センバツ甲子園大会 10日目


引き分け再試合 東洋大姫路 6−5 花咲徳栄(埼玉)

10 (徳)高橋大(6回)−宇都木(2回)−福本(1回)
(姫)高橋卓(7回)−アン(3回)
(本)福永(5回裏ソロ)
徳栄
姫路 1×

延長15回引き分けの再試合も延長戦となる熱い戦いが繰り広げられました。
引き分け再試合の延長戦はセンバツでは初めてとのことです。
まさに球史の1ページに残る試合だったと言っていいでしょう。
両チームとも熱い戦い・感動・涙をありがとうございました!

こういう試合は言葉で語ると陳腐になっちゃうのでやめましょう…
…と行きたいところですが、見てない人もいるでしょうから解説しておきます。
試合は両チームとも2年生投手が先発しました。それも両方「高橋」という名字と共通点が(^^;
花咲徳栄の高橋大投手はサウスポーピッチャーでカーブが武器の投手、
東洋大姫路の高橋卓投手は右投げで130キロ台の球威あるストレートを持つ投手です。
イメージ的には両チームのエースをひっくり返した感じでしょうか?
もっともコントロールの面などで劣りますが、投球の組み立ては基本的に同じです。
なお、花咲徳栄の福本投手は3番レフトとでスタメン出場で、
東洋大姫路のアン投手は3番ファーストスタメンで試合は始まりました。

まず1回表、いきなり不慣れなファーストスタメンのアン選手がエラー。
続いて死球を与えてしまい、立ち上がりからノーアウト1・2塁のピンチを迎えてしまいます。
徳栄はミスを逃さず送りバントを成功させ、1アウト2・3塁のチャンスを作ります。
ここで4番猪口選手がショートゴロ、けれどこれをショートが捕球時に弾いてしまい、2者生還となります。
2回表にも徳栄はショートのエラーっぽいヒットでランナーを出しますが、
ここは高橋卓投手が踏ん張って無得点。
一方の高橋大投手もコントロールが甘く、ピンチの連続でしたが前半は凌いでいきます。
そして4回裏の東洋大姫路の攻撃をに繋がるのですが、その前に3回裏のプレーを語っておく必要があります。
2アウトから3番アン選手のファーストゴロに対してピッチャーがベースカバー遅れてしまい、悪送球で2塁へ。
さらに続く前川選手のファーストゴロに対してもベースカバーが遅れ、ヘッドスライディングセーフとなります。
最後はショートゴロに終わったものの、経験不足による守備の不安を露呈したイニングでした。
結果的にこのことが東洋大姫路側の気分を楽にさせたような気がします。

そして4回裏、先頭の上野山選手が四球を選び、次打者でエンドランをかけ、サードゴロ進塁打となります。
1アウト2塁の場面で今日先発の高橋卓投手が打撃で見せてくれます。
素晴らしい当たりのレフトオーバータイムリーヒット! 
これを不慣れなレフト福本選手が打球を見失ってしまい、ランナーを一気に3塁までやってしまいます。
そこで東洋大姫路はスクイズバントを成功! 
バッテリーが完全無警戒・高橋大投手のフィールディングの不慣れさを突いた見事な作戦でした。
続いて再びファーストゴロでベースカバーが合わないというミスもあってチャンスを作りますが、
最後は三振で勝ち越すまでは至りませんでした。

同点に追いつかれた花咲徳栄は5回表1番田中選手が左打者独特の切れる打球でレフト線へ2ベースヒット、
送りバントを確実に決めて、1アウト3塁という再びリードできるチャンスが訪れます。
けれど3番福本選手がピッチャーゴロ、
4番猪口選手が惜しいファールもありましたがショートゴロで無得点に終わってしまいます。
ピンチの後にチャンスありとは良く言ったもの。
徳栄の高橋大投手は姫路のクリーンアップに対して簡単に2アウトを取りますが、
5番福永選手に変化球が真中に入るという大失投をして、これを打者が見逃さずに打ち、
高々と舞い上がるレフトスタンドへのホームラン! これで姫路が勝ち越します。

しかし花咲徳栄も2試合連続のサヨナラ勝ちをするなど粘り強いチームです。
7回表、先頭打者の打球をファーストアン選手がこぼしている間にセーフとなってランナーが出ます。
続く代打の田中選手が死球を受け、ノーアウト1・2塁の大チャンス!
けれどここで1番田中選手が送りバントを失敗してしまい、ピッチャー小フライで1アウト1・2塁。
2番水谷選手の当たりはショートゴロ、よく追い付くものの飛んだ所が良かった内安打で1アウト満塁。
3番福本選手は上から叩きつけてのファーストへバウンドが高いゴロ、
これをアン選手が判断良く本塁へ送球、タッチアウト。2アウト満塁となります。
これで乗り切るかなと思いきや、4番猪口選手が外角ストレートをセンターへ弾き返す2点タイムリーヒット!
7回表の一進一退の攻防は花咲徳栄が制し、再び勝ち越します。

