04センバツ甲子園大会 7日目

第1試合 福岡工大城東(福岡) 6−4 拓大紅陵(千葉)

(紅)伊能(8回)−千葉(0/3)
(城)草場(2回2/3)−日下(5回2/3)−定岡(2/3)
(本)佐藤雄大(拓大紅陵・2回表・ソロ)
   藤沢裕志(福岡城東・9回裏・サヨナラ2ラン)
拓大紅陵
福岡城東 2×

終盤にもつれたこの試合はサヨナラ2ランホームランという劇的な展開で幕を下ろしました。
結果的には投手リレーが勝敗を決めた形となってしまいました。
拓大紅陵はエースの伊能投手に代打を送って代打の戸川選手が四球、
なんとか2点を奪って同点としたものの、9回裏に登板できずサヨナラということに。
一方の福岡工大城東はピンチで定岡選手をマウンドに送り、
同点に追いつかれたものの勝ち越し点は許さず、
その時に1塁にいた定岡選手に代わってファーストに入った藤沢選手がサヨナラ2ラン。
一見失敗したかのように見えたんですが…勝負というものは分からないもんです。
打った藤沢選手が思い切り良い打撃で素晴らしかったということなんでしょうね。

簡単な得点経過です。
1回裏、福岡工大城東は1番柴田選手がセーフティーバントを決め、バント・四球などで2アウト1・3塁となり、
5番中野選手が右中間への2点タイムリー2ベースを放ち、2点を先制します。

2回表、拓大紅陵の7番佐藤選手がレフトへホームランを放ち、1点を返します。

3回表、拓大紅陵は先頭の高橋選手が四球で出塁し、送りバントでランナーを進め、
3番石原選手があわやホームランというライトフェンス直撃のタイムリー2ベースを放ち、同点に追いつきます。

この後、福岡工大城東は2番手の日下投手にスイッチ。
7回までエラーの走者2人のみ。無安打無四球に抑えていきます。

一方の拓大紅陵・伊能投手は毎回ヒットを許す苦しいピッチング。
けれど6回に中野捕手がバント空振りで飛び出したランナーを刺すなど守備陣がしっかり守り、
粘りのピッチングで0点に抑えていきます。

8回表、拓大紅陵は1番高橋選手が久々のヒットで出塁し、送りバント・四球で1アウト1・2塁。
しかし4番氏家選手が内角低めシンカーに空振り三振。2塁ランナースタート切っており、3塁タッチアウト。
三振ゲッツーでチャンスを生かせません。

8回裏、拓大紅陵の伊能投手は1アウトから内角ストレートが外れて二者連続死球。
1アウト1・2塁となったところで、バッターはここまでノーヒットの4番定岡選手。
その定岡選手が外角スライダーを踏み込んで打つレフト左抜く2点タイムリー2ベースを放ち、
福岡工大城東がついに勝ち越し点を奪います。

9回表、拓大紅陵は5番中野選手がライト前ヒットで出塁し、
6番吉原選手のレフトへの凡フライをショートが深追いし過ぎてレフトと交錯して落球。
ノーアウト1・2塁とチャンスが広がり、7番佐藤選手のライトへ大きなライナー性のフライを放ち、
この打球はライトに捕られるも2塁ランナータッチアップで3塁へ、
さらに3塁への送球を見て1塁ランナーが2塁を奪う好走塁を見せます。

1アウト2・3塁となった所で福岡工大城東はピッチャー交代。
ファーストに入っていた定岡選手がマウンドに上がり、ファーストに控えだった藤沢選手が入ります。
定岡投手はストレートは140キロオーバー(最速146キロ)とボールの威力はあったものの、
カーブが全くストライク入らない状態に。
いきなり代打の戸川選手に四球を出してしまい、1アウト満塁としてしまいます。
ここで代打の井口選手がストレートに的を絞って1・2塁間を抜く2点タイムリーヒットを放ち、同点に追いつきます。
さらに1アウト1・3塁のチャンスがあったものの、1番高橋選手がセカンドゴロに倒れて3アウトチェンジ。
同点止まりとなってしまいます。

9回裏、拓大紅陵は代打を出した関係で2番手・千葉投手が登板します。
福岡工大城東の7番田口選手がボテボテのサードゴロが幸いして内安打に。
ノーアウト1塁となったところで途中出場の藤沢選手がバントを引いた時に、再びランナーが飛び出すミス。
中野捕手がすかさず1塁へ送球して1・2塁間に挟むも、ファーストが悪送球。ランナー2塁へ進みます。
この走塁ミスでバントから強打に代えてきた福岡工大城東、
藤沢選手が低めやや甘いカーブを掬い上げて打ち、レフトスタンドに入るサヨナラ2ランホームラン!
劇的な一発で福岡工大城東がサヨナラ勝ちしました。


