夏の高校野球 甲子園大会 最終日

決勝戦 常総学院(茨城) 4−2 東北(宮城)

(常)磯部(2回)−飯島(7回)
(東)ダルビッシュ(9回)
常総
東北

おそらく今日は決勝戦の戦いそのものよりも、
戦い後の勝利インタビューの方が印象深かった人が多いんじゃないでしょうか?
木内監督の優勝インタビューもそうですが、キャプテン松林君と好投した飯島君のインタビューが素敵でした。
特にキャプテン松林君
もうゲームセットとなる前から涙がこぼれていたようで、最後のファーストゴロ良く捕ったなと(笑)
試合前のインタビューなども選手全員のことを報道陣にしっかりと答えてくれるキャプテンらしいです。
そんな男が涙で一杯になりながら、笑顔を見せる姿は感動的じゃないですか。
思わずもらい泣きしてしまいました。
きっと松林君の涙には色々な意味があったんでしょうね。
キャプテンとしての苦労、選手としての苦労、練習での苦労、
周りの人の協力、周囲のプレッシャー、木内監督への感謝、そして優勝の喜び…
「木内監督最後の夏」ということで監督がクローズアップされてましたから、
自分達のプレーだけでなく、監督の花道を飾らないとという責任感もあったはずです。
そのプレッシャーに打ち勝っての優勝、涙ですからカッコいいですよ。
そりゃもう誰かさんの開会式の挨拶の「感動した」の何百倍の感動ですわ(笑)
いやー、良いものを見せてもらいました。やっぱり甲子園はいいですね。
「栄冠は君に輝く」…まさにその通り。私はこの言葉を松林キャプテンに捧げたいです。

さて試合のほうですが、両チームともに死力を尽くした戦いと言っていいと思います。
正直言いまして、今日の両先発投手、磯部投手・ダルビッシュ投手ともに調子はあまりよくありませんでした。
特に磯辺投手は昨日の登板と同じく、体が重そうだった感じがしました。
コントロールは勿論のこと、一番変だったのはバント処理の送球です。少し気だるそうに投げてるんですよね。
それでおかしいなぁと思って見ていたら、長打の連発で…
これに関しては完全に木内監督の投手起用の間違いだったと思います。状態把握が不十分でした。
ただ常総学院は2番手の飯島投手が力ある球で東北打線を抑えられたのが大きかったですね。
その差が勝敗を分けたような気がします。
あと大事な局面での守備力、これは常総の方が一枚上でした。

東北のダルビッシュ投手ですが、右足の怪我の影響はあったと思います。
立ち上がりから足の踏み込みが足りていませんでした。
中盤以降は怪我の恐怖が薄れたのか、ストレートを投げる時は踏み込めていましたが、
変化球の時に踏み込むことができず、コントロールの悪さを腕だけで調整していました。
それによって腕の振りが鈍くなり、変化球のキレ・コントロールが最後まで戻らなかったように思います。
それでもストレートの球威はありましたから、悪いなりにしっかりと投げられるのは凄いですね。



さて試合展開の方を簡単に記しておきます。
先制したのは東北高校、常総の先発:磯辺投手を攻め立てます。
立ち上がりの1回表、磯辺投手が先頭の家弓選手に四球を出しますが、
2番宮田選手の送りバントは磯辺投手の好判断でセカンドフォースアウトとし、
3番大沼選手の所でエンドランをかけるも高く上がるレフトフライ、
4番横田選手の所で大崎捕手の1塁への速い牽制でタッチアウト、ここは0点で終わります。
けれど2回表はコントロールが持たず、東北打線が爆発します。
4番横田選手が外角ベルト付近ストレートを打ち左中間破る2ベースヒットで出塁し、
5番片岡選手が甘く入ったカーブを打ちファースト強襲のタイムリー2ベースヒット、
さらに6番加藤選手が外角スライダーを打ちレフト右へのタイムリー2ベースと3連続長打で一気に2点を先制します。
引き続きノーアウト2塁のチャンスがありましたが、送りバントがピッチャー側に転がって三塁タッチアウト、
8番ダルビッシュ投手がセカンドゴロ併殺打となるなど、その後のチャンスは生かすことができませんでした。
3回表には9番古川選手がレフトオーバー2ベースヒットでノーアウト2塁のチャンスを作るのですが、
常総の2番手飯島投手に代わってからは良い所がなし。
1番家弓選手は送りバントを決められずに強攻でレフトフライ、2番宮田選手は四球で出るも、
3番大沼選手が外角シュートで空振り三振、4番横田選手がサードゴロに倒れて得点できませんでした。
その後は飯島投手の球威あるストレートに負け、外野フライの山を築かれてしまいます。

立ち上がりはダルビッシュ投手のストレートに押されていた常総学院でしたが、2巡目の4回表に反撃します。
1番平野選手が窮屈なバッティングながらピッチャーの頭を越すセカンド内安打で出塁すると、
2番泉田選手は送らずに強攻策もこれはレフトフライ。
これでダメかと思われましたが、3番坂選手が低めストレートをジャストミートする左中間2ベースでムードを変えます。
1アウト2・3塁となって4番松林選手の当たりが高いバウンドのサードゴロとなって、3塁ランナーホームイン!
さらに5番スタメン復帰の吉原選手が詰まりながらもレフト線に切れずに落ちるのタイムリー2ベースで同点、
6番大崎選手のライトオーバータイムリー3ベースで一気に常総が逆転します。
ただ中盤はヒットを打ちながらも、尻上がりに良くなるダルビッシュ投手に粘られてしまい、追加点を奪えません。

