センバツ甲子園大会 6日目

第1試合 鳴門工業(徳島) 5−0 桐蔭学園(神奈川)

(鳴)谷(9回)
(桐)平野(8回2/3)−渡辺(1/3)
鳴門
桐蔭

大会参加チーム中、最後の登場となった鳴門工業が粘り勝った試合でした。
序盤から両チームともにチャンスを作るんですが、
谷・平野両投手が粘りの投球を見せ、あと1本を打たせずに残塁の山。
試合合計でも鳴門が13、桐蔭が7つの残塁をしたほどです。
 (桐蔭は後半、谷投手を打てなかったので残塁はほとんど前半)
両投手ともに粘り強く投げたんですが、
最後は平野投手が力尽き、大量失点で試合は決しました。

勝敗の差を分けたと感じたのは投手の投球パターンです。
桐蔭の平野投手は福井戦同様にスライダーを中心としたピッチングをしていました。
困ったらスライダーという感じで、序盤からあまりにもスライダーの割合が多いなと心配してました。
その心配の通り、終盤にはスライダーが抜け始め、四球を多く出すなど失点に繋がったように思えます。
谷投手も縦スライダーが武器の投手ではあるんですが、ストレートを軸に投げており、
時折投げる大きなカーブを利用した緩急あるピッチングを展開していました。
それが最後まで低めに丁寧に投げられた理由かなと感じています。
投球パターン、それが今日の試合を決したと思います。

目に付いた選手は鳴門工の谷投手、1番センターの佐坂選手、桐蔭の平野・渡辺投手です。
谷投手は所謂「野手投げ」という感じで、セットポジションから腕を折りたたんで投球します。
130キロ届かないストレート、縦に鋭く落ちるスライダー、大きなカーブを低めに丁寧に投げ、
緩急をつけたピッチングで勝負する投手ですね。
コントロールが課題のようですが、今日は根気良く最後まで低めに投げていました。
このピッチングを続けていき、本当のコントロールを会得してもらいたいものです。
1番センターの左打者、佐坂選手は3安打に2盗塁と大活躍!
センター方向に鋭く弾き返す基本通りのバッティングをしていました。
彼の出塁がチームに活気を生んでいたように見えたので、
今後の試合でもキーマンとなってくるでしょう。

桐蔭の平野投手は135キロ前後のストレートとスライダーのコンビで投げていました。
左打者の内角をズバッと突けるコントロールは素晴らしかったですね。
ただスライダーに頼り過ぎる傾向があり、それが終盤の四死球を生んでいたように思います。
他にもシュートなどを持っているのですから、幅広い投球をしてもらいたいです。
2年生の渡辺投手は初登板で緊張していたのか、やや制球を乱していました。
投球フォームはオーソドックスで、130キロ前後のストレートに縦の大きなカーブを混ぜて投げます。
今日は打者2人に投げましたが、2人ともカウントを悪くしながらも
上手く立て直すだけのコントロールがあったので、今後の成長に期待がかかります。
同窓の鶴川投手(明徳中学出身)に負けないように頑張れ!



第2試合 智弁和歌山(和歌山) 7−6 浦和学院(埼玉)

10 11 12 (浦)須永(11回1/3)
(智)本田(2回)−滝谷(10回)

(本)森川(智弁5回ソロ)、本田(智弁12回サヨナラ)
浦和
智弁 1×

何と言えばいいのだろう…凄い熱戦であったことは間違いありません。
ただ何というかなぁ…かなり複雑な試合だったように思います。
野球の怖さが出た試合でもありますし、面白さも出た試合でもありますし、感動的な試合でもありました。
この試合を思い出すと智弁和歌山の全ての選手が浮かんでくるんですよね。
それだけ智弁ナイン全員にドラマがあった試合だった気がします。
そしてそのドラマを呼んでしまったのが須永投手の精神面。
「弱さ」と付け加えるにはあまりに酷ですが、須永投手の乱れなくしてこのドラマはなかったと思います。