7回裏は代打を送った関係で花咲徳栄が右サイドの宇都木投手をマウンドに送ります。
これが裏目だったとは思いませんが、いきなり先頭打者にアンラッキーな内安打でランナーを許します。
三遊間の深い当たりで、打ち取っていただけに、甲子園初登板の宇都木投手にはプレッシャーだったでしょう。
送りバント成功の後に、3番アン選手がインコースの球をミートするライト線のタイムリー3ベースヒットが出ます。
投げた球は悪くなかったので、ここはアン選手の集中力が勝ったというシーンでした。
で、ここからが少し迷う所。
ライトがこのライン際の打球をクッションボール捕ろうとかなり待ってしまったんですよね。
打球速度自体はそれほどでもなかったので、待たずに取りに行ったほうが良かったかもしれません。
このプレーがアン選手を3塁までやってしまい、
さらに続く4番前川選手のライトファールゾーン深くの犠牲フライをキャッチした理由でしょう。
ライン際で判断難しかったかもしれませんが、見送ればファールという場面。
終盤なので見送った方が良かったかもしれません。直前のプレーで少し判断鈍った気がします。

勝ち越した東洋大姫路はここでアン投手が登板します。
やはり疲れが見え、右足の上げ方のバランスが悪く、球威がやや足りない感じがありました。
けれど低目を丁寧に狙うピッチングで8回を無難に乗り切ります。
そして9回表、花咲徳栄は代打の宮脇選手を送り、よく選び四球で出塁します。
これを先ほどバント失敗した1番田中選手がしっかり送りバントを決めて、1アウト2塁。
続く打者はサードゴロに倒れて、2アウト2塁。この場面で3番福本選手を迎えます。
なんとここで福本選手がアン投手の外角ストレートをミートするだけの小さなスイングでレフト線タイムリーを打ちます!
執念だけで打った、そんな印象のする一打でした。
同点に追いついた花咲徳栄は9回裏からエースの福本投手をマウンドに送ります。
疲れでやや下半身が使えておらず、腕だけの投球になっており制球が安定してなかったのが気がかりでしたが、
9回裏は無難に三者凡退に終わらせて、延長戦へ突入します。

そして10回裏東洋大姫路の攻撃は、昨日延長15回にエラーをしてしまい、
未だ借りを返せずにいた4番前川選手がライトへ3ベースヒットを放ちます!
低めに投げるはずだったボールが真中高めに入るという失投でした。
この場面からも今日の福本投手はコントロール悪かったことが分かります。
花咲徳栄は1点入れば終わりということで、満塁策を取ってきます。
満塁ならスクイズでホームタッチプレーが必要ないですし、塁を埋めれば併殺打も取りやすいからです。
カウント2−2となった7番野崎選手への5球目、それは起こりました。
スライダーがワンバウンドしてしまい、捕手が取れずボールが後ろに転々と…
その瞬間マウンドでふらふらと前に出ていく福本投手…
ワイルドピッチでランナーがホームインした瞬間、崩れ落ちました。
2日に渡る大熱戦、昨日から合わせて242球目…ついに福本投手が力尽き、熱戦は終わりとなりました…

この2日間両チームは守備の乱れ・記録に現われないミスがあったりして苦しい試合でしたが、
最後まで投手陣が粘り強く投げ、バックも最後まで諦めずにプレーしていました。
それだけでも良い試合だと思いますし、限界の中での最高のプレーは心打つものがありました。
福本投手は最後サヨナラ暴投という形で終わってしまいましたが、
それまでの試合も延長戦続きでかなりの球数を放っていたのだから立派です。よく頑張ったと思います。
もし悔しい気持ちがあるなら、ナインや応援してくれる人にすまない気持ちがあるなら、
今日の試合を糧として、再び夏の甲子園にチームを連れてきて貰いたいです。
埼玉には宿敵浦和学院がいますが、今日の試合を忘れなければ必ず勝っていけるはず。
夏に再び合間見えん事を誓い、花咲徳栄を送り出してあげたい気持ちです。

一方の勝った東洋大姫路は試合前半にはエラーがあったものの、試合の中でよく成長していきました。
アン投手も連投続きながらも最後までよく投げきりました。
疲れていながらも体全体を使った投球フォームは素晴らしいの一言です。
一昨年に脚光を浴びたこともあってか、練習嫌いなどで監督さんを悩ませたようですが、
今までのピッチングを見る限りには精神的にも大きく、強くなった気がします。
キャプテンとしてチームを引っ張りましたし、この2戦は彼を大きく強くしたことでしょう。
東洋大姫路の今後の戦い方に注目したいです。




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