今日の試合のポイントは7回裏と8回表です。
7回裏、飯島投手は2アウトを取りますが、1番家弓選手にヒットを打たれ、2番宮田選手に死球、
3番大沼選手に四球を出すという内容悪いピッチングで、2アウト満塁という本日最大のピンチを作ってしまいます。
ここで4番横田選手は低く鋭い打球を打ちますが、これがショート坂選手の正面に、反応良くしゃがむナイスキャッチ!
ショートライナーと常総側に運も味方して3アウトチェンジとなります。
本来ならこれで「ラッキーだったな」と終わるところですが、常総の強い所はこのラッキーを実力に変える所です。
8回表、1アウトから坂選手が変化球を狙い打つ三遊間抜くヒットで出塁すると、
ダルビッシュ投手がワイルドピッチをしてしまってランナー2塁へ進塁、
ここで4番松林選手が逆らわずに右方向へミート打ちをする一二塁間抜くライト前ヒットを放ち、
この打球をバックホームを焦ったライトがグラブで前に弾くエラー、
3塁で一度止まりかけた坂選手ですが、すぐにホームへ走りこんで1点を追加します。
7回裏のピンチの後、しかも相手のミス絡みの得点という1点以上の意味を持つ得点で、試合を決するわけです。

9回表に常総は8番宮田選手の3ベースヒットでノーアウト3塁のチャンスを作りますが、
ここは9番飯島投手がスクイズバントを上げてしまってダブルプレーで得点できません。
ただ飯島投手は気を取り直して9回裏の東北打線を三者凡退に斬ってとります。
最後の打球はファーストのキャプテン松林選手へのゴロ…これを捕り、自らがベースを踏んで試合終了!
常総学院が4−2で勝利し、夏の大会での初優勝を決めました。



常総の勝因ですが、4回の長打が目を引きますが、実際には守りの力だと思います。
1回裏のキャッチャー大崎選手の1塁牽制アウト、
3回裏の飯島投手のセカンドへの素早い牽制球(セカンドがボールをこぼしてセーフでしたが、完全にアウト)
4回裏のキャッチャー大崎選手のバックネット手前のファールフライのナイスキャッチ、
6回裏のショート坂選手の高いバウンドのゴロを前進してナイス送球するというファインプレー、
7回裏の低いショートライナーの坂選手の身のこなし…
普通に見ていてもこれだけのナイスプレーが出ています。
そしてもう1つ見落としてはいけないことが外野の守備位置です。
大体定位置よりも後ろに守っていて、外野に大きなフライが飛んだなと思ったら、
何事もなかったのようにキャッチ… 普通なら抜けていてもおかしくない当たりをです。
今大会の飯島投手の特徴に外野フライが多いことがあります。
良い当たりで上がったな〜と思っても球威が勝ってるのか上空で失速、そういう打球をいくつも見ました。
そしてそれを外野がしっかりとキャッチしているわけです。これはポジション取りが良いためでしょう。
常総は内野の守備力が目立ってましたが、外野手もポジション取りの上手さも光っています。
カバーリングや送球の判断なども素晴らしかったですし、守備全体が洗練されていたように思います。

負けた東北高校ですが、東北・北海道勢初の優勝を遂げられなかったのは残念だと思います。
ただ東北高校が準優勝の成績を収め、ベスト8には光星学院も入っていますから、
東北地方の野球レベルが上がっていることは疑う余地はありません。
近い将来、東北に優勝旗が渡ることは間違いないでしょう。
それに一番近い位置にいるのが来年の東北高校、
ダルビッシュ・真壁投手の二枚看板はもちろんのこと、
1番家弓・3番大沼・4番横田・6番加藤とチームの主軸打者は1・2年生で来年もあります。
今年の悔しさを胸に、より高い守備力・バントなどの堅実な野球を高い意識で身につけていけば、
今年以上のチームを作ることができ、優勝することも可能になるでしょう。
慢心することなく、一心不乱に頑張って欲しいです。
春夏連覇も夢ではなし! 来年に向けて頑張っていきましょう!

勝った常総学院には高校生離れした素晴らしい守備を見せてもらいました。
打球の処理・判断などどれを取っても一流、守備だけなら歴代優勝校でもトップの実力かもしれません。
常総学院の相手がエラーやミスで失点してしまうのに対して、常総学院は最後まで大きなミスをしませんでした。
やっぱり野球は守りなんだなと改めて教えられた気持ちです。
バントの正確さなど今年の常総学院は素晴らしいチームでした。
高校野球の鏡のチームと言いましょうか、トーナメントを勝ち残る最強のチームだと思います。
木内監督の意図を正確に掴み、実行する高い能力はさすが。
そしてそれを指導し、個々の能力を見極めた木内監督、素晴らしい相性でしたね。
歴代優勝校の中でも印象に残るそんなチームでした。
おめでとう、常総学院の皆さん!
そしてありがとう、高校球児達よ!




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