試合展開は序盤から完全に浦和学院ペースでした。
2回にはエラーや暴投が絡み、本田投手から2点を先制し、
3回には代わった滝谷投手の制球が定まらない所を突いて、暴投などでさらに2点を追加します。
浦学の須永投手は序盤からストレートの威力抜群で、135キロ近い球威あるストレートをコースに投げていて、
智弁和歌山打線はずーっと押されっぱなしだったと思います。
そのため序盤から変化球に狙いを定め、時折甘く入る変化球をヒットにしていましたが、
点数に繋がるような気配は全くと言っていいほどありませんでした。
ただそれを急変させたのが5回の7番サード森川選手のホームランです。
打った瞬間何が起こったのか分かりませんでした。
まさかライナーでスタンドに入るなんて…それが正直な感想です。
それまで智弁和歌山打線が打球を前に飛ばすこともできなかった須永投手の右打者インローのストレートを、
ライナーでレフトスタンドへ運んだのだから驚きですよ!
その衝撃は見ているもの以上に、須永投手にはショックだったに違いありません。
自分が調子が良い中、得意とするボールが素晴らしいコースに決まっていたはずなのに…自信は一気に揺らぎました。
それまで智弁和歌山打線がカーブやスライダーといった変化球を狙い打ってましたから、須永投手は八方塞です。
そのショックを引きずったまま投げてしまい、
四球・牽制悪送球・送りバント失敗・四球・キャッチャーフライ・四球となり、
4番の本田選手にセンター前2点タイムリーヒットへと繋がっていきました。

それでも須永投手は後続を断ち、6回を無得点に抑えて踏み留まったなと思ったのですが…
まずは7回表の浦和学院の攻撃が拙かった気がします。
結果的にこれが7回裏の智弁和歌山の逆転劇に繋がったような気がしてなりません。
1番打者の松谷選手がヒットを放ち、ノーアウト1塁と突き放すチャンス。
ここで2番打者が送りバントを失敗してしまうものの、2アウト1塁で頼れる4番の松本選手。
けれどここで単独スチールをかけてタッチアウト、盗塁失敗でチャンスが潰えてしまいました。
智弁和歌山の上野捕手は肩の調子が悪く、東邦戦でも走られていたのですが、
ここではナイススローイングを見せてチームを救ったのです。
この回の浦和学院の拙攻が流れを再び智弁和歌山にあげてしまったように思います。
7回裏は1アウトから須永投手がタイミング合っていない嶋田選手に長打を警戒しすぎてフォアボール。
4番の本田選手には逃げてしまいフォアボール。5番の山崎選手には連鎖反応でフォアボール。
突如として制球を乱した須永投手は6番の山本選手を追い込みながら変化球が甘く入り、3点を奪われ逆転されます。
これは5回に1点差になったこと、7回にチャンスを潰したことで精神的に守りに入ったことが原因でしょう。
嶋田選手に余計なフォアボールを出してしまったこと、これが結果的に大きなミスとなりました。

その後はまさに一進一退の攻防とでも言いましょうか。
8回表は浦和学院が四球からチャンスを掴み、ポテンヒットタイムリーで1点追加。
さらに同点のチャンスという所で打球はレフトに。これをレフト嶋田選手がキャッチするファインプレー!
抜けていれば逆転打ともなっていただけに、嶋田選手のプレーがチームを救いました。
9回表は死球でランナーを許してしまい、送りバント・レフトライナーと2アウト2塁で4番松本選手を歩かせて1・2塁。
左の滝谷投手は左の須永選手と勝負することを選択します。
強い打球ながらも内野ゴロを打たせた滝谷投手、セカンド森本選手が追いついて2塁ベースに終わればゲームセット…
となるはずが、グラブで打球を弾いてしまい、これがタイムリーヒットとなり同点になってしまいます。
記録はヒットでしたが、本人はかなり悔しそうにしていましたね。グラブに入ってただけに、さぞ無念だったことでしょう。
で、同点のまま試合は延長戦へと続いていきます。

智弁和歌山は9回・10回・11回と毎回のように得点圏にランナーを進めます。
けれど浦和学院の須永投手は肩の力が抜けたのか、再び球威あるストレートで押していきます。
球数は相当数になってましたから、もはや気力だけの投球だったのでしょう。
変化球の曲がりは落ちていましたが、ストレートの威力は序盤と同等のものになっていました。

最終回を語る前に触れておかなければならないのは、11回裏の智弁和歌山の攻撃です。
2アウトからピッチャーの滝谷投手がヒットを放ち、
続く上野選手が打球を高々と上げてしまい、スリーアウトだなと思った瞬間、
打球に突っ込んできたライトが落球(センター前付近で、センターがやや見失っていた)
これでランナーがホームインしてると思いきや、滝谷投手は3塁でストップ。
なんと2塁付近で転倒していたようです。その後は後続が倒れて無得点に終わってしまいます。
この時、滝谷投手はどう思ったのでしょう? もし転んでなければサヨナラ、それが頭にあったかもしれません。
その影響があったのか、12回表は制球を乱しますが、なんとか2人を打ち取ります。
けれど3人目の熊谷選手にはヒットを打たれてしまい、
8回にポテンヒットタイムリーを打っている佐久間選手を迎え、再びドラマが起きます。
佐久間選手の打球は鋭い火の出るような二塁頭上へのライナー! 
これをセカンドの森本選手がジャンプ一番!
でもグラブで打球を当てただけでボールは地面に〜
となるところを、森本選手が着地してダイビングキャッチ! ボールが地面に着いていないのでアウトとなりました。
もし打球が抜けていれば右中間を破って、一気にランナーが生還していたかもしれません。
9回2アウトで打球を弾いてしまった森本選手、ここでその借りを見事に返す超ファインプレーを見せてくれました。

