに投げていたように見えた佐藤投手ですが、
心理的・肉体的影響はかなりあったんでしょう。
少し疲れが出たところを、名電打線の思い切りの良さにやられた感じです。
8回は完全に疲れていた印象。神経使うんでしょうね、やっぱり。

勝った愛工大名電は攻撃的なバント野球が見事です。
一回戦で速球派の中田投手、二回戦で制球重視の出原投手を、そしてプロ注目の本格派:佐藤投手を崩しました。
こうなってくると残る相手は… ダルビッシュ投手しかいませんね(^^;
次の相手の福岡工大城東を倒し、ダルビッシュ投手を決勝の舞台で打ち崩す姿を見てみたいです。
力と技を兼ね合わせたチーム… この後も「攻撃的なバント野球」を全国の野球ファンに見せて欲しいです。

負けた秋田商ですが、6回表の走塁ミスが致命的でした。
前の試合でも幾つか走塁ミスはあったんですが…今日のは致命的でした…
積極的な走塁もいいんですけど、場面を考えてもらいたい。
一か八かのイニングじゃないし、ノーアウトで確実にランナーを進めていけばいいこと。
欲張った走塁が秋田商の負けを決定付けてしまいました。
ただエースの佐藤投手を中心にディフェンスの良さを存分に見せてくれました。
希望枠選出でこれだけの力を見せてくれるとは驚きです。
打線も基本が徹底されてますし、実力があります(今日は丸山投手が良すぎた)
今大会の結果を踏まえて、夏に勝ち抜けるチームを作ってきて欲しいです。


目立った選手は秋田商の佐藤投手と愛工大名電の丸山投手です。
今日の佐藤剛士投手の出来自体は今までと変わってなかったと思います。
立ち上がりはストレート主体のピッチングで、140キロ前後(最速143)を出し、伸び・球威と問題ありませんでした。
4回辺りから135キロ前後のコントロール主体のピッチングで、縦の落差あるカーブを交えた緩急で勝負してたんですが、
結果的にそのギアの入れ替えが上手くいかなかったかのかもしれません。
名電のバント攻撃を封じるためにストライク先行させようとしたら、長打で立て続けに失点。
無理して力を入れて投げれば、ボールが高めに上ずったり、ワイルドピッチになったりと。
中盤以降は速いストレートが高めに行ってしまったり、変化球が浮いてしまうケースを多く見かけました。
そういう意味で、名電打線にしてやられたかなという印象です。
今後の課題としては変化球の制球力を磨くことでしょうか。
縦のカーブの精度、そして決め球になりうるスライダーを磨くことが求められます。
トータルバランスならダルビッシュ投手と張り合える投手だと思うので、
夏にもう一回り大きくなって帰ってきて欲しいです。

愛工大名電の丸山投手は今まで見た中では最高の出来。
1回にいきなり三者連続三振ですよ? 秋田商はここまで初回に先制点を取って有利に試合を進めていたのに。
ストレートが130〜135。ストレートは今までで一番良かったと思います。
キレも球威も完璧。右打者の内角をズバッと突くストレートは爽快でした。
前回ダメだったカーブのコントロールも良く、打者の内外角に上手く投げ分けられていました。
そして何よりテンポが早い早い。
コーナーを厳しく攻めていたのでボール球も多かったんですが、そんなことを全く感じさせないピッチング。
ボールを受け取ってからモーションに入るまでが早い早い。けれどモーションはゆっくり…打者としては焦らされますね(^^;
このピッチングを続けられれば、プロ入りも十分可能。楽しみな投手です。
課題はコントロール。4回の連続四球・押し出しは勿体無いの一言。
ただ今日ぐらいテンポ良ければコントロールも自然と安定してくるでしょう。
次の試合もナイスピッチングを期待しています。




第2試合 社(兵庫) 9−7 福岡工大城東(福岡)

10 11 (社)大前(8回0/3)−坪井(3回)
(城)日下(4回)−富田(3回)−定岡(1回1/3)−
 柴田(2回1/3)−草場(1/)
(本)山下佳志朗(福城東・3回裏・ソロ)
   田口健人(福城東・9回裏・ランニングホームラン)
福城東

終始、社のペースで進んだ試合でしたが、
終盤に福岡工大城東が驚異的な粘りを見せて延長戦へ突入。
乱戦になったものの、四死球が少なかった分だけ、社が勝利しました。

簡単な得点経過です。
1回表、社は2番朝井選手が1塁方向へセーフティーバントを決めて出塁し、
3番小堀選手が外角スライダーを上手く合わせるセンター前ヒットで1アウト1・3塁。
ここで今日4番に返り咲いた(秋季地方大会以来)坂本選手がエンドランでレフト前に流し打つタイムリー。
社が1点を先制します。

1回裏、福岡工大城東は2番日高・3番久場川選手の連続ヒットで1アウト1・3塁とするも、
4番定岡選手が内角ストレート見逃し三振、5番打者が低めカーブ空振り三振に倒れ、無得点。

2回表、社は6番大前投手がヒットで出塁し、送りバント・セカンドゴロでランナーを3塁を進め、
9番日下部選手が叩きつけてピッチャーの頭を超えるタイムリー内安打を放ち、1点を追加します。

