夏の高校野球 甲子園大会 3日目

第1試合 倉敷工(岡山) 5−2 駒大苫小牧(南北海道)

(倉)陶山(9回)
(駒)白石(5回1/3)−鈴木(3回2/3)
倉敷工
駒大苫小牧

うーん… やっぱり悪い展開の方になってしまいましたか…
高校野球はメンタルなスポーツですから、1日あるだけでガラッと変わりますね。
昨日の試合で駒大苫小牧は倉敷工業の実力を過小評価した面があったかもしれません。
過小評価というと聞こえが悪いか…昨日の試合が倉敷工の実力だと判断したのだと思います。
昨日に比べると、倉敷工打線は積極的になり、陶山投手もコントロール・変化球のキレも別人の内容。
その違いに戸惑ううちに失点してしまったように思えました。
「自分達の野球をすれば勝てる」と思っていたのでしょうが… 難しいですね。
倉敷工業の方が、この1日の過ごし方が上手かったということなのでしょう。
…悔やんでも悔やみきれませんね… どうやって試合を振り返ればいいのか…
サスペンデット制導入を考えてもらいたいです。

試合の流れを掴んだのは倉敷工業。昨日とは違う積極的な打撃で白石投手に襲い掛かります。
2回表、1アウトから8番荻原選手が外角ストレートを流すライト前ヒットで出塁し、
9番陶山投手が送りバントで進め、1番西野選手がピッチャー返しのセンター前タイムリーで先制。
さらに3回表、1アウトから4番渡部選手が死球で出塁し、
5番須田選手がカーブを引っ張ってのレフトオーバータイムリー2ベースで追加点を挙げます。
続いて6番清水選手の三遊間抜くヒットなどで2アウト1・3塁として、
8番萩原選手の所で1塁ランナーを牽制した捕手の送球が悪送球に、相手のミスで3点目を奪います。
一方の駒大苫小牧は3回裏、先頭の8番糸屋選手が死球で出塁し、9番大西選手が送りバント、
1番原田選手が倒れて2アウト2塁となりますが、
2番桑原選手が低めストレートを打ち返すセンター前タイムリー(送球の間に2塁へ)、
3番石川選手の当たりはサードライン上のゴロで際どいタイミングだったこともあり、
送球を慌てたサードが1塁へ大暴投、ランナーが帰って2点目、打者走者も3塁に行き、同点のチャンス。
ここで4番若狭選手を迎えたのですが、陶山投手が絶妙なインローストレートを投げきり三振に。
駒大苫小牧が劣勢を跳ね返しましたが、同点に追いつく事ができません。
すると4回表、倉敷工は四球で出たランナーを、3番松本選手がセンターオーバータイムリー2ベースで還し、
6回表にも四球・バント・ヒットで1アウト1・3塁とし、2番大森選手がセーフティースクイズで計5得点。
駒大苫小牧は5回裏にノーアウト2塁、6回裏にノーアウト1・2塁、7回裏にノーアウト1・2塁、
8回裏に1アウト1塁と終盤は再三チャンスを作るのですが、強攻策を取ってこれが悉く失敗。
結局、1点も奪えず、2−5で駒大苫小牧が負けてしまいました。

駒大苫小牧の敗因は「3点差」にしてしまったことだと思います。
3回表の悪送球による1失点、3回裏の4番若狭選手の三振、6回表の先頭打者への四球…
2点差に抑えられるケースがありながら、これを生かすことが出来ませんでした。
もしも2点差だったら、いや、駒大苫小牧の香田監督が1点ずつ返すことを狙っていたら…
ランナーをきっちり3塁へ送り、得点のチャンスは大いに広がったことでしょう。
あまりにも悔しい、悲しい敗戦でした。

一方の倉敷工はこの1日で上手く気分を切り替えたと思います。
打線は積極的に打ちに出て、白石投手のストレートを反対方向に流すなど、
昨日の試合の反省を生かした打撃をしていました。
また陶山投手もコントロールが安定し、変化球のキレも全く違いました。
昨日は空振りを奪えなかった低めスライダーを振らせることができたのが大きかったと思います。



