今大会はセンバツで騒がれた有力投手が地方大会で散るなど、荒れ模様の展開でした。 浦和学院の須永、横浜の成瀬、遊学館の小嶋、福井の藤井、東洋大姫路のアン、徳島商の平岡… 連続出場の難しさはあるでしょうが、これらのチームの敗退は意外なことでした。 それに代わって出てきたチームは、聖望、横浜商大高、福井商、神港、小松島… どのチームも目立った選手はいないながら、守備が堅く、バントの上手いチームでした。 優勝した常総学院や準優勝した東北、ベスト4の桐生第一、江の川なども堅守を誇っていましたから、 1点を確実に取り・守る野球で勝ってきた高いチーム力の高校がが勝ちあがってきたと言えます。 そういうトーナメントを勝ち上がるのに必要な要素が整ったチームが揃った大会だったと思います。 大会の特徴としてはホームランの少なさが上げられます。 ホームランが出たのは1回戦・2回戦、ともに各チームの初戦が中心、 その後は準決勝の東北高校の2ホームランだけという異例とも言うべき少なさでした。 今大会は打撃のレベルが低くなったというよりも、低めにコントロールする投手が多かったからだと思います。 今大会のホームランにした球はいずれもベルト付近の変化球、失投ばかりです。 初戦を勝ち抜いたチームはその失投の割合が少なかったように思います。 勝ち抜いたベスト8の高校を見れば明らか。 常総の磯辺・飯島投手、鳥栖商の重野投手、江の川の木野下投手、 聖望の松村投手、光星の桑鶴投手、岩国の大伴投手…いずれも変化球を低めに集める投手ばかりです。 「低めに投げて打たせて取る→内野ゴロが多くなる」、こういう現象が多く見られました。 それだけに守備の良さが際立つチームが多かったように思います。 確かにエラーも多くありましたが、それは守備機会が多かっただけで、 1試合におけるファインプレー・好プレーも多くありましたから、守備のレベルは高かったと言えます。 残念なのはバッテリーミスの多さでしょう。 キャッチャーのパスボール・悪送球、ピッチャーのワイルドピッチ・死球等が今回は目立ちました。 まずキャッチャーのミス(ワイルドピッチ含む)が多かったのはコンバートが一番の理由だと思います。 今大会は内野など他ポジションからのコンバート捕手が多く、 肩が強くとも経験の面で「?」がつくような選手が多くいました。 ワンバウンドのボールの処理といった面が甘く、止められるボールでも後ろに逸らしていました。 キャッチャーはグラウンド内の監督なわけですし、しっかりと練習を積んだ選手を守らせて欲しいです。 簡単にピッチャーのボールを逸らすようでは、投手も全力を出し切ることができません。 最近は縦のスライダー・フォークなどを投げる投手もいるわけですし、キャッチングの重要性を再認識する必要がありそうです。 ピッチャーの死球に関しては投球フォームに問題があるように思います。 今大会の死球王と言えば、福井商の稗田投手と倉敷工業の陶山投手でしょう。どちらも頭部死球が印象的です。 稗田投手はサイドハンド、陶山投手はスリークォーター。 当たったのは内角を突こうとしてシュート回転したストレートでした。普通は抜けた変化球なわけですが… どうも最近は「ナチュラルシュート」と称し、ストレートのシュート回転を良い方に捉えているようですが、 逆方向に投げれば真中に入っていく甘い球、これほどの失投はありません。 もう少しストレートのシュート回転には気を配って欲しいです。 特にサイドやスリークォータのような投球フォームなら尚更。 投手としては投げやすいのでしょうが、シュート回転といった脆い面を忘れないで欲しいです。 あとこれは完全に私の推測ですが、死球に対する考えの甘さがあるのではないかと思っています。 倉敷工も福井商も一試合における死球が多く、頭部死球が2度以上あったのにも関わらず、投手を続投させています。 内角を大胆に突くのは構いませんが、当ててしまってはダメ。 相手を怪我させてしまう…場合によっては死に至らしめてしまうこともあります。 高校野球では頭部に当たった場合、医師の診断を受けるので無理に交代させられる場合もあります。 もっと死球に関しては考えを厳しく持つべきでしょう。 これはマウンドに立っている投手よりも指導者、監督が強く持つべき。 死球が異様に多ければ、相手チームに配慮して交代させるのが筋というものでしょう。 マウンドにいる投手も故意にやっているわけではないのですから、 そこにはフォームの乱れ、疲れなどなんらかの問題があるはずです。 それを放ったらかしにするのは指導者として怠慢です。 死球に関してはもっと厳しい考えを持って指導していただきたいです。 さて大会全体としての意義ですが、「守備・バントの重要性」を再認識させる大会だったと言えます。 「安定した守備力」「低めに制球できる投手」「バントを始めとする卒のない野球」、 この3つが揃えばドラフトで騒がれるような超高校級選手や、名門チームの監督がいなくとも勝てることを証明しました。 ベスト8入りした岩国・聖望・鳥栖商、ベスト4入りした江の川はその最たる例です。 全国全ての高校野球チームに甲子園で勝ち上がるチャンスがあることを教えてくれたように思います。 センバツ時の「強豪校の台頭」とは逆の結果が出てきましたね。 ある意味で今大会は「普通のチームの集まり」だと言え、 またそんなチームだからこそ「1点差を競うような接戦・トーナメントに強いが集まった」と言えます。 プロ野球が飛ぶボール等の影響で大味になっているのに対して、 高校野球は1点を争う白熱とした投手戦の緊張感を思い出させてくれました。 野球の奥深さを改めて知ったような気持ちですね。 高校野球関係者だけでなく、プロ野球関係者も今大会は学ぶ所多かったことでしょう。 (つーか、頼むから学んでくれ。バカ野球は飽き飽きなんで…) |