こうやって試合を振り返ってみると、結局試合を決めたのはミスなんですよね。
9回裏に福岡工大城東の走塁ミスがあったのにも関わらず、悪送球でランナーを労せず2塁へやってしまった…
これが痛かったということでしょう。
拓大紅陵としては藤沢選手に思い切り打たせるチャンスを作ってしまったことが悔やまれます。
逆に福岡工大城東の藤沢選手は途中出場ながらも思い切ったバッティング、凄いです。
やや甘かったとはいえ、低めカーブを思い切り振りぬいたあの当たりは素晴らしかったです。
ナイスホームラン! この調子で頑張っていって欲しいです。

勝った福岡工大城東は2番手の日下投手が好投し、定岡選手にタイムリーが出て、
最後はベンチにいた藤沢選手のサヨナラホームランと結果的に良いこと尽くめになりました。
ただ中盤にチャンスありながら追加点取れなかったり、バントの時にランナーが飛び出したりと課題も多い試合でした。
今日の試合でも分かるようにミスは命取りになりますから、防げるものはできるだけ防いで欲しいです。
バント時の走塁なんて少し気をつけていれば大丈夫なわけですし(2塁ではなくて1塁なので)、
ランナーに出ても集中して欲しいものです。

負けた拓大紅陵はずっと守備陣が頑張っていましたが、最後の最後でエラーが出たのが悔やまれます。
もう一度守備を鍛えなおし、夏へと繋いで行って欲しいです。
チームとしてはエースの伊能投手、キャッチャーの中野捕手とバッテリーがしっかりしているので、
修正はそう難しいことではないと思います。
2番手投手の育成とともにチームの守備力底上げを図って欲しいです。


目立った選手は福岡工大城東の日下投手、定岡選手、拓大紅陵の中野捕手です。
日下投手はゆったりとバックスイングを取るサイドスロー投手で130キロ前後の威力あるストレートと、
110キロ台のスライダー、120キロ台のキレあるシンカーが武器の投手です。
安定感ある投球を見せていましたし、この甲子園でチームのエース格に成長してますね。
4番ファーストの定岡選手は甲子園初ヒットが勝ち越しの2点タイムリー2ベースと勝負強さを見せました。
その打席までは外角のスライダーを引っ掛けてばかりだったんですが、
この打席では上手くスライダーを捉えていました。
引っ張っていたので狙ってたのかもしれません。そう考えると外角の変化球の対応はもう少し見てみないと…
このヒットが次の試合に繋がっていくことを期待したいです。

拓大紅陵で目立ったのは5番キャッチャーの中野選手です。
遠投110Mの強肩だそうで、今日は盗塁を刺したり、飛び出した走者を牽制で刺すなどその肩を存分に披露していました。
よく周りが見えている選手で、エラーした選手に声をかけるなどチーム全体を引っ張っていました。
リード面も安定していたと思いますし、守備型の捕手として今後の成長が期待されます。



第2試合 社(兵庫) 2−1 鵡川(北海道)

10 11 12 13 14 (社)大前(8回)−坪井(6回)
(鵡)宮田(14回)
鵡川

今大会初の延長戦は延長14回まで投手戦が繰り広げられるという壮絶な試合になりました。
ただ…もちろん選手の皆さんは頑張ったと思うんですが…
正直、「早くどちらでもいいから打てよ」と思ってしまいました…
登板したピッチャーが良かったのは確かなんですが、あまりにも打てないというか…
延長14回までやって両チームともに散発の6安打。最後まで打線が繋がる事はありませんでした。
試合の幕切れは悪送球となんとも脱力する展開…もう少し良い形の幕切れを見たかったです

簡単な得点経過です。
3回裏、鵡川は1アウトから四球でランナーを出し、
1番大友選手がバスターでヒットを放ち、1アウト1・2塁とチャンスを広げます。
ここで2塁ランナーがサードへのディレードスチールを試みるも社が落ち着いて対処して盗塁死。
これで社はピンチを逃れたかに見えたものの、ワイルドピッチでランナー3塁へ。
さらにキャッチャーとのサイン違いなのか、空振り三振を取るもカーブを捕球できずに三振振り逃げ。
3塁ランナーがホームインして社が先制します。