3回裏、福岡工大城東の9番山下選手が大前投手の真中高めストレートを打って、
レフトポール際に入るソロホームラン! 1点を返します。

5回表、社は先頭打者を四球で出し、送りバントピッチャー送球エラーでノーアウト1・2塁、
送りバントで進めて1アウト1・2塁、さらに死球で1アウト満塁。
ここで5番寺田選手がライトへフライをタッチアップ十分と思えるフライを打ち上げるのですが、
3塁ランナーはライトの送球を見て途中で引き返す…のですが、2塁ランナーはそのまま3塁へ。
タッチアップしたものと勘違いしていたのか、二三塁間に挟まれます。
そして3塁ランナーがその間にスタートを切り、今度は3塁ランナーが三本間に。
しかしここで福岡工大城東が送球ミスをしてしまい、ボールが外野へ…2者生還します。

8回表、この回から福岡工大城東は3番手として定岡選手が登板しますが投球は相変わらず。
ストレートを狙われて、4番坂本選手のヒット、送りバントでランナーを進め、
7番嶋田選手が3塁線抜くタイムリー2ベースで社が1点を追加します。

9回裏、福岡工大城東は6番藤沢選手がヒットで出塁し、7番田口選手がライト線へのヒット。
これをライトが処理を誤って、打者走者も一気にホームイン。ランニングホームランで2点を返します。
これで動揺したのか大前投手がストレートの四球。
ここで社は2番手の坪井投手をマウンドに送ります。
1番柴田・2番日高選手のヒット等があり、2アウト満塁。バッターは4番の定岡選手。
カウント2−3から3塁線の強い当たりのファールを打って悔しがってから、
今度はセンター前にコンパクトに弾き返す2点タイムリーヒットを放ち、土壇場で同点に追いつきます。

11回表、社は福岡工大城東の4番手・柴田投手を攻め立てます。
先頭の坪井投手が頭部四球で出塁(臨時代走起用)し、送りバントで2塁へ進み、
1番宮田選手のライトオーバータイムリー3ベースで勝ち越し!
2番朝井選手がスクイズを試みるもファール、けれどこの後高めに大きく外れるワイルドピッチで1点追加。
センターフライの後に連続四球があって、福岡工大城東は5番手の草場投手がマウンドに。
ここで5番寺田選手がセンターオーバー2点タイムリー2ベースを打ち、4点差と引き離します。

11回裏、福岡工大城東は1番柴田選手がサードのエラーで出塁し、2アウト2塁で4番定岡選手を迎えます。
この緊迫する場面でディレードスチールを決めて、2アウト3塁。
そして定岡選手のサードのタイムリーエラーで1点追加、
続く5番中野選手が左中間抜くタイムリー2ベースで2点差を追い上げます。
しかし反撃もここまで。最後はセカンドフライに終わりゲームセット。
社が9−7で接戦を勝利しました。


完璧に社の勝利だったのにも関わらず、
9回裏に福岡工大城東が追いついたのは前回の拓大紅陵戦の粘り強さが残っていたからなのでしょう。
ここまで当たりのなかった定岡選手に2点差の2アウト満塁で打席が回ってきて、カウントは2−3…
すごい場面でした。この緊迫した場面で回ってくる運、そして結果を残すだけの実力。
やはり只者ではないと思わせる瞬間でした。
…それ以外の打席の内容が良くなかったんで、結果からすればイマイチでしたが…
最終打席で打ってたら、格好ついたんですがね。ちょっぴり残念です。
かなり打撃に粗さがあるものの、これからが楽しみなスラッガー。
リリーフ登板で速球を見せるなど、去年の愛工大名電:堂上選手(現:中日)を髣髴させますね。

勝った社は終始押し気味に試合を進めたものの、9回に追いつかれて苦しい試合になってしまいました。
今日は詰めが甘かったんで、次の試合はきっちりとしたプレーをしてもらいたい所。
守備は基本的に堅いんですが、今日は試合終了を焦ってか終盤のエラーが目立ちました。
試合終了まできっちりとしたプレーをすること、それを今日の教訓として欲しいです。
これで社は初出場ながらベスト4進出です。
報徳学園・育英・神戸広陵など私立校の強豪校がいる兵庫県での公立校の躍進…嬉しいですね。
さて次の試合は好投手キラーの愛工大名電。
大前・坪井投手の2人が名電の攻撃に耐えられるかどうか…注目です。
1人で抑えることは難しいでしょうから、力をあわせて戦っていって欲しいです。

負けた福岡工大城東は終盤の粘り強さが印象に残りました。
今日の試合で打線の力強さを感じる事ができましたし、良かったんじゃないかと。
1つ残念なのは4番の定岡選手の当たりが少なかったことです。
結構チャンスで回ってきてましたし、もう少し早く打っていれば…そう思わずにはいられません。
チームも定岡選手自身も一回り大きくなって、甲子園に帰ってきて欲しいです。


注目の2年生左腕大前投手は9回に乱れたものの、それ以外は上々の出来でしょう。
今日はカーブのコントロールが良くて、一度浮き上がってくるような落差があり、ピッチングも安定していました。
ややストレートが高めに来た所をホームランにされたので、そこだけ気をつければという所。
2年生ながら四球で自滅しないのが大前投手の良い所ですね。
次の試合でも好投を期待しています。



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