S | A+ | A | B | |
右投手 | 西村健太朗(広陵) 鶴田健太(静岡) 長江卓哉(富山商) |
豊嶋一太(今治西) 給前信吾(横浜商大) 飯島秀明(常総) 松村裕二(聖望) 広岡聖司(沖縄尚学) 大和威光(小松島) 桑鶴康弘(光星学院) |
伊藤毅(桐生第一) 白石守(駒大苫小牧) 陶山大介(倉敷工) カルデーラ(羽黒) 木村充成(PL学園) 田村正行(PL学園) 小原篤(近江) |
|
左投手 | 木野下優(江の川) 大伴啓太(岩国) 重野倫基(鳥栖商) |
森元雄太(羽黒) 磯部洋輝(常総) |
||
捕手 | 那須亮友樹(近江) 白浜裕太(広陵) 大崎大二朗(常総) |
|||
一塁手 | 本田将章(智弁和歌山) | 秋月良宏(今治西) | 川瀬正和(長崎日大) | |
二塁手 | ||||
三塁手 | 堂上剛裕(愛工大名電) | 藤田敏行(桐生第一) 曽我健太(今治西) 谷中昭人(PL学園) |
||
遊撃手 | 坂克彦(常総) | 小窪哲也(PL学園) 籾山幸徳(天理) 宮田泰成(東北) |
備前島健(桐生第一) 金田豊(小山) |
|
外野手 | 吉良俊則(柳ヶ浦) | 西村拓也(平安) 大西輝也(近江) 若狭康之(駒大苫小牧) 服部達哉(静岡) |
門田隆志(今治西) 松本晃(PL学園) 嶋田好高(智弁和歌山) |
西野隆雅(平安) 大西文晴(神港学園) 山崎宏員(智弁和歌山) 田中隆彦(光星学院) |
2年生 | 1年生 | |
右投手 | ダルビッシュ有(東北) 真壁賢守(東北) 鶴川将吾(明徳義塾) 江川智晃(宇治山田商) 増井達哉(静岡) |
山口俊(柳ヶ浦) 関洋平(日大三) |
左投手 | 服部大輔(平安) 滝谷陣(智弁和歌山) 鈴木康仁(駒大苫小牧) |
|
捕手 | 田辺真吾(明徳義塾) | 柳田一喜(神港学園) 渡部友哉(日大東北) |
一塁手 | 横田崇幸(東北) | 藤川俊介(広陵) 田中克誠(天理) |
二塁手 | 上本博紀(広陵) | |
三塁手 | 久保田健仁(明徳義塾) | 加藤政義(東北) |
遊撃手 | 梅田大喜(明徳義塾) 岡昇平(近江) |
|
外野手 | 泉田正仁(常総) 大沼尚平(東北) 家弓和真(東北) |
真井翔太(天理) |
S | A++ | A | A− | B | |
右投手 | 西村健太朗(広陵) 藤井宏海(福井) 鶴田健太(静岡) 長江卓哉(富山商) 平岡政樹(徳島商) |
豊嶋一太(今治西) 給前信吾(横浜商大) 広岡聖司(沖縄尚学) 桑鶴康弘(光星学院) 松村裕二(聖望) ロバート(八王子実践) |
飯島秀明(常総) 大和威光(小松島) 平野貴志(桐蔭) 福本真史(花咲徳栄) 榊原諒(中京) |
伊藤毅(桐生第一) 白石守(駒大苫小牧) 陶山大介(倉敷工) カルデーラ(羽黒) 木村充成(PL学園) 田村正行(PL学園) 小原篤(近江) 松下祐士(浜名) 谷哲也(鳴門工) 牛島明彦(斑鳩) |
|
左投手 | 小嶋達也(遊学館) アン(東洋大姫路) |
木野下優(江の川) 須永英樹(浦和) 成瀬善久(横浜) |
大伴啓太(岩国) 重野倫基(鳥栖商) |
森元雄太(羽黒) 磯部洋輝(常総) 鈴木寛隆(浦和) 岩本祐介(宇部鴻城) |
|
捕手 | 那須亮友樹(近江) 白浜裕太(広陵) 大崎大二朗(常総) |
新岡裕豪(藤代) | |||
一塁手 | 本田将章(智弁和歌山) 行田篤史(遊学館) |
秋月良宏(今治西) | 新谷悠介(福井) | 川瀬正和(長崎日大) 黒木豪(横浜) 山口秀人(明徳) |
|
二塁手 | 末沢優典(徳島商) | ||||
三塁手 | 堂上剛裕(愛工大名電) | 藤田敏行(桐生第一) 曽我健太(今治西) 谷中昭人(PL学園) |
西江竜哉(横浜) | 水田健一(斑鳩) 藤田貴弘(広陵) |
|
遊撃手 | 坂克彦(常総) | 小窪哲也(PL学園) 籾山幸徳(天理) 宮田泰成(東北) |
吉田真二(横浜) | 備前島健(桐生第一) 金田豊(小山) 山下祐二(旭川実) |
|
外野手 | 吉良俊則(柳ヶ浦) | 城所龍磨(中京) 西村拓也(平安) 大西輝也(近江) 若狭康之(駒大苫小牧) 服部達哉(静岡) 門前歩(遊学館) |
門田隆志(今治西) 嶋田好高(智弁和歌山) 松本晃(PL学園) 荒波翔(横浜) |
小粥勇輝(浜名) 松本淳(浦和) 前川直哉(東洋大姫路) |
西野隆雅(平安) 大西文晴(神港学園) 山崎宏員(智弁和歌山) 田中隆彦(光星学院) 金森将平(福井) 永松孝太(近代付属) 沖田浩之(明徳) 佐坂謙介(鳴門工) |