4回表、社はヒット・四球でチャンスを掴むも鵡川のショート斉藤選手のナイスプレーに阻まれ無得点。

6回表、社は3番小堀選手がレフト左を抜く2ベースヒットで出塁するも、
送りバントがピッチャーへのライナーとなってしまい、併殺。

8回裏、鵡川は四球やエラーなどで2アウト2・3塁のチャンスを作るも、
ここは大前投手が気迫のストレートを投げて見逃し三振に取ります。

9回表、社は二者連続三振で2アウトとなるも、6番大前投手がサードが弾くラッキーな内安打で出塁し、
代走の松原選手を起用します。
ここでなんと社は2塁盗塁を敢行! 見事決まってセーフ。
さらに松原選手は3塁盗塁を敢行! 鵡川のキャッチャーは3塁送球するもこれが悪送球…
ランナーホームインして社が同点に追いつきます。
このショックを引きずったのか、四球・死球とコントロールを乱して、2アウト1・2塁に。
ここで鵡川はキャッチャーを交代します。
さらに9番日下部選手の強いセカンドゴロを2塁手が慌てて落球、ボールが手に付かず送球できず。
2アウト満塁のピンチを迎えますが、ここは宮田投手が踏ん張ってキャッチャーファールフライでチェンジ。

9回裏から社はエースナンバーの坪井投手が登板します。
立ち上がりはコントロールを乱すものの、延長入ってからは安定したピッチングで鵡川打線を抑えていきます。

一方の鵡川の宮田投手は志願の続投。
気迫のピッチングで10・11・12・13回と三者凡退に抑えていきます。

そして迎えた延長14回表、社は先頭の5番嶋田選手がセンター前ヒットで出塁!
すかさず送りバントで進め、1アウト2塁とします。
けれど7番坪井投手が三振に倒れて2アウト2塁。
しかしここで社は再び3塁へ盗塁!
途中からキャッチャーに入っていたファーストの亀田選手が3塁へ悪送球!
9回表の同点劇と全く同じ形で社が点数を入れます。

14回裏は坪井投手が三者凡退に抑えて試合終了。
社が積極的な走塁でミスを誘い出して、勝利を収めました。


結局、この試合で入った点数はというと…
 鵡川…三振振り逃げワイルドピッチ
 社……3塁盗塁時の悪送球
バッテリーエラーでの点数だけでした。勿体無いミスだけにやや残念な感じがしました。
ただ社の積極的な走塁は凄い勇気ですよね。
9回も14回も2アウトからの3塁盗塁です。
特に9回はアウトになっていたら試合終了ですから、そこで走る勇気は感服に値します。
社の積極的な走塁が勝利を呼び込んだと言えますね。

勝った社は一か八かの走塁が大成功しました。
それまで鵡川の守備陣は良いプレーが多かっただけに、この走塁は勇気が必要だったことでしょう。
相手の意表を突く見事な走塁だったと思います。
打てないなら相手のミスを誘うような走塁で勝つ。見事な野球でした。
今日の大前投手は前回よりもコントロール悪かったものの粘り強い投球を見せ、
2番手の坪井投手はストレートを中心に安定感あるピッチングでしたし、この2枚看板は強力ですね。
課題としては経験不足の捕手の問題でしょうか。
低めにカーブを集める2投手ですから、なんとかボールを前に落とさないと。
今日はそれで負けそうになったわけですし、大変でしょうが急造捕手として頑張って欲しいです。

負けた鵡川はチャンスありながら得点できなかったことが悔やまれます。
前半は大前投手が不安定でしたから、そこでなんとか点数を取っておきたかった所。
あとは守備のミスですね…今日は9回までしっかり守っていたんですが…
肝心な所で内野のエラー、キャッチャーの悪送球とミスが続いてしまいました。
この悔しさを胸に守備練習に励んでもらいたいです。


目立った選手は社の大前投手、坪井投手、鵡川の宮田投手です。
今日の大前投手は序盤からカーブのコントロールが甘く、ストレート中心にならざるを得ませんでした。
7回辺りからカーブが低めに決まりだし、安定感が増していきました。
大前投手の場合はカーブのコントロールが生命線のようですね。
カーブがダメな時にどう立て直すか、それが今後の課題となってきそうです。
2番手の坪井投手は元オリックス・阪神で活躍した遅球の使い手・星野伸之投手のような投球フォーム。
ストレートは130キロ台前半、大前投手よりもスピード感があります。
変化球はカーブで組み立て自体は大前投手と似ています。
コントロールは基本的にに安定していますが、力みやすいフォームだけに荒れることもあるようです。

鵡川の宮田投手は1回戦よりも良いピッチングをしていました。
全体的にコントロールが良く、ストレートの走りも良かったと思います。
ストレートは130キロ代後半、140キロ近く出ていました。
また低めのカーブ・スライダーはキレがあり、社打線を完璧に封じていました。
今日のピッチング自体は本人も納得でしょう。
この甲子園でのピッチングをこれからも持続できるよう練習して行って欲しいです。