目立った選手は昨日と同じなので割愛。簡単に昨日との違いを述べておきます。
駒大苫小牧の白石投手は変化球の抜け球が多く見られました。
倉工打線の積極的な打撃でリズムに乗れなかったのかもしれません。
コントロールも昨日より良くなかったと思います。
今日の投球ではまだまだ。球に力がある投手ですから、高いレベルを目指して、頑張って欲しいです。
若狭選手は陶山投手に上手く攻められましたね。3打数1安打1四球2三振。
インローへのストレート・スライダーで上手く打ち取られた感じがします。
ただ今日は陶山投手が良過ぎただけで、内容自体は昨日よりも良かったと思います。
厳しい球をバットに当てるなど、コンパクトさがありました。
今後はプロ入りを目指し、頑張っていって欲しいです。
倉敷工業の陶山投手は昨日と別人。
スライダーの切れ味が昨日とは全く違い、ボールが低めにコントロールされていました。
特に左打者へのインサイド低めのスライダー、右打者の外角の出し入れは絶品。
コントロール抜群で安定した投球を披露していました。
ただ右打者のインコースがシュート回転して死球気味(死球もあり))になるなど、荒れる側面もあります。
ストレートの球質自体は普通なので、不調になると手を付けられなさそう。
今後の試合はどれだけ好調を維持できるか、それにかかってくると思います。

おっと、最後に真打を。駒大苫小牧の2年生左腕、鈴木投手(左170センチ)は素晴らしいの一言。
今日は3回2/3を投げて、打者11人をパーフェクト、7奪三振を奪う快投を見せました。
このピッチャーは凄いですよ。まだ全員見ていませんが、今大会の隠れNO1投手と言ってもいいと思います。
やや後ろに引っ張るようにゆったりとバックスイングを取り、ボールを長く持って対角線気味に投げるフォーム。
この投球フォームがしっかり定まっていて、セットからでも乱れる事はありません。
投げられるボールは横に角度が付いており、
なおかつ、ゆったりとした投球フォーム、球持ちが長いためにストレートのキレが抜群。
ストレートの球速は130キロ前後なのですが、とてもそうは見えませんでした。
広陵の西村投手よりも速かったので、見た目は140キロ以上。
135キロを計測した球は目で追えないほどだったので、145キロぐらいの目測。プラス10キロ増しに見えました。
フォームが安定しているために、コントロールも良く、かなりまとまっている投手です。
変化球はカーブとスライダー。カーブは変化が大きい左投手特有のカーブ、スライダーはキレがいいです。
倉敷工業打線ではストレートは当てるのが精一杯、三振は全てストレート、
見逃しは全く手が出ず、空振りは完全に振り遅れと鈴木投手の独壇場でした。
駒大苫小牧が今年の悔しさを忘れずにいれば、必ずリベンジを果たせることでしょう。
鈴木投手は全国でも屈指の投手になれますから、来年に期待したいと思います。
たぶん北海道大会では負けないでしょう。
昨夏・センバツと見た浦学の須永投手、遊学館の小嶋投手よりも上だと思いますから。
センバツ・夏と活躍してくれることを期待しています。



倉敷工業は負けた駒大苫小牧の分まで頑張って欲しいですね。
打線は卒のない野球をしますから、守りの面をしっかり固めていくことが課題だと思います。
4失策ほどあったと思いますから、守備の徹底を図って欲しいです。
陶山投手は打たせて取るタイプですから、守り次第ですね。

負けた駒大苫小牧はこの悔しさをセンバツ・来夏と晴らしに来て欲しいですね。
ベンチ入り選手は1・2年生も多くいましたから、良いチームを作れると思います。
今日登板した鈴木投手を中心に頑張ってください。
望みは高く、北海道に優勝旗を持ち込むつもりで! ガンバレ、駒大苫小牧!!




第2試合 広陵(広島) 3−0 東海大甲府(山梨) 

(広)西村(9回)
(甲)佐野(2回)−岩倉(4回)−三井(3回)
(本)上本(広陵1回表、先頭打者アーチ)
広陵
東海大甲府

広陵の西村投手が抜群の安定感を見せ、6安打11奪三振の完封勝利を果たしました。
今日は3回裏にノーアウト2・3塁、6回に1アウト1・3塁とピンチを作りましたが、
要所要所で低めに伸びのあるストレート、スライダーを決めるなど崩れる気配は全くなし。
ピンチになっても動じない精神力は素晴らしいの一言ですね。