12回裏は智弁和歌山のクリーンアップから始まりました。
嶋田選手は須永投手にタイミングが合わずに空振り三振。
そしてまだ球に力があるんだなぁと思って見ていた須永投手の222球目、本田選手が思いきりフルスイング!
打った瞬間に分かる完璧なレフトスタンドへのホームラン!
この瞬間、智弁和歌山がサヨナラ勝ちをしたのです。

智弁和歌山の打者はそれぞれに良い働きをして、今日の試合をドラマチックにしていたように思います。
キャッチャーの上野選手はリードオフマンとしてバッティング、守備では8回の見事な盗塁阻止を見せました。
セカンドの森本選手は9回の須永投手の打球処理にミスをしたものの、12回表に借りを返すファインプレーを見せました。
サードの森川選手は流れを変えるレフトスタンドへのホームランを打ちました。
ショートではスタメンの堂浦選手が1打席目で足を痛めて、無念の途中交代。ベンチで泣いていました。
それでも代わりに出てきた前田選手が堅実にショートを守るなど層の厚さを見せました。
レフトは嶋田選手の2度にわたるファインプレー、打撃ではタイミング合わなかったものの貴重なフォアボールを選びました。
センターの山本選手は一時逆転となるタイムリー3ベースヒットを打ちました。
ライトの山崎選手は5番打者で3安打を放つなど、4番の本田選手と勝負させる状況を作り出しました。
途中登板の滝谷投手は制球に苦しみながらも最後まで粘り強く投げました。
そして最後は本田選手がパワフルな打撃で熱戦の幕を降ろしました。
本当に今日は全選手が随所で活躍するドラマチックな試合を展開してくれましたね。
素晴らしいチーム力を持った智弁和歌山にありがとうと言いたいです。

目立った選手は色々といるんですが、長くなったので智弁和歌山の本田選手と浦和学院の須永投手について触れておきます。
須永投手は前述の通り、ストレートがよく走っていて調子は良かったと思います。
ただ1球、5回に森川選手にホームランを打たれたことで精神的に崩れてしまい、制球を乱してしまいました。
今までも精神面の弱さを指摘されましたが、今回もその壁を乗り越え切ることはできなかったようです。
しかし延長戦で見せた気迫のピッチングは今までにないものがありました。
今日の経験は須永投手が言われていた精神面の弱さを超える良い材料となったことでしょう。
これを肥やしにして、夏には一回り大きくなって帰ってきて欲しいです。

智弁和歌山の本田選手は173センチと小柄な方なのですがパンチ力は素晴らしいものがあります。
何と言ってもリストの強さと、大きなフォローですよね。
打球をバットで捉えたら背筋力を使いつつ、腕を大きく振り切ることで打球に力を生んでいます。
鋭い打球を打てる素晴らしい打者だと思いました。




第3試合 徳島商業(徳島) 6−1 藤代(茨城)

(藤)美馬(6回1/3)−滝田(1回2/3)
(徳)平岡(9回)
藤代
徳島 ×

第二試合について書いてたら力尽きました(爆)
試合の方は初戦に好投した美馬・平岡投手の調子がイマイチで、
ランナーを許しながらの粘りの投球が続いていました。
ただ藤代の美馬投手が4回に致命的なコントロールミスで長打を食らい、試合が決まってしまいました。
平岡投手は球速は135前後でしたが、コーナーを丁寧に突く投球で終始落ち付いていたと思います。
悪いなりに丁寧な投球ができる平岡投手、今後も注目です。

平岡投手の良さは投球フォームでしょう。
体重移動がスムーズで、腕の振りに上手く力を伝えています。
リリースも一定でコントロールも乱れない。素晴らしいフォームをしていますね。
今日は前回よりも腕があまり振れていなかった印象があります。
もう少し腕が振れれば球速も出てくると思うので、今後のピッチングにも期待がかかります。

他には藤代の4番キャッチャー新岡選手が良いバッティングをしていました。
ストレートを変化球をフルスイングしてレフト前へ。バッティングの良さは評判通りのようです。
確実性を増して、主砲として大きく飛躍することを期待したいです。



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