第3試合 済美(愛媛) 1−0 東邦(愛知)

(東)岩田(9回)
(済)福井(9回)
東邦
済美

この試合も好投した投手の方が負けてしまうという謎な展開。
両投手ともに頑張ってましたが、内容自体は岩田投手の方が良かったんですが…
東邦打線にあと1本が出ませんでした。
それでも済美の強力打線を1点に抑えた岩田投手は立派です。
今大会で印象に残る投手の一人となりました。

簡単な得点経過です。
3回表、東邦は2番瀬戸川・3番新山選手の連続ヒットでチャンスを作るも、
4番の送りバントを上げてしまってランナーを進められず。
その後、死球で1アウト満塁のチャンスを迎えるも、二者連続三振で無得点に終わります。

3回裏、済美は先頭の9番福井投手がヒットで出塁し、送りバントで2塁へ。
2番打者は外角スライダーで空振り三振に倒れて2アウト2塁となるも、
3番高橋選手が外角カーブを踏み込んで打つピッチャー強襲センター前タイムリーで先制します。

6回表、東邦は6番末藤選手がストレートを思い切り振りぬくライトオーバー3ベースヒットを放ち、無死3塁の大チャンス!
しかし外角スライダーボール球に手が出て空振り三振。
さらにノースリーからスクイズを試みるもファール、結局ショートゴロでランナー動けず。
最後もショートゴロ。東邦は無得点で終わってしまいます。

7回表、東邦は1アウトから2番瀬戸川選手がショート深くへの内安打で出塁し、ショートの悪送球で2塁へ。
ここで良い当たりのピッチャーゴロ、2塁ランナーが飛び出すのを見てセカンドへ投げるも悪送球。
1アウト1・3塁となったところで、セーフティースクイズ!
打球は転がるものの、3塁ランナーのスタートが悪く、ピッチャーのグラブトスもあってホームタッチアウト!
続く打者もファーストフライに倒れてしまい、3アウトチェンジ。得点を取れません。

8回裏、済美の2番小松選手がライトオーバーのヒットを放ち、打者走者は2塁を蹴って一気に3塁へ!
しかしライトが転がる打球を素手で取って2塁手へストライク返球、2塁手も3塁へナイス送球を見せて3塁タッチアウト!
見事な中継プレーでピンチの芽を紡ぎます。

9回表、東邦は三者凡退に終わって試合終了。
済美が1−0で逃げ切りました。


以上のように済美がワンチャンスをものにして勝利しました。
東邦は何度もチャンスあったんですが、スクイズが失敗するなど得点することができませんでした。
絶好のチャンスがあっただけに…勿体無いの一言です。
それだけ両投手が良いピッチングをしていたということですね。

済美の福井投手はやや変化球のコントロールが悪かったものの、その分ストレートの走りが良かったようです。
6・7回のピンチでは130キロ台後半をマーク。最速139キロのストレートで東邦打線を押し切りました。
まだ新2年生ですが、強心臓で度胸の良いピッチャーです。
その度胸の良さが今日の勝利を呼び込んだのでしょう。
一方の東邦・岩田投手も前回同様素晴らしいピッチング。
140キロ前後のストレートにキレのあるスライダー・カーブ、そしてフォークボールを投げていました。
右打者の外角スライダーはピカイチ。コントロールも安定していて、高校生レベルでは打てないスライダーだと思います。
課題は左打者だったわけですが、今日はフォークボールを使うことで投球の幅を増していました。
力投型に見えて、コントロールもかなり良いので、かなりレベルの高い投手だと思います。
総合力でいえば今大会屈指の投手。東北勢のダルビッシュ・佐藤投手の次に来る投手だと見ています。

勝った済美は自慢の打線が爆発できなかったのが残念。
前回ホームランを打った鵜久森選手は内角ストレートに窮屈な打撃をしてましたし、あまり良い所が見られませんでした。
次の対戦は東北と大阪桐蔭の勝者とバランスのいいチームですから、
狙い球をしっかりと絞って打っていって欲しいです。

負けた東邦はあと一本が出なかったのが… 送りバントのミス、スクイズ失敗と肝心な所でバントが決まりませんでした。
そのバントミスが4番打者というのが何とも…得点パターンの確立が求められます。
エースの岩田投手はコントロールが安定している投手なので、守備面は大丈夫でしょう。
夏の大会にはベスト8入りした愛工大名電ほか強力なライバル校がいるので、
全体的なレベルアップを図って、夏の甲子園に来れるよう頑張ってほしいです。



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