試合展開の方は広陵が小刻みに3点を奪うという展開でした。
まずは1回表、先頭の上本選手が近めストレートをレフトポール際へ弾丸ライナーで運ぶホームランで先制、
2回表には6番伊藤選手が2ベースヒットで出塁し、送りバント、8番西村投手が三遊間抜くタイムリーで2点目、
3回表には3番藤田選手が1塁線を抜く2ベースで出塁し、
4番白濱選手がバントを引いた際に捕手が2塁へ牽制しようとして長身の白濱選手のヘルメットに送球が当たって3塁へ、
白濱選手がセンターへ犠牲フライを放ち、3点目を挙げます。
しかし中盤以降は岩倉・三井投手を広陵打線が打ちあぐねて追加点ならず。
それでも広陵の西村投手は終始安定した投球を見せて、完封勝利を収めました。

今日の広陵は上本選手の先頭打者アーチ、西村投手のピッチングに尽きます。
広陵の堅い守備力もありましたが、この2人の活躍が勝利を呼び込んだと思います。
一方の東海大甲府は西村投手のストレートを流し打つなど打線の力強さが感じられました。
ただピンチになると抜群の制球力を見せる西村投手には一歩及びませんでした。



目立った選手は広陵の西村投手、上本選手、白濱選手、藤川選手です。
広陵のエース、西村投手(右183)はセンバツ時と変わらず抜群の安定感を見せてくれました。
春よりもコントロールが良くなったという印象があります。
ゆったりした投球フォームからキレのある140キロ前後のストレートをコントロール良く投げるピッチャー、
ハートの方も強く、ピンチでも動じることなく、コーナーコーナーにボールを投げ分けられます。
プロレベルで見た場合、課題は変化球でしょうね。
カーブ・スライダーと持っていますが、キレが少し足りないと思います。
プロでは見切られやすい球ですから、変化球がどれだけ良くなるかでしょうね。
それでもストレートのキレ、コントロール、ハートの強さは十分に買えると思います。

2年生の1番打者セカンドを守る上本選手(右170)は2打数2安打1ホームラン3四球と大活躍。
やや東海大甲府側が逃げがちだったのが残念。
それでも1打席目の近めストレートをライナーで運んだホームラン、
難しいコースの球に突いて行っての、三遊間を抜くヒットと良い所を見せてくれました。
打撃フォームは腕を肩口にまとわりつかせるように構え、ボールをよく引きつけて打っています。
バットは最短距離で出てきて、シャープに振りぬける良い打者です。2回戦以降も注目。

センバツからの新戦力、1年生で5番を務めるファーストの藤川選手(右175)は4打数1安打。
甘い球を捉えて、三塁右を痛烈に抜くヒット。この当たりで一気に2塁を突くなど、足の速さも見せてくれました。
パワフルな印象を受ける打者で足も速い、楽しみな選手ですね。
ただ打撃フォームがイマイチ。腰が据わっておらず、打つ時に体の上下のブレがあります。
これでは上のレベルの投手には対処できないと思います。
そこを修正し、素晴らしい打者になれるかどうか、注目が集まりますね。

スポーツ紙のドラフト記事で「城島2世」と騒がれた白濱選手(右180)はさっぱり。
4打数1安打1打点、外野まで打球を飛ばすなど結果としては良いのですが、内容がどうも…
センバツで見た時はリード・肩の面で良い選手だと思いました。ただ打撃面はもう少し。
それは夏になっても変わってなかったように思います。
構えが棒立ち気味でタイミングの取り方があまり上手くありません。
高めの球には対処できるでしょうが、低めの球はかなり苦しいんじゃないかと。
タイミングの取り方をもっと工夫しなければプロレベルの捕手にはなれないと思います。
やや「城島2世」という呼び名だけが先行している印象。これからの選手です。



センバツ優勝の広陵ですが、上位打線に不安が残ります。
1番の上本選手は素晴らしいのですが、4番の白濱選手、5番の藤川選手と少し穴が見られます。
早い段階で打ち出せば大丈夫でしょうが、思うような結果を残せなければ、打撃不振の可能性も。
センバツは打ちまくった広陵打線ですが、今日はそこまでの破壊力は感じられませんでした。
上本選手がどれだけチームを引っ張れるか、これにかかってくると思います。
投手力では西村投手の負担軽減を図れるかどうかこれが広陵の春夏連覇の課題だと思います。

負けた東海大甲府ですが、右サイドの佐野投手、左の岩倉投手、右アンダーの三井投手と
タイプの違う2年生3投手を擁しているのは大きいと思います。
特に三井投手はストレートにキレがあり、広陵打線を苦しめていました。
レギュラー野手でも2年生が3人いますし、新チームでの躍進を期待したいと思います。




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